地方上級 / 国際関係 / zi-04
安全保障と軍縮・国際法(集団安全保障・核軍縮・PKO・国際裁判)
この単元でできるようになること
- 勢力均衡と集団安全保障の違いを、国連憲章の条文(2 条 4 項・第 7 章・51 条)とつなげて説明できる
- PKO の 3 原則と憲章上の位置づけ(「6 章半」)、多国籍軍との違い、日本の PKO 協力法(1992 年)と参加 5 原則を言える
- 核軍縮の条約(NPT・CTBT・核兵器禁止条約・INF 全廃条約・新 START)を、年・中身・発効しているか・日本の立場の 4 点で区別できる
- 国際法の基礎(条約と慣習国際法・国家承認・主権免除・外交特権・海洋法の 12 海里と 200 海里)を事例に当てはめられる
- 国際司法裁判所(ICJ)と国際刑事裁判所(ICC)を、裁く相手・管轄の条件・日本や米中露の参加で区別できる
- 日本の安全保障政策(日米安保 1951 年・1960 年、、非核三原則、2015 年安保法制、2022 年の安保 3 文書)を年つきで並べられる
試験での位置づけ
この単元は「制度と条文の知識」が中心です。地方上級・国家一般職では、国連憲章の章と条文番号、条約の採択年と発効の有無、日本が参加しているかどうかを入れかえた 5 肢が出ます。理論(リアリズム・リベラリズム)は zp-07、国連の機関の仕組みは zi-03、社会科学レベルの全体像は zk-03 で扱うので、ここでは安全保障・軍縮・国際法・日本の防衛政策に絞ります。
出題の型で多いのは次の 3 つです。
- 「勢力均衡・集団安全保障・集団的自衛」の説明を入れかえる
- 「NPT は発効済み・ は未発効・核兵器禁止条約は発効済みだが日本は不参加」の組み合わせを崩す
- 「ICJ は国家・ICC は個人」「ICJ は当事国の同意が必要」を逆にする
1. 集団安全保障と国連憲章 ── 武力行使はいつ許されるか
まずここだけ
勢力均衡は「敵を想定して同盟を組み、力をつり合わせる」仕組み、集団安全保障は「敵を想定せず、対立する国も同じ組織に入れ、侵略した国を全員で制裁する」仕組みです。第一次世界大戦を招いたのが勢力均衡(同盟網)だという反省から、国際連盟(1920 年)で初めて集団安全保障が採用され、国際連合(1945 年)に引き継がれました。国連憲章の骨組みは次のとおりです。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 2 条 4 項 | 加盟国は武力による威嚇または武力の行使を慎まなければならない(武力不行使原則) |
| 第 6 章(33 条〜) | 紛争の平和的解決。交渉・仲介・調停・仲裁・司法的解決など。安保理は勧告ができる |
| 第 7 章(39 条〜) | 平和に対する脅威・破壊・侵略行為への強制措置。39 条で安保理が認定 → 41 条 非軍事的措置(経済制裁・外交関係の断絶)→ 42 条 軍事的措置 |
| 43 条 | 加盟国が安保理と特別協定を結んで兵力を提供する。この協定は一度も結ばれていないため、憲章が想定した「国連軍」は存在しない |
| 51 条 | 武力攻撃が発生した場合、安保理が必要な措置をとるまでの間、個別的または集団的自衛の固有の権利を認める |
つまり武力行使が正当化されるのは、原則として ①安保理の決定にもとづく強制措置(第 7 章)と ②自衛権(51 条)の 2 つだけ、と覚えます。
ここまでできれば十分
個別的自衛権は自国が攻撃されたときに反撃する権利、集団的自衛権は自国が直接攻撃されていなくても、密接な関係にある他国への武力攻撃を自国への攻撃とみなして共同で反撃する権利で、どちらも 51 条に明文があります(「慣習法上の権利にすぎない」は誤り)。NATO(北大西洋条約 5 条)や日米安保条約は集団的自衛権を根拠にした集団防衛の仕組みで、国連の集団安全保障とは別物です。
憲章 43 条の特別協定がないため、実際の武力行使は「安保理が加盟国に武力行使を許可(授権)する」形で行われてきました。湾岸戦争(1991 年)で、安保理決議 678(1990 年)が「必要なあらゆる手段」をとることを認め、米国中心の多国籍軍(指揮は国連ではなく参加国)がイラクをクウェートから撤退させたのが典型です。朝鮮戦争(1950 年)の「国連軍」も、ソ連欠席のなか安保理が勧告した多国籍軍であり、43 条の国連軍ではありません。
冷戦中は米ソの拒否権で安保理が動かないことが多く、1950 年に総会が「平和のための結集決議」を採択し、安保理が機能しないときは総会が緊急特別総会を開いて集団的措置を勧告できるとしました(勧告であって拘束力はない)。
2. PKO ── 国連平和維持活動
