地方上級 / 憲法 / zh-07
国会
この単元でできるようになること
- 「国権の最高機関」「唯一の立法機関」(41 条)の意味と、国会中心立法・国会単独立法の原則の例外を言える
- 衆議院の優越 4 つ(法律案・予算・条約・内閣総理大臣の指名)を、日数(60・30・30・10)と議決要件つきで表にできる
- 国会の種類 4 つ(常会・臨時会・特別会・参議院の緊急集会)の召集の要件と会期を区別できる
- 定足数・議決要件(3 分の 1・過半数・出席議員の 3 分の 2・総議員の 3 分の 2)を場面ごとに当てはめられる
- 議員の特権(不逮捕特権・免責特権・歳費)と国政調査権の性格・限界を判例(浦和事件など)とともに説明できる
試験での位置づけ
統治機構の中で最も数字が問われる単元です。地方上級・国家一般職とも「参議院が 30 日以内に議決しないとき、法律案は否決とみなされる」のように日数・分数・衆参をずらした選択肢で正誤を問う形が多く、条文を正確に押さえていれば得点しやすい範囲です。内閣(zh-08)の不信任・解散、裁判所(zh-09)の弾劾裁判、財政(zh-10)の予算とつながるので、この単元の表を統治全体の骨組みとして使ってください。
1. 国会の地位 ── 41 条
まずここだけ
41 条は、国会を「国権の最高機関」であって「国の唯一の立法機関」であると定めます。
- 国権の最高機関:国会が他の機関を法的に支配するという意味ではなく、主権者である国民に直接選ばれ国政の中心にあることを表す政治的美称とするのが通説です(政治的美称説)。だから、内閣や裁判所が国会に従属するわけではありません。
- 唯一の立法機関:2 つの原則を含みます。
| 原則 | 意味 | 憲法上の例外 |
|---|---|---|
| 国会中心立法の原則 | 実質的な意味の立法は国会だけができる | 両議院の規則制定権(58 条 2 項)、最高裁判所の規則制定権(77 条)、内閣の政令(73 条 6 号。ただし法律の委任・執行のためのものに限る)、地方公共団体の条例(94 条) |
| 国会単独立法の原則 | 国会の議決だけで法律が成立し、他の機関の関与を要しない | 地方特別法の住民投票(95 条) |
「実質的意味の立法」とは、国民の権利義務に関わる一般的・抽象的な法規範を作ることです。内閣の法律案提出権は、国会が自由に修正・否決できるので国会単独立法の原則に反しないというのが通説・実務です。
ここまでできれば十分
43 条は、両議院を「全国民を代表する選挙された議員」で組織すると定めます。議員は選挙区や支持団体の代理人ではなく全国民の代表であり、選挙民の指図に法的に拘束されない(自由委任)という意味です。党議拘束は法的拘束ではないので違憲ではありません。
二院制(42 条):衆議院と参議院。両院は同時に活動するのが原則(同時活動の原則)で、衆議院が解散されると参議院も同時に閉会します(54 条 2 項)。例外が参議院の緊急集会です。また両院は互いに独立して議事を行います(独立活動の原則)。
| 衆議院 | 参議院 | |
|---|---|---|
| 定数(公職選挙法) | 465 人 | 248 人 |
| 任期 | 4 年(解散のときは任期満了前に終了・45 条) | 6 年(3 年ごとに半数改選・46 条) |
| 解散 | あり | なし |
| 被選挙権(公職選挙法) | 25 歳以上 | 30 歳以上 |
定数と被選挙権年齢は憲法ではなく法律(公職選挙法)で定められています(44 条・47 条)。
2. 衆議院の優越 ── 数字は 60・30・30・10
まずここだけ
両院の議決が食い違ったときの処理です。優越が認められる理由は、衆議院のほうが任期が短く解散もあるので民意を反映しやすいから、と説明されます。
| 事項 | 条文 | 両院協議会 | 参議院が議決しないとき | 最終的な扱い |
|---|---|---|---|---|
| 法律案 | 59 条 | 開くことができる(任意) | 衆議院可決の法律案を受け取ってから60 日以内に議決しない → 衆議院は否決とみなすことができる | 衆議院で出席議員の 3 分の 2 以上で再可決すれば法律になる |
| 予算 | 60 条 | 開催が必須 | 受け取ってから30 日以内に議決しない | 衆議院の議決が国会の議決になる(再可決は不要) |
| 条約の承認 | 61 条(60 条 2 項を準用) | 開催が必須 | 受け取ってから30 日以内に議決しない | 衆議院の議決が国会の議決 |
