地方上級 / マクロ / za-08

更新 2026-09-14

国際マクロ(為替レート・マンデル=フレミング)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

IS-LM(za-03)を海外との取引がある経済に広げた単元です。地方上級・国家一般職とも、マンデル=フレミング・モデルの「変動相場制では金融政策が有効・財政政策が無効、固定相場制では逆」がよく問われ、そこに至るメカニズム(金利差 → 資本移動 → 為替レート → 純輸出)を問う正誤問題が中心です。為替レートの決定理論(購買力平価・金利平価)と国際収支の項目分けは、社会科学(zk-06)とも重なります。ミクロの国際貿易(ze-07)は比較優位と関税の話で、こちらとは別の単元です。


1. 国際収支と経常収支

まずここだけ

国際収支統計は、日本と海外のお金のやり取りをまとめた表です(2014 年から現在の項目構成)。

大項目中身
経常収支貿易収支(モノの輸出 − 輸入)・サービス収支(旅行・輸送・知的財産の使用料など)・第一次所得収支(海外投資からの利子・配当、賃金)・第二次所得収支(食料や医薬品の無償援助、送金など対価のない移転)
資本移転等収支資本形成のための無償資金協力、鉱業権の売買など
金融収支直接投資・証券投資・外貨準備など、金融資産・負債の増減

経常収支 + 資本移転等収支 − 金融収支 + 誤差脱漏 = 0

日本は近年、貿易収支は赤字の年が多い一方、海外投資からの利子・配当(第一次所得収支)が大きな黒字で、経常収支全体は黒字が続いています(2026 年 9 月時点。統計値は財務省・日本銀行の国際収支統計で確認)。

ここまでできれば十分

IS バランス:GDP の恒等式 Y = C + I + G + (X − M) と、所得の使い道 Y = C + S + T から、

X − M = (S − I) + (T − G) 経常収支(純輸出)= 民間の貯蓄超過 + 財政黒字

例:民間貯蓄 300、民間投資 240、税収 150、政府支出 180 → 経常収支 = (300 − 240) + (150 − 180) = 60 − 30 = +30(黒字)

「財政赤字が拡大すると(他が同じなら)経常収支は悪化する」(双子の赤字)はこの式から読めます。経常収支の黒字は、国内で使い切れなかった貯蓄が海外に貸し出されている(金融収支もプラス=対外純資産の増加)ことを意味します。


2. 為替レート ── 円高・円安と決定理論

まずここだけ

為替レートは「1 ドル = 何円」で表すのが日本での習慣です(邦貨建て)。

輸出輸入物価
円高不利(海外での販売価格が上がる)有利(輸入品が安くなる)下がる方向
円安有利(海外での販売価格が下がる)不利(輸入品が高くなる)上がる方向

例:3 万円の製品は 1 ドル = 150 円なら 200 ドル、1 ドル = 120 円(円高)なら 250 ドル。海外では値上がりして売れにくくなる。

何が円高を起こすか:円を買う人が増えれば円高。日本の金利上昇(円で運用したい)・日本の経常黒字拡大(輸出代金のドルを円に替える)・海外の金利低下・日本の物価上昇率の低下(後述の購買力平価)。逆は円安。

ここまでできれば十分

購買力平価説(PPP):同じモノの値段はどの国でも同じになるように為替レートが決まる(一物一価)。

e = P / P(e:1 ドルあたり円、P:日本の物価、P:アメリカの物価)

例:同じハンバーガーが日本で 600 円、アメリカで 5 ドル → e = 600 ÷ 5 = 1 ドル = 120 円

相対的購買力平価:為替レートの変化率 ≒ 日本のインフレ率 − アメリカのインフレ率。日本のインフレ率が高いほど円安になる(円の購買力が落ちるから)。

例:1 ドル = 100 円、日本のインフレ率 5%、アメリカ 0% → 1 年後は 100 × 1.05 = 105 円(円安)

