勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

過去問の使い方 ── いつから・何年分・どう復習するか

一言で

過去問は「本番の形をした練習テスト」です。読むものではありません。時間を計って解き、直し、日をあけて解き直すものです。 ただし「過去問を何年分やると何点上がるか」を直接調べた研究は、このページではまだ引けていません。 そこでこのページは、研究が直接言っていることと、そこからの推論を分けて書きます。推論の部分には【推論】と書きます。

今日からやること

  1. 志望先(または受ける試験)の過去問を1 年分だけ、本番と同じ時間で解く。範囲が終わっていなくてよい。目的は形を知ること
  2. 採点したら、まちがいを「知らなかった」「知っていたのに出せなかった」「時間切れ・読み違い」の 3 つに分ける。前の 2 つは、その単元に戻る
  3. 解いた日をメモしておき、2〜4 週間後に、まちがえた問題だけを解答を隠して解き直す

何が分かっているか

研究が直接言っていること

① 解くこと自体が学習になる(テスト効果)

Yang, Luo, Vadillo, Yu & Shanks(2021)

Agarwal, Nunes & Blunt(2021) 実際の学校・教室で行われた 50 の実験を集めた総説です。49 の効果量・合計 5,374 人で、57% が中くらい以上の差を示しました。 学年・教科・テストの形式・時期が違っても、思い出す練習は学習を助けていました。 ただし、いわゆる欧米型の豊かな国(WEIRD と呼ばれる)以外で行われた実験は 6% だけでした。

② 解いて覚えたことは、ちがう形の問題にも広がる。ただし限界がある

Pan & Rickard(2018)

③ 選択式は、正解を確かめないと誤りも覚える

Butler & Roediger(2008) 選択式のテストは記憶を助ける一方で、選んだ誤りの選択肢を覚えてしまうことがあります。 文章を学んだあと選択式テストを受け、正解を「すぐ見せる」「あとで見せる」「見せない」の 3 つを比べました。 見せた 2 つの群では、あとの記述テストで正答が増え、誤りの選択肢を書いてしまうことが減りました。

McDaniel, Anderson, Derbish & Morrisette(2007) 大学の授業で、毎週の小テスト(フィードバックつき)を行いました。本番の単元テストと期末テストは選択式です。 小テストは成績を押し上げ、追加で読むだけでは差が出ませんでした。そして、本番が選択式でも、記述式の小テストのほうが差が大きかった。

④ 日をあけて、混ぜて解く

Cepeda, Vul, Rohrer, Wixted & Pashler(2008) 1,350 人以上に事実を教え、最大 3.5 か月あけて復習させ、最大 1 年後にテストしました。 いちばんよい間隔は、テストまでの期間が長いほど長くなりました。 割合でいうと、テストが 1 週間後なら期間の 20〜40%、1 年後なら 5〜10% でした。

Rohrer, Dedrick & Stershic(2015)/Rohrer ら(2020) アメリカの中学 1 年生(7 年生)の数学で、単元ごとにまとめて解く練習と、ちがう単元を混ぜて解く練習を比べました。 2015 年の研究では、混ぜた群が 1 日後 d = 0.42、30 日後 d = 0.79 で上でした。2020 年の 54 クラスの研究では、1 か月後のテストで 61% 対 38% でした。 過去問は、単元がバラバラに出る「混ぜた練習」そのものです。くわしくは 交互練習 へ。

⑤ どんなテストが来ると思うかで、勉強のしかたが変わる(日本の研究)

村山(2003)

村山(2004) 日本の中学 2 年生 67 人を、穴うめテスト群と記述テスト群に無作為に分けた実験です。5 日間の歴史の授業のあと毎回テストしました。 記述テスト群では深い勉強のしかたが増え、丸暗記は減りました。

村山(2005) 大学生の実験です。穴うめテストが来ると思うだけで、丸暗記型の勉強が増えました。理解しないと解けない穴うめ問題だと知らされていても、同じでした。 2 つめの実験では、難しい穴うめテストを予想した群だけで丸暗記が増えました。理解型の勉強は減りました。

村山(2006) 日本の中学 2 年生 55 人の 2 クラスで行った実践です。「穴うめテストには丸暗記が有効」という思いこみを、テスト形式スキーマと呼びます。これに働きかけたクラスでは、穴うめテストでも丸暗記が増えなかった。ノートの書き込みも多くなりました。

