地方上級 / 政治 / zk-02
統治機構(国会・内閣・裁判所・地方自治)と選挙
この単元でできるようになること
- 国会・内閣・裁判所の権限と数字(任期・定足数・日数・議決要件)を条文どおりに言える
- 衆議院の優越を 4 つの場面(法律案・予算・条約・首相指名)で、日数と再可決要件の違いまで区別できる
- 違憲審査制・司法権の独立・裁判官の身分保障を、代表的な判例(統治行為論など)とあわせて説明できる
- 地方自治の直接請求(署名数・請求先)と地方財政の用語(地方交付税・国庫支出金)を区別できる
- 日本の選挙制度(衆院の並立制・参院の非拘束名簿式)とドント式・一票の格差の計算ができる
試験での位置づけ
統治機構は、社会科学の政治分野で人権と並ぶ柱です。正誤 5 択で「数字を 1 つずらす」「衆議院と参議院を入れかえる」「内閣の権限と国会の権限をすり替える」という作り方が目立ちます。地方上級では地方自治の出題が国家一般職より多めで、直接請求の署名数と請求先は繰り返し問われます。選挙制度はドント式の計算問題として出ることもあります。専門科目では zh-07〜zh-10(憲法の統治)、zp-04(選挙制度)、zq-06(地方自治)につながります。
1. 国会
まずここだけ
国会は「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」(41 条)です。二院制で、数字は次のとおりです(2026 年 9 月時点。定数は公職選挙法の改正で変わるので最新は受験案内・総務省で確認)。
| 衆議院 | 参議院 | |
|---|---|---|
| 定数 | 465(小選挙区 289・比例 176) | 248(選挙区 148・比例 100) |
| 任期 | 4 年(解散あり) | 6 年(3 年ごとに半数改選・解散なし) |
| 被選挙権 | 満 25 歳以上 | 満 30 歳以上 |
会期の種類:常会(毎年 1 月に召集・会期 150 日)、臨時会(内閣が必要と認めたとき、またはいずれかの議院の総議員の 4 分の 1 以上の要求)、特別会(衆議院解散後の総選挙の日から 30 日以内)。衆議院の解散中に緊急の必要があるときは参議院の緊急集会(次の国会開会後 10 日以内に衆議院の同意がなければ効力を失う)。
議事の要件:定足数は総議員の 3 分の 1 以上、議決は出席議員の過半数(可否同数なら議長が決する)。例外的に出席議員の 3 分の 2 以上が必要なのは、議員の資格争訟で議席を失わせるとき・秘密会・議員の除名・法律案の再可決の 4 つです。
ここまでできれば十分
衆議院の優越は場面ごとに要件が違います。ここが最頻出です。
| 場面 | 参議院が異なる議決をした/議決しないとき | 結果 |
|---|---|---|
| 法律案(59 条) | 否決、または受け取ってから 60 日以内に議決しない | 衆議院が出席議員の 3 分の 2 以上で再可決すれば成立(両院協議会は任意) |
| 予算(60 条) | 両院協議会でも一致しない、または 30 日以内に議決しない | 衆議院の議決が国会の議決になる。予算は衆議院に先議権 |
| 条約の承認(61 条) | 予算と同じ(30 日) | 衆議院の議決が国会の議決。先議権はない |
| 内閣総理大臣の指名(67 条) | 両院協議会でも一致しない、または 10 日以内に議決しない | 衆議院の議決が国会の議決 |
このほか内閣不信任決議は衆議院だけができ(69 条)、参議院の問責決議に法的効果はありません。会期の長さの決定や延長でも衆議院が優越します。逆に、憲法改正の発議・国政調査権(62 条)・弾劾裁判所の設置(64 条)は両院対等です。
議員の特権:不逮捕特権(50 条・会期中は院の許諾がなければ逮捕されない。院外の現行犯は例外)、免責特権(51 条・院内の発言・表決について院外で責任を問われない)、歳費(49 条)。地方議会の議員にはこれらの特権はありません。
2. 内閣
まずここだけ
日本は議院内閣制で、内閣は国会の信任に基づいて成立し、国会に対して連帯して責任を負います(66 条 3 項)。
- 内閣総理大臣は国会議員の中から国会が指名し、天皇が任命する(67 条・6 条)
- 国務大臣は総理が任命・罷免し(68 条。任免は総理の専権で閣議は不要)、過半数は国会議員でなければならない。総理・国務大臣とも文民(66 条 2 項)
- 総理の権限:閣議の主宰、行政各部の指揮監督、法律・政令への連署、国務大臣の訴追への同意(75 条)
- 内閣の職務(73 条):法律の誠実な執行、外交関係の処理、条約の締結(国会の承認が必要)、予算の作成、政令の制定(法律の委任がなければ罰則を設けられない)、恩赦の決定。ほかに最高裁長官の指名、その他の裁判官の任命、天皇の国事行為への助言と承認
ここまでできれば十分
内閣が総辞職しなければならないのは 3 つの場合です。
