地方上級 / 憲法 / zh-07

更新 2026-09-14

国会

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

統治機構の中で最も数字が問われる単元です。地方上級・国家一般職とも「参議院が 30 日以内に議決しないとき、法律案は否決とみなされる」のように日数・分数・衆参をずらした選択肢で正誤を問う形が多く、条文を正確に押さえていれば得点しやすい範囲です。内閣(zh-08)の不信任・解散、裁判所(zh-09)の弾劾裁判、財政(zh-10)の予算とつながるので、この単元の表を統治全体の骨組みとして使ってください。


1. 国会の地位 ── 41 条

まずここだけ

41 条は、国会を「国権の最高機関」であって「国の唯一の立法機関」であると定めます。

原則意味憲法上の例外
国会中心立法の原則実質的な意味の立法は国会だけができる両議院の規則制定権(58 条 2 項)、最高裁判所の規則制定権(77 条)、内閣の政令(73 条 6 号。ただし法律の委任・執行のためのものに限る)、地方公共団体の条例(94 条)
国会単独立法の原則国会の議決だけで法律が成立し、他の機関の関与を要しない地方特別法の住民投票(95 条)

「実質的意味の立法」とは、国民の権利義務に関わる一般的・抽象的な法規範を作ることです。内閣の法律案提出権は、国会が自由に修正・否決できるので国会単独立法の原則に反しないというのが通説・実務です。

ここまでできれば十分

43 条は、両議院を「全国民を代表する選挙された議員」で組織すると定めます。議員は選挙区や支持団体の代理人ではなく全国民の代表であり、選挙民の指図に法的に拘束されない(自由委任)という意味です。党議拘束は法的拘束ではないので違憲ではありません。

二院制(42 条):衆議院と参議院。両院は同時に活動するのが原則(同時活動の原則)で、衆議院が解散されると参議院も同時に閉会します(54 条 2 項)。例外が参議院の緊急集会です。また両院は互いに独立して議事を行います(独立活動の原則)。

衆議院参議院
定数(公職選挙法)465 人248 人
任期4 年(解散のときは任期満了前に終了・45 条)6 年(3 年ごとに半数改選・46 条)
解散ありなし
被選挙権(公職選挙法)25 歳以上30 歳以上

定数と被選挙権年齢は憲法ではなく法律(公職選挙法)で定められています(44 条・47 条)。


2. 衆議院の優越 ── 数字は 60・30・30・10

まずここだけ

両院の議決が食い違ったときの処理です。優越が認められる理由は、衆議院のほうが任期が短く解散もあるので民意を反映しやすいから、と説明されます。

事項条文両院協議会参議院が議決しないとき最終的な扱い
法律案59 条開くことができる(任意)衆議院可決の法律案を受け取ってから60 日以内に議決しない → 衆議院は否決とみなすことができる衆議院で出席議員の 3 分の 2 以上で再可決すれば法律になる
予算60 条開催が必須受け取ってから30 日以内に議決しない衆議院の議決が国会の議決になる(再可決は不要)
条約の承認61 条(60 条 2 項を準用)開催が必須受け取ってから30 日以内に議決しない衆議院の議決が国会の議決
内閣総理大臣の指名67 条開催が必須衆議院の指名後、10 日以内に参議院が指名しない衆議院の議決が国会の議決

このほか、予算の先議権(60 条 1 項:予算は先に衆議院に提出)と内閣不信任決議権(69 条:衆議院のみ)も衆議院だけにあります。参議院の問責決議には法的効果はありません。

日数の数え方には注意点があります。60 日・30 日は「国会休会中の期間を除いて」数えます。また、法律案の 60 日は「否決とみなすことができる」であって、自動的に否決になるわけではありません。予算・条約の 30 日と首相指名の 10 日は「衆議院の議決が国会の議決となる」と自動的に扱いが決まります。

