地方上級 / 社会政策 / zw-02
社会保障制度(年金・医療・介護・雇用保険の仕組みと数値)
この単元でできるようになること
- 社会保障の4 つの柱(社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生)と、ビスマルク型/ベバリッジ型、エスピン=アンデルセンの3 類型を、原理と国名つきで区別できる
- 公的年金の2 階建て構造(国民年金+厚生年金)を、加入者・保険料・国庫負担・給付開始年齢・繰上げ繰下げ・マクロ経済スライド・2025 年改正法の内容まで説明できる
- 医療保険の3 つの制度(被用者保険・国民健康保険・後期高齢者医療)と自己負担割合・高額療養費・診療報酬改定を、年齢と数字で言える
- 介護保険の保険者・被保険者・要介護認定の7 段階・利用者負担・財源を説明できる
- 雇用保険と労災保険の給付の種類と、基本手当の日数の「決まり方」を説明できる
- 社会保障給付費の総額・内訳・財源の直近値と、全世代型社会保障・子ども・子育て支援金の位置づけを言える
試験での位置づけ
社会政策のなかで、社会保障は制度の仕組みと数値の正誤を問う形が中心です。5 肢のうち、年齢(20 歳・40 歳・65 歳・75 歳)・割合(3 割・2 割・1 割・2 分の 1)・年(1961 年・2000 年・2008 年)・主体(市町村か都道府県か国か)を 1 つだけずらした肢が並びます。財政学の zf-04 が「財源の流れと財政方式」を扱うのに対し、この単元は制度そのものの仕組みを扱います。賦課方式と積立方式の比較や地方財政との関係は zf-04 へ、労働法としての雇用保険・労災の請求手続きは zr-04 へ、人口・貧困・福祉サービスは zw-03 へ送ります。数値は改正で毎年動くので、本文の値は 2026 年 9 月時点のもので、最新は厚生労働省・日本年金機構の資料で確認してください。
1. 社会保障の体系
まずここだけ
| 柱 | 原理 | 代表例 |
|---|---|---|
| 社会保険 | 保険料を払った人が事故(病気・老齢・失業など)のとき給付を受ける。強制加入 | 医療・年金・介護・雇用・労災の 5 つ |
| 公的扶助 | 資産・能力を使ってもなお困窮する人に税で最低生活を保障。資力調査(ミーンズテスト)あり | 生活保護 |
| 社会福祉 | 児童・障害者・高齢者などにサービスを提供 | 保育、障害福祉サービス |
| 公衆衛生 | 集団の健康を守る | 感染症対策・予防接種・保健所 |
「保険料を払ったから受け取れる」のが社会保険、「困っているから税で支える」のが公的扶助です。この 2 つの原理の違い(拠出制か無拠出制か)が、あらゆる問題の出発点になります。
ここまでできれば十分
2 つの源流
| 型 | 起源 | 特徴 | 代表国 |
|---|---|---|---|
| ビスマルク型(社会保険中心) | 1880 年代ドイツ。疾病保険法(1883 年)など | 職域ごとの保険料で運営。給付は拠出に応じる | ドイツ・フランス・日本 |
| ベバリッジ型(普遍主義) | イギリス「ベバリッジ報告」(1942 年) | 「ゆりかごから墓場まで」。均一拠出・均一給付、ナショナル・ミニマム、税財源の医療(NHS) | イギリス・北欧 |
ベバリッジ報告は「窮乏・疾病・無知・不潔・怠惰」の5 つの巨悪を挙げ、社会保険を中心に公的扶助で補う体系を示しました。
エスピン=アンデルセンの福祉レジーム 3 類型(『福祉資本主義の三つの世界』1990 年)。給付がどれだけ市場に頼らずに生活できるようにするか(脱商品化)と、階層による差(階層化)で分けます。
| 類型 | 脱商品化 | 特徴 | 代表国 |
|---|---|---|---|
| 自由主義 | 低い | 市場中心、資力調査つきの給付が主 | アメリカ・カナダ・オーストラリア |
| 保守主義(コーポラティズム) | 中 | 職域別の社会保険、家族の役割が大きい | ドイツ・フランス・イタリア |
| 社会民主主義 | 高い | 普遍的で手厚い給付、高負担 | スウェーデン・デンマーク |
日本は保守主義型と自由主義型の混合と評されることが多く、どれか 1 つに割り切る肢は誤りにされやすい点です。
出題の型:「ベバリッジ報告はドイツで…」「ビスマルクは均一拠出・均一給付を…」のように、国と原理を入れかえる肢が定番です。ビスマルク=ドイツ=職域保険、ベバリッジ=イギリス=均一・普遍、と 2 組で固定します。
