地方上級 / 社会政策 / zw-01
労働問題と雇用政策(失業・非正規・賃金・働き方改革・労働統計)
この単元でできるようになること
- 労働力人口・就業者・完全失業者・完全失業率・の定義を、どの統計(労働力調査・職業安定業務統計)から出るかと合わせて説明し、数値例で計算できる
- 2025 年の日本の労働市場の姿( 2.5%・有効求人倍率 1.22 倍・非正規の割合 36.5%・春闘の賃上げ率 5.52%・最低賃金の全国加重平均 1,121 円)を、年と出典つきで言える
- 失業の 3 類型(摩擦的・構造的・需要不足)を事例で見分け、それぞれに対応する政策を結びつけられる
- 働き方改革関連法(時間外労働の上限・同一労働同一賃金・高度プロフェッショナル制度)と、雇用保険・職業訓練・高年齢者雇用・障害者雇用・外国人労働者・女性活躍推進の各制度の要点を、数字(70 歳・2.7%・2027 年)とともに説明できる
- 労働時間の国際比較、ジョブ型とメンバーシップ型、労働争議の長期的な推移を説明できる
試験での位置づけ
社会政策は地方上級の専門試験で出題される科目で、「制度の数字」と「直近の統計」の両方が問われます。肢の作り方は、数字を 1 つずらす(法定雇用率 2.7% を 2.5% に、努力義務の 70 歳を 65 歳に)、義務と努力義務を入れかえる、統計の出どころを入れかえる(完全失業率を厚生労働省の統計とする)、増減の方向を逆にする(非正規の割合が上昇し続けている、とする)の 4 つが定番です。労働法の条文(労働基準法の数字・労働三権)は zr-01〜zr-04、社会保障の制度は zw-02、社会科学としての概説は zk-07 で扱っています。本文の統計値は 2026 年 9 月時点で公表されている最新(多くは 2025 年平均・2025 年度)で、試験の直前には各省の最新の発表で更新してください。
1. 労働統計の定義と直近の値
まずここだけ
労働市場の状態を測る指標は、だれが・どの統計で・何を数えているかで区別します。
| 指標 | 定義 | 出どころ |
|---|---|---|
| 労働力人口 | 15 歳以上の人口のうち、就業者 + 完全失業者 | 総務省統計局「労働力調査」(毎月・標本調査) |
| 就業者 | 調査週に収入を伴う仕事を 1 時間以上した人(休業者を含む) | 同上 |
| 完全失業者 | 仕事がなく、仕事を探していて、仕事があればすぐ就ける人(3 条件) | 同上 |
| 非労働力人口 | 15 歳以上で、就業者でも完全失業者でもない人(学生・専業主婦(夫)・高齢者など) | 同上 |
| 完全失業率 | 完全失業者 ÷ 労働力人口 × 100 | 同上 |
| 有効求人倍率 | ハローワークの有効求人数 ÷ 有効求職者数 | 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(毎月) |
就業者 6,828 万人・完全失業者 176 万人なら、労働力人口は 7,004 万人、完全失業率は 176 ÷ 7,004 × 100 ≒ 2.5%(2025 年平均の実際の値です)
「仕事を探していない人」は労働力人口に入りません。だから、景気が悪くて求職をあきらめる人(就業意欲喪失者)が増えると、失業者が非労働力人口に移って失業率が下がって見えることがあります。有効求人倍率はハローワークを通した求人・求職だけを数えるので、求人サイトや縁故での採用は含みません。
ここまでできれば十分
2025 年平均の主な数値(総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025 年平均結果」、2026 年 1 月公表)
| 項目 | 2025 年平均 | 前年との比較 |
|---|---|---|
| 労働力人口 | 7,004 万人 | 47 万人増(3 年連続の増加) |
| 就業者数 | 6,828 万人 | 47 万人増(5 年連続の増加) |
| 就業率(15 歳以上人口に占める就業者の割合) | 62.2% | 0.5 ポイント上昇 |
| 雇用者数 | 6,185 万人 | 62 万人増 |
| 完全失業者数 | 176 万人 | 前年と同数 |
| 完全失業率 | 2.5% | 前年と同率(男性 2.7%・女性 2.3%) |
| 非労働力人口 | 3,962 万人 | 69 万人減(5 年連続の減少) |
就業者が増え、非労働力人口が減っているのは、女性と高齢者の就業が進んでいるためです。産業別では「医療,福祉」(947 万人)が最も増え、「卸売業,小売業」「製造業」が減りました。完全失業率の過去最高は2002 年の 5.4%で、2025 年の 2.5% はその半分以下です。
