地方上級 / 刑法 / zc-04
刑法総論④(未遂・中止犯・共犯・罪数)
この単元でできるようになること
- 実行の着手の判断基準(法益侵害の現実的危険)を、窃盗・詐欺・クロロホルム事件などの判例で具体的に言える
- 不能犯と未遂犯の区別(判例の具体的危険説)、中止犯の任意性と「刑の必要的減免」を説明できる
- 共同正犯・教唆・幇助の成立要件と刑の扱いを区別し、共謀共同正犯を認めた判例(練馬事件・スワット事件)の結論を言える
- 共犯と身分(65 条 1 項・2 項)の使い分け、共犯の錯誤、共犯からの離脱の判例を事例にあてはめられる
- 罪数(法条競合・包括一罪・観念的競合・牽連犯・併合罪)を事例から判別できる
試験での位置づけ
刑法総論の後半で、地方上級・国家一般職の専門試験(刑法を選択できる区分)ではよく問われる範囲です。出題の型は「事例を 5 つ並べ、結論(既遂か未遂か・中止犯が成立するか・どの共犯類型か・何罪の何個か)を当てさせる」ものが中心で、条文の知識より判例の結論と理由が問われます。
刑法は 2025 年 6 月 1 日施行の改正で「懲役・禁錮」が拘禁刑に一本化されました。この単元で刑を書くときは拘禁刑で統一しています。zc-01(構成要件・因果関係)と zc-03(故意・錯誤)の知識を前提にするので、先に読んでおくと理解が早くなります。
1. 未遂犯 ── 実行の着手はどこか
まずここだけ
43 条本文:「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる」。未遂は任意的減軽(減軽するかどうかは裁判所の裁量)で、しかも 44 条により未遂を罰する旨の規定がある罪だけ処罰されます(殺人 203 条・窃盗 243 条・詐欺 250 条など。傷害・暴行・器物損壊には未遂処罰規定がありません)。
犯罪の進行は「決意 → 予備 → 実行の着手 → 結果」の順です。予備を罰するのは殺人予備(201 条)・強盗予備(237 条)・放火予備(113 条)・通貨偽造準備などごく一部の重い罪だけです。だから「どの時点で実行の着手があったか」が、不可罰(または予備)と未遂の境目になります。
判例の基準は、構成要件の実現に至る現実的な危険性を含む行為を開始したときに着手を認める、というものです(形式的に構成要件の一部を始めたかどうかではなく、危険性で判断します)。
ここまでできれば十分
| 罪 | 着手が認められた時点 | 判例 |
|---|---|---|
| 住居に侵入しての窃盗 | 家に入っただけでは足りず、金品を物色するためタンスに近づいた時点 | 最判昭和 23 年(1948 年)4 月 17 日 |
| 殺人(クロロホルム事件) | 被害者をクロロホルムで失神させ(第 1 行為)、その後車ごと海に沈めて殺す(第 2 行為)計画で、第 1 行為の開始時点で殺人の着手。第 1 行為が第 2 行為に密接で、第 1 行為の時点で死の結果発生の客観的危険があるため | 最決平成 16 年(2004 年)3 月 22 日 |
| 詐欺(特殊詐欺) | 警察官を装って「預金を下ろして保管した方がよい」などと嘘を述べた段階で、まだ現金の交付を求めていなくても着手。嘘の内容が交付の判断の基礎となる重要事項で、交付に向けた危険性が認められる | 最判平成 30 年(2018 年)3 月 22 日 |
| 性犯罪(ダンプカー事件) | 被害者を姦淫する目的でダンプカーの運転席に引きずり込もうとした時点で、その後に行われる行為に密接なものとして着手 | 最決昭和 45 年(1970 年)7 月 28 日 |
クロロホルム事件で最高裁が使った要素は、(1)第 1 行為が第 2 行為に必要不可欠であること、(2)第 1 行為の後に計画を遂行する上で障害となる特段の事情がないこと、(3)両行為の時間的場所的近接性、です。試験では「第 2 行為を始めた時点で初めて着手」と結論を後ろにずらした肢が誤りとして出ます。
もう一歩(発展)
不能犯とは、およそ結果が発生する危険がなく、未遂にもならない行為です。判例は、行為当時に一般人が認識できた事情と行為者が特に知っていた事情を基礎に、一般人の目から見て危険があるかで判断します(具体的危険説に近い立場)。
| 事案 | 結論 | 理由 |
|---|---|---|
| 硫黄の粉末を飲ませて殺そうとした | 不能犯(殺人未遂は不成立、傷害罪のみ) | 硫黄では人を殺せないことが一般人にも明らか。大判大正 6 年(1917 年)9 月 10 日 |
