地方上級 / マクロ / za-03

更新 2026-09-14

IS-LM 分析

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

地方上級・国家一般職のマクロ経済学で、45 度線分析(za-02)と並んで計算問題の中心になる単元です。「均衡利子率と国民所得を求めよ」「政府支出を増やしたときの所得の増加分はいくらか」「クラウディング・アウトの大きさはいくらか」という形で出題されやすく、連立方程式を 1 回解けば答えが出ます。曲線の形が特殊な場合(流動性のわななど)に政策が有効か無効かを問う知識問題も定番です。za-04 の貨幣市場と za-05 の AD-AS 分析は、この単元を土台にしています。


1. IS 曲線 ── 財市場が均衡する (Y, r) の組

まずここだけ

45 度線分析では投資 I を一定としましたが、現実には利子率 r が上がると投資は減ります(借入コストが上がるため)。そこで投資関数を I = I₀ − br(b > 0)とします。

財市場の均衡 Y = C + I + G に代入して整理すると、

Y = c₀ + cY + I₀ − br + G → (1 − c)Y = c₀ + I₀ + G − br

この式を満たす (Y, r) の組をつないだ線が IS 曲線です。r が上がると投資が減って Y が減るので、右下がりになります。

数値例:C = 20 + 0.8Y、I = 100 − 10r、G = 40 のとき 0.2Y = 160 − 10r → Y = 800 − 50r(これが IS 曲線)。

ここまでできれば十分

IS 曲線の位置傾きを動かす要因を分けて覚えます。

IS 曲線より右上の点では、利子率が高すぎて投資が足りず、生産に対して需要が不足しています(財市場の超過供給)。


2. LM 曲線 ── 貨幣市場が均衡する (Y, r) の組

まずここだけ

貨幣需要 L は 2 つの動機で決まります(ケインズの流動性選好説。詳しくは za-04)。

貨幣需要を L = kY − hr、実質貨幣供給を M/P とすると、貨幣市場の均衡は

M/P = kY − hr

これを満たす (Y, r) の組が LM 曲線です。Y が増えると取引需要が増え、貨幣供給が一定なら利子率が上がって投機的需要を減らさないと均衡しないので、右上がりになります。

数値例:L = 0.5Y − 20r、M = 300、P = 1 のとき 300 = 0.5Y − 20r → r = 0.025Y − 15、つまり Y = 600 + 40r。

ここまでできれば十分

LM 曲線より右下の点では、所得のわりに利子率が低く、貨幣需要が供給を上回っています(貨幣市場の超過需要)。


3. 同時均衡と政策の効果

まずここだけ

IS:Y=1000−100r と LM:Y=400+100r の交点 E(Y=700、r=3)

IS と LM の交点が、財市場と貨幣市場が同時に均衡する (Y*, r*) です。連立して解きます。

数値例(上の 2 つをそのまま使う): IS:Y = 800 − 50r、LM:Y = 600 + 40r → 800 − 50r = 600 + 40r → 90r = 200 → r = 20/9 ≒ 2.22、Y ≒ 689

試験の数値はもっときれいに割り切れるように作られています。たとえば IS:Y = 1,000 − 100r、LM:Y = 400 + 100r なら r = 3、Y = 700

ここまでできれば十分

政策の効果は「どの曲線が、どちらへ」で整理します。

政策動く曲線所得 Y利子率 r
政府支出増加・減税(拡張的財政政策)IS が右へ増加上昇
貨幣供給増加(拡張的金融政策)LM が右へ増加低下
増税・歳出削減IS が左へ減少低下
貨幣供給減少LM が左へ減少上昇

「所得が増えて利子率が下がるのは金融政策」「所得が増えて利子率が上がるのは財政政策」と、利子率の向きで見分けます。両方を同時に行い、利子率を変えずに所得だけ増やす組み合わせをポリシー・ミックスと呼びます。

もう一歩(発展)

政府支出の増加で IS が IS' へ 100 右に動くが、利子率が 3.5 に上がるため所得の増加は 50。差の 50 がクラウディング・アウト

クラウディング・アウト(押しのけ効果):政府支出を増やすと所得が増えて貨幣の取引需要が増え、利子率が上がります。利子率が上がると民間投資が減るので、所得の増加は 45 度線分析の乗数効果より小さくなります。この「利子率上昇で失われた所得の増加分」がクラウディング・アウトです。

数値例:IS:Y = 1,000 − 100r、LM:Y = 400 + 100r、限界消費性向 0.8(乗数 5)で G を 20 増やす。 IS は 100 右へ動き Y = 1,100 − 100r。新しい均衡は 1,100 − 100r = 400 + 100r → r = 3.5、Y = 750。 所得の増加は 750 − 700 = 50。利子率が一定なら 100 増えたはずなので、クラウディング・アウトは 100 − 50 = 50


4. 曲線の形が極端なとき

まずここだけ

政策の有効・無効を問う問題は、この 4 パターンに集約されます。

状況曲線の形財政政策金融政策
流動性のわな(貨幣需要の利子弾力性が無限大)LM が水平完全に有効(クラウディング・アウトなし)無効
古典派のケース(貨幣需要が利子率に反応しない)LM が垂直無効(完全なクラウディング・アウト)完全に有効
投資の利子非弾力性(投資が利子率に反応しない)IS が垂直完全に有効無効
投資の利子弾力性が無限大IS が水平無効完全に有効

覚え方は「動かす曲線が、動かない曲線と平行だと無効」です。金融政策は LM を動かすので、IS が垂直(LM と交差する位置が変わらない)や LM が水平(動かしても同じ線)だと所得は変わりません。財政政策は IS を動かすので、LM が垂直だと所得は変わりません。

ここまでできれば十分

流動性のわなは、利子率がきわめて低く、これ以上下がらないと皆が予想するため、貨幣供給を増やしても全額が貨幣として保有され(債券を買わない)、利子率が下がらない状態です。ケインズが想定した状況で、金融政策は無効、財政政策は利子率が上がらないぶんフルに所得を増やします。

古典派のケースでは、貨幣需要が取引需要だけ(L = kY)なので、所得は貨幣供給量だけで決まります(貨幣数量説)。財政政策で IS を右へ動かしても、利子率が上がって民間投資が同額減るだけで、所得は変わりません。


5. よくある間違い

間違い正しくは
財政政策で利子率は下がるIS の右シフトで利子率は上がる。下がるのは金融政策
LM 曲線は財市場の均衡LM は貨幣市場、IS が財市場。L(貨幣需要)= M(貨幣供給)の頭文字
流動性のわなでは財政政策も無効財政政策は完全に有効。無効なのは金融政策
クラウディング・アウト = 所得の増加分「利子率が一定なら増えたはずの所得」と「実際の増加」の
物価が上がると LM は右へ動く実質貨幣供給 M/P が減るのでへ動く
投資が利子率に反応しないと金融政策は有効IS が垂直になるので金融政策は無効

6. 解き方の型

  1. 財市場の式(Y = C + I + G)から IS を作る。I の中の r を残したまま Y について整理する
  2. 貨幣市場の式(M/P = L)から LM を作る。Y か r のどちらかについて整理する
  3. 2 本を連立して r を先に求め、IS か LM に戻して Y を出す
  4. 政策の問題は「変化後の IS(または LM)」を作って同じ手順で解き、変化前との差をとる
  5. クラウディング・アウトは「乗数 × ΔG − 実際の ΔY」
  6. 有効・無効の判別は「動かす曲線と、動かない曲線が平行なら無効」

7. 小テストへ

→ 小テスト(za-03

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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