有効求人倍率は、2025 年平均で 1.22 倍(前年 1.25 倍から 0.03 ポイント低下・厚生労働省「一般職業紹介状況(令和 7 年 12 月分及び令和 7 年分)」)、2025 年度平均では 1.20 倍でした。1 倍を超えているので求人のほうが多い状態ですが、2 年続けて低下しています。正社員に限った有効求人倍率は 1 倍前後(2025 年 12 月・季節調整値で 0.99 倍)で、パートを含む全体より低くなっています。
もう一歩(発展)
失業率と求人倍率は景気と逆・順に動きますが、ずれもあります。「求人はあるのに失業者もいる」状態は、求人と求職の条件(職種・地域・技能)が合わないミスマッチを示します。横軸に失業率、縦軸に欠員率をとって両者の関係を見る UV 分析(ベバリッジ曲線)では、曲線が右上に移ればミスマッチの拡大、曲線上を右下に動けば需要不足による失業の増加と読みます。
2. 失業の類型と非正規雇用
まずここだけ
失業は原因で 3 つに分け、それぞれ対策が違います。
| 類型 | 原因 | 例 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 摩擦的失業 | 転職・新卒の求職など、仕事を探す過程で一時的に生じる | 会社を辞めて次の職を探している間 | 職業紹介の充実(ハローワーク・求人情報の整備) |
| 構造的失業 | 産業構造や技術の変化で、労働者の技能・地域と求人が合わない | 炭鉱の閉山、工場の海外移転、AI 化で仕事が消える | 職業訓練・技能の転換・地域間移動の支援 |
| 需要不足失業(循環的失業) | 景気の後退で労働需要そのものが足りない | 不況期の解雇・採用抑制 | 財政・金融政策による需要の下支え、雇用調整助成金 |
摩擦的失業と構造的失業は景気がよくても残るため、両者を合わせた失業率を「均衡失業率」(自然失業率)と呼ぶことがあります。
ここまでできれば十分
非正規雇用(パート・アルバイト・契約社員・嘱託・派遣社員など。勤め先での呼び方で分類)は、1990 年代以降に増えました。労働力調査(2025 年平均)では、役員を除く雇用者のうち正規の職員・従業員 3,708 万人(11 年連続の増加)、非正規の職員・従業員 2,128 万人で、非正規の割合は 36.5%(前年から 0.3 ポイント低下)です。男女別では男性 22.3%、女性 52.0% と、女性の半数以上が非正規です。
非正規の割合は 2019 年に 38% 台まで上がったあと、正社員の増加が続いたことで、2025 年は 36.5% まで下がっています。「非正規の割合は一貫して上昇し続けている」という肢は、直近の動きを逆にした誤りです。非正規で働く理由として最も多いのは、男女とも「自分の都合のよい時間に働きたいから」で、「正規の職員・従業員の仕事がないから」(不本意非正規)は減る傾向にあります(労働力調査(詳細集計))。
非正規の課題は、賃金が低いこと、雇用が不安定なこと、教育訓練の機会が少ないこと、社会保険の適用が限られることです。対策として、同一労働同一賃金(3 節)、有期契約が通算 5 年を超えたときの無期転換ルール(労働契約法 18 条)、パート・有期労働者への厚生年金・健康保険の適用拡大(従業員 51 人以上の企業で週 20 時間以上などの要件・2024 年 10 月〜)が進められています。
もう一歩(発展)
日本の雇用の型は、職務を先に決めて人を当てはめるジョブ型(欧米に多い。職務記述書・職務給)と、人を先に採って仕事を割り当てるメンバーシップ型(日本の正社員に多い。新卒一括採用・配置転換・年功賃金)で対比されます。メンバーシップ型では正社員の雇用は守られやすい半面、長時間労働や転勤を受け入れることが前提になり、その外側に非正規が置かれてきた、と説明されます。近年、大企業を中心に管理職や専門職への「ジョブ型」導入が進んでいます。
3. 賃金と働き方改革
まずここだけ
賃金の動きは 3 つの統計で追います。
| 項目 | 直近の値 | 出どころ |
|---|---|---|
| 春闘(民間主要企業の賃上げ) | 2025 年:妥結額 18,629 円・賃上げ率 5.52%(前年 5.33%)。2026 年:18,167 円・5.18% | 厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」(資本金 10 億円以上・従業員 1,000 人以上・労働組合のある企業が対象) |