| 静脈に空気を注射して殺そうとした | 未遂犯 | 注射した量では通常死なないが、被害者の体調によっては死の危険があり、一般人から見て危険がある。最判昭和 37 年(1962 年)3 月 23 日 |
| 警察官から奪った拳銃で撃とうとしたが、たまたま弾が入っていなかった | 未遂犯 | 警察官の拳銃には通常弾が入っており、一般人から見て危険がある。福岡高判昭和 28 年(1953 年)11 月 10 日 |
「およそ結果が起こりえない不能か、たまたま起こらなかった不能かで分ける」という古い基準(客観的危険説)の言い回しを判例に当てた肢は誤りです。
2. 中止犯 ── 「自己の意思により」やめたか
まずここだけ
43 条ただし書:「自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する」。中止犯(中止未遂)は必要的減免(減軽か免除のどちらかを行わなければならない)で、障害未遂の任意的減軽より手厚い扱いです。要件は次の 3 つです。
- 実行に着手していること(予備の段階では中止犯にならない。最大判昭和 29 年(1954 年)1 月 20 日は強盗予備の中止に 43 条ただし書の準用を否定)
- 自己の意思により(任意性)
- 犯罪を中止したこと(中止行為)
ここまでできれば十分
任意性は「外部の障害によってやめたのか、自分の意思でやめたのか」の問題です。判例は、「やろうと思えばできたのにやめた」かどうかを、行為者の心理を基礎に一般人の目で見て判断しています。
| 事案 | 任意性 | 判例 |
|---|---|---|
| 被害者を刺し、流れ出る血を見て驚愕・恐怖してやめた | 否定。恐怖でやめたのは外部的障害に近く、自己の意思とはいえない | 最判昭和 24 年(1949 年)7 月 9 日 |
| 母を殺そうと切りつけたが、母が苦しむ姿を見て憐憫の情からやめた | 肯定。後悔・同情など自発的な動機によるもの | 最決昭和 32 年(1957 年)9 月 10 日 |
中止行為は、実行行為がまだ終わっていない段階(着手未遂)ならそれ以上やらない(不作為)で足り、実行行為が終わって結果発生に向かっている段階(実行未遂)なら結果の発生を防止する真摯な努力が要ります。家に火をつけた後、隣人に「消しておいてくれ」と頼んで立ち去っただけでは中止行為にあたりません(大判昭和 12 年(1937 年)6 月 25 日)。他人の助力を得てもよいのですが、自分が防止したのと同視できる程度の行動が要ります。
もう一歩(発展)
中止犯の刑の減免が一身的な理由(政策説・責任減少説など)であるため、共犯者のうち中止した者だけが減免を受け、他の共犯者には及びません。また、中止行為があっても結果が発生してしまえば既遂であり、中止犯は成立しません(既遂犯として情状で考慮されるだけ)。
3. 共犯 ── 共同正犯・教唆・幇助
まずここだけ
| 類型 | 条文 | 内容 | 刑 |
|---|---|---|---|
| 共同正犯 | 60 条 | 2 人以上が共同して犯罪を実行 | すべて正犯として処罰(一部実行全部責任) |
| 教唆犯 | 61 条 | 人をそそのかして犯罪を実行させた | 正犯の刑を科す。教唆の教唆(間接教唆)も同じ |
| 幇助犯(従犯) | 62 条・63 条 | 正犯を手助けした | 正犯の刑を必要的に減軽(63 条) |
拘留または科料のみに処すべき罪の・幇助は、特別の規定がなければ罰しません(64 条)。軽犯罪法違反がその例ですが、軽犯罪法 3 条は教唆・幇助を正犯に準じて罰する特別の規定を置いています。なお侮辱罪(231 条)は 2022 年の改正で拘禁刑・罰金が加わったため、現在は「拘留または科料のみ」の罪ではありません。
共同正犯の「一部実行全部責任」:A と B が共同して C に暴行を加え、どちらの殴打が致命傷か分からなくても、2 人とも傷害致死の共同正犯として全結果に責任を負います。共同正犯の成立には(1)共謀(意思の連絡)と(2)共謀に基づく実行が要ります。
ここまでできれば十分
共謀共同正犯:共謀に加わったが自分では実行行為をしていない者も共同正犯になるか、という問題です。判例は一貫して肯定しています。
| 判例 | 事案 | 結論 |
|---|---|---|