ここまでできれば十分

両院で対等なものも覚えておきます。選択肢に「衆議院の優越がある」と書かれていたら誤りです。

両院協議会は各議院から 10 人ずつ選ばれた協議委員で組織され、出席協議委員の 3 分の 2 以上で成案が得られます(国会法)。予算・条約・首相指名では開かなければならず(必須)、法律案では衆議院が求めることができるだけ(任意)です。この「必須/任意」の違いは頻出です。


3. 国会の種類と会期

まずここだけ

種類条文召集の要件会期
常会(通常国会)52 条毎年 1 回。国会法で1 月中に召集150 日。延長は1 回まで
臨時会(臨時国会)53 条内閣が決定。またはいずれかの議院の総議員の 4 分の 1 以上の要求があれば内閣は召集を決定しなければならない両議院一致の議決で決める。延長は2 回まで
特別会(特別国会)54 条 1 項衆議院解散 → 解散の日から40 日以内に総選挙 → 選挙の日から30 日以内に召集両議院一致の議決。延長 2 回まで
参議院の緊急集会54 条 2・3 項衆議院解散中に国に緊急の必要があるとき、内閣が求める緊急の案件が終われば閉会

ここまでできれば十分

参議院の緊急集会の要点は 3 つです。

  1. 求めることができるのは内閣だけ(参議院議員からは求められない)
  2. 緊急集会でとられた措置は臨時のもので、次の国会開会の後 10 日以内に衆議院の同意がなければ将来に向かって効力を失う
  3. 過去に開かれたのは 2 回(1952 年・1953 年)で、いずれも予算関連の案件

会期不継続の原則:会期中に議決に至らなかった案件は後の会期に継続しない(国会法 68 条)。ただし、各議院の議決で委員会に閉会中審査を付託した案件は継続します(継続審議)。また一事不再議の原則(同じ会期中に一度議決した案件は再び審議しない)も国会法・慣行上の原則です。


4. 議事の手続 ── 定足数と議決要件

まずここだけ

場面要件条文
議事を開き議決する定足数総議員の 3 分の 1以上の出席56 条 1 項
通常の議決出席議員の過半数。可否同数は議長が決する56 条 2 項
法律案の再可決出席議員の3 分の 2 以上59 条 2 項
秘密会の開催出席議員の3 分の 2 以上57 条 1 項
議員の資格争訟裁判で議席を失わせる出席議員の3 分の 2 以上55 条
議員の除名出席議員の3 分の 2 以上58 条 2 項
憲法改正の発議各議院の総議員の 3 分の 2 以上96 条
臨時会の召集要求いずれかの議院の総議員の 4 分の 1 以上53 条
表決を会議録に記載させる要求出席議員の5 分の 1 以上57 条 3 項

「総議員」を分母にするのは定足数・憲法改正の発議・臨時会の要求の 3 つだけ、と覚えると整理しやすくなります。それ以外の 3 分の 2 はすべて「出席議員」です。

ここまでできれば十分


5. 議員の特権

まずここだけ

特権条文内容例外・限界
不逮捕特権50 条会期中は逮捕されない。会期前に逮捕された議員は、議院の要求があれば会期中は釈放院外の現行犯所属議院の許諾がある場合(国会法 33 条)は逮捕できる。会期外は特権なし。起訴や有罪判決を妨げるものではない
免責特権51 条議院で行った演説・討論・表決について院外で責任を問われない(民事・刑事の法的責任)院内での懲罰は受ける。政党からの除名など政治的責任も免れない。地方議会議員には認められない(最大判昭和 42 年・1967 年)
歳費受領権49 条国庫から相当額の歳費を受ける裁判官と違い、在任中の減額を禁止する規定はない

ここまでできれば十分

免責特権に関する判例として、病院長自殺事件(最判平成 9 年・1997 年)があります。国会議員の質疑で名指しされた病院長が自殺し、遺族が議員個人と国を訴えたところ、最高裁は、議員個人は責任を負わず、国の賠償責任も、議員が職務とは関係なく違法・不当な目的で事実を摘示し、または虚偽であることを知りながらあえて摘示したなど特別の事情がない限り生じないとしました。

