地方上級 / ミクロ / ze-03
生産者理論(費用曲線・利潤最大化・供給関数)
この単元でできるようになること
- 総費用を固定費用と可変費用に分け、平均費用(AC)・平均可変費用(AVC)・限界費用(MC)を式から計算できる
- MC 曲線が AC・AVC の最低点を通る理由を説明でき、損益分岐点・操業停止点を式で求められる
- 完全競争企業の利潤最大化条件 P = MC から、生産量と最大利潤を計算できる
- 企業の短期供給曲線が「操業停止点より上の MC 曲線」になる理由を言える
- 長期均衡(P = LAC の最低点・利潤ゼロ)から、市場全体の企業数を計算できる
- 生産関数から限界生産力と規模に関する収穫を判断し、費用最小化の条件を使える
試験での位置づけ
消費者理論(ze-02)と並んで、ミクロ経済学の計算問題の中心です。地方上級・国家一般職では「総費用関数と価格が与えられて、利潤最大化の生産量や利潤を求める」「損益分岐点・操業停止点の価格を求める」「長期均衡の企業数を求める」が出題されやすい形です。知識問題では費用曲線どうしの関係と、短期・長期の生産決定の違いがよく問われます。ここで出てくる限界費用曲線が供給曲線になるという結論が、余剰分析(ze-04)で生産者余剰を測る土台になり、独占(ze-05)では「限界収入 = 限界費用」という形に広がります。
1. 費用の分解と 3 つの平均・限界
まずここだけ
短期の総費用 TC は、生産量 q によらない固定費用 FC と、q とともに変わる可変費用 VC の和です。
TC = q³ − 6q² + 20q + 50 なら、FC = 50(q = 0 のときの費用)、VC = q³ − 6q² + 20q
ここから 3 つの量を作ります。
| 名前 | 式 | 意味 |
|---|---|---|
| 平均費用 AC | TC ÷ q | 1 個あたりの費用 |
| 平均可変費用 AVC | VC ÷ q | 1 個あたりの可変費用 |
| 限界費用 MC | TC を q で微分 | もう 1 個作るときの追加費用 |
上の例:AC = q² − 6q + 20 + 50/q、AVC = q² − 6q + 20、MC = 3q² − 12q + 20 q = 5 のとき MC = 75 − 60 + 20 = 35
固定費用は微分すると消えるので、MC に固定費用は関係しません。また AC = AVC + AFC(平均固定費用 FC/q)で、AFC は q が増えるほど小さくなるので、AC と AVC の差は右にいくほど縮まります。
ここまでできれば十分
MC 曲線と平均の曲線の位置関係は、知識問題の定番です。
MC 曲線は、AVC 曲線と AC 曲線のそれぞれの最低点を通る
理由は平均の性質です。テストの平均点は、新しく加わった点数(限界)が今の平均より低ければ下がり、高ければ上がります。費用も同じで、MC < AC の範囲では AC は下がり、MC > AC になると AC は上がるので、MC = AC になる点が AC の最低点です。AVC についても同じことが言えます。
グラフで言うと、U 字型の AVC の底を MC が下から上へ横切り、そのすこし右で U 字型の AC の底をやはり下から上へ横切ります(AC の最低点は AVC の最低点より右にあります)。
2. 利潤最大化 ── P = MC
まずここだけ
完全競争市場の企業は価格を変えられない(プライステイカー)ので、1 個多く売ったときの収入の増え方(限界収入 MR)は価格 P そのものです。利潤が最大になるのは、追加の 1 個で得る収入と追加の 1 個にかかる費用が等しいときです。
利潤最大化の条件:P = MC(MC 曲線が右上がりの部分で)
TC = 3q² + 6q + 50、P = 108。 MC = 6q + 6 = 108 → q = 17
「P = AC」「AC が最小」ではありません。AC が最小になる点は費用の効率がいちばんよい点ですが、利潤が最大になる点とは別です。
ここまでできれば十分
利潤の額を聞かれたら、総収入 − 総費用 を計算します。
TC = q² + 7q + 10、P = 27。 MC = 2q + 7 = 27 → q = 10 総収入 = 27 × 10 = 270、総費用 = 100 + 70 + 10 = 180 利潤 = 90
グラフでは、利潤は「(P − AC) × q」の長方形の面積です。P が AC を上回っていれば正、下回っていれば負になります。
もう一歩(発展)
MC 曲線が右下がりの部分でも P = MC となる点はありますが、そこでは 1 個増やすと MC が下がって P を下回るので、増やすほど利潤が増えます。つまりその点は利潤の最小点です。「MC 曲線が右上がりの部分」という条件はこのためについています。
3. 損益分岐点・操業停止点と供給曲線
まずここだけ
価格が下がっていくと、企業はどこまで生産を続けるでしょうか。目印になる点が 2 つあります。
| 点 | 場所 | 意味 |
|---|---|---|
| 損益分岐点 | AC の最低点(MC = AC) | 価格がこれより低いと利潤が負 |
| 操業停止点 | AVC の最低点(MC = AVC) | 価格がこれより低いと生産をやめた方が損失が小さい |
なぜ利潤が負でも生産を続けるのか。短期では固定費用は生産をやめても払わなければならないからです。価格が AVC を上回っていれば、可変費用をまかなった上で固定費用の一部を取り戻せるので、やめる(損失 = 固定費用の全額)より続ける方が損失が小さくなります。価格が AVC の最低点を下回ると、作るほど損が増えるので生産をやめます。
