勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

まとめノートと蛍光ペン ── 時間をかけたわりに残らない理由と、使いどころ

一言で

蛍光ペンで線を引く・教科書をノートにまとめ直す。どちらも「やった感」は大きいのに、残る量は閉じて思い出す練習より小さい、というのが研究のまとめです。 ただし、ゼロではありません。線を引く・ノートを取ること自体には小さな差があります。 使いどころは「覚える道具」ではなく「あとで隠して思い出すための目印」です。

今日からやること

  1. 蛍光ペンは1 段落に 1 か所まで。その日の夜に教科書を閉じて、引いた言葉を白い紙に 3 分で書き出す
  2. まとめノートは教科書を閉じて作る。見出しだけ先に書き、中身は思い出して書く。そのあと教科書を開き、抜けた所を赤で足す(1 単元 20 分まで)
  3. 定期テスト前の 1 週間は、ノートを清書しない。赤シートやノートの右半分を隠して、答えを言ってからめくる

何が分かっているか

Dunlosky ら(2013) 10 種類の勉強法を、研究の数と質から評価した総説です。要約(まとめ直し)とマーカーは「有用性:低」でした。 「高」は練習テスト(テスト効果)と分散練習(間隔反復)です。 「低」は「害がある」という意味ではありません。要旨では、マーカーと読み返しは安定して点を押し上げないので、代わりにほかの方法を使うようにと書かれています。

Ponce, Mayer & Méndez(2022)

効果量は「2 つのグループの差が、ばらつきの何倍か」を表す数字です。0.2 前後は小さい差、0.5 前後は中くらいの差の目安です。

Yue, Storm, Kornell & Bjork(2015)

著者たちは「条件によっては役に立つ。引き方を練習するべき」とまとめています。

Kobayashi(2005) 日本の研究者による、ノートを取る/取らないを比べた 57 研究のメタ分析です。

Mueller & Oppenheimer(2014) 大学生が講義を見ながらノートを取りました。3 つの研究で、パソコンでノートを取った学生は、手書きの学生より考えさせる問題で下でした。 パソコンの学生は、講義を一字一句そのまま打ち込む傾向がありました。自分の言葉に言いかえないことが不利の原因、と著者は考えています(% は要旨に無いので書きません)。

Morehead, Dunlosky & Rawson(2019) 上の研究を同じ手順でやり直した研究(追試)です。手書き・パソコンに加え、ペンで書けるタブレット型の端末の組と、ノートを取らない組も作りました。

著者は「どちらが上かを決めるのは早すぎる」と結論しています。

Urry ら(2021) Mueller & Oppenheimer の研究 1 を、パソコン 74 人・手書き 68 人でやり直しました。 パソコンの組は、講義の言葉をそのまま書いた量が多く、ノートの量も多かった。ここは元の研究と同じです。 しかし小テストの成績は、パソコンの組と手書きの組で差がありませんでした。似た 8 研究をまとめた分析も同じ傾向でした。

Umejima, Ibaraki, Yamazaki & Sakai(2021)

ただし内容は「予定の書き取り」で、教科の勉強ではありません。1 時間後のテストだけです。

山本・中尾・堀田(2023) 日本の中学校で、1 人 1 台の端末を家に持ち帰って学習した実践です。授業の前に、デジタル教材へマーカーで印をつけてくる課題を出しました。 印をつけた生徒は「授業の中で考えが見えて、参加しやすい」と感じていました。先生は、生徒の考えを授業前に知ることができました。 調べたのは生徒の意識と先生への聞き取りで、テストの点ではありません。

日本の中高生の勉強にあてはめると

定期テスト前の「まとめノート」 教科書を見ながら、見出しをそろえ、色分けしてノートに写す。日本の中学生ではよく見る勉強です。 研究の言葉では、これは「要約」と「見ながら書き写す」の組み合わせです。Dunlosky らの評価では「低」の側に入ります。 同じ時間で、教科書を閉じて白紙から書くと、中身は同じでも「思い出す練習」になります。きれいさは要りません。

提出用ノートと、自分用のメモは分ける 学校によっては、ノートの提出が評価の材料になります。提出用はきれいに書いてかまいません。 ただ、それを作った時間は「覚えた時間」とは別に考えます。覚えるのは、提出用ノートを閉じて小テストを解く時間です。

赤シートは、日本の勉強道具の中でいちばん研究に近い 赤ペンで書いて赤シートで隠す。これは答えを隠して思い出す形なので、テスト効果の研究と同じ向きです。 ただし、隠した答えを頭の中で言う前にシートをずらすと、ただの読み返しに戻ります。言えなかったものに印をつけ、翌日はそれだけをやり直します。

色ペンは何色まで 色の数そのものを比べた研究は、このページではまだ引けていません。 Ponce らの結果では、最初から強調された文章(教科書の太字・先生が赤で書いた語)は、記憶にも理解にも差がありました。自分で引くより、まず教科書の太字を使うのが近道です。 自分で引くなら、「大事」「覚える」「わからない」くらいの 2〜3 色で足ります。

タブレット(GIGA スクールの 1 人 1 台端末)でノートを取る 紙とタブレットの差は、研究によって出たり出なかったりします。大きな追試(Morehead ら・Urry ら)では、はっきりした差は出ませんでした。 差を作るのは道具より書き方です。板書や先生の話を一字一句写すだけなら、紙でもタブレットでも頭を通りません(Mueller & Oppenheimer の指摘)。 自分の言葉に縮めて書く。授業後に画面を閉じて、要点を 3 行で言えるか試す。こちらのほうが道具選びより大事です。

部活のあとの 30 分 疲れているとき、マーカーを引きながら教科書を読むと「やった感」だけが残りやすい時間です。 30 分あるなら、前半 10 分で教科書を読み、後半 20 分は閉じて小テストか白紙書き出し。読む・思い出すを 1 回ずつ入れます。

よくある誤解

「きれいなノートができた=勉強した」 ノートの見た目と、頭に残った量は別です。Kobayashi(2005)でも、ノートを取る効果は控えめでした。判断は、ノートを閉じて解けるかで行います。

「マーカーは意味がない」 言いすぎです。Yue ら(2015)や Ponce ら(2022)では、記憶テストで小さな差がありました。ただ、小中高生では差がはっきりしませんでした。 「引いて終わり」ではなく、引いた所をあとで隠して思い出す。そこまでやって初めて、時間に見合います。

「手書きでないと覚えられない」「タブレットはダメ」 有名な研究(Mueller & Oppenheimer 2014)はあります。しかし追試では、差が再現しませんでした(Morehead ら 2019・Urry ら 2021)。 紙が有利だった日本の研究(Umejima ら 2021)は、予定の書き取りで、1 時間後のテストです。教科の勉強にそのまま当てはまるかは分かりません。

「全部に線を引けば、全部大事だと分かる」 Ponce らのまとめでは、差が出たのは「大事な所だけ」を強調した場合の比較です。真っ黄色のページは、どこも目立たないページと同じです。

このサイトでの使い方

なぜ「閉じて思い出す」がよいのかは、テスト効果(思い出す練習) に詳しく書いています。「視覚型だからノートで覚える」という考え方については 学習スタイル説の検証 を見てください。

注意点

引いた論文

番号は docs/参考文献ログ.md(#6)と docs/参考文献ログ_追加_習慣.md(#131〜)の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨(または抄録)を確認しています。