地方上級 / 政治学 / zp-02
更新 2026-09-14
政治思想(社会契約説〜現代の自由主義と民主主義論)
この単元でできるようになること
- ホッブズ・ロック・ルソーの社会契約説を「自然状態 → 契約の内容 → 政府のあり方」の 3 点で比べられる
- マキァヴェリ・ボダン・モンテスキュー・バーク・トクヴィル・J. S. ミルの主張と著書を対応させられる
- シュミットの友敵論、バーリンの 2 つの自由、ハイエクの自生的秩序など 20 世紀の思想を説明できる
- ロールズ・ノージック・コミュニタリアニズムの正義論の対立を整理できる
- シュンペーターのエリート民主主義、ダールのポリアーキー、参加民主主義・熟議民主主義を区別できる
試験での位置づけ
政治思想は「誰が・どの本で・何を言ったか」を 5 択の正誤文で問う形が中心です。高校公共(kk-01・kk-02)で学ぶ社会契約説が土台になり、公務員試験ではそこにバーク・トクヴィル・シュミット・バーリン・ロールズ・ダールなどが加わります。誤りの選択肢は「ホッブズの主張をロックのものとして書く」「消極的自由と積極的自由を入れかえる」のように、対になる思想家どうしを入れかえるものがほとんどなので、対の形で覚えます。
1. 近代政治思想の出発点 ── マキァヴェリとボダン
まずここだけ
| 人物 | 著書 | 主張 |
|---|
| マキァヴェリ | 『君主論』 | 政治を宗教や道徳から切り離し、国家の維持のためには君主は「ライオンの力とキツネの狡知」を使い分けるべきだとした。近代政治学の祖とされる |
| ボダン | 『国家論』 | 主権の概念を体系化。主権は「国家の絶対的で永続的な権力」で、立法権を中心とし、対内的に最高・対外的に独立。王権を擁護した |
2. 社会契約説 ── ホッブズ・ロック・ルソー
まずここだけ
3 人とも「国家は人々の契約によってつくられた」と考えますが、自然状態の描き方と契約後の政府の姿が違います。
| ホッブズ | ロック | ルソー |
|---|
| 著書 | 『リヴァイアサン』(1651) | 『統治二論(市民政府二論)』(1690) | 『社会契約論』(1762) |
| 自然状態 | 「万人の万人に対する闘争」 | おおむね平和だが、権利の保障が不安定 | 自由・平等で幸福だったが、私有財産で不平等が生じた |
| 契約の内容 | 自然権を主権者に全面譲渡し、絶対的な権力に服従 | 生命・自由・財産の自然権を守るため、政府に権力を信託 | 各人が全員に自己を譲渡し、一般意志に従う |
| 政府のあり方 | 絶対王政の擁護(結果として) | 抵抗権(革命権)、立法権優位の権力分立、間接民主制 | 人民主権、直接民主制(代表制を否定) |
| 影響 | ── | 名誉革命の正当化、アメリカ独立宣言 | フランス革命 |
ここまでできれば十分
- ホッブズは自然権を「自己保存の権利」とし、それを守るためにこそ人々は権利を譲渡して国家(リヴァイアサン)をつくると論じた。絶対王政を「契約」から根拠づけた点が、王権神授説との違い
- ロックは所有権(自分の身体と労働の成果)を重視し、政府が信託に反すれば人民は政府をつくりかえる権利(抵抗権)を持つとした。権力分立は立法権と執行権(および連合権)で、司法権を独立させる三権分立はモンテスキューまで待つ
- ルソーの一般意志は、公共の利益をめざす意志で、私的利益の総和である全体意志とは区別される。「イギリス人は選挙のときだけ自由で、選挙が終われば奴隷になる」と代表制を批判した
もう一歩(発展)
- モンテスキュー『法の精神』(1748):立法・執行・司法の三権分立。権力の抑制と均衡。イギリスの制度を理想化して描いた
- ベンサム:「最大多数の最大幸福」の功利主義。自然権や社会契約は虚構だとして退けた(kk-01)
3. 保守主義・自由主義・民主主義への反省 ── バーク・トクヴィル・ミル
まずここだけ
| 人物 | 著書 | 主張 |
|---|
| バーク | 『フランス革命の省察』(1790) | 抽象的な理性で社会を一挙に作りかえる革命を批判。長い時間をかけて受け継がれた伝統・慣習・偏見(先入見)にこそ知恵が宿るとする保守主義の祖。議員は選挙区の使い走りではなく国民全体の代表だとするブリストル演説でも知られる |
