地方上級 / 行政法 / zg-02

更新 2026-09-14

行政行為(効力・瑕疵・取消しと撤回・附款)

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

行政法の中心で、地方上級・国家一般職とも出題されやすい単元です。「効力」「瑕疵」「取消しと撤回」「附款」の 4 テーマから、1 つの選択肢ごとに別のテーマを混ぜた正誤問題が作られます。判例は「結論」だけでなく「例外を認めた理由」まで問われるので、無効の判例(最判昭和 48 年)と撤回の判例(菊田医師事件)は理由まで押さえてください。行政行為の分類は、あとの行政事件訴訟法(zg-09)で「処分性」を考えるときの土台になります。


1. 行政行為とは何か・その分類

まずここだけ

行政行為とは、行政庁が法に基づき、公権力の行使として、国民の権利義務を直接・具体的に形成し、または確定する行為です。法律の条文では「処分」と呼ばれます(行政手続法 2 条 2 号、行政事件訴訟法 3 条 2 項)。

行政行為でないものとの区別が大事です。

区別する相手なぜ行政行為でないか
行政立法(政令・省令)一般的・抽象的で、特定の人の権利義務を直接には決めない(zg-03
行政契約相手方との合意で成立する。公権力の行使ではない(zg-04
行政指導相手方の任意の協力を求めるだけで、法的効果を生まない(zg-04
事実行為道路工事・ごみの収集のように、権利義務の変動を目的としない

ここまでできれば十分

行政行為は、行政庁の意思(効果意思)で効果が生じる法律行為的行政行為と、法律が効果を定めていて意思の内容と無関係に効果が生じる準法律行為的行政行為に分かれます。

大分類中分類種類内容
法律行為的命令的行為(本来もつ自由を制限・回復)下命・禁止作為・不作為を命じる納税の命令、営業停止命令、通行禁止
許可一般的な禁止を特定の場合に解除する運転免許、飲食店の営業許可、医師免許、風俗営業の許可
免除作為義務を解除する納税の猶予、就学義務の免除
形成的行為(本来もたない権利を与える)特許特定人に新たな権利・地位を設定する公有水面埋立ての免許、鉱業権の設定、道路の占用許可、電気事業の許可、帰化の許可
認可私人の法律行為を補充して効力を完成させる農地の権利移動の許可(農地法 3 条)、公共料金の認可、公益法人の設立の認可
代理行政庁が私人に代わって行為し、本人がしたのと同じ効果を生む土地収用の裁決、当事者間の協議が調わない場合の裁定
準法律行為的確認事実や法律関係の存否を認定し公に確定する建築確認、当選人の決定、所得税の更正・決定、発明の特許
公証事実や法律関係の存在を公に証明する選挙人名簿への登録、不動産の登記、戸籍への記載、運転免許証の交付
通知特定の事項を知らせる納税の督促、代執行の戒告
受理届出などを有効なものとして受け付ける不服申立書の受理

名前と実質が違うものに注意してください。「発明の特許」は特許ではなく確認、「道路の占用許可」は許可ではなく特許、「農地の権利移動の許可」は認可です。法律上の名前ではなく、効果で分類します。

もう一歩(発展)

許可・特許・認可の実益は、要らないのに行った行為の効力の違いにあります。

無許可でした行為無特許でした行為無認可でした行為
行為の私法上の効力原則として有効(罰則の対象にはなる)権利がないので効果は生じない無効(効力が完成しない)
無免許で飲食店を営業しても売買契約は有効免許なしに公有水面を埋め立てても土地の所有権を取得しない農地法の許可なしに農地を売買しても所有権は移転しない

