地方上級 / 政治学 / zp-05
政党と利益集団
この単元でできるようになること
- 政党の機能(利益表出・利益集約・政治的リクルートメントなど)と、利益集団との違い(政権をめざすかどうか)を説明できる
- 政党の歴史的な型 ── 名望家政党 → 大衆政党 → 包括政党 → カルテル政党 ── を、提唱した学者(ウェーバー・デュヴェルジェ・キルヒハイマー・カッツとメア)とともに並べられる
- ミヘルスの寡頭制の鉄則と、サルトーリの政党制 7 分類を、55 年体制などの具体例に当てはめられる
- 利益集団の理論 ── ベントレー・トルーマンの集団理論、オルソンのフリーライダー論、多元主義とネオ・コーポラティズム ── を区別できる
- アメリカの鉄の三角形と日本の族議員の共通点を説明できる
試験での位置づけ
政党論と利益集団論は、政治学の中で「人名と学説の対応」を問う典型的な分野です。地方上級・国家一般職とも、誰がどの型の政党を提唱したか、サルトーリの分類のどれに当たるか、オルソンの議論の中身が繰り返し問われます。誤答の作り方は「提唱者の入れかえ」「分類名と中身の入れかえ」「多元主義とコーポラティズムの入れかえ」が中心です。選挙制度(zp-04)とセットで「小選挙区制 → 二大政党制」の流れを押さえ、日本の 55 年体制の話は zp-08 につながります。
1. 政党とは何か ── 機能と利益集団との違い
まずここだけ
バーク(18 世紀イギリス)は政党を「全員が同意しているある特定の原理に基づいて、共同の努力によって国民的利益を推進するために結合した人々の集まり」と定義しました。ここで大事なのは「国民的利益」と「原理(政策)」の 2 語です。政党は政権の獲得をめざす集団であり、それが利益集団との最大の違いになります。
| 政党 | 利益集団(圧力団体) | |
|---|---|---|
| 目的 | 政権の獲得・政策の実現 | 特定の利益を政策に反映させる(政権はめざさない) |
| 扱う政策 | 包括的(あらゆる分野) | 部分的(自分たちの関心分野) |
| 選挙 | 候補者を立てて戦う | 候補者を立てず、政党や議員・官僚に働きかける |
| 責任 | 政権を担えば結果に責任を負う | 政治的責任を負わない |
ここまでできれば十分
政党の機能としてよくあげられるのは次の 4 つです。
- 利益表出:社会にあるさまざまな要求を政治の場に持ち出す(利益集団の主な機能でもある)
- 利益集約:ばらばらの要求をまとめて政策の束(綱領・公約)にする(政党に固有の機能とされる)
- 政治的リクルートメント:候補者を発掘し、政治家を育てて供給する
- 政治的社会化・政治教育:国民に政治の争点を伝え、政治への態度を形づくる
「利益表出は利益集団、利益集約は政党」という対応は、アーモンドらの構造機能分析で使われる言い方で、そのまま問われます。
2. 政党の型 ── 名望家政党から カルテル政党へ
まずここだけ
政党の組織は、選挙権の拡大とともに変わってきました。この流れと提唱者を 1 本の線で覚えます。
| 型 | 提唱者 | 中身 |
|---|---|---|
| 名望家政党 | ウェーバー | 制限選挙の時代。地方の名望家が議員となり、緩やかにつながる。党員は少なく、組織は選挙のときだけ動く |
| 近代組織政党(大衆政党) | ウェーバー、デュヴェルジェ | 普通選挙の時代。多数の党員と党費、常設の組織をもつ。労働者政党(社会主義政党)に典型 |
| 包括政党 | キルヒハイマー | 1960 年代以降。特定の階級に頼らず、イデオロギーを薄めてあらゆる層の票を集める。「キャッチ・オール・パーティー」 |
| カルテル政党 | カッツとメア | 1990 年代の議論。主要政党が国家の資源(政党助成など)を分け合い、国家に組み込まれて新規参入を締め出す |
デュヴェルジェはこれとは別に、組織のあり方から幹部政党(少数のエリートによる緩い組織。名望家政党に近い)と大衆政党(党員を基盤とする組織)に分け、政党の起源についても院内起源政党(議会内の議員の集まりから生まれた。保守党・自由党など)と院外起源政党(労働組合などの外部団体が議会に代表を送るために作った。労働党など)を区別しました。
ここまでできれば十分
- ミヘルス『政党社会学』(1911 年):ドイツ社会民主党を調べ、民主的な組織をめざす政党でも、組織が大きくなると少数の幹部が支配するようになるという「寡頭制の鉄則」を示した。理由は、大組織には専門的な指導者が必要になること(組織の要因)、指導者が地位を守ろうとすること、大衆が指導者に従いたがること(心理の要因)
- オストロゴルスキー:イギリスとアメリカの政党を調べ、選挙のための組織(コーカス・マシーン)が党員を統制して党内民主主義を失わせることを批判した
- パネビアンコ:大衆官僚政党に代わって、世論調査やメディアの専門家に頼る選挙プロフェッショナル政党が現れたと論じた
もう一歩(発展)