- 衆議院で不信任決議が可決(または信任決議が否決)され、10 日以内に衆議院を解散しないとき(69 条)
- 内閣総理大臣が欠けたとき(70 条)
- 衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったとき(70 条)
衆議院の解散は 69 条の場合のほか、7 条(天皇の国事行為への助言と承認)を根拠に内閣の判断で行われるのが実務です。解散の当否は統治行為として裁判所の審査が及ばないとされました(苫米地事件 最大判昭和 35 年)。
3. 裁判所
まずここだけ
- 司法権は最高裁判所と法律で定める下級裁判所(高等・地方・家庭・簡易)に属し、特別裁判所は設置できず、行政機関は終審として裁判できない(76 条)
- 最高裁は長官 1 人と判事 14 人。長官は内閣が指名して天皇が任命、判事は内閣が任命。下級裁判所の裁判官は最高裁の指名した名簿により内閣が任命し、任期 10 年(再任可)
- 裁判官の身分保障(78 条):罷免されるのは弾劾裁判・心身の故障の裁判・最高裁裁判官の国民審査の 3 つだけ。行政機関による懲戒はできない
- 違憲審査権(81 条)はすべての裁判所がもち、具体的な事件を前提に行う付随的審査制(警察予備隊違憲訴訟 最大判昭和 27 年:具体的事件を離れて抽象的に法律の違憲を判断することはできない)
ここまでできれば十分
司法権の独立は、他の国家機関からの独立と、個々の裁判官の職権の独立(76 条 3 項)の 2 つを含みます。大津事件(1891 年)で大審院長の児島惟謙が政府の干渉を退けたことが、前者の歴史的な例として挙げられます。
裁判所が判断を控える領域として、統治行為論(高度に政治性のある国家行為は審査の対象外。苫米地事件・砂川事件 最大判昭和 34 年)、部分社会の法理(地方議会の出席停止処分は従来審査対象外とされてきたが、最大判令和 2 年で判例変更され審査の対象に)があります。
国民の司法参加:裁判員制度(2009 年開始。重大な刑事事件の第一審を裁判員 6 人と裁判官 3 人で審理し、有罪無罪と量刑を決める。民事・控訴審は対象外)、検察審査会(2009 年から、2 度の起訴相当の議決で強制起訴)。裁判は三審制で、上告審は原則として法律問題のみを扱います。
4. 地方自治
まずここだけ
「地方自治の本旨」(92 条)は、住民自治(住民の意思で運営)と団体自治(国から独立した団体が運営)の 2 つです。首長と議会をともに住民が直接選ぶ二元代表制が国政との大きな違いです。
| 直接請求 | 必要な署名 | 請求先 | その後 |
|---|---|---|---|
| 条例の制定・改廃 | 有権者の 50 分の 1 以上 | 首長 | 議会にかけて議決(首長は意見を付ける) |
| 事務の監査 | 有権者の 50 分の 1 以上 | 監査委員 | 監査して公表 |
| 議会の解散 | 有権者の 3 分の 1 以上 | 選挙管理委員会 | 住民投票で過半数の同意があれば解散 |
| 首長・議員の解職 | 有権者の 3 分の 1 以上 | 選挙管理委員会 | 住民投票で過半数の同意があれば失職 |
| 副知事・副市町村長など主要公務員の解職 | 有権者の 3 分の 1 以上 | 首長 | 議会で 3 分の 2 以上出席・4 分の 3 以上の同意で失職 |
有権者が 40 万人を超える団体では 3 分の 1 の要件が緩和されます(40 万を超える部分は 6 分の 1、80 万を超える部分は 8 分の 1)。
ここまでできれば十分
- 首長の被選挙権:都道府県知事は満 30 歳以上、市町村長は満 25 歳以上。議員は満 25 歳以上。任期はいずれも 4 年
- 議会は首長の不信任決議ができ(議員の 3 分の 2 以上が出席し、その 4 分の 3 以上の同意)、首長は通知から 10 日以内に議会を解散しなければ失職する。首長には議決への拒否権(再議)がある
- 住民投票:一つの地方公共団体だけに適用される特別法は住民投票の過半数の同意が必要(95 条・法的拘束力あり)。条例に基づく住民投票(原発・合併など)には法的拘束力がない
- 地方分権一括法(1999 年成立・2000 年施行)で機関委任事務が廃止され、事務は自治事務と法定受託事務に整理された
- 地方財政:自主財源の地方税のほか、依存財源として地方交付税(使途自由・財源の不均衡の調整)、国庫支出金(使途が特定された補助金)、地方債。2004〜06 年の三位一体の改革(国庫補助負担金の削減・税源移譲・地方交付税の見直し)
- オンブズマン(オンブズパーソン)制度は 1990 年に川崎市が初めて導入
5. 選挙制度と計算
まずここだけ
選挙の 4 原則は普通・平等・直接・秘密です。日本では 1925 年に男子普通選挙(25 歳以上)、1945 年に男女普通選挙(20 歳以上)、2016 年から 18 歳以上になりました。
| 衆議院 | 参議院 | |
|---|---|---|