また、附款を付けられるのは法律行為的行政行為だけです。準法律行為的行政行為は法律が効果を定めているので、行政庁の意思で内容を変えられません(→ 5 節)。


2. 行政行為の効力

まずここだけ

行政行為には、私人の法律行為にはない特別な効力が 4 つ(+拘束力)あります。

効力内容根拠・限界
公定力違法でも、正当な権限をもつ機関(処分庁・審査庁・裁判所)が取り消すまでは有効なものとして通用する取消訴訟の排他的管轄が根拠。無効の行政行為には生じない
不可争力(形式的確定力)不服申立期間・出訴期間が過ぎると、私人の側からは争えなくなる行政不服審査法 18 条・行政事件訴訟法 14 条。行政庁の側からの職権取消しはできる。無効確認訴訟には期間制限がない
不可変更力(実質的確定力)行政庁自身も取消し・変更ができなくなる審査請求の裁決など争訟裁断的な行為にだけ生じる。一般の行政行為には生じない
自力執行力義務が履行されないとき、裁判を経ずに行政庁が自ら強制執行できる行政行為の根拠法とは別に、執行を認める法律の根拠が要る(行政代執行法など。zg-05
拘束力内容に応じて相手方・行政庁を拘束する通常の法的効果

ここまでできれば十分

公定力には及ばない場面があり、ここが試験で問われます。

国家賠償請求(最判昭和 36 年(1961 年)4 月 21 日) 違法な課税処分で税金を納めさせられた人が、処分の取消しを求めずに国家賠償を請求した事案です。最高裁は、行政処分が違法であることを理由として国家賠償を請求するには、あらかじめ取消しや無効確認の判決を得る必要はないとしました。国家賠償請求は処分の効力を否定するものではなく、損害の賠償を求めるだけだからです。

刑事事件(余目町個室付浴場事件 最判昭和 53 年(1978 年)6 月 16 日) 個室付浴場の営業を止めるために町が児童遊園の設置認可を受け、その認可を前提に営業者が処罰されそうになった事案です。最高裁は、認可は行政権の著しい濫用で違法であり、営業者を処罰することはできないとしました。刑事裁判所は、処分の効力を前提にせずに違法性を判断できるということです。

「不可争力」と「不可変更力」の違いは、誰が争えなくなるかです。不可争力は私人が争えなくなる(行政庁は職権で取り消せる)、不可変更力は行政庁が変えられなくなる、と覚えてください。

もう一歩(発展)

自力執行力は、かつては行政行為に当然に備わるものと考えられていましたが、現在は法律の根拠があって初めて認められると考えます。行政代執行法 1 条は、行政上の義務の履行確保は「別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる」と定めています。「行政行為に自力執行力があるから、根拠法がなくても強制執行できる」という選択肢は誤りです。


3. 行政行為の瑕疵 ── 無効と取消し

まずここだけ

瑕疵(欠陥)のある行政行為は、瑕疵の程度で 2 つに分かれます。

取り消しうる行政行為無効の行政行為
瑕疵の程度通常の違法・不当重大かつ明白な瑕疵
公定力あり(取り消されるまで有効)なし(はじめから効力がない)
不可争力あり(期間内に争う)なし(いつでも無効を主張できる)
争い方審査請求・取消訴訟無効確認訴訟、または他の訴訟の前提問題として主張

無効かどうかの基準が重大明白説です。瑕疵が重大(重要な法規に違反する)であり、かつ明白(誰が見ても外観上一見して明らか)であるときに無効となります。

ここまでできれば十分

明白性の意味(最判昭和 36 年(1961 年)3 月 7 日) 瑕疵が明白であるとは、処分の成立時に、誤りが外形上客観的に明白であることをいい、行政庁が怠慢で調査しなかったかどうかは関係がないとしました(外観上一見明白説)。

明白性を要求しなかった例(最判昭和 48 年(1973 年)4 月 26 日) 第三者が本人の知らない間に不動産の登記を勝手に移し、その後の売却について本人に譲渡所得の課税がされた事案です。最高裁は、課税処分に明白な瑕疵がなくても、①課税の原因が第三者の行為によるもので本人に何の関与もなく、②本人に著しい不利益を負わせることが著しく不当で、③無効としても徴税行政の安定を害しないという例外的事情がある場合には、無効になるとしました。「重大明白説には例外がある」という形で問われます。

違法性の承継 先行する行政行為の違法を理由に、後行の行政行為を争えるかという問題です。原則は承継しない(それぞれ独立に争う。課税処分と滞納処分がその例)。ただし、先行行為と後行行為が結合して 1 つの法的効果を目指している場合には承継が認められます(土地収用の事業認定と収用裁決)。たぬきの森事件(最判平成 21 年(2009 年)12 月 17 日)は、建築物の安全認定と建築確認について、両者が一体として安全性を確保するしくみであること、安全認定の段階では周辺住民が争うことが難しいことを理由に、安全認定の違法を建築確認の取消訴訟で主張できるとしました。

