地方上級 / 政治 / zk-02

更新 2026-09-14

統治機構(国会・内閣・裁判所・地方自治)と選挙

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

統治機構は、社会科学の政治分野で人権と並ぶ柱です。正誤 5 択で「数字を 1 つずらす」「衆議院と参議院を入れかえる」「内閣の権限と国会の権限をすり替える」という作り方が目立ちます。地方上級では地方自治の出題が国家一般職より多めで、直接請求の署名数と請求先は繰り返し問われます。選挙制度はドント式の計算問題として出ることもあります。専門科目では zh-07zh-10(憲法の統治)、zp-04(選挙制度)、zq-06(地方自治)につながります。


1. 国会

まずここだけ

国会は「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」(41 条)です。二院制で、数字は次のとおりです(2026 年 9 月時点。定数は公職選挙法の改正で変わるので最新は受験案内・総務省で確認)。

衆議院参議院
定数465(小選挙区 289・比例 176)248(選挙区 148・比例 100)
任期4 年(解散あり6 年(3 年ごとに半数改選・解散なし)
被選挙権満 25 歳以上満 30 歳以上

会期の種類:常会(毎年 1 月に召集・会期 150 日)、臨時会(内閣が必要と認めたとき、またはいずれかの議院の総議員の 4 分の 1 以上の要求)、特別会(衆議院解散後の総選挙の日から 30 日以内)。衆議院の解散中に緊急の必要があるときは参議院の緊急集会(次の国会開会後 10 日以内に衆議院の同意がなければ効力を失う)。

議事の要件:定足数は総議員の 3 分の 1 以上、議決は出席議員の過半数(可否同数なら議長が決する)。例外的に出席議員の 3 分の 2 以上が必要なのは、議員の資格争訟で議席を失わせるとき・秘密会・議員の除名・法律案の再可決の 4 つです。

ここまでできれば十分

衆議院の優越は場面ごとに要件が違います。ここが最頻出です。

場面参議院が異なる議決をした/議決しないとき結果
法律案(59 条)否決、または受け取ってから 60 日以内に議決しない衆議院が出席議員の 3 分の 2 以上で再可決すれば成立(両院協議会は任意)
予算(60 条)両院協議会でも一致しない、または 30 日以内に議決しない衆議院の議決が国会の議決になる。予算は衆議院に先議権
条約の承認(61 条)予算と同じ(30 日)衆議院の議決が国会の議決。先議権はない
内閣総理大臣の指名(67 条)両院協議会でも一致しない、または 10 日以内に議決しない衆議院の議決が国会の議決

このほか内閣不信任決議は衆議院だけができ(69 条)、参議院の問責決議に法的効果はありません。会期の長さの決定や延長でも衆議院が優越します。逆に、憲法改正の発議・国政調査権(62 条)・弾劾裁判所の設置(64 条)は両院対等です。

議員の特権:不逮捕特権(50 条・会期中は院の許諾がなければ逮捕されない。院外の現行犯は例外)、免責特権(51 条・院内の発言・表決について院外で責任を問われない)、歳費(49 条)。地方議会の議員にはこれらの特権はありません。


2. 内閣

まずここだけ

日本は議院内閣制で、内閣は国会の信任に基づいて成立し、国会に対して連帯して責任を負います(66 条 3 項)。

ここまでできれば十分

内閣が総辞職しなければならないのは 3 つの場合です。

  1. 衆議院で不信任決議が可決(または信任決議が否決)され、10 日以内に衆議院を解散しないとき(69 条)
  2. 内閣総理大臣が欠けたとき(70 条)
  3. 衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったとき(70 条)

衆議院の解散は 69 条の場合のほか、7 条(天皇の国事行為への助言と承認)を根拠に内閣の判断で行われるのが実務です。解散の当否は統治行為として裁判所の審査が及ばないとされました(苫米地事件 最大判昭和 35 年)。


3. 裁判所

まずここだけ

ここまでできれば十分

司法権の独立は、他の国家機関からの独立と、個々の裁判官の職権の独立(76 条 3 項)の 2 つを含みます。大津事件(1891 年)で大審院長の児島惟謙が政府の干渉を退けたことが、前者の歴史的な例として挙げられます。

裁判所が判断を控える領域として、統治行為論(高度に政治性のある国家行為は審査の対象外。苫米地事件・砂川事件 最大判昭和 34 年)、部分社会の法理(地方議会の出席停止処分は従来審査対象外とされてきたが、最大判令和 2 年で判例変更され審査の対象に)があります。

