地方上級 / ミクロ / ze-01
需要と供給・弾力性
この単元でできるようになること
- 需要曲線 D = a − bP と供給曲線 S = dP − c から、均衡価格と均衡取引量を計算できる
- 「価格が変わる」(曲線上の移動)と「価格以外が変わる」(曲線のシフト)を区別し、均衡がどう動くかを言える
- 需要の価格弾力性を、式(変化率の比)と点弾力性(傾き × P/Q)の両方で計算できる
- 弾力性の大小と総収入の増減の関係、所得弾力性・交差弾力性による財の分類を説明できる
試験での位置づけ
ミクロ経済学の入口で、地方上級・国家一般職の専門試験では「均衡の計算」「弾力性の計算」「シフトの方向」がよく問われます。高校の公共で習う内容(kk-05)に式を乗せたものが本単元で、あとに続く余剰分析(ze-04)・独占(ze-05)・課税の帰着(zf-02)は、ここでの「傾き」「弾力性」の感覚をそのまま使います。計算は 1 次方程式だけなので、式の立て方と弾力性の定義を確実にするのが先です。
1. 均衡価格と均衡取引量
まずここだけ
需要曲線は「価格 P のとき、買い手が買いたい量 D」、供給曲線は「価格 P のとき、売り手が売りたい量 S」を表します。均衡はD = S になる価格です。
D = 90 − 2P、S = P − 30 のとき 90 − 2P = P − 30 → 3P = 120 → P = 40 数量は S = 40 − 30 = 10(D = 90 − 80 = 10 で一致。両方の式に入れて確かめる)
グラフで言うと、横軸に数量・縦軸に価格をとり、右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線の交点が均衡です。供給曲線の式が S = P − 30 のように定数が負のときは、価格が 30 より低いと供給がゼロ(縦軸の P = 30 から上に伸びる直線)という意味です。
ここまでできれば十分
均衡でない価格では「超過需要」か「超過供給」が生じ、価格が動きます。
- 価格が均衡より高い → S > D で超過供給(売れ残り)→ 価格は下がる
- 価格が均衡より低い → D > S で超過需要(品不足)→ 価格は上がる
上の例で P = 42 なら D = 6、S = 12 → 超過供給 6。P = 38 なら D = 14、S = 8 → 超過需要 6。
このように価格が自動的に均衡に向かうのが価格の自動調節機能(ワルラス的調整)です。
もう一歩(発展)
「価格が需給を調整する」がワルラス的調整、「数量が需要価格と供給価格の差で調整される」がマーシャル的調整です。通常の右下がり・右上がりの曲線ではどちらでも安定ですが、曲線の傾きが逆転している特殊な場合に安定・不安定の結論が食い違うことがあり、そこが問われることがあります。
2. 曲線上の移動とシフト
まずここだけ
- 価格が変わる → 同じ曲線の上を移動する(曲線は動かない)
- 価格以外が変わる → 曲線全体が右か左にシフトする
需要曲線をシフトさせるもの:所得、他の財の価格、好み・流行、人口、将来の予想。 供給曲線をシフトさせるもの:原材料費・賃金、技術、税・補助金、企業数、天候。
| 変化 | 動く曲線 | 均衡価格 | 均衡数量 |
|---|---|---|---|
| 所得が増える(正常財) | 需要が右へ | 上がる | 増える |
| 流行が去る | 需要が左へ | 下がる | 減る |
| 技術革新・原料値下がり | 供給が右へ | 下がる | 増える |
| 従量税・原料値上がり | 供給が左へ | 上がる | 減る |
ここまでできれば十分
2 つの曲線が同時にシフトすると、一方だけが確定し、もう一方はシフトの大きさによるという形になります。
- 需要右・供給左 → 価格は上がる(数量は不定)
- 需要右・供給右 → 数量は増える(価格は不定)
- 需要左・供給左 → 数量は減る(価格は不定)
- 需要左・供給右 → 価格は下がる(数量は不定)
「両方の力が同じ向きに押すもの」だけが決まる、と覚えると迷いません。
3. 需要の価格弾力性
まずここだけ
需要の価格弾力性 e は、「価格が 1% 変わったとき、需要量が何% 変わるか」です。
e = −(需要量の変化率)÷(価格の変化率)(絶対値で正にして扱う)
価格が 5% 上がって需要量が 25% 減った → e = 25 ÷ 5 = 5
- e > 1:弾力的(価格に敏感。ぜいたく品・代替財の多い財)
- e < 1:非弾力的(価格に鈍感。必需品・代替財のない財)
- e = 1:単位弾力的
- e = 0:完全非弾力的(需要曲線は垂直)、e = ∞:完全弾力的(水平)