| 名目賃金と実質賃金 | 2025 年:現金給与総額 355,941 円(名目 +2.3%)、消費者物価(持家の帰属家賃を除く総合)が 3.7% 上がったため実質賃金は −1.3%(4 年連続の減少) | 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025 年分結果確報」 |
| 最低賃金(地域別・時間額) | 2025 年度:全国加重平均 1,121 円(前年度から 66 円・6.3% の引上げ)。最高は東京 1,226 円、最低は高知・宮崎・沖縄の 1,023 円で、全都道府県が 1,000 円を超えた | 厚生労働省「令和 7 年度 地域別最低賃金 全国一覧」 |
実質賃金 = 名目賃金の伸び − 物価の伸び、と覚えます。春闘で 5% 台の賃上げが 3 年続いても、物価がそれ以上に上がった分は実質賃金の減少として表れました。試験では「2025 年の実質賃金は前年比で増加した」のように符号を逆にした肢に注意します。
最低賃金は、中央最低賃金審議会が示す目安をもとに各都道府県の地方最低賃金審議会が答申し、都道府県労働局長が決定します。改定は毎年で、2025 年度は 10 月〜翌 3 月にかけて順次発効しました(発効日は都道府県ごとに違う)。最低賃金には、都道府県ごとの地域別最低賃金と、特定の産業に適用される特定最低賃金があり、両方が適用される場合は高いほうが優先します。
ここまでできれば十分
働き方改革関連法(2018 年成立・2019 年 4 月から順次施行)の 3 本柱を、数字とともに押さえます。
| 柱 | 中身 | 施行 |
|---|---|---|
| 時間外労働の上限規制 | 原則月 45 時間・年 360 時間。臨時的な特別の事情がある場合(特別条項)でも年 720 時間・複数月平均 80 時間・単月 100 時間未満。罰則つき | 大企業 2019 年 4 月、中小企業 2020 年 4 月。建設業・自動車運転業務・医師は猶予を経て2024 年 4 月から適用(いわゆる「2024 年問題」) |
| 年次有給休暇の確実な取得 | 年 10 日以上付与される労働者に、年 5 日は使用者が時季を指定して取得させる義務 | 2019 年 4 月 |
| 同一労働同一賃金 | 正社員とパート・有期・派遣労働者の間の不合理な待遇差の禁止(パートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法)。待遇差の内容と理由の説明義務 | 大企業 2020 年 4 月、中小企業 2021 年 4 月 |
| 高度プロフェッショナル制度 | 年収 1,075 万円以上の高度な専門職(金融商品の開発、研究開発など)について、本人の同意と労使委員会の決議を条件に、労働時間・休日・深夜の割増賃金の規定を適用しない。年 104 日以上の休日確保などの健康確保措置が条件 | 2019 年 4 月 |
| その他 | 勤務間インターバル制度の導入(努力義務)、月 60 時間を超える時間外労働の割増率 50% を中小企業にも適用(2023 年 4 月)、産業医の機能強化 | ── |
試験の型:「高度プロフェッショナル制度は本人の同意なしに労使協定だけで適用できる」「時間外労働の上限は努力義務で罰則はない」は、要件を欠いたり義務の強さを弱めたりした誤りです。
もう一歩(発展)
労働時間の国際比較:OECD のデータ(労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較 2026」)によると、就業者 1 人あたりの平均年間総実労働時間(2024 年)は、日本 1,617 時間、アメリカ 1,796 時間、イギリス 1,512 時間、フランス 1,491 時間、ドイツ 1,331 時間、イタリア 1,709 時間です。日本は 1988 年の 2,092 時間から大きく減りましたが、その一因はパートタイム労働者の増加による平均の低下で、フルタイムの正社員に限ると長時間労働は残っています。なお、このデータは各国の統計の作り方が違うため、国どうしの厳密な比較には向かないと注記されています。
ワーク・ライフ・バランス:2007 年の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」以降、長時間労働の是正・年休取得・テレワーク・育児や介護との両立支援が進められています。労働時間ではなく成果で評価する裁量労働制(専門業務型・企画業務型)やフレックスタイム制は、労働基準法上の制度として zr-02 で扱います。
