地方上級 / 社会学 / zy-04

更新 2026-09-19

社会階層・逸脱・都市(階級と階層・社会移動・アノミー・ラベリング・シカゴ学派)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

社会学は地方上級・国家一般職の専門試験の選択科目で、この単元は「階層」「逸脱」「都市」の 3 テーマをまとめたものです。出題の中心は人名と学説の対応で、「デュルケムのアノミーの説明をマートンのものとして書く」「同心円地帯理論をホイトの名前で書く」のように、似た学説の人物を入れかえた肢が定番の誤答になります。逸脱論では「逸脱の原因を社会の側に求めるか(アノミー・緊張)、周囲の反応に求めるか(ラベリング)、抑止の弱さに求めるか(社会的絆)」という説明の違いで肢を切ります。理論の土台は zy-01(社会学の成立)と zy-02(現代の社会学理論)、集団論は zy-03、大衆社会や社会調査は zy-05 で扱います。


1. 階級と階層

まずここだけ

階級階層は日常では似た言葉ですが、社会学では区別します。

階級(class)階層(stratification)
発想生産手段をもつかどうかで社会が対立する集団に分かれる収入・職業・学歴などの連続的な序列で人々を並べる
代表マルクス機能主義・アメリカの実証研究
境界はっきりした断絶(資本家 vs 労働者)段階的で、あいまい

マルクスは、生産手段(工場・土地・資本)を所有する資本家階級(ブルジョワジー)と、労働力を売るしかない労働者階級(プロレタリアート)の二大階級が対立するとみました。同じ境遇にあるだけの「即自的階級」が、対立を自覚して団結すると「対自的階級」になる、という区別も問われます。

ウェーバーは、社会の序列は経済だけでは決まらないと考え、3 つの次元を分けました。

次元何で決まるか
階級市場での経済的な機会(財産・技能)資産家、専門職
身分社会的名誉・生活様式名家、聖職者
党派(政党)権力への近さ政党、圧力団体

「マルクスは一元的(経済)、ウェーバーは多元的」と対比して覚えます。

ここまでできれば十分

階層研究は、職業威信・収入・学歴・財産などの指標で人々を段階的に並べる方法をとります。日本では 1955 年から 10 年ごとにSSM 調査(社会階層と社会移動全国調査)が行われ、階層の実態と移動のようすを追っています。

地位の非一貫性(レンスキー)は、たとえば「学歴は高いが収入は低い」「収入は高いが職業威信は低い」のように、複数の指標での位置がそろっていない状態をいいます。富永健一らは 1975 年の SSM 調査をもとに、日本では高度成長を経て地位の非一貫性が広がり、多くの人が自分を「中」と答える「一億総中流」意識につながったと論じました。

試験の型:「ウェーバーは階級を生産手段の所有によってのみ規定した」という肢は、マルクスの説明をウェーバーに当てた誤りです。「階級・身分・党派」の 3 つが出てきたらウェーバーです。

もう一歩(発展)

機能主義的階層論デービスとムーアは、社会にとって重要で、かつ訓練に時間のかかる地位ほど、優秀な人を引きつけるために高い報酬が必要になるとして、階層(不平等)は社会にとって機能的に必要だと論じました(「階層の機能的必然性」)。これに対しチューミンは、不平等は才能ある人の機会をむしろ奪い、報酬は「重要さ」より権力で決まると批判しました。

格差の再生産ブルデューは、経済資本だけでなく、教養・趣味・ふるまい・学歴といった文化資本(身体化された・客体化された・制度化されたの 3 形態)が家庭を通じて子に受け継がれ、学校がそれを「本人の能力」として評価することで格差が再生産される(文化的再生産)と論じました。身についた行動や好みの傾向をハビトゥスと呼びます。ライトはネオマルクス主義の立場から、管理職のように「資本家でも労働者でもない」矛盾した階級的位置を組み込んだ階級図式を作りました。ゴールドソープらの階級図式(EGP 階級分類)は、雇用関係(雇う側か、雇われる側か、その契約の型)で階級を分けるもので、国際比較でよく使われます。


2. 社会移動

まずここだけ

社会移動は、人がある階層的な地位から別の地位へ動くことです。分け方が 3 通りあり、どれを問われているかを見分けます。

分け方区別
方向垂直移動(上昇・下降)/水平移動(同じ高さの別の地位へ)
期間世代間移動(親の地位と子の地位を比べる)/世代内移動(本人の一生の中での移動)
原因構造移動(産業構造の変化など、地位の「数」が変わったために起きる移動)/純粋移動(交換移動)(構造の変化を除いた、個人の入れかわりによる移動)