| トクヴィル | 『アメリカのデモクラシー』(1835・40) | 平等化は止められない歴史の流れだが、多数の暴政と、政治への無関心が生む民主的専制の危険がある。それを防ぐのが自発的結社・地方自治・陪審制・宗教 |
| J. S. ミル | 『自由論』(1859)『代議制統治論』(1861) | 個人の自由への干渉が許されるのは他人への危害を防ぐ場合だけ(他者危害原理)。多数の専制に対して少数意見を守るため比例代表制を支持し、教育のある人に複数票を与える複数投票制も論じた |
ここまでできれば十分
- バークの保守主義は「変化を一切拒む」のではなく、「保存するための改革」を認める。フランス革命は批判したが、アメリカ植民地の主張には理解を示した
- トクヴィルは「アメリカでは多数者の意見に逆らいにくい」空気そのものを多数の暴政と呼んだ。この観察は、後の大衆社会論(リースマン、zp-06)につながる
- ミルは代議制を最善の統治形態としつつ、有権者の政治参加が人格を陶冶する教育的効果を重視した。この点は後の参加民主主義の源流になる
4. 20 世紀の自由主義と民主主義批判
まずここだけ
| 人物 | 著書 | 主張 |
|---|
| シュミット | 『政治的なものの概念』『現代議会主義の精神史的状況』 | 政治の本質は友と敵の区別。討論による合意を建前とする議会主義と、同一性を原理とする民主主義は別物だとして自由主義的議会制を批判。例外状態において決断する者が主権者だとする決断主義 |
| ハイエク | 『隷従への道』(1944) | 計画経済は全体主義に行き着く。市場や法は誰かが設計したものではなく、人々の営みから自然に生まれた自生的秩序。設計主義的な合理主義を批判 |
| バーリン | 「二つの自由概念」(1958) | 消極的自由(〜からの自由:他者からの干渉がないこと)と積極的自由(〜への自由:自分が自分の主人であること)を区別。積極的自由は「真の自己」の名で強制を正当化しかねないと警告し、消極的自由を擁護 |
| アーレント | 『全体主義の起原』『人間の条件』 | 大衆社会の孤立した個人が全体主義の土壌になる。人間の営みを労働・仕事・活動に分け、他者と言葉で関わる活動こそ政治の本質とした |
「消極的自由=干渉の不在」「積極的自由=自己支配」の入れかえは頻出です。
ここまでできれば十分 ── 正義論をめぐる対立
| 立場 | 人物・著書 | 主張 |
|---|
| リベラリズム | ロールズ『正義論』(1971) | 原初状態で無知のヴェールをかぶった人々が選ぶ原理として、①平等な自由の原理、②公正な機会均等原理と格差原理(不平等は最も不遇な人の利益になる場合だけ許される)を導く |
| リバタリアニズム | ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』(1974) | 個人の権利を絶対視し、国家の役割は暴力・盗み・詐欺からの保護と契約の履行に限る最小国家。ロールズ型の再分配は個人の所有権の侵害 |
| コミュニタリアニズム | サンデル、マッキンタイア、ウォルツァー | ロールズの想定する「共同体から切り離された自己(負荷なき自己)」を批判。人は共同体の価値や物語に埋め込まれた存在で、共通善が重要 |
- ロールズの 2 原理には優先順位があり、第 1 原理(自由)が第 2 原理に優先する。「不平等を一切認めない」のではない点に注意
- ノージックが批判したのはロールズの「結果の分配パターン」で、ノージック自身は取得と移転の手続きが正しければ結果は正しいとする権原理論を唱えた
5. 現代の民主主義論
まずここだけ
| 人物 | 著書 | 主張 |
|---|
| シュンペーター | 『資本主義・社会主義・民主主義』(1942) | 民主主義とは「人民の意志の実現」ではなく、指導者の地位をめぐって競争する複数のエリートを、人民が投票で選ぶ手続きにすぎない(競争的エリート民主主義) |
| ダール | 『ポリアーキー』(1971) | 理想としての民主主義(デモクラシー)と区別して、現実に達成可能な体制をポリアーキーと呼ぶ。公的異議申立て(自由化)と包括性(参加)の 2 つの軸で体制を分類し、両方が高い体制がポリアーキー |