もう一歩(発展)

瑕疵があっても有効なものとして扱う 2 つの考え方があります。

考え方内容判例
瑕疵の治癒成立時の欠陥が後の事情で補われ、取り消す実益がなくなる農地買収計画への異議・訴願の裁決を経ないまま買収処分をしたが、後に裁決が出た事案で治癒を認めた(最判昭和 36 年 7 月 14 日)。一方、更正処分の理由付記の不備は、後の裁決で理由が明らかになっても治癒しない(最判昭和 47 年(1972 年)12 月 5 日)
違法行為の転換本来の行為としては違法だが、別の行為として要件を満たすなら、その行為として有効と扱う死者を名宛人とした農地買収計画を、相続人に対する計画として有効とした(最大判昭和 29 年(1954 年)7 月 19 日)

理由付記の不備が治癒しないのは、理由付記が行政庁の判断の慎重さを担保し、相手方に不服申立ての便宜を与えるためのもので、後から理由を示したのでは目的が果たせないからです。この考え方は行政手続法の理由提示(zg-06)にもつながります。


4. 職権取消しと撤回

まずここだけ

どちらも行政庁が自分の行った行政行為の効力を失わせる行為ですが、原因と効果が違います。

職権取消し撤回
原因成立時に瑕疵があった(はじめから違法・不当)成立時には瑕疵がなく、後発的な事情で維持できなくなった
効果の時点遡って効力を失う(遡及効)将来に向かって効力を失う
誰ができるか処分庁と、その監督庁処分庁のみ(監督庁は法律の根拠がなければできない)
法律の根拠不要不要(判例)
条文上の呼び方「取消し」法律の条文では「取消し」と書かれることが多い(運転免許の「取消し」は撤回)

事例: 飲食店の営業許可を受けた A が、その後、食品衛生法に違反して食中毒を出したため、知事が営業許可を取り消した。 → 許可の時点には瑕疵がなく、後から違反があったので、これは撤回。効果は将来に向かってのみ生じる。

ここまでできれば十分

撤回に法律の根拠は要るか ── 菊田医師事件(最判昭和 63 年(1988 年)6 月 17 日) 優生保護法(当時)の指定医師が、実子あっせん(生まれた子を他人の実子として届け出させる)を繰り返したため、医師会が指定を撤回した事案です。最高裁は、指定医師の義務に反する行為があり、指定を存続させることが公益に適合しない状態が生じた場合には、法律の明文の根拠がなくても、医師会は指定を撤回できるとしました。相手方の不利益を考慮しても、撤回すべき公益上の必要性が高いと判断されたからです。

授益的行政行為の取消し・撤回の制限 国民に利益を与える行政行為(許可・補助金交付決定など)を取り消したり撤回したりすると、相手方の信頼を害します。そこで、取消し・撤回によって得られる公益と、相手方の不利益を比較衡量し、公益上の必要が上回る場合にだけ認められると考えられています。相手方に帰責事由(詐欺・違反行為)があれば、取消し・撤回はしやすくなります。一方、国民に不利益を与える行政行為(侵害的行政行為)の取消しは、相手方に有利なので原則として自由です。

撤回と損失補償(最判昭和 49 年(1974 年)2 月 5 日) 東京都の中央卸売市場で、市場内の土地の使用許可を受けていた業者が、都の都合で使用許可を撤回された事案です。最高裁は、都有地の使用許可は本来、公物としての使用が優先されるべきもので、使用権はその制約を内包しているから、撤回によって使用権が消滅しても、特別の事情がない限り損失補償は不要としました(zg-10)。

もう一歩(発展)

「不可変更力」との関係を整理しておきます。審査請求の裁決のような争訟裁断的行為には不可変更力があるので、行政庁は職権で取り消せません。それ以外の一般の行政行為には不可変更力がないので、瑕疵があれば処分庁は職権で取り消せます。ただし、授益的行政行為については上記の制限がかかります。