例:高度成長期に農家の子が会社員になった移動の多くは、農業の縮小と雇用者の増加という構造移動です。全体の移動から構造移動を除いた残りが、社会がどれだけ「開かれているか」を示す純粋移動です。

ここまでできれば十分

出題では「世代間移動と世代内移動」「構造移動と純粋移動」の定義を入れかえた肢が置かれます。「親が農民で本人が公務員」は世代間、「本人が入社時は平社員で、のちに部長」は世代内です。

社会の開放性は、親の地位が子の地位をどれだけ決めているかで測ります。純粋移動が多いほど開放的です。リプセットとベンディックスは、産業化した社会では国による移動率の差は小さいと論じ、のちに「産業化が進むと親の地位より本人の業績(学歴)が地位を決めるようになる」という産業化仮説が検討されました。日本では 1985 年ごろから、親の階層が子の学歴や職業に与える影響が再び注目され、「格差社会」論につながりました。

もう一歩(発展)

職業威信スコアは、人々に職業の「高さ」を評価してもらって数値化したもので、SSM 調査でも測られています。医師・大学教授が高く、単純労務が低いという序列は国や時代を超えて似ていることが知られています。階層帰属意識(自分を「上・中の上・中の下・下の上・下の下」のどこに置くか)は、内閣府「国民生活に関する世論調査」でも尋ねられており、「中」(中の上・中の中・中の下)と答える人が長く多数を占めています。


3. 逸脱の理論

まずここだけ

逸脱は、社会の規範から外れた行動(犯罪・非行・自殺など)のことです。理論は「逸脱がなぜ起きるか」の説明で 4 つの系統に分かれます。

系統逸脱の原因代表
アノミー・緊張理論社会の規範の緩みや、目標と手段のズレデュルケム、マートン
学習・下位文化理論逸脱的な価値や技術を仲間から学ぶサザランド、コーエン、クロワード=オーリン
統制理論逸脱を抑える社会的なつながりが弱いハーシ
ラベリング理論周囲が「逸脱者」というレッテルを貼ることベッカー、レマート

デュルケムは『自殺論』で、自殺率が社会の状態で変わることを示し、社会の規範が緩んで欲望に歯止めがかからなくなった状態をアノミーと呼びました。自殺の 4 類型は、自己本位的(集団との結びつきが弱い)・集団本位的(結びつきが強すぎる)・アノミー的(規制が弱い)・宿命的(規制が強すぎる)です。デュルケムはまた、犯罪は健全な社会にも一定量存在する「正常」な現象で、規範の存在を確認させる働きがあると論じました。

マートンは、アメリカ社会が「金銭的成功」という文化的目標をすべての人に求める一方、それを達成する制度的手段(教育・職業)は平等に開かれていないというズレがアノミーを生むと考え、目標と手段への態度で 5 つの適応類型を示しました。

類型文化的目標制度的手段
同調まじめに働いて成功をめざす
革新目標は受け入れるが、手段は選ばない(詐欺・窃盗)
儀礼主義成功はあきらめ、規則を守ること自体が目的化(形式主義の官僚)
逃避主義目標も手段も捨てる(薬物依存・浮浪)
反抗±±既存の目標と手段を退け、新しいものに置きかえる(革命家)

試験の型:「デュルケムは文化的目標と制度的手段のズレをアノミーと呼んだ」は、マートンの説明をデュルケムに当てた誤りです。「規範の緩み」ならデュルケム、「目標と手段」ならマートンです。

ここまでできれば十分

サザランド分化的接触理論:犯罪行動は生まれつきや異常ではなく、親密な集団の中でのコミュニケーションを通じて学習される。犯罪を肯定する考え方に接する頻度・期間・強さが、否定する考え方に接するそれを上回ると犯罪に至る。サザランドは、社会的地位の高い人が職業上行うホワイトカラー犯罪の概念でも知られます。

コーエン非行下位文化理論:労働者階級の少年は、中流階級の価値(学校の評価基準)で測られて地位の欲求不満を抱き、その反動としてわざと中流の価値を裏返した非功利的・悪意的・否定的な非行文化を集団で作る。クロワードとオーリンは、合法的な機会だけでなく非合法な機会も地域によって偏って配分されている(分化的機会構造)とし、犯罪的・闘争的・逃避的の 3 つの非行下位文化を区別しました。

