地方上級 / 財政学 / zf-01

更新 2026-09-14

財政の機能と予算制度

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

財政学の最初の単元で、制度の正誤問題として出題されやすい分野です。地方上級・国家一般職とも、「予算の原則と例外」「補正予算・暫定予算の違い」「衆議院の先議と 30 日ルール」「決算と会計検査院」を入れかえた選択肢が定番です。社会科学(zk-05)や高校の公共(kk-06)で見た内容の上に、財政法の条文番号例外の扱いが乗ってくると考えてください。行政学の政策過程と予算(zq-04)とも重なります。


1. 財政の 3 機能(マスグレイブ)

まずここだけ

マスグレイブは『財政理論』(1959 年)で、政府の財政の役割を 3 つに整理しました。

機能内容
資源配分機能市場がうまく供給できない公共財や、外部性のある財を政府が供給・調整する国防・警察・道路・教育、環境税
所得再分配機能市場で決まった所得の分配を、公平の観点からならす累進課税・社会保障給付・相続税
経済安定化機能景気の波を小さくし、雇用と物価を安定させる裁量的財政政策(公共事業・減税)、ビルトインスタビライザー

見分け方は「誰のため・何のため」です。同じ「公共事業」でも、道路を作ること自体が目的なら資源配分、不況対策として増やすなら経済安定化です。

ここまでできれば十分


2. 財政民主主義と予算の原則

まずここだけ

日本国憲法は第 7 章「財政」(83〜91 条)で、財政を国会の統制下に置いています。

条文内容
83 条財政処理は国会の議決に基づく(財政民主主義の総則)
84 条租税法律主義(新たな課税・変更は法律による)
85 条国費の支出・国の債務負担は国会の議決による
86 条内閣が毎会計年度予算を作成し国会に提出(単年度主義)
87 条予備費(国会の議決に基づき設け、内閣の責任で支出。事後に国会の承諾)
89 条公の財産の支出制限(宗教団体・公の支配に属しない慈善・教育事業への支出禁止)
90 条決算は会計検査院が検査し、内閣が次年度に国会へ提出
91 条財政状況の国会・国民への報告

ここまでできれば十分

予算の原則は、教科書によって数え方が違いますが、次の 6 つを条文とセットで覚えれば十分です。

原則内容根拠・例外
事前議決の原則年度が始まる前に国会の議決を得る憲法 86 条。間に合わないときは暫定予算
総計予算主義(完全性)歳入・歳出はすべて予算に計上し、収入と支出を相殺しない財政法 14 条
単一(統一)の原則予算は 1 つにまとめる例外が特別会計(財政法 13 条 2 項)
会計年度独立の原則その年度の経費はその年度の歳入でまかなう財政法 12 条。例外が継続費・繰越明許費
限定性の原則目的外使用の禁止・超過支出の禁止・年度を超えた使用の禁止例外が予備費・移用と流用・繰越
公開の原則予算・決算の内容を公開する憲法 91 条

「原則」と「例外」を入れかえた選択肢が出るので、特別会計は単一の例外、継続費・繰越明許費は会計年度独立の例外、予備費は限定性(事前議決)の例外と対にして覚えます。

もう一歩(発展)

財政法 16 条が定める予算の中身は予算総則・歳入歳出予算・継続費・繰越明許費・国庫債務負担行為の 5 つです。


3. 予算の種類

まずここだけ

時期による分類

種類内容
本予算(当初予算)年度開始前に成立する基本の予算
補正予算年度途中に、災害や景気対策などで本予算を追加・変更する予算(財政法 29 条)。回数の制限はない
暫定予算年度開始までに本予算が成立しないとき、必要最小限の経費について組むつなぎの予算(財政法 30 条)。本予算が成立すると本予算に吸収される

