地方上級 / マクロ / za-01

更新 2026-09-14

GDP と国民所得統計(三面等価・物価指数)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

マクロ経済学の最初の単元で、地方上級・国家一般職とも「用語の定義」と「変換の計算」の両方が問われやすい分野です。計算は足し算・引き算・割り算だけですが、どの指標からどれを引くのかを混同すると一発で外れます。次の za-02(45 度線分析)以降はすべて「Y = GDP」を前提に進むので、ここで GDP の意味と支出面の内訳を体に入れておきます。高校公共の kk-07 の内容を、公務員試験向けにもう一段細かくしたものだと考えてください。


1. GDP の定義 ── 「新しく生み出された付加価値」

まずここだけ

GDP(国内総生産)= 一定期間に国内で新しく生み出された付加価値の合計 = 総産出額(売上の合計)− 中間投入(原材料・部品の仕入れ)

農家が小麦を 100 万円で製粉業者に売り、製粉業者が小麦粉を 150 万円でパン屋に売り、パン屋がパンを 250 万円で消費者に売ったとします。売上を全部足すと 500 万円ですが、小麦の価値は小麦粉の中に、小麦粉の価値はパンの中に入っているので二重計算です。各段階の付加価値 100 + 50 + 100 = 250 万円が GDP で、これは最終生産物の価格と一致します。

定義の 3 つのキーワードを押さえます。

キーワード意味
一定期間(フロー)1 年・四半期の「流れ」GDP・所得・消費 ⇔ 国富・資本ストックは「ストック」
国内領土の中で生産されたもの外国企業の日本工場の生産は日本の GDP に入る
新しく生み出された過去に作られたものの売買は入らない中古車・中古住宅の代金は入らない(業者の手数料は入る)

ここまでできれば十分

計上されるかどうかの判別は、選択肢問題で最もよく出ます。

計上される計上されない
持ち家の帰属家賃(家賃を払ったとみなす)家庭内の家事労働・ボランティア
農家の自家消費(市場価格で評価)株式・土地の売買代金(所有権の移転だけ。手数料は入る)
政府サービス(人件費などの費用で評価)年金・生活保護などの移転支出(生産の対価ではない)
売れ残り(在庫投資として投資に計上)中古品の代金(手数料は入る)・値上がり益

判別の軸は「その年に新しく生産されたサービスか」です。帰属家賃・自家消費・政府サービスは「市場を通らないが生産はしている」ので計上します。株式・中古品・移転支出は「お金は動くが生産はしていない」ので計上しません。


2. GDP から NI までの変換

まずここだけ

変換に使う 3 つの引き算・足し算を覚えます。

GNI = GDP + 海外からの要素所得の純受取(受取 − 支払) NDP = GDP − 固定資本減耗(純 = 総 − 減価償却) NI(要素費用表示)= NNI(市場価格表示)−(間接税 − 補助金)

数値例:GDP 600、海外純所得 20、固定資本減耗 120、間接税 45、補助金 5 のとき GNI = 620、NNI = 620 − 120 = 500、NI = 500 −(45 − 5)= 460

日本は海外投資からの利子・配当の受取が大きいので、GNI > GDP です(za-08 の第一次所得収支の黒字と同じ話)。

ここまでできれば十分

NDP と NNI を混ぜないことが大切です。NDP は GDP から、NNI は GNI から固定資本減耗を引きます。問題文に GNI と GDP の両方が書いてあって「国内純生産」を聞かれたら、GDP のほうを使います。

三面等価の分配面の内訳も式で書けるようにします。

GDP(分配面)= 雇用者報酬 + 営業余剰・混合所得 + 固定資本減耗 +(生産・輸入品に課される税 − 補助金)

「雇用者報酬(賃金)」と「営業余剰(企業のもうけ)」が要素所得で、それに減価償却と間接税を足すと市場価格表示の GDP に戻る、という構造です。


3. 三面等価 ── 生産・分配・支出

まずここだけ

生産面の GDP = 分配面の GDP = 支出面の GDP(GDE) 支出面:Y = C + I + G +(X − M)

生み出した付加価値(生産)は、そのまま誰かの所得になり(分配)、その所得は何かに使われるか在庫として残る(支出)、という事後的な恒等式です。「売れ残ったら等しくならないのでは」と思うかもしれませんが、売れ残りは在庫投資として I に計上するので、事後的にはつねに一致します。この「事後的につねに」という表現は選択肢でよく問われます。事前の計画としての需要と供給が等しいとは限らないのが za-02 のテーマです。

数値例:C = 300、I = 130、G = 110、X = 100、M = 90 → Y = 300 + 130 + 110 + 10 = 650

ここまでできれば十分

支出面の内訳の日本の姿(内閣府「国民経済計算」の大づかみな比率)は、民間最終消費支出が5 割強で最大、総資本形成と政府最終消費支出がそれぞれ 2 割前後、純輸出は数% 以内です。「輸出大国だから純輸出が大きい」というイメージは誤りで、輸入を引いた純輸出は GDP のごく一部です。


