地方上級 / マクロ / za-07

更新 2026-09-14

経済成長理論(ハロッド=ドーマー・ソロー)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

経済成長は「長期の経済」の単元で、45 度線や IS-LM のような短期の需要分析とは頭の切りかえが必要です。地方上級・国家一般職では、ハロッド=ドーマーとソローの違い(資本係数が固定か可変か・成長経路が不安定か安定か)の正誤問題と、ソローの定常状態の計算(y = √k のような生産関数で k* を求める)が定番です。式は少ないので、「何を何で割るか」「定常状態では何が一定か」を正確に覚えるのが得点への近道です。


1. 成長会計 ── 成長率を要因に分ける

まずここだけ

生産関数 Y = A × F(K, L)(A:技術水準、K:資本、L:労働)のもとで、成長率は次のように分解できます。

ΔY/Y = ΔA/A + α × ΔK/K + (1 − α) × ΔL/L (α:資本分配率、1 − α:労働分配率。コブ=ダグラス型 Y = AKαL1−α のとき)

例:技術進歩率 1%、資本の増加率 4%、労働の増加率 1%、資本分配率 0.3。 成長率 = 1 + 0.3 × 4 + 0.7 × 1 = 2.9%

技術進歩率 ΔA/A は直接には測れないので、実際の成長率から資本と労働の寄与を引いた残差として求めます。これを全要素生産性(TFP)の伸びあるいはソロー残差と呼びます。

ここまでできれば十分

例:成長率 3%、資本の増加率 5%、労働の増加率 0%、資本分配率 0.4 → 技術進歩率 = 3 − 0.4 × 5 − 0.6 × 0 = 1%

「資本分配率 α をどちらの増加率にかけるか」を取り違えやすいので、資本分配率は資本の増加率にかける、と決めておきます。


2. ハロッド=ドーマー・モデル ── 3 つの成長率と不安定性

まずここだけ

ハロッド=ドーマー・モデルはケインズ経済学を長期に延ばしたもので、資本係数 v = K/Y が固定(資本と労働は代替できない)と仮定します。

成長率意味
現実成長率 G実際に実現した成長率ΔY/Y
保証成長率 Gw企業が設備をちょうど使い切って満足し続けられる成長率(財市場の均衡)s / v(s:貯蓄率、v:資本係数)
自然成長率 Gn労働力の増加率(と技術進歩率)が許す最大の成長率(完全雇用の成長)n(+ 技術進歩率)

例:貯蓄率 20%、資本係数 4 → 保証成長率 = 0.2 ÷ 4 = 5%

なぜ s/v か:貯蓄 S = sY がすべて投資 I になり、資本が ΔK = I = sY だけ増える。資本係数が v なら生産は ΔY = ΔK/v = sY/v 増える → ΔY/Y = s/v。

ここまでできれば十分

不安定性原理(ナイフ・エッジ):現実成長率 G が保証成長率 Gw から少しでもずれると、ずれが拡大していく

均衡成長の経路がナイフの刃のように細く、いったん外れると戻らない、という意味です。

Gw と Gn の食い違い:s、v、n はそれぞれ別に決まるので、Gw = Gn になる保証はありません。

関係起きること
Gw > Gn貯蓄(設備の伸び)に対して労働力の伸びが足りない → 現実成長率は Gn に抑えられ Gw を下回る → 設備過剰・慢性的な不況・失業
Gw < Gn労働力の伸びに設備の伸びが追いつかない → 現実成長率は Gw を上回りやすく景気過熱・インフレ傾向(資本不足)

もう一歩(発展)

ハロッド=ドーマーの不安定性は「資本係数が固定で、資本と労働の比率を変えられない」ことから来ています。ソローは、資本と労働が代替できる生産関数を置けば、資本係数が調整されて経済は安定した成長経路に収束する、と示しました。これが次のソロー・モデルです。


3. ソロー・モデル ── 定常状態への収束

まずここだけ

労働 1 人あたりで考えます。k = K/L(資本労働比率)、y = Y/L = f(k)(1 人あたり生産関数。k が増えると y は増えるが、増え方は小さくなっていく=収穫逓減)。

Δk = s f(k) − (n + δ) k (s:貯蓄率、n:人口(労働)成長率、δ:資本減耗率)