もう一歩(発展)
- 日本の社会保障制度審議会 1950 年勧告が、社会保険・公的扶助(国家扶助)・社会福祉・公衆衛生の 4 本柱の枠組みを示した
- 「国民皆保険・皆年金」の達成は1961 年(国民健康保険法の全面施行と国民年金の保険料徴収開始)
- 社会保険 5 つの開始順:健康保険法 1922 年(施行 1927 年)→ 労働者年金保険法 1941 年(1944 年に厚生年金保険法へ)→ 失業保険法・労働者災害補償保険法 1947 年 → 雇用保険法 1974 年 → 介護保険法 1997 年(施行 2000 年)
2. 年金 ── 2 階建てと 2025 年改正
まずここだけ
| 階 | 制度 | 加入者 | 保険料 |
|---|---|---|---|
| 1 階 | 国民年金(基礎年金) | 20 歳以上 60 歳未満の全員 | 定額。月 17,920 円(2026 年度、日本年金機構) |
| 2 階 | 厚生年金 | 会社員・公務員(70 歳未満) | 報酬比例。18.3%を労使折半(2017 年 9 月から固定) |
加入者は 3 種類に分けます。第 1 号(自営業・学生・無職。自分で国民年金保険料を納める)、第 2 号(会社員・公務員。厚生年金保険料に基礎年金分が含まれる)、第 3 号(第 2 号に扶養される配偶者。本人は保険料を納めない)。
給付の基本:老齢基礎年金は原則 65 歳から。満額(40 年加入)は月 70,608 円(年額約 84.7 万円。2026 年度、日本年金機構。前年度から 1.9%の引上げ)。受給資格期間は10 年(2017 年 8 月から。それ以前は 25 年)。基礎年金給付費の 2 分の 1 は国庫負担(2009 年度から。それ以前は 3 分の 1)。
ここまでできれば十分
繰上げ・繰下げ:受給開始は60 歳から 75 歳の間で選べる(2022 年 4 月から上限が 70 歳 → 75 歳に)。繰上げは 1 か月につき0.4%減額(60 歳で最大 24%減)、繰下げは 1 か月につき0.7%増額(75 歳で最大 84%増)。
マクロ経済スライド(2004 年改正で導入):保険料の上限を固定したうえで、年金額の改定率を「賃金・物価の伸び」から「現役世代の減少率+平均余命の伸び分(調整率)」だけ差し引くしくみ。給付の水準を少しずつ抑えて財政を保つ。物価が下がる年には発動しない(名目下限)。財政検証は 5 年ごと(直近は 2024 年、次は 2029 年)。所得代替率(現役の手取り収入に対する年金額の割合)が50%を下回らないことを目安に給付を調整する。
2025 年年金制度改正法(2025 年 6 月 13 日成立。「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」)。試験では次の 5 点が問われやすい。
| 項目 | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
| 在職老齢年金の見直し | 賃金と厚生年金の合計がこの額を超えると年金が減る「支給停止の基準額」を月 50 万円 → 62 万円(2024 年度価格。2025 年度の実額は 51 万円)へ。賃金の伸びを反映した 2026 年度の実際の基準額は月 65 万円(日本年金機構) | 2026 年 4 月 |
| 被用者保険の適用拡大 | 短時間労働者の賃金要件(月 8.8 万円)を撤廃(公布から 3 年以内の政令で定める日)。企業規模要件(51 人以上)を 2027 年 10 月の 36 人以上から段階的に縮め(2029 年 10 月 21 人以上・2032 年 10 月 11 人以上)、2035 年 10 月に撤廃。5 人以上の個人事業所の非適用業種を解消(2029 年 10 月) | 段階施行 |
| 標準報酬月額の上限 | 65 万円 → 68 万・71 万・75 万円へ段階的に引上げ | 2027 年 9 月〜2029 年 9 月 |
| 遺族厚生年金 | 子のない配偶者への給付を男女とも原則 5 年の有期給付に(有期給付加算・収入要件の撤廃) | 2028 年 4 月 |
| 基礎年金の底上げ | 2029 年の財政検証で基礎年金の水準低下が見込まれるとき、厚生年金と基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間をそろえる法制上の措置をとる(内容は今後の検討) | 附則 |