| 内閣総理大臣の指名 | 67 条 | 開催が必須 | 衆議院の指名後、10 日以内に参議院が指名しない | 衆議院の議決が国会の議決 |
このほか、予算の先議権(60 条 1 項:予算は先に衆議院に提出)と内閣不信任決議権(69 条:衆議院のみ)も衆議院だけにあります。参議院の問責決議には法的効果はありません。
日数の数え方には注意点があります。60 日・30 日は「国会休会中の期間を除いて」数えます。また、法律案の 60 日は「否決とみなすことができる」であって、自動的に否決になるわけではありません。予算・条約の 30 日と首相指名の 10 日は「衆議院の議決が国会の議決となる」と自動的に扱いが決まります。
ここまでできれば十分
両院で対等なものも覚えておきます。選択肢に「衆議院の優越がある」と書かれていたら誤りです。
- 憲法改正の発議(96 条):各議院の総議員の 3 分の 2 以上
- 弾劾裁判所の設置(64 条):両議院の議員で組織
- 国政調査権(62 条):各議院がそれぞれもつ
- 議院規則の制定・懲罰(58 条):各議院がそれぞれ
- 皇室財産の授受の議決、決算の審査、法律案の提出
両院協議会は各議院から 10 人ずつ選ばれた協議委員で組織され、出席協議委員の 3 分の 2 以上で成案が得られます(国会法)。予算・条約・首相指名では開かなければならず(必須)、法律案では衆議院が求めることができるだけ(任意)です。この「必須/任意」の違いは頻出です。
3. 国会の種類と会期
まずここだけ
| 種類 | 条文 | 召集の要件 | 会期 |
|---|---|---|---|
| 常会(通常国会) | 52 条 | 毎年 1 回。国会法で1 月中に召集 | 150 日。延長は1 回まで |
| 臨時会(臨時国会) | 53 条 | 内閣が決定。またはいずれかの議院の総議員の 4 分の 1 以上の要求があれば内閣は召集を決定しなければならない | 両議院一致の議決で決める。延長は2 回まで |
| 特別会(特別国会) | 54 条 1 項 | 衆議院解散 → 解散の日から40 日以内に総選挙 → 選挙の日から30 日以内に召集 | 両議院一致の議決。延長 2 回まで |
| 参議院の緊急集会 | 54 条 2・3 項 | 衆議院解散中に国に緊急の必要があるとき、内閣が求める | 緊急の案件が終われば閉会 |
- 常会の会期 150 日と延長回数は国会法の定めです(憲法は「毎年 1 回」とだけ)。
- 臨時会の要求について、内閣がいつまでに召集しなければならないかは憲法に明文がなく、2017 年の召集遅延をめぐって訴訟になりました(最判令和 5 年・2023 年は、召集の要求に対して内閣は合理的期間内に召集する法的義務を負うとしつつ、個々の議員の請求権としては認めず、国家賠償請求を退けました)。
- 衆議院議員の任期満了による総選挙の後も臨時会が召集されます(国会法)。「特別会」は解散総選挙の後だけです。
ここまでできれば十分
参議院の緊急集会の要点は 3 つです。
- 求めることができるのは内閣だけ(参議院議員からは求められない)
- 緊急集会でとられた措置は臨時のもので、次の国会開会の後 10 日以内に衆議院の同意がなければ将来に向かって効力を失う
- 過去に開かれたのは 2 回(1952 年・1953 年)で、いずれも予算関連の案件
会期不継続の原則:会期中に議決に至らなかった案件は後の会期に継続しない(国会法 68 条)。ただし、各議院の議決で委員会に閉会中審査を付託した案件は継続します(継続審議)。また一事不再議の原則(同じ会期中に一度議決した案件は再び審議しない)も国会法・慣行上の原則です。
4. 議事の手続 ── 定足数と議決要件
まずここだけ
| 場面 | 要件 | 条文 |
|---|---|---|
| 議事を開き議決する定足数 | 総議員の 3 分の 1以上の出席 | 56 条 1 項 |
| 通常の議決 | 出席議員の過半数。可否同数は議長が決する | 56 条 2 項 |
| 法律案の再可決 | 出席議員の3 分の 2 以上 | 59 条 2 項 |
| 秘密会の開催 | 出席議員の3 分の 2 以上 | 57 条 1 項 |
| 議員の資格争訟裁判で議席を失わせる | 出席議員の3 分の 2 以上 | 55 条 |
| 議員の除名 | 出席議員の3 分の 2 以上 | 58 条 2 項 |
| 憲法改正の発議 | 各議院の総議員の 3 分の 2 以上 | 96 条 |
