勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

音読 ── 黙読との違いと、日本の英語学習で確かめられていること

一言で

音読で伸びると確かめられているのは、英文を読む速さと声に出した部分の記憶です。一方で「音読すると内容の理解が深まる」は、研究ではっきりしません。 音読は「意味が分かった英文」を速く処理できるようにする練習と考えると、使いどころがはっきりします。

今日からやること

  1. 意味が分かってから音読する。教科書や長文の和訳と文法を確かめたあとに、同じ英文を 3〜5 回声に出す。分からないまま読み上げない
  2. 1 日 1 本・5〜10 分を、日をあけて続ける。部活のあとの 10 分で、学校の教科書 1 パート(150〜250 語)を。翌日は前日の分を 1 回読んでから次へ
  3. 月に 1 回、黙読の速さを測る。初めて読む英文を黙読し、かかった秒数と内容問題の正解数を記録する。音読は「黙読が速くなるか」で確かめる

何が分かっているか

日本の英語学習者で確かめられていること

Shimono(2018) ── 日本の大学生 55 人を、1 学期のあいだ 3 つの群に分けました。「時間を計って読む練習+区切りと抑揚を意識した繰り返し音読」の群、「時間を計って読む練習」だけの群、会話練習の群です。練習した 2 群は黙読の速さが1 分あたり 13〜27 語伸び、理解の得点とともに会話練習の群を上回りました。ただし練習 2 群のあいだに有意な差はなく、理解は 70% 弱でした。

Milliner(2021) ── 日本の大学の初級学習者 56 人の研究です。12 週間、授業で「多読+時間を計って読む+繰り返し音読」を続けました。内容を 75% 以上理解したまま読める速さが、1 分あたり 46 語伸びています。さらに多読の量が多い人ほど、TOEIC の聞く・読むの得点が伸びていました。音読だけの効果を切り分けた研究ではない点に注意が必要です。

Taguchi, Takayasu-Maass & Gorsuch(2004) ── 日本の大学生の研究です。音声を聞きながら同じ英文をくり返し読む方法と、多読を比べました。黙読の速さの伸びは、多読と同じ程度でした(数字は要旨に無いので書きません)。

Mori(2011) ── 日本の大学生 20 人が、週 1 回・10 週間の練習をしました。音読とシャドーイング(音声を追いかけて言う練習)の組み合わせです。録音を音響分析すると、強く読む音節と弱く読む音節の差がはっきりし、文の終わりの抑揚も英語らしくなっていました。発音とリズムが変わったという結果です。

Miyasako(2005) ── 日本の英語学習者向けに、音読の頭の中のしくみを整理した理論論文です。意味が分からないまま声だけ出す読み方(オウムのような読み)があります。これは文法がまだ弱いときや、英文が難しすぎるときに起きると説明しています。理解する前の音読と後の音読は、目的と習熟度で使い分けるべきだ、という提案です。実験の数字はありません。

日本語(国語)の音読で確かめられていること

高橋(2007) ── 日本語の文を、音読と黙読で読ませる実験です。読みながら指でリズムを打つ課題を同時にやらせて、注意を奪いました。すると音読の理解度は保たれ、黙読の理解度は下がりました。集中しにくいときは、音読のほうが理解が崩れにくいということです。

森田・高橋(2019) ── 大学生 24 人と 23 人の 2 つの実験です。黙読のとき頭の中で声にする(内声化)と、文の言い回しをそのまま覚えやすいことが分かりました。一方、普段あまり内声化しない人は、黙読での理解の成績が高めでした。目を自由に動かして読める人は、黙読のほうが有利になりうる、という結果です。

黒岩(1993) ── 小学 6 年生 91 人を、つぶやき読み・音読・黙読に分けました。つぶやき読みは文章の「音」の記憶で上回りましたが、意味の理解では差がありませんでした。

Muto(2015) ── 学部生・大学院生 54 人の実験で、日本心理学会の英文誌に載りました。読ませた文の言語は、要旨には書かれていません。文全体を一度に見せると黙読が有利でした。文字が少しずつ流れて出る見せ方だと音読が有利でした。「どちらが上か」は読む場面で変わるということです。