意味:1 人あたりの投資 s f(k) のうち、人口増加と資本減耗で目減りする分 (n + δ)k を差し引いた残りが、1 人あたり資本の純増。

定常状態:Δk = 0、つまり s f(k) = (n + δ) k となる k*。ここでは 1 人あたり資本も 1 人あたり所得も一定で、経済全体の Y と K は人口と同じ n% で成長します。

例:y = √k、s = 0.2、n + δ = 0.1。 0.2√k = 0.1k → √k = 2 → k = 4、y = 2。1 人あたり消費 = (1 − 0.2) × 2 = 1.6。

k が k より小さいときは s f(k) > (n + δ)k なので k は増え、大きいときは減る。だからどこから出発しても k に近づく(安定)。ハロッド=ドーマーとの決定的な違いです。

ここまでできれば十分

パラメータが変わるとどうなるか

変化定常状態の k・y成長率
貯蓄率 s の上昇上がる移行の途中だけ一時的に高まり、長期には元の n に戻る(水準効果はあるが成長率効果はない)
人口成長率 n の上昇下がる(1 人あたり)経済全体の成長率は n に等しいので上がる
資本減耗率 δ の上昇下がる変わらない
技術進歩(率 g)1 人あたり所得が g% で伸び続ける経済全体は n + g

「貯蓄率を上げれば長期の成長率が上がる」は誤りで、ソロー・モデルで長期の 1 人あたり成長を生むのは技術進歩だけです。技術進歩率をモデルの外から与えているので、外生的成長理論と呼ばれます。

黄金律:定常状態の 1 人あたり消費 c = f(k) − (n + δ)k を最大にする k。条件は f′(k) = n + δ(資本の限界生産力 = 人口成長率 + 減耗率)。貯蓄率が高すぎると資本は増えても消費は減る(動学的非効率)。

例:y = √k、n + δ = 0.1。f′(k) = 1/(2√k) = 0.1 → √k = 5 → kgold = 25。このときの貯蓄率は s = (n + δ)k/y = 0.1 × 25/5 = 0.5

収束仮説:同じ s・n・δ・技術を持つ国どうしなら、k が小さい貧しい国ほど成長率が高く、やがて同じ定常状態に追いつく(絶対的収束)。条件が違えば違う定常状態に向かう(条件付き収束)。

もう一歩(発展)

内生的成長理論:ソロー・モデルでは技術進歩を説明していません。1980 年代以降、技術進歩や知識の蓄積をモデルの中で決める理論が出ました。


4. よくある間違い

間違い正しくは
保証成長率 = 資本係数 ÷ 貯蓄率貯蓄率 ÷ 資本係数(s/v)
ハロッド=ドーマーでは経済は均衡成長経路に収束する少しでもずれると拡大する(不安定)。収束するのはソロー
ソローでは貯蓄率を上げると長期の成長率が上がる定常状態の所得水準は上がるが、長期の成長率はn(+ g)のまま
ソローの定常状態では GDP が成長しない1 人あたりが一定で、GDP 全体は人口成長率 n で伸びる
人口成長率が上がると 1 人あたり所得の定常値も上がる(n + δ)k の線が急になるので k・y は下がる
黄金律は 1 人あたり所得を最大にする1 人あたり消費を最大にする。条件は f′(k) = n + δ
資本分配率を労働の増加率にかける資本分配率 α は資本の増加率にかける
AK モデルでも貯蓄率は長期成長率に影響しないAK モデルでは収穫逓減がないので貯蓄率が高いほど成長率も高い

5. 解き方の型

  1. 成長会計:成長率 = 技術 + α × 資本増加率 + (1 − α) × 労働増加率。技術進歩率を聞かれたら引き算
  2. ハロッド:Gw = s/v。「不安定」「Gw > Gn なら不況」「資本係数固定」がキーワード
  3. ソローの定常状態:s f(k) = (n + δ)k を k について解く。y = √k なら両辺を k で割って s/√k = n + δ → √k = s/(n + δ)
  4. 定常状態での成長率:1 人あたりは 0(技術進歩があれば g)、全体は n(+ g)。貯蓄率は水準にしか影響しない
  5. 黄金律:f′(k) = n + δ。y = √k なら f′(k) = 1/(2√k)

6. 小テストへ

→ 小テスト(za-07

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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