地方上級 / 社会学 / zy-05
現代社会論と社会調査(大衆社会・情報社会・リスク社会・ジェンダー・社会調査の方法)
この単元でできるようになること
- 大衆社会論(オルテガ・マンハイム・コーンハウザー・リースマン・フロム・ミルズ)を、それぞれが「大衆の何を問題にしたか」で区別できる
- 消費社会論(ヴェブレン・ボードリヤール)、情報社会論(マクルーハン・ベル・トフラー・カステル)、論(ベック・ギデンズ)、バウマンの「液状化する社会」を人名と用語の組で説明できる
- ジェンダー(性別役割分業・シャドウワーク・感情労働・第二の勤務・ジェンダー主流化)、エスニシティと多文化主義、社会運動論(資源動員論・新しい社会運動)の用語を説明できる
- 社会調査の方法(全数調査と標本調査・の 4 種類・質問紙と面接と参与観察・量的調査と質的調査・信頼性と妥当性)を区別し、調査の設計として正しい手順を選べる
試験での位置づけ
社会学の出題のうち「現代社会」は、人名と用語のすり替え(例:『孤独な群衆』をフロムの著作として書く)で肢を作る典型分野です。社会調査は近年の出題で存在感が増していて、「無作為抽出の種類」「参与観察と質問紙の違い」「信頼性と妥当性」のように、方法の定義を入れかえた肢が置かれます。理論の土台は zy-01・zy-02、階層と都市は zy-04、集団と家族は zy-03 で扱いました。ジェンダーや労働の統計的な実態は zw-01(労働問題と雇用政策)と zw-03(人口・少子高齢化・貧困と福祉政策)、世論とメディアは zp-06 と重なります。
1. 大衆社会論
まずここだけ
大衆社会とは、産業化・都市化・普通選挙・マスメディアの普及によって、伝統的な共同体から切り離された均質で受動的な「大衆」が政治と社会の主役になった社会です。20 世紀前半、ファシズムの台頭を目の当たりにした知識人が、大衆社会の危うさを論じました。
| 人物 | 著作 | 大衆社会の何を問題にしたか |
|---|---|---|
| オルテガ | 『大衆の反逆』(1930 年) | 自らを「みんなと同じ」と感じて満足し、教養あるエリートの指導を拒む大衆人が社会を支配する危険(貴族主義的な批判) |
| マンハイム | 『変革期における人間と社会』 | 社会の機能的合理性は高まるが、人々が全体を見通す実質的合理性は失われ、大衆は非合理な衝動に流されやすくなる。自由のための計画を提唱 |
| コーンハウザー | 『大衆社会の政治』 | エリートへの接近可能性と非エリートの操作可能性の 2 軸で社会を 4 類型に分け、中間集団(地域・職場・団体)が弱い社会ではエリートと大衆が直結して全体主義に向かいやすいとした |
| リースマン | 『孤独な群衆』(1950 年) | 社会的性格が伝統指向型(慣習に従う)→内部指向型(内面化した価値に従う・産業化期)→他人指向型(他者の期待やメディアに敏感・現代)へ移ると論じた |
| フロム | 『自由からの逃走』(1941 年) | 近代人は自由を得たが孤独と不安に耐えられず、権威に服従する権威主義的性格によってナチズムを受け入れた |
| ミルズ | 『パワー・エリート』(1956 年) | アメリカでは政治・経済・軍事の頂点に立つ少数のパワー・エリートが重要な決定を握り、大衆は無力化していると論じた(多元主義への批判) |
ここまでできれば十分
出題では「著作名 → 人名」「用語 → 人名」の対応が問われます。リースマンの 3 類型は「伝統・内部・他人」の順と、それぞれの時代(前近代・産業化期・現代の消費社会)をセットで押さえます。「他人指向型」は、レーダーのように周囲の反応をたえず気にする性格です。
試験の型:「フロムは『孤独な群衆』で他人指向型を論じた」は著作と人物のすり替えです。「自由からの逃走・権威主義的性格」がフロム、「孤独な群衆・他人指向」がリースマンです。コーンハウザーの「中間集団」は zy-03 の集団論ともつながります。
もう一歩(発展)
ミルズは『社会学的想像力』で、個人の「私的な悩み」を社会構造の「公的な問題」と結びつけて考える力を社会学の使命としました。また、ナチス期の大衆の心理を分析したアドルノらの『権威主義的パーソナリティ』(F 尺度)も、フロムと並んで出題されます。
2. 消費社会・情報社会・リスク社会
まずここだけ
現代社会を「何が社会を動かしているか」で名づけた理論です。人名・キーワード・著作をセットで覚えます。
| 系統 | 人物 | キーワード |
|---|---|---|
| 消費社会 | ヴェブレン | 『有閑階級の理論』(1899 年)。富や地位を見せびらかすための顕示的消費 |