4. 雇用政策の制度
まずここだけ
雇用政策は「失業したとき」「働き続けるため」「働きにくい人を支える」の 3 つに分けると整理しやすくなります。
失業したときの支え
| 制度 | 中身 |
|---|---|
| 雇用保険(厚生労働省・保険料は労使が負担) | 失業した人への基本手当(離職前 2 年間に被保険者期間 12 か月以上が原則。倒産・解雇なら 1 年間に 6 か月以上)、教育訓練給付、育児休業給付・介護休業給付など。自己都合退職の給付制限期間は 2025 年 4 月から原則 1 か月に短縮(5 年間に 3 回以上の自己都合退職は 3 か月)。雇用保険の中身は zw-02 でも扱う |
| ハローワーク(公共職業安定所) | 国(厚生労働省)が全国に設置する無料の職業紹介・雇用保険・雇用対策の窓口。職業安定法にもとづく |
| 公共職業訓練(ハロートレーニング) | 離職者・在職者・学卒者向けの職業訓練。雇用保険を受けられない人には、無料の訓練と月 10 万円の給付金を組み合わせた求職者支援制度(2011 年〜) |
| 雇用調整助成金 | 景気の悪化などで事業を縮小した事業主が、労働者を解雇せずに休業・教育訓練・出向で雇用を維持した場合に休業手当などの一部を助成する。新型コロナ期に特例で大幅に拡充された |
ここまでできれば十分
働き続けるため・働きにくい人を支える制度は、数字と年をセットで問われます。
| 制度 | 要点 |
|---|---|
| 高年齢者雇用安定法 | 60 歳未満の定年は禁止。65 歳までの雇用確保措置(定年の引上げ・継続雇用制度・定年の廃止のいずれか)が義務。継続雇用の対象者を労使協定で限定できた経過措置は 2025 年 3 月末で終了し、希望者全員が対象。70 歳までの就業機会の確保(上の 3 つに加え、業務委託契約や社会貢献事業への従事も可)は 2021 年 4 月から努力義務 |
| 障害者雇用促進法 | 事業主に法定雇用率以上の障害者の雇用を義務づける。民間企業は 2024 年 4 月から 2.5%、2026 年 7 月から 2.7%(国・地方公共団体は 3.0%、教育委員会 2.9% に同時期に引上げ)。従業員 100 人超の企業で未達成なら不足 1 人あたり月 5 万円の納付金、達成企業には調整金。2016 年から雇用の場での差別禁止と合理的配慮の提供義務。2025 年 6 月 1 日時点の民間企業の雇用障害者数は 70 万 4,610 人(22 年連続で過去最高)、実雇用率 2.41%、法定雇用率達成企業の割合 46.0%(厚生労働省「令和 7 年 障害者雇用状況の集計結果」) |
| 外国人労働者 | 2025 年 10 月末の外国人労働者数は 257 万 1,037 人(前年比 11.7% 増・届出が義務化された 2007 年以降で最多)。国籍別ではベトナムが最多(60 万 5,906 人)、次いで中国・フィリピン。在留資格別では「専門的・技術的分野」(86 万 5,588 人)が最多で、「技能実習」は 49 万 9,394 人(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和 7 年 10 月末時点)」) |
| 育成就労制度 | 技能実習制度(1993 年〜。「国際貢献」が建前だったが実態は労働力確保と批判された)に代えて、人材育成と人材確保を目的に新設。原則 3 年で特定技能 1 号の水準まで育成し、一定の要件のもとで本人の意向による転籍を認める。2027 年 4 月 1 日施行(出入国在留管理庁)。2019 年に始まった特定技能(1 号は通算 5 年まで、2 号は家族帯同可・更新に上限なし)とつながる |
| 女性活躍推進法 | 2015 年制定の 10 年間の時限立法。常時雇用 101 人以上の事業主に、女性の採用・管理職比率などの状況把握と行動計画の策定・公表を義務づけ(2022 年 4 月に 301 人以上から拡大)。301 人以上には男女の賃金の差異の公表義務(2022 年 7 月〜)。2025 年の改正で法律の期限が 10 年延長され、賃金差異と女性管理職比率の公表義務が 101 人以上の事業主にも広げられる(施行日と詳細は厚生労働省の最新資料で確認) |
| 育児・介護休業法 | 育児休業は原則子が 1 歳まで(保育所に入れない等の場合 2 歳まで)。2022 年から産後パパ育休(出生時育児休業)。2025 年 4 月・10 月の段階施行で、子の看護休暇の対象拡大、残業免除の対象を小学校就学前までに拡大、3 歳〜小学校就学前の子をもつ労働者への柔軟な働き方(テレワーク等)の措置義務など |