| 臨時会の召集要求 | いずれかの議院の総議員の 4 分の 1 以上 | 53 条 |
| 表決を会議録に記載させる要求 | 出席議員の5 分の 1 以上 | 57 条 3 項 |
「総議員」を分母にするのは定足数・憲法改正の発議・臨時会の要求の 3 つだけ、と覚えると整理しやすくなります。それ以外の 3 分の 2 はすべて「出席議員」です。
ここまでできれば十分
- 会議の公開(57 条):本会議は公開が原則。秘密会の記録のうち特に秘密を要するもの以外は公表・頒布しなければならない。委員会は国会法上、原則として議員以外は傍聴できないが、報道関係者などの傍聴は委員長の許可で認められている。
- 委員会中心主義:法律案はまず委員会(常任委員会・特別委員会)で審査され、本会議で議決する。総予算・重要な歳入法案では公聴会の開催が義務(国会法)。
- 法律の成立と公布:両議院で可決したときに法律となる(59 条 1 項)。公布は天皇の国事行為(7 条 1 号)。主任の国務大臣が署名し内閣総理大臣が連署する(74 条)。
- 各議院は議長その他の役員を選任し、議院規則を定め、院内の秩序を乱した議員を懲罰できる(58 条)。これが議院自律権で、裁判所は原則として議院の内部手続に立ち入りません(警察法改正無効事件・最大判昭和 37 年・1962 年:両院で議決を経たものとされ公布されている以上、裁判所は議事手続の有効無効を審理できない)。
5. 議員の特権
まずここだけ
| 特権 | 条文 | 内容 | 例外・限界 |
|---|---|---|---|
| 不逮捕特権 | 50 条 | 会期中は逮捕されない。会期前に逮捕された議員は、議院の要求があれば会期中は釈放 | 院外の現行犯、所属議院の許諾がある場合(国会法 33 条)は逮捕できる。会期外は特権なし。起訴や有罪判決を妨げるものではない |
| 免責特権 | 51 条 | 議院で行った演説・討論・表決について院外で責任を問われない(民事・刑事の法的責任) | 院内での懲罰は受ける。政党からの除名など政治的責任も免れない。地方議会議員には認められない(最大判昭和 42 年・1967 年) |
| 歳費受領権 | 49 条 | 国庫から相当額の歳費を受ける | 裁判官と違い、在任中の減額を禁止する規定はない |
ここまでできれば十分
免責特権に関する判例として、病院長自殺事件(最判平成 9 年・1997 年)があります。国会議員の質疑で名指しされた病院長が自殺し、遺族が議員個人と国を訴えたところ、最高裁は、議員個人は責任を負わず、国の賠償責任も、議員が職務とは関係なく違法・不当な目的で事実を摘示し、または虚偽であることを知りながらあえて摘示したなど特別の事情がない限り生じないとしました。
不逮捕特権は、参議院の緊急集会中の参議院議員にも及びます(国会法 100 条)。逮捕許諾に「期限付き」の条件を付けられるかについては、付けられないとした裁判例(東京地決昭和 29 年)があります。
6. 国政調査権(62 条)
まずここだけ
各議院は、国政に関する調査を行い、証人の出頭・証言・記録の提出を要求できます(62 条)。具体的な手続は議院証言法が定め、正当な理由のない出頭拒否・証言拒否・偽証には罰則があります。
国政調査権の法的性格については、国会が「国権の最高機関」として国政全般を統括するための独立の権能とみる独立権能説と、立法・予算審議・行政監督など議院の権能を行使するための補助的な権能とみる補助的権能説があり、補助的権能説が通説です。ただし議院の権能は広いので、実際に調査できる範囲は国政のほぼ全般に及びます。
ここまでできれば十分
限界が問われます。
- 司法権の独立との関係:係属中の事件について、裁判官の訴訟指揮や裁判内容の当否を調査することはできない。浦和事件(昭和 24 年・1949 年)で参議院法務委員会が確定判決の量刑を不当と決議したことに対し、最高裁は司法権の独立を侵すと抗議した。ただし、裁判と並行して異なる目的(立法目的など)で同じ事実を調べることは許されるとされる(並行調査)。
- 検察権との関係:検察事務は行政作用なので調査対象になるが、起訴・不起訴の判断に政治的圧力を加える調査や、捜査の続行に重大な支障を及ぼす調査は許されない(日商岩井事件・東京地判昭和 55 年・1980 年)。
- 人権との関係:思想・良心の調査や、刑事手続上の黙秘権を侵すような証言強制はできない。証人には自己や近親者が刑事訴追を受けるおそれがある場合の証言拒否権がある。