ここまでできれば十分
需要曲線の式が与えられたときは点弾力性を使います。
e = −(ΔD/ΔP) × (P/D) (ΔD/ΔP は需要曲線の傾き)
D = 120 − 4P、P = 20 のとき:傾きは −4、D = 120 − 80 = 40 e = 4 × 20 ÷ 40 = 2
よくある間違いは「傾きの 4 が弾力性」と答えることです。弾力性は傾きに P/D を掛けたもので、同じ直線でも点によって値が違います。直線 D = a − bP では、価格が高い側(左上)ほど弾力性が大きく、中点で 1、価格ゼロに近づくと 0 に近づきます。
弾力性が大きくなる要因は、(1) 代替財が多い、(2) 家計の支出に占める割合が大きい、(3) 価格変化後に時間がたっている(長期)、の 3 つです。
もう一歩(発展)
弾力性と総収入:売り手の総収入 R = P × D は、
- 非弾力的(e < 1)な財は値上げで収入が増える(需要量の減りが小さいから)
- 弾力的(e > 1)な財は値上げで収入が減る
- e = 1 のとき収入は最大
D = 300 − 5P なら R = 300P − 5P²。頂点は P = 300 ÷ (2 × 5) = 30(需要曲線の中点)で、ここで e = 1。
「豊作貧乏」(豊作で供給が増えると、農産物は非弾力的なので価格が大きく下がり、農家の収入がかえって減る)はこの応用です。
4. 所得弾力性・交差弾力性・供給の弾力性
まずここだけ
| 弾力性 | 定義 | 分類 |
|---|---|---|
| 所得弾力性 | 需要量の変化率 ÷ 所得の変化率 | 正 → 正常財(上級財)、負 → 劣等財(下級財) |
| (正常財の中で) | 1 より大 → 奢侈品、0〜1 → 必需品 | |
| 交差弾力性 | X の需要量の変化率 ÷ Y の価格の変化率 | 正 → 代替財、負 → 補完財 |
| 供給の価格弾力性 | 供給量の変化率 ÷ 価格の変化率 | (ΔS/ΔP) × (P/S) |
所得が 500 万円から 750 万円(+50%)に増え、需要量が 40 から 80(+100%)に増えた → 所得弾力性 = 100 ÷ 50 = 2(正常財で奢侈品)
ここまでできれば十分
供給の弾力性は需要と同じ手順です。
S = 4P − 100、P = 30 のとき:傾き 4、S = 20 → e = 4 × 30 ÷ 20 = 6
供給曲線が原点を通る直線(S = dP)なら、どの点でも弾力性は 1 です。縦軸(価格軸)の正の側で交わる直線(S = dP − c、c > 0)なら 1 より大きく、横軸の正の側で交わる直線なら 1 より小さくなります。この性質は選択肢の正誤判定でよく使われます。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 需要曲線の傾きが弾力性 | 弾力性 = 傾き × P/D。直線上でも点ごとに違う |
| 「価格が上がったので需要曲線が左にシフト」 | 価格の変化は曲線上の移動。シフトは価格以外の要因 |
| 弾力的な財は値上げすると収入が増える | 逆。弾力的なら値上げで収入は減る |
| 所得弾力性が負なら必需品 | 負は劣等財。必需品は 0〜1 の正常財 |
| 供給の弾力性は直線ならどこでも同じ | 原点を通る直線のときだけ 1 で一定 |
6. 解き方の型
- 均衡は D = S を解く。出た P を両方の式に入れて数量が一致するか確かめる
- 「何が変わったか」を見て、価格なら曲線上の移動、それ以外ならどちらの曲線がどちらへ動くかを決める
- 弾力性は「変化率の比」か「傾き × P/Q」。式が与えられたら傾きを読み、P と Q を代入する
- 弾力性が 1 より大きいか小さいかで、値上げ時の総収入の増減を判断する
7. 小テストへ
→ 小テスト(ze-01)
関連する単元
- 前提:kk-05 市場経済のしくみ(高校公共)・zk-04 市場経済と企業(社会科学)
- 次に進む:ze-02 消費者理論・ze-03 生産者理論・ze-04 完全競争市場と余剰分析
- 同じ考え方を使う:ze-05 独占(弾力性とラーナーの独占度)・zf-02 租税の理論(課税の帰着)
参考資料
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(経済学)
- 各都道府県・政令指定都市の職員採用試験受験案内(専門試験の出題分野)
- 標準的なミクロ経済学の教科書(需要と供給・弾力性の章)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/keizai/ze-01/ / 更新 2026-09-14