| 消費社会 | ボードリヤール | 『消費社会の神話と構造』。現代の消費はモノの使用価値ではなく、他者との差異を示す記号の消費 |
| 情報社会 | マクルーハン | 「メディアはメッセージである」。メディアの形式そのものが人間の感覚や社会を変える。電子メディアが世界を地球村にする |
| 情報社会 | ベル | 『脱工業社会の到来』(1973 年)。財の生産からサービスへ、理論的知識が社会の中軸になる脱工業社会 |
| 情報社会 | トフラー | 『第三の波』(1980 年)。農業革命・産業革命に続く情報革命。生産者と消費者が一体化するプロシューマー |
| 情報社会 | カステル | 『ネットワーク社会の到来』。情報技術によって社会がネットワークとして組織される |
| リスク社会 | ベック | 『危険社会』(1986 年)。産業社会が生み出した原発事故・環境汚染などのリスクが階級を超えて世界に広がるリスク社会。近代が自らを問い直す再帰的近代化 |
| 後期近代 | ギデンズ | 近代の再帰性(知識が絶えず実践を修正する)、時間と空間の分離、専門家システムへの信頼。第三の道 |
| 液状化 | バウマン | 『リキッド・モダニティ』。制度や関係が固定した形をもたず、流動的で不安定になる液状化する社会 |
ここまでできれば十分
顕示的消費は「見せびらかし」で、ヴェブレンが 19 世紀末アメリカの有閑階級を観察して名づけました。ボードリヤールはこれを現代の大衆にまで広げ、広告やブランドによって「差異を示す記号」として消費が行われると論じました。
脱工業社会(ベル)は、①財の生産からサービスへ、②専門職・技術職の優位、③理論的知識の中心性、④技術の管理、⑤新しい知的技術、が特徴です。トフラーの「第三の波」は、第一の波=農業革命、第二の波=産業革命、第三の波=情報革命です。
試験の型:「ベルは『第三の波』で脱工業社会を論じた」は著作のすり替え、「ベックはリスクが階級によって偏って配分されると論じた」は結論の逆です。ベックの要点は「リスクは階級を超えて平等化する(貧困は階級的だが、スモッグは民主的)」です。
もう一歩(発展)
情報社会の負の側面として、情報技術を使える人と使えない人の格差であるデジタル・デバイド、SNS で自分に近い意見だけに囲まれるエコーチェンバー、閲覧履歴にもとづく表示で異なる情報に触れにくくなるフィルターバブルが、時事的な出題にも顔を出します。監視については、フーコーがベンサムのパノプティコン(一望監視施設)を近代の権力のモデルとしたこと、ライアンの監視社会論が関連します。
3. ジェンダー・エスニシティ・社会運動
まずここだけ
ジェンダーは、生物学的な性別(セックス)と区別された、社会的・文化的に作られる性差です。「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業は近代の産業社会で強まったもので、自然なものではないと社会学は考えます。
| 用語 | 人物 | 中身 |
|---|---|---|
| シャドウワーク | イリイチ | 家事・育児・通勤など、賃金を支払われないが賃労働を支えるために不可欠な労働 |
| 感情労働 | ホックシールド | 客室乗務員のように、自分の感情を管理して適切な表情や態度を作ることが職務になっている労働 |
| 第二の勤務(セカンド・シフト) | ホックシールド | 共働きの女性が職場での勤務のあとに家庭で担う家事・育児という「二つ目の勤務」 |
| ジェンダー主流化 | 国連(1995 年北京会議) | すべての政策・事業の立案から評価までに、ジェンダーの視点を組み込むこと |
| ケア労働 | ── | 育児・介護・看護など、人の世話をする労働。無償であることが多く、女性に偏っている |
日本の法制度では、男女雇用機会均等法(1985 年)、育児・介護休業法、男女共同参画社会基本法(1999 年)、女性活躍推進法(2015 年)が出題されます。国際的には、女性差別撤廃条約(1979 年採択・日本は 1985 年批准)と、政治・経済・教育・健康の 4 分野で男女格差を測る世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数が問われます。
ここまでできれば十分
エスニシティは、言語・宗教・出身地などの文化的な共通性にもとづく集団の帰属意識です。人種が身体的特徴による分類(それ自体が社会的に作られたもの)であるのに対し、エスニシティは文化的な分類です。移民の受け入れ方には、少数派を主流文化に溶かし込む同化主義、さまざまな文化が溶け合って新しい文化になるというるつぼ(メルティング・ポット)、それぞれの文化が互いを尊重しながら共存する多文化主義(サラダボウルにたとえられる)があります。カナダやオーストラリアは多文化主義を国の政策として掲げました。