まずここだけ
PKO(国連平和維持活動)は、停戦後の紛争地域に国連が部隊や要員を派遣し、停戦の監視・兵力の引き離し・選挙の監視などを行う活動です。憲章に明文の規定はなく、6 章(平和的解決)と 7 章(強制措置)の中間にあることから「6 章半」の活動と呼ばれます。1956 年のスエズ危機で派遣された第一次国連緊急軍(UNEF)が本格的な PKO の始まりとされます。伝統的な 3 原則は次のとおりです。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 当事者の同意 | 受入国と紛争当事者の同意を得て展開する(押しつけない) |
| 中立(不偏) | 特定の当事者に肩入れしない |
| 武器使用は自衛のため(必要最小限) | 強制措置ではないので、武力で決着をつけない |
ここまでできれば十分
| PKO | 多国籍軍 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 憲章に明文なし(6 章半)。安保理(まれに総会)の決議で設置 | 安保理決議による武力行使の許可(第 7 章) |
| 指揮 | 国連(事務総長のもと) | 参加国 |
| 同意 | 当事者の同意が前提 | 相手の同意は不要(強制) |
| 武器使用 | 自衛など必要最小限 | 任務達成のための武力行使 |
| 例 | UNEF(1956 年)、UNTAC カンボジア(1992〜93 年)、UNMISS 南スーダン(2011 年〜) | 湾岸戦争(1991 年) |
冷戦後は、停戦監視だけでなく選挙・行政・復興まで担う複合型 PKO(カンボジアの UNTAC が代表例)が増え、住民保護のために武力を使うことを認める「強力な PKO(ロバスト PKO)」も出てきました。
日本の PKO 参加は、湾岸戦争で資金協力しか行えず「人的貢献がない」と批判されたことを機に、1992 年にPKO 協力法(国際平和協力法)が成立し、同年カンボジア(UNTAC)に自衛隊が初めて派遣されて始まりました(湾岸戦争後のペルシャ湾への掃海部隊派遣は PKO ではない)。参加にはPKO 参加 5 原則があり、停戦合意がなければ派遣できません。
- 紛争当事者間で停戦合意が成立している
- 受入国と紛争当事者が日本の参加に同意している
- 中立の立場を守る
- 以上の条件が満たされなくなった場合は撤収できる
- 武器の使用は要員の生命等の防護のための必要最小限
2015 年の平和安全法制で PKO 協力法も改正され、離れた場所の他国の要員や NGO 職員を助けに行く「駆け付け警護」と、それに伴う武器使用が認められました(南スーダン派遣部隊に 2016 年に任務付与)。5 原則は維持されています。
3. 軍縮と軍備管理 ── 核をめぐる条約
まずここだけ
軍縮は兵器を減らす・なくすこと、軍備管理は兵器の数や配備を互いに制限して安定を保つこと(減らすとは限らない)です。核の 5 条約を「年・中身・発効しているか・日本」で押さえます。
| 条約 | 年 | 中身 | 発効 | 日本 |
|---|---|---|---|---|
| NPT(核兵器不拡散条約) | 1968 年署名・1970 年発効 | 核兵器国を米・英・仏・ソ(露)・中の 5 か国に限定。非核兵器国は保有せず IAEA の保障措置(査察)を受ける。核兵器国は核軍縮交渉の義務(6 条)。原子力の平和利用の権利 | 発効済み。1995 年に無期限延長。5 年ごとに再検討会議 | 1970 年署名・1976 年批准 |
| CTBT(包括的核実験禁止条約) | 1996 年採択 | 爆発を伴うすべての核実験を禁止(地下も含む) | 未発効。発効には特定 44 か国の批准が必要で、米・中などが未批准 | 1997 年批准 |
| 核兵器禁止条約 | 2017 年採択・2021 年発効 | 核兵器の開発・保有・使用・威嚇などを全面禁止 | 発効済み | 不参加(核兵器国もすべて不参加) |
| INF 全廃条約(中距離核戦力全廃条約) | 1987 年署名(米ソ) | 射程 500〜5,500 km の地上発射ミサイルを全廃 | 米国が離脱を通告し 2019 年失効 | 当事国でない |
| 新 START(新戦略兵器削減条約) | 2010 年署名・2011 年発効(米露) | 配備戦略核弾頭を 1,550 発以下などに制限 | 2021 年に 5 年延長 → 2026 年 2 月 5 日に失効。後継条約は未締結(2026 年 9 月時点) | 当事国でない |
NPT の 3 本柱「核不拡散・核軍縮・原子力の平和利用」と、「NPT は参加・核兵器禁止条約は不参加」という日本の立場が、そのまま選択肢の材料になります。