| 練馬事件 最大判昭和 33 年(1958 年)5 月 28 日 | 労働争議で、警察官への暴行を複数人が順次共謀し、一部の者だけが実行 | 2 人以上が特定の犯罪を行うため共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をし、そのうちの誰かが実行すれば、直接実行に関与しない者も共同正犯。共謀は順次(A→B→C と伝わる形)でもよい |
| スワット事件 最決平成 15 年(2003 年)5 月 1 日 | 暴力団組長が、ボディーガード(スワット)がけん銃を携帯して警護していることを認識しながら、その状況を当然のこととして受け入れていた | 組長と警護役の間に黙示の意思の連絡があり、組長はけん銃所持を指示していなくても、共謀共同正犯が成立する |
試験では「練馬事件はを否定した」「共謀は明示的なものに限る(スワット事件)」と結論を逆にした肢が出ます。
過失犯の共同正犯:判例は肯定しています。メタノールを含む液体を 2 人が共同して販売した事案で、業務上過失致死の共同正犯を認めた例があります(最判昭和 28 年(1953 年)1 月 23 日)。
承継的共同正犯:他人が犯罪を始めた後に途中から加わった者が、加わる前の行為・結果にも責任を負うかの問題です。傷害罪について、最高裁は「途中から加わった者は、加わる前に生じていた傷害については責任を負わない」としました(最決平成 24 年(2012 年)11 月 6 日)。
片面的共犯:相手が知らないまま一方的に加担する場合、片面的幇助は成立しますが(大判大正 14 年(1925 年)1 月 22 日)、片面的共同正犯は意思の連絡がないので成立しません。
教唆・幇助の細かい点
- 教唆は「特定の犯罪を実行する決意を生じさせる」こと。すでに決意している者を励ますのは幇助(精神的幇助)
- 幇助は物理的(凶器の提供)でも精神的(激励・助言)でもよく、正犯の実行を促進・容易にした関係があれば足り、それがなければ結果が発生しなかったという条件関係までは要らない
- 教唆・幇助が処罰されるには、正犯が少なくとも実行に着手していることが要ります(共犯従属性)。教唆したが相手が実行しなかった場合は、原則不可罰
- 従属の程度について、判例・通説は正犯の行為が構成要件に該当し違法であれば足り、責任は要らないとします(制限従属性説)。責任無能力者を利用した場合でも、その者が自分の意思で行為しているなら教唆犯になりえます(意のままに道具として使った場合は間接正犯)
もう一歩(発展)
共犯と身分(65 条)
- 1 項:「犯人の身分によって構成すべき犯罪」(真正身分犯=身分がなければそもそも犯罪にならない。収賄・横領・偽証など)に身分のない者が加担すれば、身分のない者も共犯になる
- 2 項:「身分によって特に刑の軽重があるとき」(不真正身分犯=身分がなくても犯罪だが、身分で刑が変わる。業務上横領・常習賭博など)は、身分のない者には通常の刑を科す
判例は 1 項を真正身分犯の共犯の成立、2 項を不真正身分犯の科刑の規定と読みます。この読み方が問われる代表例が業務上横領です。占有者でも業務者でもない A が、業務上他人の物を占有する B の横領に加担した場合、最高裁は、A にも 65 条 1 項によって業務上横領罪の共同正犯が成立するが、A は業務者ではないので 65 条 2 項により単純横領罪の刑で処断する、としました(最判昭和 32 年(1957 年)11 月 19 日)。「成立する罪名」と「科される刑」がずれる点が出題の急所です。
共犯の錯誤
- 共犯者の間で認識と結果が食い違った場合も、zc-03 の錯誤論(判例は法定的符合説)で処理します。同じ構成要件の中のずれ(A を殺せと教唆したら B を殺した)は故意を阻却しません
- 構成要件が異なる場合(抽象的事実の錯誤)は、38 条 2 項により重い罪では処断されず、両罪が重なり合う範囲で軽い罪の共犯が成立します。窃盗を教唆したら正犯が強盗をした → 窃盗の教唆犯。逆に強盗を教唆したら窃盗にとどまった → 窃盗の教唆犯(実際に行われたのが窃盗なので)
- 共同正犯の一方が共謀の範囲を超えて別の罪を犯した場合(共犯の過剰)、超えた部分については他の者は責任を負いません。傷害の共謀で一方が殺意をもって殺した場合、殺意のない者は傷害致死罪の限度で共同正犯
共犯からの離脱(共犯関係の解消)
