勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

予習のしかた ── 教科書を読むより、先に問いに答えてみる

一言で

予習というと「教科書を読んでおく」「英語の本文を和訳しておく」が定番です。研究から見ると、もう一つ効率のよい形があります。 授業の前に、その日に習うことへの問いに、分からないまま答えてみることです。間違えてかまいません。 答えようとした問いは、授業で答えを聞いたときに残りやすくなります。これを「事前テスト効果」と呼びます。

今日からやること

  1. 次の授業の教科書ページで、見出しと太字を見る。「〜とは何か」「なぜ〜か」の問いを 3 つ作る(3 分)
  2. 教科書の本文は読まずに、3 つの問いに 1〜2 行で答えを書く。分からなければ予想でよい(5 分)
  3. 授業中は、3 つの答えが出てきたら丸で囲むかメモする。その日の夜、ノートを閉じて 3 問に答え直す(5 分)

何が分かっているか

日本の中高生での研究

篠ヶ谷(2008)

篠ヶ谷(2013)

2008 年は「質問を作らせても効果なし」でした。2013 年は「深い質問を作り、答えまで書く」で差が出ました。予習の質問は作り方と、答えを書くところまでが大事だと読めます。

篠ヶ谷(2014)

予習のやり方の効果は、授業のやり方との組み合わせで変わる、という結果です。

事前テスト効果(答えられない問いに先に答える)

Richland, Kornell & Kao(2009)

Kornell, Hays & Bjork(2009) 答えを知るはずのない問い(架空の出来事を聞く一般常識問題など)や、当てるのが難しい言葉の連想を使った 6 つの実験です。 「答えを考えてから正解を見る」群と、「問いと正解をはじめから一緒に読む」群を比べました。答えられなかった思い出す試みでも、そのあとの学習は上でした。 著者は「間違いを避けるより、難しいテストに挑むことが学習の鍵の一つかもしれない」とまとめています。

Carpenter & Toftness(2017) 教育用の動画を 3 つの区切りで見せ、区切りごとに先に質問に答える群と、質問なしで見る群を比べました。 あとのテストでは質問に答えた群が上でした。質問された内容だけでなく、質問されなかった内容でも上でした。 文章を読む実験では「質問された所だけを拾い読みする」ことが起きやすい。動画ではそれが起きにくいからだ、と著者は考えています。

Carpenter, Rahman & Perkins(2018)

この研究は「予習より、授業後の思い出す練習(テスト効果)のほうが大きい」ことも示しています。

St. Hilaire & Carpenter(2020) 30 分の動画講義で、4 つの実験です。予習の質問に答えた群は、質問された内容で上でした。 ただしこの差は、講義の中で質問の答えを見つけて、書き留めたり丸で囲んだりできた場合にだけ出ました。 答えを見つけられなかった質問には、差がありませんでした。

Pan & Carpenter(2023) 事前の質問・事前テストの研究をまとめた総説です。あとで正しい答えを学ぶ機会があれば、事前に間違えていても学習が進むことが多い、とまとめています。 ただし効果の大きさは、手順や測り方によって変わるとも書いています。

生成効果と「先に解く」授業

Bertsch, Pesta, Wiscott & McDaniel(2007) 自分で答えや言葉を作り出す(生成する)と、ただ読むより覚えている。これを「生成効果」と呼びます。 86 研究・445 の効果量をまとめたメタ分析で、平均の効果量は 0.40(読むより、ばらつきの半分弱だけ上)でした。

Sinha & Kapur(2021)

日本の中高生の勉強にあてはめると

日本の学校では「予習 → 授業 → 復習」とよく言われます。研究から手を入れると、こうなります。

段階よくあるやり方研究から手を入れると
予習教科書を読む・本文を写す・単語を調べる問いを作って、分からないまま答えを書く(5〜10 分)
授業板書を写す予習の問いの答えを探して印をつける。答えが出たらメモ
復習ノートを読み返すノートを閉じて、予習の問いに答え直す

時間がない日は、予習より復習を優先します。Carpenter らの 2018 年の研究では、1 週間後に差が大きかったのは授業後のテストでした。そこからの推論です。

英語:本文の和訳ノート 本文をノートに写して全文を和訳する予習は、時間がかかります。写す時間は、ほとんど頭を使いません。 篠ヶ谷(2014)では、意味を自分で推測しておく予習が、単語の成り立ちを解説する授業で学習を助けていました。 たとえば、知らない単語は先に辞書を引かず、前後から意味を予想して鉛筆で書いておく。授業で答え合わせをして、違った所に印をつけます。 先生が和訳の提出を求める場合は、写す部分を減らし、訳だけを書く形にできないか考えます。

歴史・地理:「なぜ」の問いを 3 つ 問いは「〜は何年?」より「なぜ〜が起きた?」「〜の結果どうなった?」にします。篠ヶ谷(2013)で授業の理解を深めたのは、こうした深い問いでした。 例:江戸の三大改革なら「なぜ改革が 3 回も必要だったのか」。分からなくても、予想を 1 行書いておきます。

数学:5 分だけ先に解いてみる 教科書の例題を、解答を隠して 5 分だけ自力で解いてみます。解けなくてかまいません。 ただし、初めての型を長く悩むのは時間の無駄になりやすい、という研究もあります(解答例から学ぶ)。5 分で手が止まったら、例題の解き方を読みます。 先に解くか、先に読むか。研究は分かれていて、決着していません。「短く挑んでから読む」が、両方の結果の間をとったやり方です(ここは研究からの推論です)。

理科:実験の結果を予想しておく 次の実験で何が起きるかを、理由つきで 1 行書いておきます。授業で結果を見たら、予想とのずれを書き足します。 理科の予想そのものを比べた研究は、このページではまだ引けていません。事前テスト効果を理科に当てはめた使い方です。

映像授業・授業動画 映像授業を見る前に、その回の確認問題を先に解いてみます。Carpenter & Toftness(2017)では、動画の前の質問で、質問されなかった内容まで上でした。 区切りごとに一時停止して、次の区切りの問いに答えてから再生する、という使い方もできます。

部活で疲れている日・通学電車 予習は 10 分で足ります。通学電車の中で教科書の見出しを見て、問いを 3 つスマホのメモに書くだけでも、上の手順の 1 と 2 になります。

よくある誤解

「予習=教科書を読んでおくこと」 読む予習にも効果はあります(篠ヶ谷 2008)。ただ、Richland らでは同じ時間を「長く読む」より、「問いに答えてから読む」ほうが上でした。読むなら、読む前に問いを置きます。

「分からないまま答えると、間違いを覚えてしまう」 Kornell ら・Richland らでは、答えられなかった問いでも、そのあとの学習は上でした。条件はあとで正しい答えを確かめることです(Pan & Carpenter 2023)。授業で答え合わせをしないまま放っておくのはやめます。

「予習をしておけば、授業は聞き流してよい」 逆です。篠ヶ谷(2008)では予習の効果は授業中のメモを通して出ました。St. Hilaire & Carpenter(2020)では、授業中に答えを見つけて書き留めた場合にだけ差が出ました。予習は「授業で探すものを決めておく」作業です。

「予習の質問は、何でもいいから作ればよい」 篠ヶ谷(2008)では、予習で質問を作らせても効果は見られませんでした。2013 年の研究で差が出たのは、深い質問を作り、答えまで書いた場合です。

このサイトでの使い方

授業のあとの復習のしかたは、テスト効果(思い出す練習) と 間隔反復 を見てください。

注意点

引いた論文

番号は docs/参考文献ログ_追加_習慣.md の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨(日本語論文は J-STAGE の抄録)を確認しています。