地方上級 / 判断推理 / zs-01
命題と論理(対偶・ド・モルガンの法則・三段論法)
この単元でできるようになること
- 「P ならば Q」という文を P → Q の矢印に直し、逆・裏・対偶を機械的に作れる
- 「かつ」「または」の入った命題を、ド・モルガンの法則で正しく否定できる
- 与えられた命題を矢印でつなぎ(三段論法)、「確実にいえるもの」を選べる
- 「または」が前に来る命題・「かつ」が後ろに来る命題を、分けたり場合分けしたりして扱える
試験での位置づけ
命題の問題は、判断推理の最初に置かれることが多い単元です。地方上級・国家一般職・市役所のどの試験でも、「次の 3 つの命題がすべて正しいとき、確実にいえるものはどれか」という形でよく問われます。公式はほとんどなく、対偶を作る・矢印をつなぐの 2 つの操作だけで答えが出るので、手順を体に入れてしまえば 1 問 1〜2 分で片づきます。ここで身につける「否定の作り方」は、集合とベン図(zs-02)や発言の真偽(zs-07)でもそのまま使います。
1. 命題を矢印に直す ── 逆・裏・対偶
まずここだけ
「P ならば Q」という命題を、P → Q と書きます。矢印の左が「前提」、右が「結論」です。
「犬を飼っている人は、猫を飼っていない」 → 犬 → 猫でない
この 1 本の矢印から、次の 3 つの命題が作れます。
| 名前 | 作り方 | 例 |
|---|---|---|
| 逆 | 前後を入れかえる | 猫でない → 犬 |
| 裏 | 前後をそれぞれ否定する | 犬でない → 猫 |
| 対偶 | 入れかえて、両方否定する | 猫 → 犬でない |
元の命題が正しいとき、いつも正しいといえるのは対偶だけです。逆と裏は、正しいこともあれば正しくないこともあります。
「正方形ならば長方形である」は正しい。 逆「長方形ならば正方形」は、縦横の長さが違う長方形があるので誤り。 裏「正方形でないならば長方形でない」も、同じ例で誤り。 対偶「長方形でないならば正方形でない」は正しい。
ここまでできれば十分
対偶を作る手順は、「後ろを否定して前へ、前を否定して後ろへ」です。声に出して覚えてしまうのが早道です。
「数学が得意な人は、理科が得意である」(数学 → 理科) 対偶:「理科が得意でない人は、数学が得意でない」(理科でない → 数学でない)
試験では、選択肢の中に逆や裏が「正しそうな顔」をして並んでいます。「運動会が中止になれば、雨が降っている」は、「雨が降れば中止になる」の逆であって、雨以外の理由で中止になることもあるので確実ではありません。「矢印を逆にたどっていないか」を選択肢ごとに確かめてください。
もう一歩(発展)
逆と裏は、互いに対偶の関係にあります。したがって逆が正しければ裏も正しく、逆が誤りなら裏も誤りです。「逆と裏の真偽はいつも一致する」と知っていると、選択肢を 1 つ消せることがあります。
2. 否定の作り方 ── ド・モルガンの法則
まずここだけ
「かつ」と「または」を含む文の否定は、次のように作ります。
「P かつ Q」の否定 = 「P でない、または Q でない」 「P または Q」の否定 = 「P でない、かつ Q でない」
つまり、それぞれを否定して、「かつ」と「または」を入れかえる。これがド・モルガンの法則です。
「英語も数学も得意である」(英語 かつ 数学)の否定 → 「英語が得意でない、または数学が得意でない」=少なくとも一方は得意でない
「英語も数学も得意でない」は否定になっていません。英語だけが得意でない人は、元の文の否定に含まれますが、「両方とも得意でない」には含まれないからです。
ここまでできれば十分
対偶を作るとき、前や後ろに「かつ」「または」が入っていれば、否定するときにド・モルガンの法則を使います。
「サッカーが好きな人は、野球またはテニスが好きである」(サッカー → 野球 または テニス) 対偶:「野球が好きでなく、かつテニスも好きでない人は、サッカーが好きでない」
「または」を否定したのに「または」のまま書いてしまうのが、いちばん多いミスです。対偶を書いたら、「かつ」と「または」が入れかわっているかを見直してください。
もう一歩(発展)