出題の型:「国民年金は 20 歳以上 65 歳未満が加入」(正しくは 60 歳未満)、「厚生年金の保険料率は毎年引き上げられている」(2017 年 9 月から 18.3%で固定)、「基礎年金の国庫負担は 3 分の 1」(2 分の 1)、「繰下げは 70 歳まで」(75 歳まで)、「第 3 号被保険者は自分で保険料を納める」(納めない)のように、数字か主体を 1 つずらす形です。
もう一歩(発展)
- 賦課方式(現役の保険料で今の受給者を支える)を基本に積立金を併用。年金積立金は GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用。方式の比較と保険料率の計算は zf-04
- 国民年金保険料には免除・猶予(法定免除・申請免除・学生納付特例・産前産後免除)があり、免除期間は国庫負担分だけ年金額に反映される
- 私的年金:iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢と拠出限度額の引上げが 2026 年 12 月に予定(厚生労働省)
- 公務員の共済年金は2015 年 10 月に厚生年金へ一元化(被用者年金一元化)
3. 医療 ── 国民皆保険と自己負担
まずここだけ
| 制度 | 対象 | 保険者 |
|---|---|---|
| 被用者保険 | 会社員・公務員と家族 | 健康保険組合(大企業)、全国健康保険協会(協会けんぽ)(中小企業)、共済組合(公務員・私学) |
| 国民健康保険 | 自営業・農業・無職など | 都道府県と市町村(2018 年度から都道府県が財政運営の責任主体) |
| 後期高齢者医療制度 | 75 歳以上(65〜74 歳の一定の障害者を含む) | 都道府県ごとの後期高齢者医療広域連合。2008 年開始 |
国民皆保険は 1961 年。誰もがどれかの制度に入り、フリーアクセス(どの医療機関でも受診できる)と現物給付(治療というサービスを受け、窓口で自己負担分だけ払う)が特徴です。
ここまでできれば十分
窓口の自己負担割合(2026 年 9 月時点、厚生労働省)
| 年齢 | 負担 |
|---|---|
| 義務教育就学前 | 2 割 |
| 就学後〜69 歳 | 3 割 |
| 70〜74 歳 | 2 割(現役並み所得者は 3 割) |
| 75 歳以上 | 1 割(一定以上の所得は 2 割〔2022 年 10 月から〕、現役並み所得者は 3 割) |
高額療養費制度:1 か月の自己負担が所得区分ごとの限度額を超えた分が払い戻される。2025 年 8 月に予定されていた限度額の引上げは患者団体などの反対で一度見送られ、2026 年 8 月と 2027 年 8 月の 2 段階で引き上げる見直しに組み直された(厚生労働省)。2026 年 8 月からの例:70 歳未満・年収約 370〜770 万円の区分は「85,800 円+(医療費 − 286,000 円)× 1%」(それまでは 80,100 円+(医療費 − 267,000 円)× 1%)。あわせて長期の治療が続く人のための年間上限(同区分で 53 万円)を新設した(最新は厚生労働省で確認)。
診療報酬:医療行為ごとの公定価格(1 点 10 円)。2 年ごとに改定し、中央社会保険医療協議会(中医協)が具体的な点数を審議する。2026 年度改定は本体(医師らの技術料)が2026・2027 年度の 2 年度平均で +3.09%(施行は 2026 年 6 月)、薬価は ▲0.86%(2025 年 12 月 24 日の予算大臣折衝、厚生労働省)。介護報酬は 3 年ごと、両方が重なる年(2024 年度など)は「同時改定」と呼ぶ。
国民医療費(2023 年度、厚生労働省「国民医療費の概況」)
- 総額 48 兆 915 億円(前年度比 +3.0%、過去最高)。対 GDP 比 8.08%。人口 1 人あたり 38 万 6,700 円
- 65 歳以上が 60.1%を使う(1 人あたり 65 歳未満 21.8 万円、65 歳以上 79.7 万円)
- 財源は保険料 50.2%、公費 37.5%(国庫 24.8%・地方 12.7%)、患者負担 11.8%
後期高齢者医療の財源は公費 5 割・現役世代からの支援金 4 割・高齢者の保険料 1 割が基本で、「高齢者の医療を現役世代が支える」構造がわかる数字です。