ここまでできれば十分
- IAEA(国際原子力機関、1957 年設立):原子力の平和利用の促進と、軍事転用を防ぐ保障措置(査察)を担う。NPT の非核兵器国は IAEA と保障措置協定を結ぶ義務がある。国連の専門機関ではなく関連機関
- PTBT(部分的核実験禁止条約、1963 年):大気圏内・宇宙空間・水中での核実験を禁止。地下は禁止していないのが CTBT との違い
- 北朝鮮は 2003 年に NPT からの脱退を宣言し、2006 年以降核実験を行った。インド・パキスタン・イスラエルは NPT に加入していない
- 核兵器禁止条約は、核兵器国の反対のなか非核兵器国と NGO(ICAN。2017 年ノーベル平和賞)が主導して成立した。日本は「核兵器国が参加していない条約では実効性がない」「米国の核抑止に依存している」として署名・批准していない
- 米露の戦略核の条約は、SALT(1970 年代・制限)→ START(1991 年署名・削減)→ 新 START(2010 年)の流れ。新 START の失効により、米露間の核軍備管理条約は 2026 年 9 月時点で存在しない
核以外の主な条約もセットで問われます。
| 条約 | 採択・発効 | 中身 | 日本 |
|---|---|---|---|
| 生物兵器禁止条約 | 1972 年署名・1975 年発効 | 生物兵器の開発・生産・貯蔵を禁止。検証制度がない | 締約国 |
| 化学兵器禁止条約 | 1993 年署名・1997 年発効 | 開発・生産・貯蔵・使用を禁止し、既存の兵器を廃棄。OPCW(化学兵器禁止機関)が検証 | 締約国(1995 年批准) |
| 対人地雷禁止条約(オタワ条約) | 1997 年採択・1999 年発効 | 対人地雷の使用・生産・貯蔵を禁止し、廃棄を義務づけ。NGO が推進 | 締約国(1998 年批准) |
| クラスター弾に関する条約(オスロ条約) | 2008 年採択・2010 年発効 | クラスター弾の使用・生産・貯蔵を禁止 | 締約国 |
対人地雷禁止条約もクラスター弾条約も米・露・中は非締約国です。「NGO が主導した」「主要な軍事大国が入っていない」が共通点で、核兵器禁止条約と同じ構図です。
4. 国際法の基礎 ── 条約・慣習法・国家・海洋
まずここだけ
国際法の主な法源は条約と慣習国際法の 2 つです(ICJ 規程 38 条は、そのほかに「法の一般原則」、補助手段として判例と学説をあげる)。
| 条約 | 慣習国際法 | |
|---|---|---|
| 成り立ち | 国家間の文書による合意(名称は条約・協定・規約・憲章・議定書など何でもよい) | 国家の一般的な慣行と、それを法だと認める意識(法的確信)の 2 つがそろって成立 |
| 拘束される国 | 当事国だけ | 原則としてすべての国(成立時から一貫して反対し続けた国は除く) |
| 例 | 国連憲章、海洋法条約、NPT | 公海自由の原則、外交使節の不可侵(多くは後に条約化) |
条約の基本ルールをまとめたのが条約法に関するウィーン条約(1969 年採択・1980 年発効。日本は 1981 年加入)です。「合意は守られなければならない」(パクタ・スント・セルヴァンダ、26 条)、国内法を理由に条約の不履行を正当化できない(27 条)、強行規範(ユス・コーゲンス)に反する条約は無効(53 条)などを定めます。条約は署名 → 国内手続きを経て批准 → 所定の数の批准で発効の順で、署名しただけでは拘束されません(CTBT が未発効なのはこのため)。
ここまでできれば十分
国家と承認:国家の要件は「領域・住民(国民)・実効的な政府」(モンテビデオ条約はこれに外交能力を加える)。他国による国家承認は新国家の成立を確認する行為にすぎないとする宣言的効果説が通説で、承認によって初めて国家になる(創設的効果説)とはみません。国家そのものの承認(国家承認)と、革命などで交代した政府の承認(政府承認)は別で、日本が 1972 年に中華人民共和国政府を「中国の唯一の合法政府」と認めたのは政府承認の例です。
主権免除(国家免除):国家は他国の裁判所の裁判権に服さないという原則。現在は商業的な行為には免除を認めない制限免除主義が主流で、日本も 2009 年に「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」で明文化しました。