社会運動論は 2 つの流れを対比します。
| 理論 | 内容 |
|---|---|
| 集合行動論(スメルサーなど) | 社会運動を、構造的な緊張や不満が「集合行動」として噴き出す非合理的なものとみる |
| 資源動員論(マッカーシー=ゾールドなど) | 不満はどこにでもある。運動が起きるかどうかは、資金・人員・組織・ネットワークなどの資源をどれだけ動員できるかで決まる(合理的な行為) |
| 新しい社会運動論(トゥレーヌ・メルッチ・オッフェなど) | 1960 年代以降の環境運動・女性運動・平和運動・少数者の運動は、労働運動のような経済的利益ではなく、アイデンティティや生活様式・価値をめぐる運動である |
もう一歩(発展)
ハーバーマスは、行政と経済のシステムが人々の生活世界を植民地化することへの抵抗として新しい社会運動をとらえました(zy-02)。日本では、1970 年代の住民運動(公害・開発反対)や、1998 年の特定非営利活動促進法(NPO 法)による NPO の制度化が、社会運動の担い手の変化として出題されます。パットナムのソーシャル・キャピタル(社会関係資本)(信頼・互酬性の規範・ネットワーク)も、市民参加を論じる際の用語として問われます。
4. 社会調査の方法
まずここだけ
社会調査は、対象の選び方と、データの集め方の 2 段階で整理します。
対象の選び方:対象となる集団(母集団)の全員を調べる(悉皆調査。例:国勢調査は 5 年ごとに全世帯を対象に行う)と、一部を取り出して調べる(サンプリング)があります。標本から母集団を推測するには、だれもが同じ確率で選ばれる無作為抽出(ランダム・サンプリング)が必要です。
| 無作為抽出の種類 | やり方 |
|---|---|
| 単純無作為抽出 | 母集団の名簿から乱数で直接選ぶ |
| 系統抽出 | 名簿の最初の 1 人を乱数で決め、あとは等間隔(例:10 人おき)に選ぶ |
| 層化抽出 | 母集団を性別・年齢層などの層に分け、各層の大きさに応じて層ごとに無作為に選ぶ |
| 多段抽出 | まず市町村を無作為に選び、次にその中の地区を選び、最後に個人を選ぶ、と段階を踏む |
無作為でない選び方(有意抽出)には、調べやすい人を選ぶ機縁法や、属性の割り当て数だけ決めて調査員が選ぶ割当法があり、母集団の推定には向きません。街頭アンケートやインターネットの自由参加型の調査は、回答者が偏るため母集団を代表しません。
ここまでできれば十分
データの集め方は、量的調査と質的調査に分かれます。
| 区分 | 方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 量的調査 | 質問紙調査(郵送・留置・集合・インターネット)、構造化面接(質問と選択肢を固定) | 多数を対象に数値化し、統計的に分析する。仮説の検証に向く |
| 質的調査 | 参与観察(調査者が集団の一員として生活しながら観察する。フィールドワーク)、非構造化面接、生活史(ライフヒストリー)法、ドキュメント分析 | 少数を深く理解する。仮説の発見に向く |
質問紙の作り方では、1 つの質問に 2 つの内容を入れるダブルバーレル質問(「学校と職場に満足していますか」)、答えを誘導する誘導質問、前の質問が後の回答に影響するキャリーオーバー効果を避けることが問われます。データの整理法としては、カードに書き出した情報をグループにまとめて構造化するKJ 法(川喜田二郎)が質的データの分析法として出ます。
信頼性と妥当性ははっきり区別します。
| 意味 | 例 | |
|---|---|---|
| 信頼性 | 同じ条件で繰り返しても同じ結果が出るか(安定性) | 同じ体重計に何度乗っても同じ値が出る |
| 妥当性 | 測りたいものを本当に測れているか | 体重計で「健康度」を測ろうとしても妥当ではない |
信頼性が高くても妥当性が低いことはあります(毎回同じ値だが測りたいものを測っていない)。
試験の型:「層化抽出とは、最初の 1 人を乱数で決めて等間隔に選ぶ方法である」は系統抽出との入れかえ、「参与観察は多数の対象を数値化して統計的に分析する方法である」は量的調査との入れかえです。「国勢調査は 10 年ごと」も年数をずらした誤りで、5 年ごと(西暦の末尾 0 と 5 の年)です。
もう一歩(発展)