「少なくとも一方」は「または」、「両方とも」は「かつ」と同じ意味です。また、「P でない人はいない」は「全員 P である」、「P である人はいない」は「全員 P でない」と読みかえます。文章で書かれた条件は、まずこうした短い形に直してから矢印にすると、間違いが減ります。
3. 矢印をつなぐ ── 三段論法
まずここだけ
P → Q と Q → R がどちらも正しければ、P → R も正しい。これが三段論法です。矢印の終わりと次の矢印の始まりが同じなら、つないでよいということです。
「数学が好きな人は、理科も好きである」(数学 → 理科) 「理科が好きな人は、英語が好きでない」(理科 → 英語でない) つなぐと 数学 → 理科 → 英語でない。よって「数学が好きな人は、英語が好きでない」が確実にいえる。
ここまでできれば十分
試験の問題は、そのままではつながらないように書いてあります。そこで、各命題の対偶も書き出して、つながる向きを探します。
① 数学 → 理科 ② 理科 → 英語でない ③ 国語でない → 英語 ③ の対偶は「英語でない → 国語」。すると ① ② ③’ で 数学 → 理科 → 英語でない → 国語 とつながり、「数学が好きな人は、国語が好きである」が確実にいえる。
手順は次のとおりです。
- 命題をすべて矢印に直し、番号をふる
- それぞれの対偶を右に書く(否定は「〜でない」と短く)
- 選択肢の命題の左側から出発して、矢印を順にたどって右側に着けるかを確かめる
- 着けたらその選択肢が正解。途中で矢印が逆向きになっていたら不可
「確実にいえるもの」を選ぶ問題では、矢印を逆にたどったもの(逆)と両方を否定しただけのもの(裏)が誤答の定番です。
もう一歩(発展)
矢印の前に「または」があるときは、2 本に分けられます。「野球またはテニスが好きな人は、水泳が好きである」は、「野球 → 水泳」と「テニス → 水泳」の 2 本です。同じく、後ろに「かつ」があるときも 2 本に分けられます。「サッカーが好きな人は、野球もテニスも好きである」は「サッカー → 野球」と「サッカー → テニス」です。
逆に、後ろに「または」があるとき(P → Q または R)は分けられません。このときは場合分けをします。「英語が得意な人は、数学または国語が得意である」に「数学 → 理科」「国語 → 理科」が加われば、数学が得意な場合も国語が得意な場合も理科が得意になるので、「英語 → 理科」が確実にいえます。どちらか一方の場合しか成り立たないことは、確実とはいえません。
4. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 「P → Q」から「Q → P」を導く | 逆は確実ではない。矢印は左から右にしかたどれない |
| 「P → Q」から「P でない → Q でない」を導く | 裏も確実ではない。確実なのは対偶「Q でない → P でない」だけ |
| 「P かつ Q」の否定を「P でない かつ Q でない」とする | 「または」に入れかわる。「少なくとも一方は〜でない」 |
| 「P → Q または R」を「P → Q」と「P → R」に分ける | 後ろの「または」は分けられない。場合分けをする |
| 「〜でない人はいない」を「〜でない人がいる」と読む | 「全員 〜 である」の意味 |
5. 解き方の型
- 文を「P → Q」の矢印に直す。「〜でない」は短く書く
- 各命題の対偶を横に書く(後ろを否定して前へ、前を否定して後ろへ。「かつ」「または」は入れかえる)
- 前に「または」・後ろに「かつ」がある命題は 2 本に分ける
- 選択肢の左側から矢印をたどり、右側に着く選択肢を選ぶ
- 逆・裏になっている選択肢は消す
6. 小テストへ
→ 小テスト(zs-01)
関連する単元
参考資料
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 基礎能力試験の出題分野(数的処理)
- 各都道府県・政令指定都市の職員採用試験受験案内(教養試験の出題分野)
- 高等学校「数学 I」教科書(集合と命題の章)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/suteki/zs-01/ / 更新 2026-09-14