ベッカーラベリング理論(『アウトサイダーズ』):逸脱は行為そのものの性質ではなく、周囲の人々が規則を適用して「逸脱者」というラベル(レッテル)を貼ることで作られる。「社会集団は、それを犯せば逸脱となるような規則を設けることによって逸脱を生み出す」という発想です。レマートは、最初の逸脱(第一次的逸脱)に対する周囲の反応を受けて本人が逸脱者としての自己を受け入れ、逸脱を繰り返すようになる第二次的逸脱を区別しました。

ハーシ社会的絆理論(統制理論):問うべきは「なぜ逸脱するか」ではなく「なぜ多くの人は逸脱しないか」で、答えは社会との絆(ボンド)にある。絆の 4 要素は愛着(親や友人への情緒的な結びつき)・投資(コミットメント)(これまで積み上げてきたものを失いたくない)・巻き込み(合法的な活動で忙しい)・規範観念(信念)(規則の正しさを信じる)で、これが弱いと逸脱が起きます。

もう一歩(発展)

ゴフマンスティグマ:身体的な特徴・性格上の欠点とみなされるもの・人種や宗教などの集団的属性のように、他者から「正常でない」印をつけられる属性。スティグマをもつ人は、それを隠す(パッシング)などの印象操作を迫られます。ゴフマンは日常を舞台にたとえるドラマトゥルギーの人でもあります(zy-02)。

サイクスとマッツァ中和の技術:非行少年も規範を否定しているわけではなく、「責任の否定」「加害の否定」「被害者の否定」「非難者への非難」「高度の忠誠への訴え」という言い訳で罪悪感を中和している。マッツァはここから、少年は非行文化に染まりきるのではなく合法と非行の間を漂流するという漂流理論を唱えました。

割れ窓理論(ウィルソンとケリング):割れた窓を放置すると「だれも気にしていない」というサインになり、さらに荒廃と犯罪を招く。だから軽微な秩序違反を放置せず取り締まるべきだという主張で、1990 年代のニューヨーク市の治安政策に応用されました。犯罪を「人」ではなく「機会・環境」の側から減らそうとする環境犯罪学の流れです。


4. 都市の社会学

まずここだけ

シカゴ学派は、1920〜30 年代のシカゴ大学で、急成長する都市シカゴを「社会的実験室」として調査した社会学者たちです。パークは、動植物の生態学になぞらえて都市内の集団の競争・棲み分け・侵入・遷移を分析する人間生態学を提唱しました。都市の空間構造のモデルは 3 つを対比して覚えます。

モデル提唱者
同心円地帯理論バージェス中心業務地区(CBD)→遷移地帯(スラム化・移民の流入)→労働者住宅地帯→中流住宅地帯→通勤者地帯、と同心円状に広がる
扇形理論ホイト交通路に沿って、同じ種類の地区が扇形(くさび形)に外へ伸びる
多核心理論ハリスとウルマン都市には中心が 1 つではなく、工業・商業・大学など複数の核がある

ここまでできれば十分

ワースは「生活様式としてのアーバニズム」(1938 年)で、都市を人口の規模が大きく・密度が高く・異質性が高い定住地と定義し、そこから生まれる都市的な生活様式(アーバニズム)として、匿名的で表面的な人間関係(第二次的接触の優位)、分業と専門化、家族や近隣の結びつきの弱まりなどを挙げました。ワースの見方は「都市は人間関係を弱める」という都市=解体論と受け取られました。

これに対しフィッシャー下位文化理論は、人口が多く密度が高いからこそ、同じ趣味や職業・民族の人が「臨界量」に達して独自の下位文化(芸術家集団、エスニック・コミュニティなど)が育つと論じ、都市はむしろ多様な人間関係を生むとしました。またガンズは、都市の中にも村のように濃い近隣関係をもつ「都市の村人」がいることを示し、生活様式は都市か農村かではなく階級や家族の段階で決まると論じました。

試験の型:「ワースは都市の規模・密度・異質性が独自の下位文化を生むと論じた」は、フィッシャーの説明をワースに当てた誤りです。「解体」「匿名性」ならワース、「下位文化」ならフィッシャーです。

