地方上級 / 政治学 / zp-01

更新 2026-09-14

政治権力と国家(権力の正統性・国家論)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

政治学の最初の単元で、地方上級・国家一般職とも「学者名 → 学説の内容」の対応が 5 択の正誤文で問われやすいところです。出題の型は決まっていて、ある学者の説明文に、別の学者の主張を混ぜてある選択肢を見抜けるかが勝負になります。とくにウェーバーの 3 類型、ミルズとダールの対立、イーストンのシステム論は、行政学(zq-01)や政治過程論(zp-08)でも顔を出すので、ここで表にして固めておきます。


1. 権力とは何か ── 実体説と関係説

まずここだけ

政治学で「権力」といえば、他人を自分の意思に従わせる力のことです。これをどう捉えるかで、大きく 2 つの立場があります。

立場考え方代表的な論者
実体説権力は所有できる「もの」。富・武力・地位などの資源を持つ者が権力を持つホッブズ、マキァヴェリ、ラスウェル、ミルズ
関係説権力は人と人の関係の中に現れる。「A が B に、B が本来しないことをさせる」とき A は B に権力を持つダール、パーソンズ

ダールの定義(「A が B に、B が本来ならしなかったであろうことをさせることができるとき、A は B に対して権力を持つ」)は、関係説の教科書的な言い方としてよく引かれます。

ここまでできれば十分

もう一歩(発展)── 権力の 3 つの次元

「決定の場で勝つ」だけが権力ではない、という議論が積み重なりました。

次元論者権力の中身
第 1 次元ダール争点をめぐる決定の場で、自分の案を通す力
第 2 次元バクラック=バラッツ都合の悪い争点を議題に上らせない非決定の力(「権力の二つの顔」)
第 3 次元ルークス人々の認識や欲求そのものを形づくり、不満を感じさせなくする力(『現代権力論批判』)

2. 支配の正統性 ── ウェーバーとメリアム

まずここだけ

力ずくで従わせるだけの支配は長続きしません。支配される側が「従うのが当然だ」と受け入れる根拠を正統性(正当性)といい、M. ウェーバーはその根拠を 3 つに分けました。

類型従う根拠
伝統的支配昔からそうだったという慣習の神聖さ家父長制、世襲の君主
カリスマ的支配指導者個人の非日常的な資質への帰依預言者、英雄、革命の指導者
合法的支配正しい手続きで定められた規則の正しさ近代国家の官僚制

ウェーバーは、近代国家を「ある領域内で正当な物理的暴力の独占を要求する共同体」と定義しました(『職業としての政治』)。合法的支配の最も純粋な形が官僚制で、これは行政学(zq-01)につながります。

ここまでできれば十分

C. E. メリアム(『政治権力』)は、権力が服従を引き出す手段を 2 つに分けました。

名前訴える先
ミランダ感情(権力を賛美させる)国旗、国歌、記念日、記念碑、儀式
クレデンダ理性(権力を正しいと信じさせる)政治理論、イデオロギー、憲法の理念

「ミランダ=感情・象徴」「クレデンダ=理性・理論」の対応を入れかえた選択肢が定番です。

もう一歩(発展)


3. 誰が支配しているのか ── エリート論と多元主義

まずここだけ

「民主主義の国でも、実際に決めているのは少数のエリートではないか」という問いに、対立する 2 つの答えがあります。

立場主張代表的な論者
エリート論どんな社会でも、少数の支配層が決めているパレート、モスカ、ミヘルス、ミルズ、ハンター
多元主義争点ごとに影響力を持つ集団が違い、単一の支配層はいないダール、トルーマン

ここまでできれば十分

古典的エリート論(イタリア学派)

論者キーワード主張
パレートエリートの周流支配層は固定せず、「キツネ型(策略)」と「ライオン型(力)」のエリートが入れかわる
モスカ政治階級どんな社会も、組織された少数の支配階級と、組織されない多数の被支配階級に分かれる
ミヘルス寡頭制の鉄則民主的なはずのドイツ社会民主党を調べ、大きな組織は必ず少数の幹部に支配されると論じた

アメリカでの論争(1950〜60 年代)

論者著書調査結論
ミルズ『パワー・エリート』(1956)アメリカ全体政治・経済・軍事の 3 領域の頂点が一体となったパワー・エリートが支配している
ハンター『コミュニティの権力構造』アトランタ有力者に「誰が影響力を持つか」を尋ねる声価法で、少数の経済人が地域を支配していると結論
ダール『統治するのはだれか』(1961)ニューヘイブン実際の決定過程を争点ごとに調べる争点法で、争点ごとに勝つ集団が違う多元主義を確認