外交関係:外交関係に関するウィーン条約(1961 年)が、外交官の身体の不可侵、接受国の刑事裁判権からの免除、公館の不可侵(接受国の官吏は大使の同意なく立ち入れない)などを定めます。接受国は理由を示さずに外交官を「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)として退去を求めることができます。領事は別に領事関係に関するウィーン条約(1963 年)があります。
海洋法:国連海洋法条約(1982 年採択・1994 年発効。日本は 1996 年批准)が「海の憲法」です。
| 区分 | 幅(基線から) | 沿岸国の権利 |
|---|---|---|
| 領海 | 12 海里まで | 領土と同じく主権が及ぶ。ただし外国船の無害通航権を認める |
| 接続水域 | 24 海里まで | 通関・出入国管理・衛生などの法令違反を防止・処罰できる |
| 排他的経済水域(EEZ) | 200 海里まで | 水産・鉱物などの天然資源の探査・開発・管理の主権的権利。航行・上空飛行は自由 |
| 大陸棚 | 原則 200 海里(地形により延長可) | 海底とその下の資源の主権的権利 |
| 公海 | 上記の外側 | どの国の主権も及ばない(公海自由の原則)。旗国主義 |
1 海里は 1,852 m です。国際海峡には通過通航権が認められ、海洋法条約の紛争は国際海洋法裁判所(ハンブルク)などで解決します。
5. 国際裁判 ── ICJ と ICC・国際人道法・難民
まずここだけ
| 国際司法裁判所(ICJ) | 国際刑事裁判所(ICC) | |
|---|---|---|
| 設立 | 1945 年。国連の主要機関(国際連盟時代の常設国際司法裁判所を引き継ぐ) | 1998 年ローマ規程採択・2002 年発効。国連から独立した条約上の機関 |
| 所在地 | ハーグ | ハーグ |
| 裁く相手 | 国家どうしの紛争 | 個人 |
| 対象 | 領土・海洋境界・条約解釈など国家間の法的紛争。総会・安保理などの要請で勧告的意見も出す | 集団殺害犯罪・人道に対する犯罪・戦争犯罪・侵略犯罪の 4 類型 |
| 管轄の条件 | 当事国双方の同意が必要(合意付託、条約の裁判条項、選択条項受諾宣言のいずれか) | 締約国の領域内で行われた犯罪または締約国民による犯罪など。安保理による付託も可。国内裁判所が裁けない・裁く意思がないときに補う補完性の原則 |
| 裁判官 | 15 人・任期 9 年 | 18 人・任期 9 年 |
| 日本 | 加盟(ICJ 規程は憲章の一部) | 2007 年加入 |
| 米・中・露 | 加盟 | いずれも非締約国 |
ICJ の判決は当事国を拘束し、上訴はできません。判決に従わない場合、相手国は安保理に訴えることができます(憲章 94 条)。ただし相手国の同意がなければ管轄権がなく、日本が竹島問題の ICJ 付託を提案しても韓国が応じないため裁判にならないのはこのためです。
ここまでできれば十分
国際人道法(武力紛争法):戦争そのものの是非ではなく、戦争のやり方を規制する法です。中心はジュネーヴ諸条約(1949 年。傷病者・捕虜・文民の保護)と 1977 年の追加議定書で、赤十字国際委員会(ICRC)が推進役です。戦闘員と文民を区別する原則、不必要な苦痛を与える兵器の禁止などを定め、重大な違反は「戦争犯罪」として ICC の管轄になります。
難民条約(1951 年。1967 年の議定書で地理・時間の制限を撤廃):人種・宗教・国籍・特定の社会的集団の構成員であること・政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるために国外にいる人を難民と定義し(経済的な理由は含まない)、迫害のおそれのある国へ送り返してはならない(ノン・ルフールマン原則)と定めます。日本は 1981 年に加入(1982 年発効)し、これに合わせて国民年金や児童手当の国籍要件を撤廃しました。支援機関は UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)です。国内にとどまったまま避難している「国内避難民」は条約上の難民ではありません。
6. 日本の安全保障政策
まずここだけ
日本の安全保障の 2 本柱は、憲法 9 条のもとでの専守防衛と日米安全保障条約です。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1950 年 | 朝鮮戦争を機に警察予備隊(→ 1952 年保安隊 → 1954 年自衛隊・防衛庁) |
| 1951 年 | サンフランシスコ平和条約と同じ日に日米安全保障条約(旧安保)。米軍駐留を認めるが、米国の防衛義務は明記されず |
| 1960 年 | 新安保条約(岸内閣)。5 条:日本の施政下の領域への武力攻撃に共同で対処(米国の防衛義務)。6 条:米軍への基地提供。事前協議制。安保闘争ののち自然承認 |