| 制度 | 小選挙区比例代表並立制(1994 年導入・1996 年初実施) | 選挙区(都道府県単位・合区あり)+比例代表(全国 1 区) |
| 比例の名簿 | 拘束名簿式(11 ブロック)。重複立候補可・惜敗率で復活当選 | 非拘束名簿式(個人名でも政党名でも投票)。2019 年から特定枠 |
ドント式:各党の得票を 1、2、3…で割り、商の大きい順に定数まで議席を配ります。
定数 5、A 党 6,000 票・B 党 3,600 票・C 党 1,800 票。 A:6,000・3,000・2,000・1,500… B:3,600・1,800・1,200… C:1,800・900… 大きい順に 6,000(A)・3,600(B)・3,000(A)・2,000(A)・1,800(B と C が同数)。同数の扱いは法律上くじですが、試験問題では同数にならないよう数が選ばれています。ここでは A 3・B 1・C 1(B と C のどちらか)。
一票の格差:議員 1 人あたりの有権者数の比。有権者 40 万人で定数 1 の区と 20 万人で定数 1 の区なら格差は 2 倍で、有権者の多い区ほど一票の価値が軽くなります。最高裁は衆議院で 1976 年(格差 4.99 倍)と 1985 年に違憲(ただし選挙は事情判決の法理で有効)、2009 年以降の選挙でたびたび違憲状態としました。対策として 2016 年改正で採用が決まったアダムズ方式により、2022 年改正で衆院小選挙区の 10 増 10 減が行われ(2024 年の総選挙から適用)、参議院では 2016 年から鳥取・島根、徳島・高知の合区が行われています。
ここまでできれば十分
- 公職選挙法:戸別訪問の禁止、連座制(選挙運動の総括主宰者・出納責任者・親族・秘書などが買収などで有罪になると当選無効・5 年間の立候補禁止)、ネット選挙運動は 2013 年に解禁(電子メールによる選挙運動は候補者・政党のみ)、期日前投票・不在者投票・在外投票
- 政党助成法(1994 年):国民 1 人あたり 250 円を基準に、国会議員 5 人以上、または国会議員 1 人以上かつ直近の国政選挙で得票率 2% 以上の政党に交付。政治資金規正法:企業・団体献金は政党・政治資金団体に限る
- 小選挙区制は二大政党化・政権の安定と引きかえに死票が多い。比例代表制は少数意見を反映するが小党分立になりやすい
6. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 法律案の再可決は「総議員の 3 分の 2」 | 出席議員の 3 分の 2 以上 |
| 条約の承認にも衆議院の先議権がある | 先議権は予算だけ。条約は優越(30 日)のみ |
| 国務大臣の罷免には閣議決定が必要 | 総理の専権。閣議は不要 |
| 最高裁長官は内閣が任命 | 内閣が指名し天皇が任命。他の裁判官は内閣が任命 |
| 裁判官は行政機関が懲戒できる | できない(78 条)。罷免は弾劾・心身故障・国民審査のみ |
| 条例制定請求の請求先は選挙管理委員会 | 首長。選管は解散・解職請求 |
| 条例による住民投票の結果に首長は拘束される | 法的拘束力はない(尊重義務にとどまる) |
| 参議院の比例代表は拘束名簿式 | 非拘束名簿式(衆議院が拘束名簿式) |
| 最高裁は一票の格差で選挙を無効にした | 違憲と判断しても事情判決で選挙は有効としてきた |
7. 覚え方の型
- 数字は「何の・どちらの院の・総議員か出席議員か」の 3 点セットで書き出す
- 衆議院の優越は「60・30・30・10」(法律・予算・条約・首相)と「予算だけ先議」で唱える
- 直接請求は「50 分の 1 は作る・調べる(首長・監査委員)、3 分の 1 はやめさせる(選管・首長)」
- ドント式は各党の商を表に書き出し、大きい順に丸をつける。同数が出たら計算ミスを疑う
8. 小テストへ
→ 小テスト(zk-02)
関連する単元
- 前提:kk-03 国会・内閣・裁判所と地方自治、kk-04 選挙と政党・世論・メディア、c-03・c-04(中学公民)
- 次に進む:zk-01 日本国憲法の基本と人権、zk-03 国際政治
- 専門科目で深める:zh-07 国会、zh-08 内閣、zh-09 裁判所と違憲審査制、zh-10 財政・地方自治・憲法改正、zp-04 選挙制度と投票行動、zq-06 地方自治と中央地方関係
参考資料
- 日本国憲法・国会法・内閣法・裁判所法・地方自治法・公職選挙法(e-Gov 法令検索)
- 総務省「選挙・政治資金」「地方財政の状況(地方財政白書)」
- 最高裁判所 裁判例検索(苫米地事件・警察予備隊訴訟・議員定数不均衡訴訟)
- 高等学校「公共」「政治・経済」教科書の統治機構・地方自治・選挙の章
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/shakai/zk-02/ / 更新 2026-09-14