ダールは、多元的な競争が制度として保障された現実の民主政治をポリアーキーと呼びました(zp-02 で扱います)。

もう一歩(発展)


4. 国家とは何か ── 国家論の流れ

まずここだけ

国家の三要素は、領域・国民・主権(イェリネックの整理)。イェリネックは、国家を法人とみる国家法人説や、「国家は自らの意思で自らを法に拘束する」という自己拘束説でも知られます。

国家の役割についての考え方は、時代とともに変わってきました。

国家像内容関連する言葉
夜警国家国防と治安維持だけを行う最小限の国家ラッサールが自由主義国家を皮肉って呼んだ言葉。消極国家・立法国家
福祉国家社会保障・経済政策で国民生活に積極的に関わる積極国家・行政国家(行政権の肥大)

ここまでできれば十分

学説主張論者
一元的国家論国家は他のすべての団体の上に立つ最高の存在(主権の絶対性)ボダン、ヘーゲル
多元的国家論国家は教会・労働組合・企業などと並ぶ団体の一つにすぎず、優越性は相対的ラスキ、マッキーヴァー、バーカー、コール
マルクス主義国家論国家は支配階級が被支配階級を抑える道具。階級がなくなれば国家は死滅するマルクス、エンゲルス、レーニン
国家の自律性論国家は社会の利益の単なる反映ではなく、独自の目標を持つ行為者として「取り戻す」べき対象スコッチポルら(「国家を取り戻す」)

多元的国家論は 20 世紀初めのイギリスで、国家の絶対性を否定して各種団体の自律性を認める議論として広まりました。グラムシは、支配階級が力だけでなく文化や道徳を通じて同意を調達することをヘゲモニーと呼び、マルクス主義国家論を発展させました。


5. 政治をシステムとして見る ── イーストンとアーモンド

まずここだけ

D. イーストンは、政治を「社会に対する価値の権威的配分」と定義し、政治を環境と相互作用するシステムとして描きました。

環境 → 入力要求支持) → 政治システム(変換) → 出力(決定・政策) → 環境 → フィードバックで再び入力へ

「入力=要求と支持」「出力=決定と政策」の組み合わせを入れかえた選択肢が出ます。支持が枯れるとシステムは持続できないので、イーストンは支持の調達(政治的社会化など)を重視しました。

ここまでできれば十分

G. アーモンドは、イーストンのシステム論を発展させ、どの国の政治体系も同じ機能を果たしているとする構造機能分析を提唱しました。

「利益表出=利益集団、利益集約=政党」の対応は zp-05 でも使います。アーモンドはヴァーバとともに政治文化の比較研究も行いました(zp-06)。


6. よくある間違い

間違い正しくは
「A が B にさせる力」という関係的な定義をミルズのものとするダール(関係説)。ミルズは実体説寄りのエリート論
ウェーバーの合法的支配の根拠を「指導者の資質」とするそれはカリスマ的支配。合法的支配は規則の正しさ
ミランダを「理性に訴える」とするミランダは感情(象徴・儀式)、クレデンダが理性(理論)
寡頭制の鉄則をパレートのものとするミヘルス。パレートはエリートの周流
ダールがニューヘイブンで「少数のエリート支配」を見出したとするダールは多元主義を確認。エリート支配を論じたのはハンター(アトランタ)・ミルズ
声価法をダール、争点法をハンターとする逆。声価法=ハンター争点法=ダール
イーストンの入力を「決定・政策」とする入力は要求と支持、出力が決定・政策
多元的国家論を「国家の絶対的優越」を説くものとする逆。国家を他の団体と並ぶ一つとみる(ラスキら)
夜警国家をマルクスの言葉とするラッサール

7. 覚え方の型

  1. 学者名を見たら「実体説か関係説か」「エリート論か多元主義か」の 2 軸でまず仕分ける
  2. 3 つ組はセットで暗唱する:ウェーバー「伝統・カリスマ・合法」、ミルズ「政治・経済・軍事」、イーストン「要求・支持 → 決定・政策」
  3. 対になる概念は入れかえ問題を自分で作る:ミランダ⇄クレデンダ、声価法⇄争点法、入力⇄出力
  4. 調査ものは「誰が・どこで・どの方法で・何を結論したか」の 4 点を 1 行で言えるようにする

8. 小テストへ

→ 小テスト(zp-01

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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