地方上級 / 財政学 / zf-03

更新 2026-09-14

公債と財政赤字

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

公債は財政学の中で制度・指標・理論の 3 つがそろって問われる単元です。地方上級・国家一般職では、「建設国債と特例国債の根拠法」「日銀引受けの禁止と例外」「プライマリーバランスの定義」「ドーマーの条件の向き」「負担論の人物と結論」を入れかえた正誤問題が出題されやすい形です。理論の部分はマクロ経済学の IS-LM(za-03)や消費理論(za-06)、財政政策の効果(zf-05)と重なります。指標の計算は zf-01 で扱った予算の数字の続きです。


1. 公債の種類と法的な根拠

まずここだけ

財政法 4 条 1 項は「国の歳出は公債・借入金以外の歳入をもって財源としなければならない」と定めています(非募債主義)。ただし書きで、公共事業費・出資金・貸付金の財源に限って国会の議決を経た範囲で公債を発行できるとしており、これが建設国債です。

種類根拠使い道
建設国債(4 条国債)財政法 4 条ただし書き公共事業費・出資金・貸付金
特例国債(赤字国債)毎年度(または複数年度分)の特例法経常的な経費の不足分
借換債特別会計に関する法律満期を迎えた国債の償還財源
復興債東日本大震災復興財源確保法(2011 年)復興事業
財投債特別会計に関する法律財政投融資の原資(2001 年の財投改革から)

「建設国債は財政法に根拠があるが、特例国債は財政法にはなく特例法が必要」という区別が出発点です。

ここまでできれば十分

特例国債の歴史:戦後は 1965 年度の補正予算で初めて発行され、1975 年度から本格化しました。バブル期の税収増で 1990〜1993 年度は発行されませんでしたが、1994 年度以降は毎年度発行されています。

市中消化の原則(財政法 5 条):国債は日本銀行に引き受けさせてはならず、民間の金融機関などに売る(市中消化)のが原則です。日銀が引き受けると通貨の増発に歯止めがなくなり、インフレを招くおそれがあるためです。例外として、国会の議決を経た金額の範囲で日銀が引き受けることができ(実務では日銀が保有する国債の借換えに使われる)、また日銀が市場で流通している国債を買い入れること(買いオペレーション)は財政法 5 条の禁止には当たりません。

60 年償還ルール:建設国債で作った施設の平均的な耐用年数が約 60 年であることから、発行から 60 年で全額を償還し終えるように、借換えをくり返しながら毎年度残高の 1.6%(60 分の 1)を一般会計から国債整理基金特別会計に繰り入れます(定率繰入)。この 60 年ルールは特例国債にも同じように適用されています。

もう一歩(発展)


2. 財政赤字の指標

まずここだけ

指標定義
公債依存度公債金収入 ÷ 歳出総額(一般会計)
プライマリーバランス(PB・基礎的財政収支)(歳入 − 公債金収入)−(歳出 − 国債費)= 税収等 − 政策的経費
財政収支PB − 利払費(= 税収等 −(政策的経費 + 利払費))
債務残高対 GDP 比公債残高 ÷ 名目 GDP

PB が均衡しているとは、「その年の政策にかかる費用を、その年の税収などでまかなえている(借金に頼っているのは過去の借金の元利払いだけ)」という状態です。

例:歳出 110 兆円(うち国債費 26 兆円)、税収等 74 兆円、公債金 36 兆円。 PB = 74 −(110 − 26)= 74 − 84 = −10 兆円(赤字) 公債依存度 = 36 ÷ 110 ≒ 32.7%

ここまでできれば十分

PB が均衡していても債務は増えます。利払費の分だけ新しく借りることになるからです。債務残高そのものを増やさないには財政収支の均衡が必要です。ただし経済が成長していれば、債務残高が増えても対 GDP 比は下がることがあります。そこで日本の財政健全化目標は「PB の黒字化」と「債務残高対 GDP 比の安定的な引下げ」の 2 本立てになっています。

日本の現状(規模感。2026 年 9 月時点):普通国債の残高は 1,000 兆円を超え、対 GDP 比は 2 倍前後で、主要先進国の中でもっとも高い水準です。一般会計の公債依存度は年度によって大きく動きますが、近年はおおむね 3 割前後です(最新は財務省「日本の財政関係資料」で確認)。