党の規律(党議拘束)の強さは国によって違います。イギリスや日本のような議院内閣制では、内閣を支えるため党議拘束が強く、議員は党の方針にしたがって投票します。アメリカでは伝統的に党議拘束が弱く、議員が党の方針と異なる投票をするクロス・ヴォーティングがよく見られます(近年は党派対立の激化で党の結束が強まったと指摘されています)。
3. 政党制 ── サルトーリの分類
まずここだけ
政党制(政党システム)とは、ある国にどんな政党がいくつあり、どう競争しているかの型です。デュヴェルジェは一党制・二大政党制・多党制の 3 つに分けました。サルトーリ『政党と政党システム』(1976 年)は、政党の数だけでなく、政党間のイデオロギーの距離と競争があるかどうかを加えて 7 つに分けました。
| 分類 | 競争 | 中身 | 例 |
|---|---|---|---|
| 一党制 | なし | 1 つの政党しか存在を認められない | 旧ソ連 |
| ヘゲモニー政党制 | なし | 形式的に複数の政党があるが、支配政党の交代はありえない | 旧ポーランドなど |
| 一党優位政党制 | あり | 競争する選挙なのに、1 つの政党が長期にわたって単独過半数を取り続ける | 55 年体制下の日本、かつてのインド国民会議派 |
| 二大政党制 | あり | 2 つの大政党が単独政権をめざして交互に政権を担う | イギリス・アメリカ |
| 穏健な多党制 | あり | 3〜5 の政党。イデオロギーの距離が小さく、連立政権が安定する | ドイツ・北欧など |
| 分極的多党制 | あり | 6〜8 の政党。左右の両極に体制に反対する政党があり、中央の政党が政権を担うが不安定 | ワイマール共和国、かつてのイタリア |
| 原子化政党制 | あり | 多数の小政党が乱立し、どの政党も突出しない | 新興国など |
「一党優位政党制は競争があるのに 1 党が勝ち続ける」「ヘゲモニー政党制は競争がない」の区別が、そのまま問われます。
ここまでできれば十分
分極的多党制の特徴として、サルトーリは反体制政党の存在、双方向の反対(左右の野党が別々の方向から政府を攻撃する)、遠心的競争(各党が中央ではなく両極に向かって票を奪い合う)、無責任な野党(政権に就く見込みがないので実現不可能な公約を掲げる)などをあげました。穏健な多党制では逆に求心的競争が働き、政党は中央の有権者に向かって寄っていきます。
4. 利益集団の理論 ── 集団理論からオルソンへ
まずここだけ
ベントレー『統治の過程』(1908 年)は、政治を「集団と集団の相互作用」として捉えました。制度や理念ではなく、実際に働きかけあう集団の圧力の均衡が政策を決めるという見方で、政治過程論の出発点とされます。
トルーマン『政治過程論』(1951 年)はベントレーを引き継ぎ、利益集団が生まれる理由を社会の分業と変化から説明しました。組織化されていなくても共通の利益をもつ人々は潜在集団として存在し、利益が脅かされると組織化される(攪乱理論)。また、人は複数の集団に重なって所属する(重複的メンバーシップ)ため、1 つの集団が極端な要求をしにくいと論じました。
ここまでできれば十分
オルソン『集合行為論』(1965 年)は、トルーマンの「共通の利益があれば集団は組織される」という前提を批判しました。
- 集団が獲得する利益(減税・補助金など)は公共財なので、活動に参加しなかった人も利益を受けられる → 合理的な個人はただ乗り(フリーライダー)を選び、大きな集団ほど組織されにくい
- 組織を維持するには、参加者だけに与えられる選択的誘因(保険・共済・情報・地位など)が必要
- 小集団は組織されやすい:1 人あたりの利益が大きく、ただ乗りが目立つため。したがって、少数の大企業からなる業界団体は、多数の消費者より組織化で有利になる
ローウィ『自由主義の終焉』(1969 年)は、アメリカの政策が利益集団の要求をそのまま受け入れる形で決まっている状態を「利益集団自由主義」と呼んで批判し、公共の利益を法律で明確にすべきだと論じました。
もう一歩(発展)
利益集団の分類として、日本では辻中豊らの調査で、生産者の利益を守るセクター団体(経済団体・労働団体・農業団体など)と、環境や人権など特定の価値を推進する価値推進団体(市民団体・NGO など)を分ける見方が使われます。
5. 多元主義とネオ・コーポラティズム
まずここだけ
| 多元主義 | ネオ・コーポラティズム | |
|---|---|---|
| 代表的な論者 | ダール、トルーマン | シュミッター、レームブルッフ |
| 集団のあり方 | 多数の集団が自由に競争し、その均衡で政策が決まる | 業界ごとに頂上団体が組織され、国家に公認される |
| 国家の役割 | 集団間の調整役(審判) | 頂上団体と交渉して政策を決め、団体は構成員を統制する |
| 典型 | アメリカ | スウェーデン・オーストリアなどの北欧・中欧 |