出題の型:「75 歳以上は全員 1 割」(一定以上所得は 2 割・現役並みは 3 割)、「国民健康保険の保険者は国」(都道府県と市町村)、「後期高齢者医療制度は 65 歳以上」(75 歳以上)、「診療報酬は毎年改定」(2 年ごと)、「国民医療費の財源は公費が最大」(保険料が最大)。
もう一歩(発展)
- 混合診療の禁止:保険診療と自由診療を組み合わせると全額自己負担になるのが原則。例外は保険外併用療養費(評価療養・選定療養・患者申出療養)
- かかりつけ医機能の報告制度(2025 年 4 月施行)、マイナ保険証への一本化(従来の保険証の新規発行は 2024 年 12 月に終了)
- 医療費の 3 割負担は 2003 年 4 月から(それまで被用者本人は 2 割)
4. 介護 ── 2000 年開始・市町村が保険者
まずここだけ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法・開始 | 介護保険法(1997 年制定)。2000 年 4 月開始 |
| 保険者 | 市町村・特別区(都道府県ではない) |
| 被保険者 | 第 1 号:65 歳以上/第 2 号:40〜64 歳の医療保険加入者(保険料は 40 歳から) |
| 給付を受けられる人 | 第 1 号は原因を問わず要介護・要支援状態になったとき。第 2 号は加齢に伴う 16 の特定疾病(初老期の認知症・末期がんなど)が原因のときだけ |
| 要介護認定 | 要支援 1・2、要介護 1〜5 の 7 段階。市町村の介護認定審査会が判定 |
| 利用者負担 | 原則 1 割。一定以上の所得は 2 割(2015 年 8 月〜)、現役並み所得は 3 割(2018 年 8 月〜)。施設の食費・居住費は原則自己負担 |
| 財源 | 公費 5 割・保険料 5 割。公費は国 25%・都道府県 12.5%・市町村 12.5%(施設分は国 20%・都道府県 17.5%)。保険料は第 1 号 23%・第 2 号 27%(第 9 期) |
ここまでできれば十分
- 第 1 号保険料は市町村ごとに 3 年ごとに設定。第 9 期(2024〜2026 年度)の全国平均は月 6,225 円(第 8 期 6,014 円。厚生労働省)。原則として年金から天引き(特別徴収)
- サービスはケアマネジャー(介護支援専門員)がケアプランを作って利用する。在宅(訪問介護・通所介護など)、施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院)、地域密着型(小規模多機能など)に大別
- 地域包括ケアシステム:住まい・医療・介護・予防・生活支援を、中学校区程度の日常生活圏域で一体的に提供する体制。相談窓口が地域包括支援センター(市町村が設置)。要支援者の訪問介護・通所介護は 2015 年改正で市町村の介護予防・日常生活支援総合事業へ移行
- 介護報酬は3 年ごとに改定
出題の型:「介護保険の保険者は都道府県」(市町村)、「被保険者は 65 歳以上のみ」(40 歳から)、「要介護認定は 5 段階」(7 段階)、「利用者負担は一律 1 割」(所得により 2 割・3 割)、「財源は全額保険料」(公費と保険料が半々)、「第 2 号被保険者は原因を問わず給付」(特定疾病に限る)。
もう一歩(発展)
- 特別養護老人ホームの入所は原則要介護 3 以上(2015 年 4 月から)
- 介護保険の総費用は制度開始時の約 3.6 兆円から 10 兆円を超える規模まで増え、介護人材の確保(処遇改善加算・外国人材)が制度の課題。介護人材と認知症施策は zw-03
5. 雇用保険・労災保険
まずここだけ
| 保険 | 保険者 | 保険料 | 主な給付 |
|---|---|---|---|
| 雇用保険 | 国(政府管掌。窓口はハローワーク) | 労使で負担(失業等給付・育児休業給付は折半、雇用保険二事業は事業主のみ) | 失業等給付(基本手当など)、育児休業給付、教育訓練給付、雇用継続給付 |
| 労災保険 | 国(窓口は労働基準監督署) | 全額事業主負担。業種ごとに料率が違い、事故の多寡で増減(メリット制) | 療養・休業・障害・遺族・葬祭・傷病・介護の各給付。通勤災害も対象 |
労働者を 1 人でも雇う事業所は、原則としてどちらも強制適用。ただし雇用保険は週 20 時間以上・31 日以上の雇用見込みの労働者が対象で、労災はすべての労働者(パート・アルバイトを含む)が対象という違いがあります。公務員は雇用保険の対象外(別の制度)で、労災も公務災害補償の制度が別にあります。