試験の型:「70 歳までの就業確保は義務である」(正しくは努力義務)、「法定雇用率は 2.5% である」(2026 年 7 月からは 2.7%)、「育成就労制度は技能実習制度と並行して存続する」(技能実習は廃止され育成就労に移行)のように、義務の強さ・数字・新旧の関係を入れかえた肢が置かれます。
もう一歩(発展)
労働争議の推移:労働争議の件数は 1970 年代前半をピークに長期的に減り続け、2019 年以降はほぼ横ばいです。厚生労働省「労働争議統計調査」によると、2025 年の総争議は 295 件(前年比 17 件増)、総参加人員 10 万 532 人、ストライキなどの争議行為を伴う争議は 77 件でした。労働組合の推定組織率(雇用者に占める組合員の割合)も長期的に低下し、2 割を下回る水準が続いています(最新の値は厚生労働省「労働組合基礎調査」で確認)。日本の労働組合は企業別組合が中心で、産業別・職業別が中心の欧米と対比されます。
労働政策の決め方:厚生労働省の労働政策審議会は、公益・労働者・使用者の三者の代表で構成され(三者構成の原則。ILO の原則にもとづく)、労働に関する法改正の前に意見を聞くことになっている仕組みです。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 完全失業率は厚生労働省の統計 | 総務省統計局「労働力調査」。厚生労働省は有効求人倍率(一般職業紹介状況) |
| 完全失業率の分母は 15 歳以上人口 | 分母は労働力人口(就業者+完全失業者)。求職していない人は入らない |
| 有効求人倍率は求人サイトも含む全求人の指標 | ハローワークの求人・求職だけを数える |
| 2025 年の完全失業率は前年より上昇した | 2.5% で前年と同率。有効求人倍率は 1.22 倍で低下 |
| 非正規の割合は上昇し続けて 4 割を超えた | 2019 年の 38% 台をピークに下がり、2025 年は 36.5% |
| 2025 年は春闘で 5% 台の賃上げだったので実質賃金も増えた | 物価上昇(3.7%)が上回り、実質賃金は −1.3%(4 年連続減) |
| 最低賃金は全国一律の金額 | 都道府県ごと(地域別最低賃金)。全国加重平均が 1,121 円(2025 年度) |
| 時間外労働の上限は努力義務で罰則がない | 罰則つきの法律上の上限(原則月 45 時間・年 360 時間) |
| 同一労働同一賃金は正社員と非正規の待遇を完全に同じにする | 不合理な待遇差の禁止。職務や責任が違えば差は認められる |
| 70 歳までの就業確保は義務 | 努力義務(2021 年 4 月〜)。義務は 65 歳までの雇用確保 |
| 障害者の法定雇用率は民間 2.5% | 2026 年 7 月から 2.7%(2.5% は 2024 年 4 月〜2026 年 6 月) |
| 育成就労制度は 2025 年から施行された | 2027 年 4 月 1 日施行。技能実習制度に代わる |
| 雇用調整助成金は失業者に支給される | 雇用を維持した事業主への助成(休業手当などの一部) |
| 日本の年間労働時間はドイツより短い | 日本 1,617 時間、ドイツ 1,331 時間(2024 年)。日本のほうが長い |
6. 解き方の型
- 統計の肢は「だれが(総務省/厚労省)・何を分母に・いくつ(年つき)」の 3 点で確かめる。完全失業率=総務省・労働力人口・2.5%(2025 年)、有効求人倍率=厚労省・有効求職者・1.22 倍(2025 年)
- 失業率の計算は「完全失業者 ÷(就業者 + 完全失業者)」。非を分母に入れない
- 失業の類型は「探している途中(摩擦的)/技能・地域が合わない(構造的)/景気が悪い(需要不足)」で見分け、対策(職業紹介/職業訓練/需要対策)を対応させる
- 制度の肢は「義務か努力義務か・数字はいくつか・いつからか」を順に確かめる。65 歳義務/70 歳努力義務、2.7%(2026 年 7 月〜)、上限 45・360、高プロ 1,075 万円、育成就労 2027 年 4 月
- 賃金の肢は「名目 − 物価 = 実質」の符号を確かめる。5% 台の賃上げとのマイナスは両立する
- 増減の方向は「直近の動き」で判断する。非正規の割合は低下、外国人労働者と障害者雇用は過去最多を更新、有効求人倍率は低下
7. 小テストへ
→ 小テスト(zw-01)
関連する単元
- 前提:zk-07 労働と社会保障、zr-01 労働基準法①(労働契約・就業規則・賃金)