ダールは『統治するのはだれか』でアメリカの都市を調べ、政策分野ごとに影響力をもつ集団が異なることを示し、一部のエリートが全体を支配するというエリート論(ミルズの『パワー・エリート』など)に反対しました。ダールが理想の民主主義に近い現実の体制を「ポリアーキー」(多元的支配)と呼んだことは zp-02 の内容とつながります。
ネオ・コーポラティズムは、政府・経営者団体・労働組合の三者(政労使)が賃金や社会保障を協議して決める仕組みで、1970 年代のヨーロッパで注目されました。戦前のイタリアなどの国家主導の「コーポラティズム(国家コーポラティズム)」と区別するため「ネオ」をつけます。日本については、労働組合が頂上団体として弱く政策決定に加わっていないとして「労働なきコーポラティズム」と評されることがあります(ペンペルと恒川)。
ここまでできれば十分
アメリカの利益集団政治では、特定の政策分野で議会の委員会・官庁・利益集団の 3 者が結びついて政策を左右する鉄の三角形が指摘されました。これに対しヘクロは、専門家や研究者など多くの参加者が緩やかにつながるイシュー・ネットワークのほうが現代の実態に近いと論じました。アメリカではロビイストが登録制のもとで活動し、利益集団が候補者に献金するための政治活動委員会(PAC)が発達しています。
日本では、鉄の三角形に当たるものとして族議員・省庁・業界団体の結びつきが指摘されます。族議員は自民党の政務調査会の部会などで特定の政策分野に通じ、官庁と業界の間を取り持つ議員です。利益集団の側は、選挙での組織票と献金を通じて政党に働きかけます(zp-08)。
6. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 利益集団も政権の獲得をめざす | 利益集団は政権をめざさない。政権をめざすのが政党 |
| 利益集約は利益集団の機能 | 利益集約は政党。利益集団の主な機能は利益表出 |
| 包括政党を提唱したのはデュヴェルジェ | キルヒハイマー。デュヴェルジェは幹部政党・大衆政党 |
| カルテル政党はパネビアンコ | カッツとメア。パネビアンコは選挙プロフェッショナル政党 |
| 寡頭制の鉄則はオストロゴルスキー | ミヘルス(ドイツ社会民主党の研究) |
| 55 年体制はヘゲモニー政党制 | 一党優位政党制(競争のある選挙で 1 党が勝ち続けた) |
| サルトーリは政党の数だけで分類した | 数に加えてイデオロギーの距離と競争の有無で分けた |
| オルソンは「大きな集団ほど組織されやすい」と論じた | 小集団ほど組織されやすい。大集団はただ乗りが起きる |
| 多元主義の典型は北欧 | 多元主義はアメリカ。北欧はネオ・コーポラティズム |
| 鉄の三角形は議会・裁判所・官庁 | 議会の委員会・官庁・利益集団 |
7. 覚え方の型
- 政党の型は「名望家 → 大衆 → 包括 → カルテル」の順に、提唱者「ウェーバー → デュヴェルジェ → キルヒハイマー → カッツとメア」を重ねて 1 本の線にする
- サルトーリの 7 分類は「競争なし 2 つ(一党制・ヘゲモニー)+ 競争あり 5 つ」と分け、競争ありの中で「1 党が勝ち続ける=一党優位」「イデオロギーの距離が大きい=分極的」を先に見分ける
- 利益集団論は「ベントレー(集団の相互作用)→ トルーマン(潜在集団・重複的メンバーシップ)→ オルソン(ただ乗り・選択的誘因)→ ローウィ(利益集団自由主義の批判)」の順
- 「アメリカ」と出たら多元主義・鉄の三角形・PAC、「北欧」と出たらネオ・コーポラティズム・政労使・頂上団体を思い出す
- 選択肢の人名を隠して中身だけ読み、誰の話か当ててから照合する
8. 小テストへ
→ 小テスト(zp-05)
関連する単元
- 前提:kk-04 選挙と政党・世論・メディア(高校公共)、zp-01 政治権力と国家(エリート論と多元主義の対立)
- 次に進む:zp-06 政治意識・世論・マスメディア、zp-08 現代日本の政治過程(55 年体制・族議員・政治改革)
- 同じ考え方を使う:zp-02 政治思想(ダールのポリアーキー)、zp-04 選挙制度と投票行動(選挙制度と政党の数)、zq-04 政策過程と予算(利益集団と政策形成)
参考資料
- 政党助成法、政治資金規正法
- M. ウェーバー『職業としての政治』、M. デュヴェルジェ『政党社会学』、R. ミヘルス『政党社会学』、G. サルトーリ『政党と政党システム』
- A. ベントレー『統治の過程』、D. トルーマン『政治過程論』、M. オルソン『集合行為論』、T. ローウィ『自由主義の終焉』、R. ダール『統治するのはだれか』、P. シュミッター「いまもなおコーポラティズムの世紀か」
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(政治学)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/seiji/zp-05/ / 更新 2026-09-14