金利平価説:投資家は円建て資産とドル建て資産の予想収益率が等しくなるように動く。

日本の金利 = アメリカの金利 + 予想される円の減価率 i = i* + (Ee − E)/E (E:現在のレート、Ee:予想レート)

例:現在 1 ドル = 100 円、日本の金利 2%、アメリカの金利 5% → 予想減価率 = 2 − 5 = −3% → 1 年後の予想レートは 97 円(円高)。金利の低い円で持つ人は、円高になることで埋め合わせを期待している。

金利差が同じでも「期待」で今のレートが動く(今の円が高くなれば、将来の減価余地が生まれる)というのが、金利平価の考え方です。短期の為替は金利平価、長期は購買力平価で説明するのが標準的な整理です。

もう一歩(発展)


3. マンデル=フレミング・モデル

まずここだけ

マンデル=フレミング(変動相場制):財政政策は IS が戻って無効、金融政策は IS も右へ動いて有効

IS-LM に「海外との資本の移動」を足したモデルです。前提を 3 つ覚えます。

  1. 小国:自国の動きは世界の利子率 r* に影響しない
  2. 資本移動が完全に自由:自国の利子率が r より少しでも高ければ資本が無限に流入し、低ければ流出する → 結局、自国の利子率は r に固定される(BP 曲線が水平)
  3. 物価は一定(短期)

このもとで、政策の効果は為替制度によって正反対になります。

変動相場制固定相場制
財政政策(G 増加)無効有効
金融政策(M 増加)有効無効

ここまでできれば十分

マンデル=フレミング(固定相場制):財政政策は介入で LM も右へ動いて有効、金融政策は LM が戻って無効

変動相場制(為替レートは市場で決まる。貨幣供給量は中央銀行が自由に決められる)

例:LM が M = 0.5Y − 10r、r* = 4、M = 200 → Y = (200 + 40)/0.5 = 480。M を 250 にすると Y = (250 + 40)/0.5 = 580。100 増える(ΔM ÷ 0.5)。

固定相場制(中央銀行がレートを守るため介入する。貨幣供給量は自由に決められない)

もう一歩(発展)


4. よくある間違い

間違い正しくは
1 ドル = 150 円 → 120 円 は円安数字が下がる = 1 ドルを買うのに必要な円が減る = 円高
円高になると輸出が増える海外での販売価格が上がるので輸出は減る
日本のインフレ率が高いと購買力平価で円高になる円の購買力が下がるので円安
海外子会社からの配当は金融収支第一次所得収支(経常収支の一部)。金融収支は資産・負債そのものの増減
変動相場制では財政政策が有効無効。金利上昇 → 資本流入 → 円高 → 純輸出減で相殺される
固定相場制では金融政策が有効無効。為替介入で貨幣供給が元に戻る
変動相場制の財政政策が無効なのは利子率が上がるから利子率は最終的に r* に戻る。無効になるのは為替レート(円高)を通じて純輸出が減るから
J カーブ効果では円安で貿易収支がすぐ改善するいったん悪化してから改善する

5. 解き方の型

  1. 為替の向き:「1 ドル = 何円」の数字が下がれば円高。円高は輸出に不利・輸入に有利
  2. 購買力平価:e = P/P*。変化率なら 日本のインフレ率 − 相手国のインフレ率 だけ円安
  3. 金利平価:自国金利 = 外国金利 + 予想減価率。金利が低い通貨は「将来上がる」と予想されている
  4. マンデル=フレミングは「変動 → 金融が有効」「固定 → 財政が有効」を先に置き、理由は「金利差 → 資本移動 → 為替(変動)または介入で貨幣供給(固定)」の順で組み立てる
  5. 計算は r = r* を代入:変動相場制の金融政策なら LM に、固定相場制の財政政策なら IS(乗数)に

6. 小テストへ

→ 小テスト(za-08

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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