地方上級 / ミクロ / ze-01

更新 2026-09-14

需要と供給・弾力性

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

ミクロ経済学の入口で、地方上級・国家一般職の専門試験では「均衡の計算」「弾力性の計算」「シフトの方向」がよく問われます。高校の公共で習う内容(kk-05)に式を乗せたものが本単元で、あとに続く余剰分析(ze-04)・独占(ze-05)・課税の帰着(zf-02)は、ここでの「傾き」「弾力性」の感覚をそのまま使います。計算は 1 次方程式だけなので、式の立て方と弾力性の定義を確実にするのが先です。


1. 均衡価格と均衡取引量

まずここだけ

需要曲線 D=90−2P と供給曲線 S=P−30 の交点 E(Q=10、P=40)

需要曲線は「価格 P のとき、買い手が買いたい量 D」、供給曲線は「価格 P のとき、売り手が売りたい量 S」を表します。均衡はD = S になる価格です。

D = 90 − 2P、S = P − 30 のとき 90 − 2P = P − 30 → 3P = 120 → P = 40 数量は S = 40 − 30 = 10(D = 90 − 80 = 10 で一致。両方の式に入れて確かめる)

グラフで言うと、横軸に数量・縦軸に価格をとり、右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線の交点が均衡です。供給曲線の式が S = P − 30 のように定数が負のときは、価格が 30 より低いと供給がゼロ(縦軸の P = 30 から上に伸びる直線)という意味です。

ここまでできれば十分

P=42 で超過供給 6、P=38 で超過需要 6 となり価格が均衡に向かう

均衡でない価格では「超過需要」か「超過供給」が生じ、価格が動きます。

上の例で P = 42 なら D = 6、S = 12 → 超過供給 6。P = 38 なら D = 14、S = 8 → 超過需要 6。

このように価格が自動的に均衡に向かうのが価格の自動調節機能(ワルラス的調整)です。

もう一歩(発展)

「価格が需給を調整する」がワルラス的調整、「数量が需要価格と供給価格の差で調整される」がマーシャル的調整です。通常の右下がり・右上がりの曲線ではどちらでも安定ですが、曲線の傾きが逆転している特殊な場合に安定・不安定の結論が食い違うことがあり、そこが問われることがあります。


2. 曲線上の移動とシフト

まずここだけ

需要曲線・供給曲線が右/左にシフトしたときの均衡点の動き 4 パターン

需要曲線をシフトさせるもの:所得、他の財の価格、好み・流行、人口、将来の予想。 供給曲線をシフトさせるもの:原材料費・賃金、技術、税・補助金、企業数、天候。

変化動く曲線均衡価格均衡数量
所得が増える(正常財)需要が右へ上がる増える
流行が去る需要が左へ下がる減る
技術革新・原料値下がり供給が右へ下がる増える
従量税・原料値上がり供給が左へ上がる減る

ここまでできれば十分

2 つの曲線が同時にシフトすると、一方だけが確定し、もう一方はシフトの大きさによるという形になります。

「両方の力が同じ向きに押すもの」だけが決まる、と覚えると迷いません。


3. 需要の価格弾力性

まずここだけ

需要の価格弾力性 e は、「価格が 1% 変わったとき、需要量が何% 変わるか」です。

e = −(需要量の変化率)÷(価格の変化率)(絶対値で正にして扱う)

価格が 5% 上がって需要量が 25% 減った → e = 25 ÷ 5 = 5

ここまでできれば十分

需要曲線の式が与えられたときは点弾力性を使います。

e = −(ΔD/ΔP) × (P/D)  (ΔD/ΔP は需要曲線の傾き)

D = 120 − 4P、P = 20 のとき:傾きは −4、D = 120 − 80 = 40 e = 4 × 20 ÷ 40 = 2

よくある間違いは「傾きの 4 が弾力性」と答えることです。弾力性は傾きに P/D を掛けたもので、同じ直線でも点によって値が違います。直線 D = a − bP では、価格が高い側(左上)ほど弾力性が大きく、中点で 1、価格ゼロに近づくと 0 に近づきます。

弾力性が大きくなる要因は、(1) 代替財が多い、(2) 家計の支出に占める割合が大きい、(3) 価格変化後に時間がたっている(長期)、の 3 つです。

もう一歩(発展)

弾力性と総収入:売り手の総収入 R = P × D は、

D = 300 − 5P なら R = 300P − 5P²。頂点は P = 300 ÷ (2 × 5) = 30(需要曲線の中点)で、ここで e = 1。

「豊作貧乏」(豊作で供給が増えると、農産物は非弾力的なので価格が大きく下がり、農家の収入がかえって減る)はこの応用です。


4. 所得弾力性・交差弾力性・供給の弾力性

まずここだけ

弾力性定義分類
所得弾力性需要量の変化率 ÷ 所得の変化率正 → 正常財(上級財)、負 → 劣等財(下級財)
 (正常財の中で) 1 より大 → 奢侈品、0〜1 → 必需品
交差弾力性X の需要量の変化率 ÷ Y の価格の変化率正 → 代替財、負 → 補完財
供給の価格弾力性供給量の変化率 ÷ 価格の変化率(ΔS/ΔP) × (P/S)

所得が 500 万円から 750 万円(+50%)に増え、需要量が 40 から 80(+100%)に増えた → 所得弾力性 = 100 ÷ 50 = 2(正常財で奢侈品)

ここまでできれば十分

供給の弾力性は需要と同じ手順です。

S = 4P − 100、P = 30 のとき:傾き 4、S = 20 → e = 4 × 30 ÷ 20 = 6

供給曲線が原点を通る直線(S = dP)なら、どの点でも弾力性は 1 です。縦軸(価格軸)の正の側で交わる直線(S = dP − c、c > 0)なら 1 より大きく、横軸の正の側で交わる直線なら 1 より小さくなります。この性質は選択肢の正誤判定でよく使われます。


5. よくある間違い

間違い正しくは
需要曲線の傾きが弾力性弾力性 = 傾き × P/D。直線上でも点ごとに違う
「価格が上がったので需要曲線が左にシフト」価格の変化は曲線上の移動。シフトは価格以外の要因
弾力的な財は値上げすると収入が増える逆。弾力的なら値上げで収入は減る
所得弾力性が負なら必需品負は劣等財。必需品は 0〜1 の正常財
供給の弾力性は直線ならどこでも同じ原点を通る直線のときだけ 1 で一定

6. 解き方の型

  1. 均衡は D = S を解く。出た P を両方の式に入れて数量が一致するか確かめる
  2. 「何が変わったか」を見て、価格なら曲線上の移動、それ以外ならどちらの曲線がどちらへ動くかを決める
  3. 弾力性は「変化率の比」か「傾き × P/Q」。式が与えられたら傾きを読み、P と Q を代入する
  4. 弾力性が 1 より大きいか小さいかで、値上げ時の総収入の増減を判断する

7. 小テストへ

→ 小テスト(ze-01

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参考資料

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