ここまでできれば十分
基本手当(失業給付)の日数の考え方
- 受給には離職前 2 年間に被保険者期間 12 か月以上が必要(倒産・解雇などの特定受給資格者は 1 年間に 6 か月以上)
- 日数は「離職理由 × 被保険者期間 × 年齢」で決まる。自己都合など一般の離職者は90〜150 日(被保険者期間で 3 段階)、倒産・解雇などの特定受給資格者は90〜330 日(年齢と期間で細かく分かれる)、障害者などの就職困難者は 150〜360 日
- 日額は離職前 6 か月の賃金日額の50〜80%(60 歳以上 65 歳未満は 45〜80%)。低賃金ほど率が高い
- 手続き後 7 日間の待期があり、自己都合退職には給付制限がつく。2025 年 4 月から原則 1 か月(それまで 2 か月。5 年以内に 3 回以上の自己都合退職は 3 か月)。教育訓練を受ける場合は給付制限がかからない
- 適用範囲は 2028 年 10 月から週 10 時間以上へ拡大(2024 年改正、e-Gov で施行日を確認)
労災保険の休業(補償)給付:休業 4 日目から給付基礎日額の 60%(別に特別支給金 20%)。最初の 3 日間は業務災害なら使用者が労働基準法の休業補償(平均賃金の 60%)を払う。労災の認定(業務遂行性・業務起因性)は zr-04 で扱う。
出題の型:「労災保険料は労使折半」(全額事業主)、「雇用保険はパートは対象外」(週 20 時間以上なら対象)、「基本手当は離職理由にかかわらず一律 90 日」(理由・期間・年齢で 90〜330 日)、「給付制限は 3 か月」(原則 1 か月。2025 年 4 月改正)。
6. 社会保障給付費と財源・全世代型社会保障
まずここだけ
社会保障給付費(ILO 基準、2024 年度、国立社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」2026 年 7 月 29 日公表)
| 項目 | 金額 | 割合 |
|---|---|---|
| 年金 | 57 兆 8,528 億円 | 41.8% |
| 医療 | 44 兆 8,055 億円 | 32.4% |
| 福祉その他(介護・子育て・生活保護など) | 35 兆 6,436 億円 | 25.8% |
| 合計 | 138 兆 3,019 億円 | 対 GDP 比 21.53% |
2024 年度は前年度比 2.0%の増加(3 年ぶりの増加。2022・2023 年度は新型コロナ対策費の縮小で減少していた)。医療は 1.9%減った一方、年金(+2.6%)と福祉その他(+6.2%。介護・児童手当の拡充)が増えた。国民 1 人あたり 111 万 7,100 円。長期には高齢化で年金・医療・介護が増え続ける構造で、財政面の見方は zf-04 にあります。
財源(同統計、2024 年度):社会保険料 83 兆 426 億円(収入総額の 53.3%)、公費負担 58 兆 4,059 億円(37.5%。国庫負担と地方負担の合計)。つまり保険料が公費の 1.4 倍ほどで、保険料が最大の財源。公費のうち国の負担が国の一般会計の「社会保障関係費」(2026 年度予算で 39 兆円、財務省)になり、歳出の最大項目です。
ここまでできれば十分
全世代型社会保障:「高齢者中心」から「年齢ではなく負担能力に応じて全世代が支え合う」への転換。2023 年の全世代型社会保障法(医療保険各法の改正)で、出産育児一時金を 42 万円 → 50 万円(2023 年 4 月)へ引き上げ、その費用の一部を後期高齢者医療も負担するしくみとし、後期高齢者の保険料を段階的に引き上げました。
子ども・子育て支援金(2024 年の子ども・子育て支援法改正):児童手当の拡充・こども誰でも通園制度などの財源として、医療保険料と合わせて 2026 年 4 月分から徴収(こども家庭庁)。集める額は2026 年度 約 6,000 億円 → 2027 年度 約 8,000 億円 → 2028 年度 約 1 兆円。被用者保険では標準報酬月額の 0.23%(2026 年度、労使折半)が目安で、加入する制度と所得によって額が違います。「税ではなく医療保険のしくみで集める」点が問われます。少子化対策の内容は zw-03。
出題の型:「社会保障給付費で最も大きいのは医療」(年金)、「財源で最大は公費」(保険料)、「支援金は消費税で賄う」(医療保険料と合わせて徴収)、「出産育児一時金は 42 万円」(50 万円)。