| 1967 年 | 非核三原則(持たず・つくらず・持ち込ませず。佐藤内閣。1971 年に国会決議)。武器輸出三原則も同年 |
| 1976 年 | 防衛計画の大綱。防衛費 GNP 比 1% 枠(1987 年に撤廃) |
| 1978 年 | 日米防衛協力のための指針(ガイドライン)。1997 年(周辺事態)・2015 年に改定 |
| 1992 年 | PKO 協力法。カンボジアへ派遣 |
| 1999 年 | 周辺事態法 |
| 2001 年 | テロ対策特別措置法(インド洋での給油支援) |
| 2003 年 | 有事関連 3 法(武力攻撃事態対処法など)。イラク復興支援特別措置法 |
| 2007 年 | 防衛庁が防衛省に |
| 2013 年 | 国家安全保障会議(NSC)設置。初の国家安全保障戦略。特定秘密保護法 |
| 2014 年 | 武器輸出三原則にかわる防衛装備移転三原則。7 月に集団的自衛権の限定的行使を認める閣議決定 |
| 2015 年 | 平和安全法制(安保法制)成立(2016 年施行)。存立危機事態での限定的な集団的自衛権の行使、重要影響事態法(周辺事態法を改正・地理的制約を撤廃)、国際平和支援法(恒久法) |
| 2022 年 | 12 月に安保 3 文書を改定:①国家安全保障戦略(外交・防衛の最上位文書。2013 年策定・2022 年改定)②国家防衛戦略(旧「防衛計画の大綱」)③防衛力整備計画(旧「中期防衛力整備計画」)。相手のミサイル発射基地などをたたく反撃能力(スタンド・オフ防衛能力)の保有を明記(専守防衛の考え方は変えないと説明)、防衛関係費を 2027 年度に GDP 比 2% の水準へ |
ここまでできれば十分
専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も保持する防衛力も自衛のための必要最小限にとどめる受動的な防衛戦略の姿勢です。政府は 9 条のもとでも自衛権は否定されないとし、自衛隊は「必要最小限度の実力」であって 9 条 2 項の「戦力」ではないと解釈しています。
集団的自衛権について、政府は長く「国際法上は保有するが、憲法上は行使できない」と解釈してきましたが、2014 年 7 月の閣議決定と 2015 年の平和安全法制で武力行使の新三要件を定めました。
- 日本への武力攻撃、または日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある(存立危機事態)
- これを排除し国の存立を全うし国民を守るために他に適当な手段がない
- 必要最小限度の実力行使にとどまる
「集団的自衛権を全面的に認めた」「国連の集団安全保障措置としての武力行使が可能になった」という肢は誤りで、あくまで限定的な容認であり、集団安全保障としての武力行使は認めていません。
文民統制(シビリアン・コントロール):内閣総理大臣その他の国務大臣は文民でなければならず(憲法 66 条 2 項)、自衛隊の最高指揮監督権は内閣総理大臣にあります。防衛出動には原則として国会の事前承認が必要です。
7. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 集団安全保障は同盟の一種で、NATO はその例 | 集団安全保障は敵を想定せず全加盟国で制裁する仕組み(国連)。NATO は集団的自衛権にもとづく集団防衛 |
| 憲章 43 条の特別協定により国連軍が組織されている | 特別協定は一度も結ばれておらず、憲章が想定した国連軍は存在しない。実際は多国籍軍への武力行使の許可(指揮は参加国) |
| PKO は憲章第 7 章の強制措置 | 憲章に明文がなく「6 章半」。当事者の同意・中立・自衛のための武器使用が原則 |
| 日本の PKO 参加は湾岸戦争が最初/停戦合意がなくても派遣できる | 1992 年の PKO 協力法とカンボジア派遣が最初。湾岸戦争は資金協力。停戦合意は参加 5 原則の 1 つ |
| CTBT は発効している | 未発効。NPT と核兵器禁止条約は発効済み |
| 日本は核兵器禁止条約を批准した | 不参加。NPT・CTBT には参加 |
| INF 全廃条約・新 START は現在も有効 | INF は 2019 年失効、新 START は 2026 年 2 月失効 |
| NPT は核兵器国に軍縮義務を課していない | 6 条に核軍縮交渉の義務 |
| 慣習国際法は認めた国だけを拘束する | 原則すべての国を拘束。当事国だけを拘束するのは条約 |
| 条約は署名すれば拘束される | 批准と発効が必要 |