会計による分類

種類内容
一般会計国の基本的な活動の会計。税収と公債金でまかなう
特別会計特定の事業・特定の資金の運用・特定の歳入で特定の歳出をまかなう場合に、法律で設ける(財政法 13 条 2 項)。年金・労働保険・国債整理基金・エネルギー対策など。2026 年 9 月時点で 13 会計(最新は財務省資料で確認)
政府関係機関予算全額政府出資の特殊法人(日本政策金融公庫・国際協力銀行など)の予算。国会の議決が必要

特別会計の歳出総額は一般会計よりはるかに大きく見えますが、会計間のやり取り(繰入れ)や国債の借換えが二重に数えられています。それを除いた純計で見るのが正しい規模の見方です。

一般会計 115 兆円、特別会計 430 兆円、重複と借換債 340 兆円なら、純計 = 115 + 430 − 340 = 205 兆円(数字は例)

ここまでできれば十分

財政投融資(財投)は「第二の予算」と呼ばれ、国が調達した資金を政策金融機関・独立行政法人・地方公共団体などに投資・融資する仕組みです。


4. 予算過程 ── 編成から決算まで

まずここだけ

段階時期(目安)主体・内容
① 概算要求8 月末各省庁が財務省へ概算要求。前もって閣議了解される概算要求基準(シーリング)の枠内で
② 査定9〜12 月財務省主計局が査定。12 月下旬に財務省原案 → 復活折衝
③ 閣議決定12 月下旬政府案を閣議決定
④ 国会提出・審議1 月〜内閣が国会に提出。衆議院先議(憲法 60 条 1 項)。予算委員会 → 本会議
⑤ 成立3 月末まで参議院で異なる議決 → 両院協議会でも不一致なら衆議院の議決が国会の議決。参議院が受け取って30 日以内(休会中を除く)に議決しないときも同じ(60 条 2 項)
⑥ 執行4 月〜翌 3 月各省庁が支出。予備費の使用は閣議決定
⑦ 決算翌年度財務省が決算を作成 → 会計検査院の検査 → 内閣が検査報告とともに国会に提出(憲法 90 条)

ここまでできれば十分


5. よくある間違い

間違い正しくは
暫定予算は本予算成立後もそのまま並行して使われる本予算に吸収される
補正予算は年 1 回しか組めない回数の制限はない(財政法 29 条)
特別会計は総計予算主義の例外単一(統一)の原則の例外。総計予算主義は「全部計上・相殺禁止」
継続費は限定性の例外会計年度独立の原則の例外(複数年度)
予備費の支出には事前に国会の議決が要る内閣の責任で支出し、事後に国会の承諾(憲法 87 条)
予算は参議院からも先に審議できる衆議院先議(60 条 1 項)。条約(61 条)には先議はない
参議院が 30 日以内に議決しないと予算は廃案衆議院の議決が国会の議決になる(自然成立)
決算が国会で不承認になると支出が無効になる支出は無効にならない。内閣の政治的責任の問題
会計検査院は内閣の下にある内閣から独立(会計検査院法 1 条)
財投の原資は今も郵便貯金の預託2001 年度改革で預託義務は廃止。財投債・財投機関債で調達

6. 覚え方の型

  1. 3 機能は「配・分・安」(資源配分・所得再分配・経済安定化)。政策を見たら「誰のため・何のため」で振り分ける
  2. 予算の原則は「原則 → 例外の名前 → 条文」を 1 セットで。単一 ↔ 特別会計、会計年度独立 ↔ 継続費・繰越明許費、限定性 ↔ 予備費・流用
  3. 予算過程は「8 月要求・12 月閣議・衆院先議・30 日・会計検査院」の 5 語で流れを再現する
  4. 「できる/できない」を問う選択肢は、主体(内閣・国会・会計検査院)を入れかえていないか確認する
  5. 統計の数字(一般会計の規模・特別会計の数)は年で変わる。おおよその大きさと、「最新は財務省資料」の姿勢で

7. 小テストへ

→ 小テスト(zf-01

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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