もう一歩(発展)
- 社会保障と税の一体改革(2012 年)で消費税の増収分を社会保障 4 経費(年金・医療・介護・少子化対策)に充てる(zf-02)
- 国民負担率(租税+社会保障負担 ÷ 国民所得)は 45.7%(2026 年度見通し、財務省 2026 年 3 月。財政赤字を加えた潜在的国民負担率は 48.4%)
- OECD 基準の「社会支出」は施設整備費なども含み、2024 年度は 142 兆 8,073 億円(対 GDP 比 22.23%)。ILO 基準の給付費とは範囲が違う
7. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| ベバリッジ報告はドイツの社会保険の出発点 | ベバリッジ報告はイギリス(1942 年)。ドイツはビスマルクの社会保険(1880 年代) |
| エスピン=アンデルセンの類型で日本は社会民主主義型 | 保守主義型と自由主義型の混合と評される |
| 国民年金の加入は 20 歳以上 65 歳未満 | 20 歳以上 60 歳未満(受給開始が原則 65 歳) |
| 基礎年金の国庫負担は 3 分の 1 | 2 分の 1(2009 年度〜) |
| 厚生年金の保険料率は毎年上がる | 18.3%で固定(2017 年 9 月〜) |
| 繰下げ受給は 70 歳が上限 | 75 歳まで(2022 年 4 月〜)。繰上げは 60 歳から |
| 2025 年改正で在職老齢年金は廃止された | 廃止ではなく基準額の引上げ(62 万円。2026 年度の実額 65 万円) |
| 後期高齢者医療制度は 65 歳以上 | 75 歳以上(2008 年〜)。運営は広域連合 |
| 国民健康保険の保険者は国 | 都道府県と市町村 |
| 診療報酬は毎年改定 | 2 年ごと。介護報酬は 3 年ごと |
| 介護保険の保険者は都道府県 | 市町村・特別区 |
| 介護保険の被保険者は 65 歳以上だけ | 40 歳以上(第 2 号は 40〜64 歳) |
| 要介護認定は 5 段階 | 要支援 2 + 要介護 5 の 7 段階 |
| 労災保険料は労使折半 | 全額事業主負担。折半は健康保険・厚生年金・雇用保険の失業等給付 |
| 社会保障給付費は医療が最大 | 年金が最大(41.8%)、次いで医療 |
| 社会保障の財源は公費が最大 | 社会保険料が最大 |
8. 覚え方の型
- 体系は「5 保険・1 扶助・福祉・衛生」。保険は「払ったから受け取る」、扶助は「困ったから税で」
- 型は「ビ・ド・職域」「ベ・英・均一」。3 類型は「自由=米・保守=独仏・社民=北欧」+日本は混合
- 年金は「20-60 で払い、65 でもらい、60-75 で選ぶ」「国庫 2 分の 1・保険料率 18.3・繰上げ 0.4 減・繰下げ 0.7 増」
- 2025 年改正は「在職 62(実額 65)・適用拡大(8.8 万円要件撤廃・51 人要件を段階撤廃)・上限 75 万・遺族 5 年・底上げは 2029 年検証で」
- 医療は「1961 皆保険・2008 後期 75 歳・3 割 2 割 1 割・2 年改定・国民医療費 48 兆円 8%」
- 介護は「2000・市町村・40 歳・7 段階・1 割・半々」
- 雇用と労災は「雇用=労使、労災=事業主だけ」「基本手当は理由 × 期間 × 年齢、90〜330 日、待期 7 日、制限 1 か月」
- 給付費は「138 兆・年金 4 割・保険料が最大」、支援金は「2026 年 4 月・医療保険料と一緒・6 千 → 8 千 → 1 兆」
9. 小テストへ
→ 小テスト(zw-02)
関連する単元
- 前提:zk-07 労働と社会保障(社会科学)、kk-08 労働と社会保障(高校公共)
- 次に進む:zw-03 人口・少子高齢化・貧困と福祉政策(生活保護・少子化対策・障害者福祉)、zw-01 労働問題と雇用政策
- 同じ考え方を使う:zf-04 社会保障と地方財政(財政方式・保険料率の計算・国民負担率)、zr-04 労働法(労災の認定・雇用保険の手続き)、zq-06 地方自治と中央地方関係(市町村が保険者となる意味)
参考資料
- 厚生労働省「令和 5(2023)年度 国民医療費の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/23/index.html (結果の概要 PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/23/dl/R05kekka.pdf )
