地方上級 / ミクロ / ze-02

更新 2026-09-14

消費者理論(効用最大化・無差別曲線・需要関数)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

ミクロ経済学の専門試験で、地方上級・国家一般職とも計算問題の中心になる単元です。「効用関数と所得・価格が与えられて最適消費量を求める」問題は形が決まっているので、手順を 1 つ覚えれば数を変えられても対応できます。知識問題では無差別曲線の性質、代替効果・所得効果の向き、ギッフェン財の説明がよく問われます。需要と供給(ze-01)で「需要曲線は右下がり」と習いましたが、その曲線が消費者の選択からどう出てくるかを見るのが本単元です。あとの余剰分析(ze-04)や一般均衡(ze-08)は、ここでの「限界代替率」の考え方を前提にしています。


1. 効用関数と限界効用

まずここだけ

効用は消費から得られる満足の大きさを数で表したものです。2 財 x、y を消費したときの効用を U(x, y) と書きます。試験でいちばん多いのがコブ=ダグラス型 U = xayb(U = xy、U = x²y など)です。

限界効用(MU)は「その財を 1 単位追加したときの効用の増え方」で、効用関数をその財で微分したものです。

U = x²y のとき MUx = 2xy、MUy = x² (x で微分するときは y を定数と見る。y で微分するときは x を定数と見る)

消費量が増えるほど限界効用は小さくなる、というのが限界効用逓減の法則です。「逓減するのは限界効用であって、総効用ではない」ことに注意してください。限界効用が正である限り、総効用は増え続けます。

ここまでできれば十分

微分に不安がある人は、次の 2 つだけ確かめておけば本単元の計算はできます。

高校数学の微分(h2-11)の範囲で足ります。


2. 無差別曲線と限界代替率

まずここだけ

効用関数の形と無差別曲線:原点に凸・完全代替の直線・完全補完の L 字

無差別曲線は「効用が同じになる (x, y) の組を結んだ線」です。横軸に x、縦軸に y をとると、通常の効用関数では次の性質をもちます。

性質意味
右下がりx を増やして同じ効用を保つには y を減らす必要がある
原点に対して凸x が多いほど、x 1 単位と引き換えにしてよい y は少なくなる(限界代替率逓減)
互いに交わらない交わると「同じ点で効用が 2 通り」になり矛盾する
右上ほど効用が高い両方多い方がよい(単調性)

無差別曲線の接線の傾きの絶対値が限界代替率(MRS)で、「x 財を 1 単位増やすかわりに、y 財を何単位あきらめても同じ効用か」を表します。

MRS = MUx ÷ MUy U = x²y、(x, y) = (3, 12) なら MRS = 2xy ÷ x² = 2y/x = 2 × 12 ÷ 3 = 8

「x の限界効用が分子」です。MUy/MUx と逆にする間違いが多いので、「横軸の財が上」と覚えてください。

ここまでできれば十分

効用関数の形と無差別曲線の形の対応は、知識問題で問われます。

効用関数財の関係無差別曲線の形
U = xy(コブ=ダグラス型)通常の 2 財原点に凸な右下がりの曲線(直角双曲線)
U = x + y完全代替傾き −1 の右下がりの直線
U = min(x, y)完全補完y = x の直線上に角をもつ L 字型
U = min(2x, y)完全補完y = 2x の直線上に角をもつ L 字型

完全補完の角は「min の中身が等しくなる線」の上に並びます。U = min(2x, y) なら 2x = y です。「x = 2y」と逆にしないよう、中身をそのまま等号で結んでください。


3. 予算線と効用最大化

まずここだけ

予算線 2x+3y=120 と無差別曲線 U=xy の接点 E(30, 20)

所得 M、x 財の価格 px、y 財の価格 py のとき、買える組み合わせの境界が予算線です。

px·x + py·y = M 横軸切片 M/px、縦軸切片 M/py、傾きの絶対値 px/py

消費者は予算線の上で効用がいちばん高い点を選びます。それは無差別曲線と予算線が接する点で、接点では 2 つの線の傾きが等しいので

効用最大化の条件:MRS = px/py(MUx/MUy = px/py)