声に出すと覚えやすい(産出効果)

MacLeod ら(2010) ── 8 つの実験で、声に出して読んだ単語は、黙読した単語より覚えていることを確かめました。「産出効果」と呼ばれます。ただし差が出たのは、一部の語だけを声に出したときでした。全部を声に出すと、声に出したことが目立たなくなるためと説明されています。

Forrin, MacLeod & Ozubko(2012) ── 書く・打つ・口だけ動かす・ささやくも、黙読より記憶に残りました。ただしはっきり声に出すほうが上でした。

Roberts ら(2024) ── 読解テストの文章を、一部は音読・一部は黙読で読ませた 4 つの実験です。音読が上回ったのは、本文の内容を覚えているかを問う設問だけでした。理解や推論を問う設問では差がありませんでした。

音読がうまい人は読解もできる(相関)

Jeon(2012) ── 韓国の高校生 255 人を調べた研究です。音読の流暢さ(速く正確に、区切りよく読めるか)で、黙読の理解の個人差の21.2%が説明できました。これは「音読が上手な人は読解もできる」という関係で、音読練習の効果を示したものではありません。

日本の中高生の勉強にあてはめると

教科書の音読は「授業で意味を確かめた後」に。中学の教科書本文なら、和訳と新出文法を確かめてから 3〜5 回。意味が分からない段階の音読は、Miyasako(2005)の言う「声だけ出す読み」になりやすいからです。

目的は「黙読が速くなること」。共通テストのリーディングは 80 分で大問 8 つです(令和 7 年度)。日本の大学生の研究で伸びたのは、黙読の速さでした。音読を続けて、初見の英文が速く読めるようになったかで確かめましょう。

長文は「1 回解いて、答え合わせしてから音読」。赤本や問題集の長文なら、解く → 答え合わせ → 分からなかった文を確認 → 全文を 2〜3 回音読、の順です。同じ長文を日をあけて 2〜3 回音読すると、Shimono(2018)の「繰り返し音読」に近い形になります。

暗記したい例文だけ声に出す。産出効果は「一部だけ声に出す」ときに出やすい現象でした。文法書の例文のうち、覚えたい構文の 1 文だけを声に出す。全部を同じように読み上げるより、目立たせたいものを選びます。

集中できない日は音読。高橋(2007)では、注意が奪われても音読の理解は保たれました。夜に疲れて黙読が頭に入らない日は、声に出して読むと崩れにくいかもしれません。家族がいる場所なら、ささやき声でも黙読よりは残ります(Forrin ら 2012)。

国語の音読も同じ考え方で。古文の暗唱や漢文の書き下し文の音読は、言い回しをそのまま覚えるのに向いています(森田・高橋 2019・黒岩 1993)。一方、評論文の論理を追うときは、黙読で前後を行き来するほうが向いている場合があります。

よくある誤解

「音読すれば内容が深く理解できる」 Roberts ら(2024)では、音読が上回ったのは記憶の設問だけで、理解の設問では差がありませんでした。黒岩(1993)も意味の処理では差なしです。音読は理解の代わりではありません。

「たくさん読めば読むほどよい(100 回音読)」 回数と効果の関係を確かめた研究は、このページではまだ引けていません。Shimono(2018)でも、時間を計って読む練習だけの群と音読を加えた群に差はありませんでした。回数を目標にするより、意味が分かった英文を日をあけて何回か読むほうが、ほかの研究(間隔反復)と合います。

「黙読は頭の中で音にしないほうが上級者」 森田・高橋(2019)では、内声化には言い回しを保つ働きがありました。普段あまり内声化しない人は黙読の理解が高めでしたが、内声化をやめる練習の効果を確かめたわけではありません。

「音読が上手な人は英語ができるから、音読すればできるようになる」 Jeon(2012)は相関の研究です。音読がうまいことと読解ができることが一緒に起きている、までしか言えません。

このサイトでの使い方

聞き取りを伸ばしたい人は、音読より シャドーイング を試してください。

注意点

引いた論文

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