日本の都市・農村社会学もセットで出ます。

人物主張
鈴木栄太郎『日本農村社会学原理』で、行政上の区画である行政村と、生活の実質的まとまりである自然村を区別。『都市社会学原理』では、都市を、交通・商業・行政などで人や物の流れを結びつける結節機関が集まる場所ととらえた
有賀喜左衛門日本の「家」と、本家・分家からなる同族団の研究。農村の生活は家と家の結びつきで組み立てられているとした
福武直村落を、同族団の上下関係で結ばれる同族結合(東北型)と、講や組など対等な家の結びつきによる講組結合(西南型)に分けた
倉沢進農村では生活の問題を住民が相互扶助で処理するのに対し、都市では行政や企業などの専門処理システムにゆだねる、という都市的生活様式論
磯村英一家庭(第一空間)・職場(第二空間)とは別の、盛り場などの第三空間が都市の特徴だとした

もう一歩(発展)

都市化の段階:人口が都心に集まる都市化、郊外に広がる郊外化(都心の人口が減るドーナツ化現象、無秩序に市街地が広がるスプロール)、さらに都市圏全体の人口が減る逆都市化、都心に人口が戻る再都市化という流れで整理されます。日本では 2000 年代以降、都心のタワーマンションなどで都心回帰が進みました。

ジェントリフィケーション:衰退していた都心近くの地区に、比較的所得の高い層や芸術家などが流入して住宅や店舗が改装され、地価・家賃が上がり、もとの低所得の住民が住めなくなって押し出される現象。イギリスの社会学者グラスが 1960 年代のロンドンについて名づけました。

過疎と限界集落:都市への人口集中の裏で農山村の人口が減り、生活の維持が難しくなる状態が過疎です。大野晃は、65 歳以上が住民の半数を超えて冠婚葬祭や道の管理などの共同生活が難しくなった集落を限界集落と名づけました。対策として、市街地を集約して行政サービスの効率を保つコンパクトシティや、都市から地方への移住(I ターン・U ターン)の支援が進められています。


5. よくある間違い

間違い正しくは
ウェーバーは階級を生産手段の所有だけで規定したそれはマルクス。ウェーバーは階級・身分・党派の 3 次元
構造移動は個人の入れかわりによる移動構造移動は産業構造の変化など地位の数の変化で起きる移動。個人の入れかわりは純粋(交換)移動
世代内移動は親と子の地位を比べるそれは世代間移動。世代内は本人の一生の中の移動
デービス=ムーアは階層をなくすべきだと論じた階層は社会にとって機能的に必要だと論じた(批判はチューミン)
デュルケムは目標と手段のズレをアノミーと呼んだそれはマートン。デュルケムのアノミーは規範の緩み・無規制
マートンの「儀礼主義」は目標も手段も捨てる儀礼主義は目標を捨て手段は守る。両方捨てるのは逃避主義
ベッカーは逸脱を仲間からの学習で説明した学習はサザランド。ベッカーはラベリング
ハーシは逸脱の原因を社会の緊張に求めたハーシは絆の弱さ(なぜ逸脱しないか)に注目した統制理論
同心円地帯理論はホイトが唱えたバージェス。ホイトは扇形、ハリス=ウルマンは多核心
ワースは都市が多様な下位文化を育てると論じたそれはフィッシャー。ワースは規模・密度・異質性から人間関係の匿名化・解体を論じた
鈴木栄太郎は同族団を研究した同族団は有賀喜左衛門。鈴木は自然村・結節機関
限界集落は 65 歳以上が 3 分の 1 を超えた集落半数を超えた集落(大野晃)

6. 覚え方の型

  1. 階層論は「マルクス(二大階級・一元)→ ウェーバー(3 次元・多元)→ 階層(連続的序列・SSM)」の順で並べ、人名が出たら「一元か多元か」をまず確かめる
  2. 社会移動は「いつ(世代間/内)・どちらへ(垂直/水平)・なぜ(構造/純粋)」の 3 つの軸で問いを分類してから読む
  3. 逸脱論は「原因はどこにあるか」で 4 系統に分ける:社会のズレ(アノミー)・仲間からの学習(サザランド)・絆の弱さ(ハーシ)・周囲のレッテル(ベッカー)
  4. マートンの 5 類型は「目標 +/−、手段 +/−」の 2×2 に「反抗(±・±)」を足した表で書けるようにしておく
  5. 都市モデルは「円(バージェス)・扇(ホイト)・多核(ハリス=ウルマン)」、都市生活論は「解体(ワース)vs 下位文化(フィッシャー)」、日本は「自然村・結節機関(鈴木)/同族団(有賀)/専門処理(倉沢)」の組で固定する

7. 小テストへ

→ 小テスト(zy-04

関連する単元

参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
基礎から標準から発展から🖨 プリント

政治学・行政学ほかの単元一覧まぜこぜテスト公務員試験の勉強法