いったん共謀した者が途中で抜けた場合、抜けた後に他の者が実現した結果について責任を負うかの問題です。判例は、離脱者がそれまでの自分の寄与(因果性)を除去したかで判断します。
| 判例 | 事案 | 結論 |
|---|---|---|
| 最決平成元年(1989 年)6 月 26 日 | 2 人で被害者に暴行した後、1 人が「おれ帰る」と言って現場を去り、残った者がさらに暴行して被害者が死亡 | 去った者は、残った者がなお暴行を続けるおそれがある状態を解消せず、相手も了承していないので、共犯関係は解消されていない。傷害致死の共同正犯 |
| 最決平成 21 年(2009 年)6 月 30 日 | 住居侵入強盗の計画で、見張り役が実行着手前に「怖くなった」と現場を離れ、仲間に電話で伝えたが、仲間はそのまま強盗を実行 | 着手前の離脱でも、それまでの共謀に基づく行為の危険を除去する措置をとらず、仲間の了承もない以上、共犯関係は解消されず、強盗致傷の共同正犯 |
「前なら離脱の意思を伝えれば常に解消される」と書いた肢は誤りです。特に首謀者や、既に危険を作り出した者は、積極的に危険を取り除く行動が要ります。
4. 罪数 ── 何個の罪として扱うか
まずここだけ
複数の構成要件に当てはまる事実があるとき、「1 個の罪か、数個の罪か」「数個ならどう刑を決めるか」を決めるのが罪数論です。
| 区分 | 種類 | 内容 | 処理 |
|---|---|---|---|
| 本来的一罪 | 法条競合 | 一見複数の条文に当たるが、実は 1 つの条文しか適用されない(特別関係:業務上横領と単純横領/補充関係:殺人と殺人予備/吸収関係:殺人と衣服の器物損壊) | 適用条文 1 つ |
| 包括一罪 | 数個の行為が同じ法益に向けられ、1 罪として包括評価される(同じ機会に同じ人から数回盗む接続犯、常習賭博などの集合犯) | 1 罪 | |
| 科刑上一罪(54 条 1 項) | 観念的競合(前段) | 1 個の行為が 2 個以上の罪名に触れる(1 発の爆弾で 2 人を殺傷、無免許運転と酒酔い運転) | 最も重い刑で処断 |
| 牽連犯(後段) | 手段と結果の関係にある数罪(住居侵入と窃盗、文書偽造と同行使と詐欺) | 最も重い刑で処断 | |
| 併合罪(45 条) | 確定裁判を経ていない 2 個以上の罪 | 有期拘禁刑なら最も重い罪の長期に 2 分の 1 を加えた刑を長期とする(47 条)。ただし各罪の長期の合計を超えない |
ここまでできれば十分
観念的競合の「1 個の行為」:判例は、法的評価を離れて自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上 1 個のものと評価されるかで判断します(最大判昭和 49 年(1974 年)5 月 29 日)。
- 無免許運転と酒酔い運転:運転という 1 つの動態 → 観念的競合
- 酒酔い運転と、その運転中の事故による過失致死:運転を続ける行為と、事故の瞬間の注意義務違反は別の動態 → 併合罪(同判決)
牽連犯の「手段と結果」:たまたま手段にしたのでは足りず、その罪の性質上、類型的に手段・結果の関係にあることが要ります。
| 組み合わせ | 罪数 |
|---|---|
| 住居侵入 + 窃盗・強盗・殺人 | 牽連犯 |
| 私文書偽造 + 偽造私文書行使 + 詐欺 | 牽連犯(3 罪が順に手段・結果) |
| 監禁 + 監禁中の恐喝 | 併合罪(監禁は恐喝の類型的手段ではない。最判平成 17 年(2005 年)4 月 14 日) |
| 保険金目的の放火 + 保険金詐欺 | 併合罪(放火は詐欺の類型的手段ではない) |
| 殺人 + 死体遺棄 | 併合罪(死体遺棄は殺人の類型的結果ではない) |
科刑上一罪の効果は「最も重い刑で処断する」ことで、罪そのものは数個です。上限は重い罪の刑ですが、下限は軽い罪の下限を下回れない、というのが判例の扱いです。
もう一歩(発展)
かすがい現象:A 宅に侵入して家族 3 人を殺した場合、殺人 3 罪は本来併合罪ですが、住居侵入がそれぞれの殺人と牽連犯になるため、住居侵入が「かすがい」となって全体が科刑上一罪になります(最決昭和 29 年(1954 年)5 月 27 日)。「3 人殺した方が刑の上限が下がる」ように見える扱いで、学説から批判があります。