- 次に進む:zw-02 社会保障制度(年金・医療・介護・雇用保険の仕組みと数値)、zw-03 人口・少子高齢化・貧困と福祉政策(人口統計・子育て支援・生活保護・障害者福祉)
- 同じ考え方を使う:zr-02 労働基準法②(労働時間・休日・年次有給休暇・解雇)、zr-03 労働組合法(労働三権・不当労働行為・団体交渉・労働協約・争議行為)、za-05 AD-AS 分析・インフレとフィリップス曲線、zx-02 日本経済と世界経済の現状(GDP・物価・雇用・金融政策・貿易・白書の数値)、zy-05 現代社会論と社会調査(大衆社会・情報社会・リスク社会・ジェンダー・社会調査の方法)
参考資料
- 総務省統計局「労働力調査(基本集計)2025 年(令和 7 年)平均結果」 https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/index.html (結果の要約 PDF: https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/youyaku.pdf )
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和 7 年 12 月分及び令和 7 年分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69302.html /「一般職業紹介状況(令和 8 年 3 月分及び令和 7 年度分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72811.html
- 厚生労働省「令和 7 年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59573.html /「令和 8 年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74889.html
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和 7)年分結果確報」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/25cr/dl/pdf25cr.pdf
- 厚生労働省「令和 7 年度 地域別 全国一覧」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html (一覧 PDF: https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001571192.pdf )
- 厚生労働省「令和 7 年 障害者雇用状況の集計結果」 https://www.mhlw.go.jp/content/001614830.pdf
- 厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和 7 年 10 月末時点)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68794.html
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」 https://www.moj.go.jp/isa/03_00163.html
- 厚生労働省「令和 7(2025)年労働争議統計調査の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/14-r07.html
- 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較 2026」第 6 章(労働時間) https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2026/documents/d2026_ch6.pdf
- 労働基準法・雇用保険法・高年齢者等の雇用の安定等に関する法律・障害者の雇用の促進等に関する法律・女性の職業生活における活躍の推進に関する法律・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/ )
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(社会政策)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/seiji/zw-01/ / 更新 2026-09-19