- 国立社会保障・人口問題研究所「令和 6(2024)年度 社会保障費用統計」(2026 年 7 月 29 日) https://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-R06/fsss_R06.html (報道発表 https://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-R06/R06-houdou.pdf ・概要 https://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-R06/R06-houdougaiyou.pdf )
- 日本年金機構「令和 8 年 4 月分からの年金額等について」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html /「国民年金保険料」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html /「制度が改正されました」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0213.html /「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html (法律の概要 PDF https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001592624.pdf )/「令和 7 年度年金制度改正法が 6 月 20 日に公布されました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/09.html /「2025(令和 7)年の制度改正」(私的年金) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html /「遺族厚生年金の見直しについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html
- 厚生労働省「第 9 期介護保険事業計画期間における介護保険の第 1 号保険料及びサービス見込み量等について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40211.html
- 厚生労働省「制度の概要(令和 8 年 8 月〜)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001729632.pdf /「令和 8 年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html (改定率 PDF https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001620952.pdf )
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」 https://www.cfa.go.jp/policies/kodomokosodateshienkinseido
- 財務省「令和 8 年度予算のポイント」 https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2026/seifuan2026/01.pdf /「令和 8 年度の国民負担率を公表します」 https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/20260305.html
- 国民年金法・厚生年金保険法・健康保険法・国民健康保険法・高齢者の医療の確保に関する法律・介護保険法・雇用保険法・労働者災害補償保険法(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/ )
- 標準的な社会政策・社会保障論の教科書(社会保障の体系・福祉レジーム論の章)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/seiji/zw-02/ / 更新 2026-09-20