5. 附款

まずここだけ

附款とは、行政行為の効果を制限したり、特別の義務を課したりするために、行政庁が主たる意思表示に付け加える従たる意思表示です。

種類内容
条件効果の発生・消滅を将来の不確実な事実にかからせる(停止条件・解除条件)「道路が完成したときに営業を許可する」(停止条件)、「1 年以内に工事に着手しなければ許可は失効する」(解除条件)
期限効果の発生・消滅を将来の確実な事実にかからせる「令和 X 年 3 月 31 日まで占用を許可する」
負担相手方に作為・不作為の義務を課す「営業に際して防火設備を設けること」、「占用料を納付すること」
撤回権の留保一定の場合に撤回できることを明示しておく「公益上必要が生じたときは許可を取り消すことがある」
法律効果の一部除外法律が定める効果の一部を発生させない「出張を命じるが旅費は支給しない」

ここまでできれば十分

附款のポイントは 4 つです。

  1. 附款を付けられるのは法律行為的行政行為だけ。準法律行為的行政行為(確認・公証など)には付けられない
  2. 裁量行為には法律の明文がなくても付けられるが、羈束行為には法律の根拠がなければ付けられない
  3. 法律効果の一部除外は、法律が定めた効果を行政庁の判断で変えるものなので、法律の根拠が要る
  4. 附款は、行政行為の目的に必要な限度を超えてはならない(比例原則)。目的と無関係な附款は違法

負担と条件の違い: 負担を履行しなくても、行政行為の効力は当然には失われません(義務違反として撤回や強制の対象になるだけ)。一方、解除条件が成就すれば、行政行為の効力は当然に消滅します。ここが最もよく問われます。

附款だけの取消訴訟: 附款が本体と分離できる場合(典型は負担)には、附款だけを対象に取消訴訟を起こせます。分離できない場合(附款がなければ行政庁がその処分をしなかったといえる場合)には、本体の行政行為全体を争います。

もう一歩(発展)

「附款」と「法定附款」を区別する出題もあります。運転免許の有効期間のように、行政庁の意思ではなく法律自体が定めている期限は、正確には附款ではなく法定の効果です。附款は行政庁の意思表示で付け加えるものです。


6. よくある間違い

間違い正しくは
発明の特許は「特許」、道路の占用許可は「許可」発明の特許は確認、道路の占用許可は特許。効果で分類する
無許可でした売買契約は無効無許可の行為は罰則の対象になるが、私法上は原則有効。無効になるのは無認可の行為
公定力があるので、取消判決を得なければ国家賠償を請求できない取消判決を得なくても国家賠償を請求できる(最判昭和 36 年 4 月 21 日)
不可争力が生じると行政庁も取り消せない不可争力は私人が争えなくなるだけ。行政庁は職権で取り消せる
すべての行政行為に不可変更力がある争訟裁断的行為(裁決など)にだけ生じる
行政行為には自力執行力があるので法律の根拠なく強制執行できる執行を認める別の法律の根拠が要る
無効には常に明白性が要る例外的事情がある場合には明白でなくても無効になり得る(最判昭和 48 年 4 月 26 日)
撤回には法律の根拠が要る法律の根拠がなくても撤回できる(菊田医師事件)
監督庁も撤回できる撤回できるのは処分庁だけ。監督庁は職権取消しはできるが撤回はできない
負担を履行しないと行政行為は当然に失効する当然には失効しない。当然に失効するのは解除条件の成就

7. 解き方の型

  1. 選択肢に出てきた行為を、まず「行政行為か・そうでないか」、次に「許可・特許・認可・確認・公証のどれか」に当てはめる。法律上の名前ではなく効果で決める
  2. 「効力」の選択肢は、4 つの効力の限界(無効には公定力なし/行政庁は不可争力に縛られない/不可変更力は裁決だけ/執行力は別の法律)に当たっていないかを確認する
  3. 「無効か取消しか」は重大+明白の 2 要件で判定し、「明白でなくても無効」の例外判例を思い出す
  4. 「取消しか撤回か」は瑕疵が成立時にあったかで決め、効果の時点(遡及か将来か)と主体(監督庁は撤回できない)を確認する
  5. 「附款」は 5 種類のどれかを当て、負担と条件の効果の違い、法律効果の一部除外だけ法律の根拠が要る点を確認する

8. 小テストへ

→ 小テスト(zg-02

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参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
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