⑥ 「過去問」という言葉の中身

馬場(2021) 日本の大学入試対策用の英語教材 40 種類を分類しました。「過去問」には 4 つの意味がありました。 ① 試験問題そのもの ② 大学別の過去問題集(解答解説・傾向分析つき) ③ 大学・科目別の問題集 ④ 複数の大学の問題を科目別に集めた問題集 過去問の評価が人によって食いちがうのは、この定義のちがいが一因だと論じています。

考え方の出発点 「覚えるときの頭の使い方が、テストで求められる使い方と合っているほど成績がよい」という考えを、転移適切性処理と呼びます。Morris, Bransford & Franks(1977)がよく出発点として挙げられます。この論文は題名と書誌だけを確認したので、中身は書きません。 Yang ら(2021)は、教室の小テストの効果を説明する理論の一つとして、この考えを挙げています。

研究からの推論:過去問の回し方

ここから下は、上の研究を過去問に当てはめた推論です。研究で直接確かめたものではありません。

問い推論もとにした研究
いつから形を知るための 1 年分は早めに。本格的に回すのは、範囲がひととおり終わってから村山(2003〜2006):来るテストの形で勉強のしかたが変わる
何年分年数を決める研究はない。「2 周できる年数」を残り時間から逆算Cepeda ら(2008):間隔をあけた 2 回目が残る
解き方本番と同じ時間・形式で。解答は隠すYang ら(2021):形式がそろうかで差が変わる
直し方正解の根拠を確かめる。選択式は、選んだ誤りの理由もButler & Roediger(2008)
2 周目間をあける。同じ問題は答えを覚えるので、類題でも解くCepeda ら(2008)・Pan & Rickard(2018)
単元別との関係単元別の問題集だけで終えず、過去問・模試で混ぜて解くRohrer ら(2015・2020)

日本の中高生の勉強にあてはめると

大学入学共通テスト(マーク式)【推論】

過去の問題は、大学入試センターのサイトで公開されています。公開の範囲と最新の情報は、同センターのサイトで確かめてください。

国公立大の個別試験・私大の一般選抜(赤本)【推論】

公務員試験(教養・専門の択一式)【推論】

高校入試(都道府県の公立入試)【推論】

2 周目の間隔の目安【推論】

Cepeda ら(2008)の割合を当てはめます。本番まで 1 年なら、間隔は期間の 5〜10%(およそ 3〜5 週間)です。本番まで 1 週間なら 20〜40%(1〜3 日)です。 本番まで 3 か月ほどなら、その間をとって 1〜3 週間が目安になります。どれも、事実を覚える実験の数字を、過去問に当てはめた推論です。

よくある誤解

「過去問はもったいないから、直前までとっておく」 とっておいた過去問は、解かれない限り練習テストになりません。早めに 1 年分を解くと、どんな形で問われるかが分かり、勉強のしかたを形に合わせられます(村山の研究からの推論)。

「過去問は答えを覚えるまで何周もする」 同じ問題を何周もすると、答えの位置や数字を覚えてしまいます。Pan & Rickard(2018)では、問いと答えの組み合わせを入れ替えた問題には広がりにくい結果でした。2 周目以降は、まちがえた問題と、数字や聞き方を変えた類題を解きます。

「過去問の解説を読めば、解いたのと同じ」 読むのは練習テストになりません(テスト効果)。解説を読んだら閉じて、白紙で解き直せるかを確かめます。

「マーク式の試験だから、暗記中心でよい」 日本の中学生・大学生の研究(村山 2003〜2006)では、穴うめテストが来ると思うと丸暗記に寄りやすい結果でした。McDaniel ら(2007)では、本番が選択式でも記述の練習のほうが差が大きかった。選ぶ前に自分で答えを出す練習を混ぜます。

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注意点

引いた論文

番号は docs/参考文献ログ.md(#1〜#38)と docs/参考文献ログ_追加_習慣.md(#131〜)の #。#150 以外は DOI を開いて書誌と要旨(日本語論文は J-STAGE の抄録)を確認しています。#150 は書誌のみの確認です。