| ペイトマン | 『参加と民主主義理論』 | エリート民主主義を批判し、職場や地域での日常的な参加が市民を育てるとする参加民主主義 |
| ハーバーマス | 『公共性の構造転換』ほか | 対等な市民が公共圏で理由を示し合って合意をつくる討議(熟議)を民主主義の核心とする。熟議民主主義の理論的支柱 |
| レイプハルト | 『多元社会のデモクラシー』『民主主義対民主主義』 | 言語・宗教で分断された社会でも、エリート間の協調(大連合・相互拒否権・比例制・自治)で安定する多極共存型民主主義。のちに多数決型とコンセンサス型の対比へ発展(zp-03) |
ここまでできれば十分
- ダールの 2 軸:自由化が低く包括性も低い体制は閉鎖的抑圧体制、自由化だけ高いのは競争的寡頭体制、包括性だけ高いのは包括的抑圧体制。「多元的な競争」と「広い参加」の両方が必要
- ポリアーキーの制度的条件として、表現の自由・結社の自由・自由で公正な選挙・複数の情報源・公職への被選出権などが挙げられる
- マクファーソンは自由民主主義の発展を「防御的 → 発展的 → 均衡的 → 参加的」の 4 段階で整理し、参加民主主義を展望した
6. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|
| ロックの自然状態を「万人の万人に対する闘争」とする | それはホッブズ。ロックの自然状態はおおむね平和 |
| ホッブズが抵抗権を認めたとする | 抵抗権はロック。ホッブズは主権者への全面譲渡 |
| ルソーの一般意志を「個人の意志の総和」とする | 総和は全体意志。一般意志は公共の利益をめざす意志 |
| ロックが三権分立を唱えたとする | ロックは立法・執行(・連合)の二権的分立。三権分立はモンテスキュー |
| バークを革命の支持者とする | フランス革命を批判した保守主義の祖 |
| トクヴィルの「多数の暴政」の処方箋を強い中央政府とする | 自発的結社・地方自治など中間団体 |
| 消極的自由を「自分が自分の主人であること」とする | それは積極的自由。消極的自由は干渉の不在 |
| ロールズの格差原理を「不平等を一切認めない」とする | 最も不遇な人の利益になる不平等は認める |
| 最小国家をロールズの主張とする | ノージック |
| シュンペーターが人民の意志の実現を民主主義の本質とした | 逆。エリート間の競争と投票による選抜が本質 |
| ポリアーキーの 2 軸を「自由と平等」とする | 公的異議申立て(自由化)と包括性(参加) |
7. 覚え方の型
- 社会契約説は自然状態 → 契約 → 政府の 3 行を 3 人分そらで書けるようにする
- 対で覚える:ホッブズ⇄ロック(譲渡か信託か)、一般意志⇄全体意志、消極的⇄積極的自由、ロールズ⇄ノージック、シュンペーター⇄ペイトマン
- 著書名は年代順に一本の線にする:君主論 → リヴァイアサン → 統治二論 → 法の精神 → 社会契約論 → フランス革命の省察 → アメリカのデモクラシー → 自由論 → 資本主義・社会主義・民主主義 → 正義論 → ポリアーキー → アナーキー・国家・ユートピア
- 選択肢を読むときは、主語の人物名を隠して「誰の主張か」を先に当ててから照合する
8. 小テストへ
→ 小テスト(zp-02)
関連する単元
参考資料
- ホッブズ『リヴァイアサン』、ロック『統治二論』、ルソー『社会契約論』、モンテスキュー『法の精神』
- バーク『フランス革命の省察』、トクヴィル『アメリカのデモクラシー』、J. S. ミル『自由論』
- I. バーリン『自由論』、J. ロールズ『正義論』、R. ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』
- J. A. シュンペーター『資本主義・社会主義・民主主義』、R. A. ダール『ポリアーキー』
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(政治学)
このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/seiji/zp-02/ / 更新 2026-09-14