| 国家承認は創設的効果をもつのが通説 | 宣言的効果説が通説 |
| 排他的経済水域には沿岸国の主権が及ぶ/領海は 3 海里 | 資源についての主権的権利。航行・上空飛行は自由。主権が及ぶのは領海(12 海里) |
| ICJ は個人を裁き、ICC は国家を裁く | 逆。ICJ =国家、ICC =個人 |
| ICJ は一方の当事国の訴えで裁判が始まる | 双方の同意が必要 |
| 米国は ICC に加盟/ICC の管轄は国内裁判所に優先 | 米・中・露は非締約国。日本は 2007 年加入。補完性の原則 |
| 難民条約に日本は加入していない | 1981 年加入 |
| 米国の日本防衛義務は 1951 年の旧安保に明記 | 1960 年の新安保条約 5 条 |
| 非核三原則は新安保条約に盛り込まれた | 1967 年の表明と 1971 年の国会決議。条約ではない |
| 2015 年の安保法制で集団的自衛権を全面的に容認 | 存立危機事態に限る限定的容認(新三要件) |
| 安保 3 文書で防衛費を GDP 比 1% 以内に | 2027 年度に 2% の水準が目標 |
8. 覚え方の型
- 安全保障の型は「敵を想定するか」で分ける:想定する(勢力均衡・同盟=集団的自衛)/しない(集団安全保障=国連)
- 武力行使が許されるのは「第 7 章の決定」と「51 条の自衛権」の 2 つだけ。PKO はそのどちらでもない「6 章半」
- 核の条約は「発効しているか」で 2 つに分ける:発効(NPT 1970・核兵器禁止条約 2021)/未発効(CTBT)/失効(INF 2019・新 START 2026)。日本は NPT ○・CTBT ○・核兵器禁止条約 ×
- 海は「12・24・200」:領海 12 海里(主権)・接続水域 24 海里・EEZ 200 海里(資源の主権的権利)
- 裁判所は「ICJ =国家・同意・国連の機関/ICC =個人・補完性・条約の機関(米中露は不参加)」
- 日本の防衛は「51・60・67・92・2015・2022」の 6 つの年で並べる:旧安保・新安保・非核三原則・PKO 協力法・安保法制・安保 3 文書
9. 小テストへ
→ 小テスト(zi-04)
関連する単元
- 前提:zk-03 国際政治(国連・安全保障・国際法)、zp-07 国際政治の理論(リアリズム・リベラリズム)
- 次に進む:zi-03 国際機構(国連の仕組み・EU・地域機構・国際経済機構)、zi-05 日本の外交と国際経済(戦後日本外交・ODA・南北問題・グローバル化)
- 同じ考え方を使う:zh-01 憲法総論と人権総論(憲法の基本原理・平和主義)、zk-01 日本国憲法の基本と人権、zi-02 国際政治史②(冷戦の始まりから終結・ポスト冷戦)
参考資料
- 国際連合憲章(国連広報センター)、国際司法裁判所規程、国際刑事裁判所に関するローマ規程
- 核兵器の不拡散に関する条約、包括的核実験禁止条約、核兵器の禁止に関する条約、化学兵器禁止条約、対人地雷禁止条約、クラスター弾に関する条約(外務省「軍縮・不拡散」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/ )
- 新 START の失効について:防衛研究所「NIDS コメンタリー第 418 号 新 START の期限失効と核軍備管理」(2026 年 2 月) https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/pdf/commentary418.pdf
- 条約法に関するウィーン条約、外交関係に関するウィーン条約、国連海洋法条約、難民の地位に関する条約
- 日本国憲法、日米安全保障条約、国際平和協力法(PKO 協力法)、平和安全法制(内閣官房「平和安全法制等の整備について」 https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/housei_seibi.html )
- 国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画(2022 年 12 月閣議決定。内閣官房 https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou.html )、防衛省『防衛白書』
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(国際関係)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/seiji/zi-04/ / 更新 2026-09-20