不逮捕特権は、参議院の緊急集会中の参議院議員にも及びます(国会法 100 条)。逮捕許諾に「期限付き」の条件を付けられるかについては、付けられないとした裁判例(東京地決昭和 29 年)があります。


6. 国政調査権(62 条)

まずここだけ

各議院は、国政に関する調査を行い、証人の出頭・証言・記録の提出を要求できます(62 条)。具体的な手続は議院証言法が定め、正当な理由のない出頭拒否・証言拒否・偽証には罰則があります。

国政調査権の法的性格については、国会が「国権の最高機関」として国政全般を統括するための独立の権能とみる独立権能説と、立法・予算審議・行政監督など議院の権能を行使するための補助的な権能とみる補助的権能説があり、補助的権能説が通説です。ただし議院の権能は広いので、実際に調査できる範囲は国政のほぼ全般に及びます。

ここまでできれば十分

限界が問われます。


7. よくある間違い

間違い正しくは
法律案で参議院が 30 日以内に議決しないと否決とみなされる60 日。しかも「否決とみなすことができる」(任意)
予算で両院の議決が異なるときは衆議院が 3 分の 2 で再可決する両院協議会で不一致なら自動的に衆議院の議決が国会の議決。再可決は法律案だけ
条約の承認にも衆議院の先議権がある先議権は予算だけ。条約は参議院から審議してもよい
首相指名で参議院が 30 日以内に指名しないとき衆議院の議決になる10 日以内
法律案でも両院協議会の開催は必須である法律案は任意。必須なのは予算・条約・首相指名
常会の会期 150 日は憲法で定められている国会法。憲法は「毎年 1 回」のみ
臨時会は総議員の 3 分の 1 以上の要求で召集4 分の 1 以上
特別会は選挙の日から 40 日以内に召集解散から 40 日以内に総選挙、選挙から 30 日以内に召集
参議院の緊急集会は参議院議長が求める内閣だけが求められる
緊急集会の措置は次の国会で承認されなければ最初から無効次の国会開会後 10 日以内に衆議院の同意がなければ「将来に向かって」効力を失う
除名は総議員の 3 分の 2 以上出席議員の 3 分の 2 以上。「総議員」は定足数・憲法改正発議・臨時会要求だけ
不逮捕特権は会期外にも及ぶ会期中のみ。院外の現行犯と議院の許諾があれば会期中でも逮捕可
免責特権により議員は院内の懲罰も免れる院外の法的責任だけ。院内の懲罰・政党の処分は別
国政調査権は独立の権能で裁判の内容も調査できる補助的権能説が通説。裁判内容の当否の調査は司法権の独立を侵す

8. 覚え方の型

  1. 衆議院の優越は「法・予・条・首 = 60・30・30・10」と唱える。法律案だけ「再可決(出席 3 分の 2)」と「両院協議会は任意」で、他の 3 つは「自動的に衆議院の議決」と「両院協議会は必須」
  2. 分母が「総議員」なのは定足数 3 分の 1・憲法改正 3 分の 2・臨時会要求 4 分の 1の 3 つだけ。他の 3 分の 2 はすべて「出席議員」
  3. 期間は「解散 → 40 日以内に総選挙 → 30 日以内に特別会」「緊急集会の措置 → 次の国会開会後 10 日以内に衆議院の同意」「不信任 → 10 日以内に解散か総辞職zh-08)」の 3 本の流れで覚える
  4. 選択肢は「日数をずらす」「衆参を入れかえる」「任意と必須を入れかえる」「総議員と出席議員を入れかえる」の 4 パターンを疑う

9. 小テストへ

→ 小テスト(zh-07

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
基礎から標準から発展から🖨 プリント

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