と書けます。並べかえると MUx/px = MUy/py、つまり「1 円あたりの限界効用がどの財でも等しい」という加重限界効用均等の法則と同じ内容です。

ここまでできれば十分

計算問題は次の 2 本を連立するだけです。

  1. MUx/MUy = px/py(接点の条件)
  2. px·x + py·y = M(予算制約)

U = xy、M = 120、px = 2、py = 3。

  1. y/x = 2/3 → 2x = 3y
  2. 2x + 3y = 120
  3. を 2. に入れて 3y + 3y = 120 → y = 20、x = 30

コブ=ダグラス型 U = xayb には近道があります。x 財への支出は所得の a/(a+b)、y 財への支出は b/(a+b) になります。

U = x²y、M = 90、px = 4、py = 2。 x への支出 = 90 × 2/3 = 60 → x = 60 ÷ 4 = 15 y への支出 = 90 × 1/3 = 30 → y = 30 ÷ 2 = 15 検算:4 × 15 + 2 × 15 = 90 ✓

指数が同じ U = xy なら「半分ずつ」です。時間がないときはこの近道、余裕があれば連立で確かめる、という使い分けが安全です。

もう一歩(発展)

接点が存在しない効用関数では、条件式ではなく形から答えを決めます。

U = min(3x, 2y)、M = 11、px = 4、py = 1。 3x = 2y → y = 1.5x。4x + 1.5x = 11 → x = 2、y = 3


4. 需要関数と価格変化の分解

まずここだけ

所得と価格を文字のままにして効用最大化を解くと、需要関数が出ます。

U = xy なら x = M/(2px)、y = M/(2py)

この式から、x 財の需要量は「所得に比例し、自分の価格に反比例し、他の財の価格には影響されない」と読めます。需要曲線を「価格が変われば需要量が変わる」だけでなく、式として書けるようにしておくと、需要と供給(ze-01)の弾力性の計算にもつながります(この需要関数の価格弾力性はつねに 1 です)。

ここまでできれば十分

x 財の価格が下がったとき、需要量の変化(総効果)は 2 つに分けられます。

財の種類代替効果所得効果総効果需要曲線
上級財(正常財)増加増加増加右下がり
下級財(ギッフェン財でない)増加減少(代替効果より小さい)増加右下がり
ギッフェン財増加減少(代替効果より大きい)減少右上がり

ギッフェン財は下級財の特殊な場合です。「下級財だから価格が下がると需要が減る」は誤りで、ふつうの下級財は代替効果が勝って需要は増えます。所得効果が代替効果を上回ったときだけ総効果が逆転し、需要曲線が右上がりになります。

もう一歩(発展)

「価格が上がるほど見栄で欲しくなる」財はヴェブレン効果と呼ばれ、ギッフェン財とは別の話です。ギッフェン財は好みが変わったのではなく、あくまで所得効果の大きさで説明されます。

2 期間の消費(今期と来期にいくら使うか)も、同じ道具で解けます。予算線は「生涯所得の現在価値 = 今期の所得 + 来期の所得/(1+利子率)」、価格比の役割をするのは (1+利子率) です。U = C₁C₂ なら現在価値を半分ずつに分けます。

今期 240、来期 360、利子率 20% → 現在価値 240 + 300 = 540 → C₁ = 270(今期は 30 借り入れる)


5. よくある間違い

間違い正しくは
MRS = MUy/MUxMRS = MUx/MUy(横軸の財が分子)
最適点では MUx = MUyMUx/px = MUy/py(1 円あたりの限界効用が等しい)
限界効用逓減だから総効用も減る総効用は増え続ける(増え方が鈍る)
下級財は価格が下がると需要が減るふつうの下級財は需要が増える。減るのはギッフェン財だけ
U = min(2x, y) の角は x = 2y中身をそのまま等号で結ぶ。2x = y
所得が増えると予算線が回転する所得の変化は平行移動。回転は価格の変化

6. 解き方の型

  1. 効用関数の形を見る(コブ=ダグラス型/完全代替/完全補完)
  2. コブ=ダグラス型 → MUx/MUy = px/py と予算式を連立。近道は「支出を a : b に分ける」
  3. 完全代替 → a/px と b/py を比べ、大きい方に全額
  4. 完全補完 → min の中身を等号で結び、予算式に代入
  5. 出た x、y を予算式に戻して検算(px·x + py·y = M になるか)
  6. 価格変化の問題は「代替効果は増加」から書き始め、所得効果の向きを財の種類で決める

7. 小テストへ

→ 小テスト(ze-02

関連する単元

参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
基礎から標準から発展から🖨 プリント

経済の単元一覧まぜこぜテスト公務員試験の勉強法