ここまでできれば十分
式で求める手順は「AC(または AVC)の最低点を出す」だけです。
TC = 2q² + 72 の損益分岐点。 AC = 2q + 72/q、MC = 4q。AC = MC → 2q + 72/q = 4q → q² = 36 → q = 6 損益分岐点の価格 = AC(6) = 12 + 12 = 24
TC = q³ − 4q² + 16q + 100 の操業停止点。 AVC = q² − 4q + 16 = (q − 2)² + 12 → q = 2 で最小値 12
3 次の総費用関数なら AVC は 2 次式になるので、平方完成か微分で最低点が出ます。
企業は「価格が操業停止点より上なら、P = MC となる量を作る」ので、短期の供給曲線は、操業停止点より上の MC 曲線です。市場全体の供給曲線は、各企業の供給曲線を横に足し合わせたものになります。
もう一歩(発展)
長期にはすべての費用が可変になり、自由に参入・退出できます。正の利潤があれば新しい企業が参入して価格が下がり、負なら退出して価格が上がるので、落ち着く先は
長期均衡:P = LMC = LAC の最低点、各企業の利潤はゼロ
です。ここから市場の企業数が計算できます。
各企業 LTC = q³ − 8q² + 29q、市場需要 D = 222 − 2P。 LAC = q² − 8q + 29 = (q − 4)² + 13 → 各企業は q = 4 を生産し、価格は 13 市場需要 = 222 − 26 = 196 → 企業数 = 196 ÷ 4 = 49
4. 生産関数と費用最小化
まずここだけ
生産関数 Q = F(L, K) は、労働 L と資本 K からどれだけ作れるかを表します。限界生産力(MPL、MPK)は生産関数をそれぞれの要素で微分したもので、消費者理論の限界効用にあたります。
一定の生産量をいちばん安く作る組み合わせは、等量曲線(同じ Q になる (L, K) の組)と等費用線(wL + rK = 一定)の接点です。
費用最小化の条件:MPL/MPK = w/r(技術的限界代替率 = 要素価格比)
Q = KL、w = 4、r = 3、Q = 192 を最小費用で。 MPL = K、MPK = L → K/L = 4/3 → K = (4/3)L KL = (4/3)L² = 192 → L = 12、K = 16 → 費用 = 48 + 48 = 96
消費者の MRS = px/py と同じ形なので、消費者理論(ze-02)の手順がそのまま使えます。
ここまでできれば十分
規模に関する収穫は「すべての投入を 2 倍にしたとき、生産量が 2 倍になるか」で 3 つに分かれます。コブ=ダグラス型 Q = LαKβ では指数の和で判断できます。
| α + β | 収穫 | 例 |
|---|---|---|
| = 1 | 一定 | Q = L1/2K1/2 |
| > 1 | 逓増 | Q = LK |
| < 1 | 逓減 | Q = L1/3K1/3 |
これは「労働の限界生産力が逓減する」(α < 1)こととは別の話です。Q = L1/2K1/2 は各要素の限界生産力は逓減しますが、規模に関しては収穫一定です。混同を狙った選択肢がよく出ます。
5. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 利潤最大化は P = AC | P = MC。AC は利潤の大きさ(P − AC)を測るのに使う |
| 固定費用は限界費用に含まれる | 微分すると消える。MC は可変費用だけで決まる |
| 操業停止点は AC の最低点 | AVC の最低点。AC の最低点は損益分岐点 |
| 利潤が負ならすぐ生産をやめる | 短期は P > AVC なら続ける(固定費用の一部を回収できる) |
| AC 曲線が MC の最低点を通る | 逆。MC 曲線が AC・AVC の最低点を通る |
| 限界生産力逓減 = 規模に関する収穫逓減 | 別の概念。指数の和で判断する |
6. 解き方の型
- TC を見たら、まず FC(定数項)と VC に分ける
- MC = TC の微分、AC = TC/q、AVC = VC/q を書き出す
- 「生産量・利潤」を聞かれたら P = MC。利潤は 総収入 − 総費用
- 「損益分岐点」は AC の最低点(AC = MC)、「操業停止点」は AVC の最低点(AVC = MC)
- 「長期均衡・企業数」は LAC の最低点 → 価格 → 市場需要 ÷ 各企業の生産量
- 費用最小化は MPL/MPK = w/r と生産関数を連立
7. 小テストへ
→ 小テスト(ze-03)
関連する単元
- 前提:ze-01 需要と供給・弾力性、ze-02 消費者理論、h2-11 微分係数・導関数、h2-12 関数の増減・極値・最大最小
- 次に進む:ze-04 完全競争市場と余剰分析、ze-05 独占・寡占とゲーム理論
- 同じ考え方を使う:ze-08 一般均衡と厚生経済学(生産の効率)、za-07 経済成長理論(生産関数)
参考資料
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(ミクロ経済学)
- 各都道府県・政令指定都市の職員採用試験受験案内(専門試験の出題分野)
- 標準的なミクロ経済学の教科書(生産者理論・費用曲線・完全競争市場の短期と長期の章)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/keizai/ze-03/ / 更新 2026-09-14