4. 名目と実質・GDP デフレーター

まずここだけ

実質 GDP = 名目 GDP ÷ GDP デフレーター × 100 GDP デフレーター = 名目 GDP ÷ 実質 GDP × 100

名目はその年の価格で測った金額、実質は基準年の価格で測った金額です。物価が 5% 上がれば、生産量が同じでも名目は 5% ふくらむので、その分を割り戻したのが実質です。

数値例:名目 630 兆円、デフレーター 105 → 実質 = 630 ÷ 1.05 = 600 兆円

成長率の近似式

実質成長率 ≒ 名目成長率 − 物価上昇率

名目 5% 増、物価 2% 上昇なら実質はおよそ 3% 増。これは近似で、正確には (1.05 ÷ 1.02 − 1) = 2.94% です。選択肢に「4%」と「4.2%」の両方があるような問題は、割り算で正確に出します。

ここまでできれば十分

グラフを言葉で言うと、横軸に年、縦軸に GDP をとったとき、名目の線と実質の線の開き具合がデフレーターです。日本では 1990 年代後半から 2010 年代前半にかけてデフレーターが下がり続けたため、実質成長率がプラスでも名目 GDP がほとんど増えない時期が続きました。逆に 2022 年以降は物価上昇で名目が実質を上回って伸びています。


5. 物価指数 ── ラスパイレスとパーシェ

まずここだけ

物価指数は「たくさんの財の価格変化を、購入量で重みづけして 1 つの数にしたもの」です。どの年の購入量で重みづけするかで 2 方式に分かれます。

方式重み(数量)式(基準年 = 0、比較年 = t)使われている指数
ラスパイレス基準年の数量 q₀Σ p_t q₀ ÷ Σ p₀ q₀ × 100消費者物価指数(CPI)・企業物価指数
パーシェ比較年の数量 q_tΣ p_t q_t ÷ Σ p₀ q_t × 100GDP デフレーター

覚え方は「ラスパイレスは基準年(ラ=過去)、パーシェは比較年(パ=現在)」。CPI は 5 年ごとに基準年を改定する固定バスケット方式なのでラスパイレス、GDP デフレーターは「今年の名目 ÷ 今年の実質」で今年の数量を使うのでパーシェです。

数値例:基準年に A・B とも 100 円で A を 2 個・B を 3 個。比較年に A が 80 円、B が 140 円。 ラスパイレス =(80 × 2 + 140 × 3)÷(100 × 2 + 100 × 3)× 100 = 580 ÷ 500 × 100 = 116

ここまでできれば十分

ラスパイレスの上方バイアス:値上がりした財の購入量は普通減るのに、ラスパイレスは昔の数量のまま重みづけするので、値上がりを実際より大きく評価しがちです。パーシェは買い控えた後の数量で重みづけするので小さめに出ます。「値上がり財から代替する行動を反映しないので、ラスパイレスはパーシェより大きくなりやすい」という一文が選択肢の定番です。

CPI と GDP デフレーターの違い:CPI は家計が買うものが対象で輸入品を含む。GDP デフレーターは国内で生産されたものが対象で輸入品を含まない(輸入は M として引かれる)。原油高で CPI は上がるのに GDP デフレーターが下がる、という現象はここから説明できます。

もう一歩(発展)

パーシェ指数の別の見方として、「実質 GDP は数量指数、デフレーターは価格指数で、掛けると名目 GDP になる」という関係があります。名目 = 価格 × 数量を「価格の部分」と「数量の部分」に分けたのが、デフレーターと実質 GDP です。


6. よくある間違い

間違い正しくは
中古車の代金は GDP に入る代金は入らない(過去の生産物)。販売業者の手数料だけ入る
年金は政府支出 G に入る移転支出は G に入らない。受け取った人が使えば C に入る
NDP = GNI − 固定資本減耗NDP は GDP から引く。GNI から引くと NNI
要素費用表示は間接税を足す間接税を引いて補助金を足す
三面等価は事前にも成り立つ成り立つのは事後的。在庫投資が調整項
CPI はパーシェ方式CPI はラスパイレス。パーシェは GDP デフレーター
デフレーター 105 なら実質 = 名目 × 1.05実質 = 名目 ÷ 1.05

7. 解き方の型

  1. 聞かれている指標に印をつける(国内か国民か/総か純か/市場価格か要素費用か)
  2. GDP → GNI は「+海外純所得」、総 → 純は「−固定資本減耗」、市場価格 → 要素費用は「−間接税 + 補助金」の順に処理する
  3. 名目・実質・デフレーターは「名目 = 実質 × デフレーター ÷ 100」の 1 本から変形する
  4. 物価指数は「重みの年」を確認し、分子・分母を書き出してから割る
  5. 計上の判別は「その年に新しく生産されたか」で切る

8. 小テストへ

→ 小テスト(za-01

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参考資料

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