地方上級 / 政治学 / zp-04

更新 2026-09-14

選挙制度と投票行動

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

選挙制度は、政治学だけでなく憲法(zh-06 参政権)・社会科学(zk-02)・時事でも顔を出す横断的なテーマです。政治学では「各選挙制度の特徴の正誤」「ドント式の計算」「デュヴェルジェの法則」「投票行動の学派の対応」がよく問われます。誤答の作り方は、小選挙区制の特徴を比例代表制のものとして書くコロンビア学派の概念をミシガン学派のものとして書くという入れかえが中心です。高校公共(kk-04)の内容が土台で、公務員試験ではそこに投票行動の理論が加わります。


1. 選挙の原則と選挙制度の型

まずここだけ

近代選挙の原則は普通・平等・直接・秘密・自由の 5 つです。日本国憲法は普通選挙(15 条 3 項)・平等選挙(14 条・44 条)・秘密投票(15 条 4 項)を明文で定めています。

選挙制度は「1 つの選挙区から何人選ぶか」と「票をどう議席に変えるか」で分けます。

制度仕組み長所短所
小選挙区制1 区 1 人。最多得票者が当選(相対多数)二大政党になりやすく政権が安定、有権者が政権を選びやすい、候補者と有権者の距離が近い死票が多い、得票率と議席率のずれが大きい、ゲリマンダー(恣意的な区割り)の危険
大選挙区制1 区から複数人死票が少ない、少数派も当選できる小党分立で政権が不安定になりやすい、同一政党の候補どうしが争う
比例代表制政党の得票に比例して議席を配分死票が最も少ない、民意を正確に反映多党制になり連立政権が常態化、政党本位で候補者個人が見えにくい

日本で 1947 年から 1993 年まで衆議院に使われた中選挙区制は、1 区から 3〜5 人を選ぶ大選挙区制の一種で、有権者は 1 人の候補にだけ投票する単記非移譲式でした。同じ政党の候補が同じ選挙区で争うため、政策より個人後援会・派閥・利益誘導で票を集める傾向が強まったと批判され、1994 年の政治改革で廃止されました。

ここまでできれば十分


2. 比例代表の議席配分 ── ドント式を手で計算する

まずここだけ

ドント式は、各党の得票を 1、2、3、… で割り、商の大きい順に議席を配ります。日本の衆参両院の比例代表で使われています。

定数 5。A 党 1,200 票、B 党 700 票、C 党 450 票 A:1,200 / 600 / 400 / 300 … B:700 / 350 / 233 … C:450 / 225 … 商の大きい順に 5 つ:1,200(A)・700(B)・600(A)・450(C)・400(A)。よって A 3・B 1・C 1

計算のコツは、各党の商を上から順に並べた表を書き、定数の個数だけ大きい順に丸をつけることです。得票の多い党にやや有利な配分になります。

ここまでできれば十分

方式割る数特徴
ドント式1、2、3、4、…大政党にやや有利。日本・スペインなど
サンラグ式1、3、5、7、…小政党に比較的有利。北欧などで修正型(1 番目を 1.4 にする)も使われる
最大剰余法(ヘア式)総票数 ÷ 定数 で「基数」を出し、各党の得票 ÷ 基数 の整数部分をまず配分、残りは小数部分の大きい順計算は直感的だが、定数が増えると議席が減る逆転現象(アラバマのパラドックス)が起きうる

「ドント式は 1、2、3 で割る」「サンラグ式は奇数で割る」の対応は、そのまま問われます。


3. 選挙制度が政党の数を決める ── デュヴェルジェの法則

まずここだけ

デュヴェルジェは、小選挙区制(単純多数制)は二大政党制をもたらし、比例代表制は多党制をもたらすと論じました。その理由は 2 つの効果です。

ここまでできれば十分


4. 日本の選挙制度

まずここだけ

衆議院参議院
制度小選挙区比例代表並立制(1994 年導入・1996 年から実施)選挙区比例代表
定数465(小選挙区 289・比例代表 176)248(選挙区 148・比例代表 100)
比例代表の単位全国 11 ブロック全国 1 単位
比例名簿拘束名簿式(政党が順位を決める)非拘束名簿式(候補者名でも投票でき、個人票の多い順に当選)。2019 年から政党が優先的に当選させる特定枠を設けられる
任期4 年(解散あり)6 年(3 年ごとに半数改選)
被選挙権25 歳以上30 歳以上