もう一歩(発展)

ドーマーの条件:債務残高対 GDP 比を b、名目利子率を r、名目成長率を g、PB の黒字(対 GDP 比)を s とすると、1 年あたりの b の変化は

Δb = (r − g) × b − s

PB が均衡(s = 0)なら、g > r のとき b は下がり、r > g のとき b は上がり続けます。これがドーマーの条件です。

例:b = 200%、r = 1%、g = 3%、PB 均衡。Δb = (0.01 − 0.03) × 2.0 = −0.04 → 翌年は 196% 逆に r = 3%、g = 1% なら +4 ポイントで 204%

r > g のときに b を一定に保つには、s = (r − g) × b の PB 黒字が必要です。


3. 公債の負担は誰が負うのか(公債負担論)

まずここだけ

「公債は将来世代に負担を転嫁するのか」は、財政学の古典的な論点です。

論者結論理由
ラーナー内国債は将来世代の負担にならない(外国債はなる)内国債の償還は国民の間で資金が移るだけで、国全体の資源は減らない
ブキャナン将来世代の負担になる公債を買う人は自発的に買うので現在世代に負担はなく、償還のために課税される将来の納税者が負担する
モディリアーニ将来世代の負担になる公債発行で民間の貯蓄が吸い上げられ、資本蓄積が減るので、将来世代が受け取る資本ストックが小さくなる
ボーエン=デービス=コップ将来世代の負担になる世代が重なるモデルで、公債を買った世代は老後に売って消費でき、その償還のための税を負う若い世代に負担が移る

ラーナーは「新正統派」、ブキャナン以降は「負担は転嫁される」派と整理されます。ラーナーの結論は内国債に限った話で、外国債は将来の償還が国外への資源の流出になるので負担になる、という点まで押さえてください。

ここまでできれば十分

バローの中立命題(リカードの等価定理):政府支出の水準が同じなら、その財源が増税でも公債でも家計の消費は変わらないという主張です。公債は「将来の増税」と同じであり、合理的な家計はそれを見越して貯蓄を増やすため、公債発行による減税をしても消費は増えない(=財政政策の効果はない)ことになります。リカードが 19 世紀に問題提起し、バローが 1974 年に世代間の遺産動機を入れて理論化しました。

この命題が成り立たない場合(現実にはこちらが多いとされる):

クラウディングアウト:公債発行で政府が資金を吸収すると利子率が上がり、民間投資が押し出されること。IS-LM で見ると IS 曲線の右シフトに伴う利子率上昇です(za-03zf-05)。中央銀行が国債を買い支えれば利子率上昇は抑えられますが、通貨供給の増加を通じてインフレの原因になります。

もう一歩(発展)


4. よくある間違い

間違い正しくは
特例国債の根拠は財政法 4 条ただし書きただし書きは建設国債。特例国債は別に特例法が必要
日銀は国債を一切買えない禁じられているのは引受け(直接購入)。市場からの買いオペは可
PB = 歳入 − 歳出PB は公債金と国債費を除いて比べる。歳入 − 歳出は財政収支に近い
PB が均衡すれば債務は増えない利払費の分は増える。対 GDP 比は g > r なら下がる
ラーナーは公債は将来世代の負担と主張ラーナーは内国債は負担にならない。負担説はブキャナン・モディリアーニら
中立命題が成り立てば減税で消費が増える成り立てば消費は変わらない(貯蓄が増える)

5. 解き方の型

  1. 国債の種類は「根拠法(財政法 4 条か特例法か)」と「使い道」の 2 点で区別する
  2. PB の計算は「公債金を除いた歳入」と「国債費を除いた歳出」を先に書き出してから引く
  3. ドーマーの条件は「r と g の大小」を見て、r > g なら発散側、g > r なら収束側。数値は Δb = (r − g) b − s に入れる
  4. 負担論は「人物 → 結論(負担になる/ならない)→ 理由」の 3 点セットで照合し、ラーナーだけ「内国債は負担にならない」と覚える

6. 小テストへ

→ 小テスト(zf-03

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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