- 強制手段:出頭・証言・記録提出の要求はできるが、捜索・押収・逮捕のような刑事手続上の強制はできない。
7. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 法律案で参議院が 30 日以内に議決しないと否決とみなされる | 60 日。しかも「否決とみなすことができる」(任意) |
| 予算で両院の議決が異なるときは衆議院が 3 分の 2 で再可決する | 両院協議会で不一致なら自動的に衆議院の議決が国会の議決。再可決は法律案だけ |
| 条約の承認にも衆議院の先議権がある | 先議権は予算だけ。条約は参議院から審議してもよい |
| 首相指名で参議院が 30 日以内に指名しないとき衆議院の議決になる | 10 日以内 |
| 法律案でも両院協議会の開催は必須である | 法律案は任意。必須なのは予算・条約・首相指名 |
| 常会の会期 150 日は憲法で定められている | 国会法。憲法は「毎年 1 回」のみ |
| 臨時会は総議員の 3 分の 1 以上の要求で召集 | 4 分の 1 以上 |
| 特別会は選挙の日から 40 日以内に召集 | 解散から 40 日以内に総選挙、選挙から 30 日以内に召集 |
| 参議院の緊急集会は参議院議長が求める | 内閣だけが求められる |
| 緊急集会の措置は次の国会で承認されなければ最初から無効 | 次の国会開会後 10 日以内に衆議院の同意がなければ「将来に向かって」効力を失う |
| 除名は総議員の 3 分の 2 以上 | 出席議員の 3 分の 2 以上。「総議員」は定足数・憲法改正発議・臨時会要求だけ |
| 不逮捕特権は会期外にも及ぶ | 会期中のみ。院外の現行犯と議院の許諾があれば会期中でも逮捕可 |
| 免責特権により議員は院内の懲罰も免れる | 院外の法的責任だけ。院内の懲罰・政党の処分は別 |
| 国政調査権は独立の権能で裁判の内容も調査できる | 補助的権能説が通説。裁判内容の当否の調査は司法権の独立を侵す |
8. 覚え方の型
- 衆議院の優越は「法・予・条・首 = 60・30・30・10」と唱える。法律案だけ「再可決(出席 3 分の 2)」と「両院協議会は任意」で、他の 3 つは「自動的に衆議院の議決」と「両院協議会は必須」
- 分母が「総議員」なのは定足数 3 分の 1・憲法改正 3 分の 2・臨時会要求 4 分の 1の 3 つだけ。他の 3 分の 2 はすべて「出席議員」
- 期間は「解散 → 40 日以内に総選挙 → 30 日以内に特別会」「緊急集会の措置 → 次の国会開会後 10 日以内に衆議院の同意」「不信任 → 10 日以内に解散か総辞職(zh-08)」の 3 本の流れで覚える
- 選択肢は「日数をずらす」「衆参を入れかえる」「任意と必須を入れかえる」「総議員と出席議員を入れかえる」の 4 パターンを疑う
9. 小テストへ
→ 小テスト(zh-07)
関連する単元
- 前提:kk-03 国会・内閣・裁判所と地方自治(高校公共)、c-03 国会・内閣・裁判所(中学公民)
- 次に進む:zh-08 内閣(不信任と解散・議院内閣制)、zh-09 裁判所と違憲審査制(弾劾裁判・議院自律権と司法審査)、zh-10 財政・地方自治・憲法改正(予算の議決・改正の発議)
- 同じ考え方を使う:zk-02 統治機構(国会・内閣・裁判所・地方自治)と選挙、zp-03 政治制度(議院内閣制・大統領制・半大統領制)、zp-04 選挙制度と投票行動
参考資料
- 日本国憲法・国会法・公職選挙法・議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(e-Gov 法令検索)
- 衆議院・参議院ウェブサイト「国会のしくみ」「議員定数」(2026 年 9 月時点。定数は最新の公職選挙法で確認)
- 最高裁判所「裁判例検索」── 警察法改正無効事件(最大判昭和 37 年 3 月 7 日)、病院長自殺事件(最判平成 9 年 9 月 9 日)、臨時会召集訴訟(最判令和 5 年 9 月 12 日)
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(憲法)
- 芦部信喜『憲法』(岩波書店)、長谷部恭男編『憲法判例百選』(有斐閣)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zh-07/ / 更新 2026-09-14