併合罪加重の計算例:窃盗(10 年以下)と詐欺(10 年以下)が併合罪なら、長期は 10 年+5 年=15 年。傷害(15 年以下)と暴行(2 年以下)なら 15 年+7 年 6 月=22 年 6 月ですが、各罪の長期の合計 17 年を超えられないので17 年が上限です。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 未遂は常に刑が減軽される | 任意的減軽(減軽「することができる」)。必要的減免は中止犯だけ |
| 予備行為の途中でやめても中止犯になる | 中止犯は実行の着手後が前提。予備の中止に 43 条ただし書の準用はない(最大判昭和 29 年) |
| 血を見て怖くなってやめれば中止犯 | 恐怖・驚愕による中止は任意性なし(最判昭和 24 年)。憐憫の情によるものは任意性あり(最決昭和 32 年) |
| 硫黄で殺そうとした事案は殺人未遂 | 不能犯(殺人未遂不成立、傷害罪)。空気注射は未遂犯 |
| 実行行為をしていない共謀者は教唆か幇助にしかならない | 共謀共同正犯として正犯(練馬事件)。黙示の共謀でも成立(スワット事件) |
| 幇助犯は正犯の刑を任意的に減軽 | 必要的減軽(63 条)。教唆犯は正犯の刑 |
| 業務上横領に非占有者が加担すると単純横領罪の共同正犯 | 成立する罪は業務上横領の共同正犯(65 条 1 項)、科される刑は単純横領(65 条 2 項)(最判昭和 32 年) |
| 着手前に「抜ける」と伝えれば共犯関係は解消 | 自分が作った危険を除去せず、仲間の了承もなければ解消されない(最決平成 21 年) |
| 酒酔い運転と運転中の過失致死は観念的競合 | 併合罪(最大判昭和 49 年)。観念的競合になるのは無免許運転と酒酔い運転 |
| 監禁して恐喝すれば牽連犯 | 併合罪(最判平成 17 年)。牽連犯は住居侵入と窃盗、偽造と行使と詐欺のような類型的な手段・結果 |
6. 解き方の型
- 「着手」が問われたら、結果発生の現実的危険が生じた時点で切る。窃盗は物色時点、詐欺は嘘を述べた時点、クロロホルムは第 1 行為
- 「やめた」事案は、(1)着手後か、(2)任意か(恐怖なら否定・憐憫なら肯定)、(3)実行未遂なら真摯な防止行為があるか、の順に確認。3 つそろって必要的減免
- 「関与者が複数」なら、まず実行行為をしたか・共謀があったかで共同正犯(共謀共同正犯を含む)を検討し、ないときに教唆(決意を生じさせた)・幇助(すでにある決意を助けた)へ。刑は正犯・正犯の刑・必要的減軽の順
- 「身分」が出たら、真正身分犯なら 65 条 1 項で共犯成立、不真正身分犯なら 2 項で通常の刑。業務上横領は両方使う
- 「途中で抜けた」は、自分の寄与を取り除いたかで判断。伝えただけ・帰っただけでは足りない
- 罪数は、1 個の行為か(観念的競合)→ 類型的な手段・結果か(牽連犯)→ どちらでもなければ併合罪の順に判定。監禁と恐喝、放火と保険金詐欺は併合罪
7. 小テストへ
→ 小テスト(zc-04)
関連する単元
- 前提:zc-01 刑法総論①(構成要件・因果関係)、zc-03 刑法総論③(故意・錯誤・責任能力)
- 次に進む:zc-05 刑法各論①(個人的法益)、zc-06 刑法各論②(社会的法益・国家的法益)
- 同じ考え方を使う:zc-02 刑法総論②(違法性阻却)、zh-05 経済的自由と人身の自由(罪刑法定主義の憲法上の根拠)
参考資料
- 刑法(明治 40 年法律第 45 号)── 43 条・44 条・45 条・47 条・54 条・60〜65 条(e-Gov 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045 )
- 最高裁判所「裁判例検索」── 練馬事件(最大判昭和 33 年 5 月 28 日)・スワット事件(最決平成 15 年 5 月 1 日)・クロロホルム事件(最決平成 16 年 3 月 22 日)・最判平成 30 年 3 月 22 日・最決平成 21 年 6 月 30 日・最大判昭和 49 年 5 月 29 日ほか
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野
- 山口厚『刑法総論』(有斐閣)、西田典之ほか編『刑法判例百選 I 総論』(有斐閣)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zc-04/ / 更新 2026-09-19