社会調査の倫理として、調査の目的を説明して同意を得るインフォームド・コンセント、個人が特定されないようにする匿名化、データの適切な管理が求められます。統計法(2007 年全面改正)は、国勢調査などを基幹統計として位置づけ、回答を義務づける一方、調査票情報の秘密を保護しています。調査結果の解釈では、相関があっても因果があるとは限らないこと、第三の変数による見せかけの相関(擬似相関)に注意することが問われます。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 『孤独な群衆』はフロムの著作 | リースマン。フロムは『自由からの逃走』 |
| リースマンは現代人を内部指向型とした | 現代は他人指向型。内部指向型は産業化期 |
| コーンハウザーは中間集団が強いと全体主義になるとした | 中間集団が弱いとエリートと大衆が直結して全体主義に向かいやすい |
| ミルズは多元的なエリートが競争していると論じた | 政治・経済・軍事のパワー・エリートが決定を握ると論じた(多元主義批判) |
| 顕示的消費はボードリヤールの用語 | ヴェブレン。ボードリヤールは記号の消費 |
| 『第三の波』はベルの著作 | トフラー。ベルは『脱工業社会の到来』 |
| ベックはリスクが貧困層に集中すると論じた | リスクは階級を超えて広がり平等化する |
| 感情労働はイリイチの用語 | ホックシールド。イリイチはシャドウワーク |
| 資源動員論は社会運動を不満の噴出とみる | 不満の噴出とみるのは集合行動論。資源動員論は資源の動員で説明する |
| 国勢調査は 10 年ごとの標本調査 | 5 年ごとの全数調査 |
| 層化抽出は等間隔に選ぶ | 等間隔は系統抽出。層化は層に分けて層ごとに無作為抽出 |
| 参与観察は量的調査 | 質的調査。質問紙が量的調査 |
| 妥当性とは繰り返して同じ結果が出ること | それは信頼性。妥当性は測りたいものを測れているか |
6. 覚え方の型
- 大衆社会論は「著作名 → 人名 → キーワード」の 3 点セットで固定する:反逆=オルテガ、群衆=リースマン(伝統・内部・他人)、逃走=フロム(権威主義的性格)、パワー・エリート=ミルズ、中間集団=コーンハウザー
- 現代社会論は「何が社会を動かすか」で分類する:記号(ボードリヤール)・知識(ベル)・情報の波(トフラー)・ネットワーク(カステル)・リスク(ベック)・液状化(バウマン)
- ジェンダーの用語は「だれが・どんな労働を名づけたか」:イリイチ=シャドウワーク、ホックシールド=感情労働と第二の勤務
- 社会運動論は「不満(集合行動論)→ 資源(資源動員論)→ アイデンティティ(新しい社会運動)」の順で並べる
- 社会調査は「だれを(全数/標本・4 つの無作為抽出)・どう集める(量的/質的)・どう評価する(信頼性/妥当性)」の 3 段で肢を確かめる
7. 小テストへ
→ 小テスト(zy-05)
関連する単元
- 前提:zy-01 社会学の成立(コント・スペンサー・マルクス・デュルケム・ウェーバー・ジンメル)、zy-02 現代の社会学理論(パーソンズ・マートン・シンボリック相互作用論・現象学的社会学・ハーバーマス・ギデンズ・ブルデュー)、zy-03 社会集団・家族・組織(テンニース・クーリー・マッキーヴァー・家族の類型・官僚制)
- 次に進む:zw-01 労働問題と雇用政策(失業・非正規・賃金・働き方改革・労働統計)、zw-03 人口・少子高齢化・貧困と福祉政策(人口統計・子育て支援・生活保護・障害者福祉)
- 同じ考え方を使う:zy-04 社会階層・逸脱・都市(階級と階層・社会移動・アノミー・ラベリング・シカゴ学派)、zp-06 政治意識・世論・マスメディア、zk-08 環境・人口・情報化と現代社会
参考資料
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(社会学)
- 総務省統計局「国勢調査の概要」(5 年ごと・全数調査) https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2025/index.html
- 統計法(e-Gov 法令検索)、男女共同参画社会基本法、特定非営利活動促進法
- 内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書」── ジェンダー主流化・ジェンダー・ギャップ指数の説明
- 標準的な社会学の教科書(アンソニー・ギデンズ『社会学』、長谷川公一ほか『社会学』など)と社会調査の教科書(大谷信介ほか『新・社会調査へのアプローチ』など)、原典(リースマン『孤独な群衆』、フロム『自由からの逃走』、ベル『脱工業社会の到来』、ベック『危険社会』)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/seiji/zy-05/ / 更新 2026-09-19