定数は 2026 年 9 月時点のもので、区割りや定数は改正されることがあるので、受験する年に確認してください。

ここまでできれば十分


5. 投票行動の理論 ── 3 つの学派

まずここだけ

学派代表者・研究何が投票を決めるか主な概念
コロンビア学派(社会学モデル)ラザースフェルドら『ピープルズ・チョイス』(1940 年大統領選のエリー調査)有権者の社会的属性(社会経済的地位・宗教・居住地域)政治的先有傾向、コミュニケーションの二段階の流れ、オピニオン・リーダー、マスメディアの補強効果
ミシガン学派(心理学モデル)キャンベルら『アメリカの投票者』(1960)幼少期からの社会化で形成される政党帰属意識(政党支持態度)政党帰属意識・争点態度・候補者イメージの 3 要因、因果の漏斗(ファネル)
合理的選択モデル(経済学モデル)ダウンズ『民主主義の経済理論』(1957)有権者は自分の効用を最大にする政党に投票する空間理論中位投票者定理合理的無知、投票参加のパラドックス

ここまでできれば十分

コロンビア学派:ラザースフェルドらは、選挙キャンペーンで意見を変える有権者はごく少なく、多くは社会的属性で予測できる投票をすることを見いだしました。マスメディアの影響は直接ではなく、まずオピニオン・リーダーに届き、そこから対人関係を通じて広がる(二段階の流れ)。メディアの効果は意見を変える「改変」より、もともとの傾向を強める「補強」が中心という限定効果論につながります(zp-06)。

ミシガン学派:キャンベルらは、社会的属性そのものより、それを通じて形成される心理的な政党帰属意識が投票を長期的に安定させると考えました。個々の選挙での争点や候補者イメージは短期的要因で、政党帰属意識という長期的要因の上に乗ります。ここから、政党帰属意識どおりに投票が行われたときの得票分布を「ノーマル・ヴォート」と呼び、そこからのずれで短期要因の影響を測る手法が生まれました。

ダウンズ:政党は得票を最大化し、有権者は自分の効用を最大化する、という経済学の前提で政治を分析しました。政策を左右の一直線上に並べる空間理論では、二大政党制のもとで両党の政策は中位投票者(真ん中の有権者)の位置に近づいていきます。また、情報を集めるコストに比べて 1 票が結果を左右する確率はきわめて小さいので、有権者が政治情報を集めないのは合理的だという合理的無知を導きました。同じ理屈で「投票に行くコストが利益を上回るのに、なぜ人は投票するのか」という投票参加のパラドックスが生じ、ライカーとオードシュックは投票すること自体から得られる満足(義務感)D を加えた R = PB − C + D の式で説明しました。

もう一歩(発展)


6. よくある間違い

間違い正しくは
小選挙区制は死票が少ない死票が多い。少ないのは比例代表制
比例代表制は二大政党制をもたらす多党制。二大政党制をもたらすのは小選挙区制(デュヴェルジェの法則)
ドント式は奇数で割るドント式は 1、2、3、…。奇数で割るのはサンラグ式
日本の衆議院は併用制並立制。併用制はドイツ
衆議院の比例代表は非拘束名簿式衆議院は拘束名簿式。非拘束名簿式は参議院
中選挙区制では複数の候補に投票できた1 人にだけ投票する単記非移譲式
二段階の流れはミシガン学派コロンビア学派(ラザースフェルド)
政党帰属意識はコロンビア学派ミシガン学派(キャンベル)
合理的無知は「有権者が愚かだ」という意味情報収集のコストに見合わないので集めないのが合理的という意味
業績評価投票は将来の公約を比べる投票過去の業績を評価する投票(フィオリーナ)。公約を比べるのは将来志向の争点投票
一票の格差の違憲判決で選挙が無効になった事情判決の法理で選挙は無効にしていない

7. 解き方の型

  1. 選挙制度の問題は「死票」「政党の数」「得票率と議席率のずれ」の 3 語で各制度を採点してから選択肢を読む
  2. ドント式は表を書いて丸をつける。定数の数だけ丸をつけたら、党ごとに丸を数える
  3. 「日本の衆議院/参議院」と出たら、並立制/拘束名簿・ブロック選挙区/非拘束名簿・全国を先に思い出す
  4. 投票行動は調査名・著書名 → 学派 → 中心概念の順で 1 本の線にする:エリー調査 → コロンビア → 二段階の流れ/『アメリカの投票者』→ ミシガン → 政党帰属意識/『民主主義の経済理論』→ ダウンズ → 中位投票者・合理的無知
  5. 選択肢の中の「学派名」を隠し、概念だけ見て誰の話か当ててから照合する

8. 小テストへ

→ 小テスト(zp-04

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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