国民の司法参加:裁判員制度(2009 年開始。重大な刑事事件の第一審を裁判員 6 人と裁判官 3 人で審理し、有罪無罪と量刑を決める。民事・控訴審は対象外)、検察審査会(2009 年から、2 度の起訴相当の議決で強制起訴)。裁判は三審制で、上告審は原則として法律問題のみを扱います。


4. 地方自治

まずここだけ

「地方自治の本旨」(92 条)は、住民自治(住民の意思で運営)と団体自治(国から独立した団体が運営)の 2 つです。首長と議会をともに住民が直接選ぶ二元代表制が国政との大きな違いです。

直接請求必要な署名請求先その後
条例の制定・改廃有権者の 50 分の 1 以上首長議会にかけて議決(首長は意見を付ける)
事務の監査有権者の 50 分の 1 以上監査委員監査して公表
議会の解散有権者の 3 分の 1 以上選挙管理委員会住民投票で過半数の同意があれば解散
首長・議員の解職有権者の 3 分の 1 以上選挙管理委員会住民投票で過半数の同意があれば失職
副知事・副市町村長など主要公務員の解職有権者の 3 分の 1 以上首長議会で 3 分の 2 以上出席・4 分の 3 以上の同意で失職

有権者が 40 万人を超える団体では 3 分の 1 の要件が緩和されます(40 万を超える部分は 6 分の 1、80 万を超える部分は 8 分の 1)。

ここまでできれば十分


5. 選挙制度と計算

まずここだけ

選挙の 4 原則は普通・平等・直接・秘密です。日本では 1925 年に男子普通選挙(25 歳以上)、1945 年に男女普通選挙(20 歳以上)、2016 年から 18 歳以上になりました。

衆議院参議院
制度小選挙区比例代表並立制(1994 年導入・1996 年初実施)選挙区(都道府県単位・合区あり)+比例代表(全国 1 区)
比例の名簿拘束名簿式(11 ブロック)。重複立候補可・惜敗率で復活当選非拘束名簿式(個人名でも政党名でも投票)。2019 年から特定枠

ドント式:各党の得票を 1、2、3…で割り、商の大きい順に定数まで議席を配ります。

定数 5、A 党 6,000 票・B 党 3,600 票・C 党 1,800 票。 A:6,000・3,000・2,000・1,500… B:3,600・1,800・1,200… C:1,800・900… 大きい順に 6,000(A)・3,600(B)・3,000(A)・2,000(A)・1,800(B と C が同数)。同数の扱いは法律上くじですが、試験問題では同数にならないよう数が選ばれています。ここでは A 3・B 1・C 1(B と C のどちらか)。

一票の格差:議員 1 人あたりの有権者数の比。有権者 40 万人で定数 1 の区と 20 万人で定数 1 の区なら格差は 2 倍で、有権者の多い区ほど一票の価値が軽くなります。最高裁は衆議院で 1976 年(格差 4.99 倍)と 1985 年に違憲(ただし選挙は事情判決の法理で有効)、2009 年以降の選挙でたびたび違憲状態としました。対策として 2016 年改正で採用が決まったアダムズ方式により、2022 年改正で衆院小選挙区の 10 増 10 減が行われ(2024 年の総選挙から適用)、参議院では 2016 年から鳥取・島根、徳島・高知の合区が行われています。

ここまでできれば十分


6. よくある間違い

間違い正しくは
法律案の再可決は「総議員の 3 分の 2」出席議員の 3 分の 2 以上
条約の承認にも衆議院の先議権がある先議権は予算だけ。条約は優越(30 日)のみ
国務大臣の罷免には閣議決定が必要総理の専権。閣議は不要
最高裁長官は内閣が任命内閣が指名し天皇が任命。他の裁判官は内閣が任命
裁判官は行政機関が懲戒できるできない(78 条)。罷免は弾劾・心身故障・国民審査のみ
条例制定請求の請求先は選挙管理委員会首長。選管は解散・解職請求
条例による住民投票の結果に首長は拘束される法的拘束力はない(尊重義務にとどまる)
参議院の比例代表は拘束名簿式非拘束名簿式(衆議院が拘束名簿式)
最高裁は一票の格差で選挙を無効にした違憲と判断しても事情判決で選挙は有効としてきた

7. 覚え方の型

  1. 数字は「何の・どちらの院の・総議員か出席議員か」の 3 点セットで書き出す
  2. 衆議院の優越は「60・30・30・10」(法律・予算・条約・首相)と「予算だけ先議」で唱える
  3. 直接請求は「50 分の 1 は作る・調べる(首長・監査委員)、3 分の 1 はやめさせる(選管・首長)」
  4. ドント式は各党の商を表に書き出し、大きい順に丸をつける。同数が出たら計算ミスを疑う

8. 小テストへ

→ 小テスト(zk-02

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参考資料

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