地方上級 / 行政法 / zg-06

更新 2026-09-14

行政手続法

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

行政手続法は地方上級・国家一般職の行政法で条文知識がそのまま問われやすい法律です。「審査基準は義務、標準処理期間は努力義務」「処分基準は努力義務」のような義務のレベルの違い、「聴聞か弁明か」「30 日」といった数字と手続の対応が選択肢の入れかえの材料になります。行政指導そのものの意味は zg-04 で扱っているので、この単元では「行政手続法が行政指導にどんな縛りをかけたか」に絞ります。不服申立ての手続は zg-08、訴訟は zg-09 が担当です。


1. 目的と対象 ── 何にかかる法律か

まずここだけ

行政手続法(平成 5 年・1993 年制定、翌年施行)は、行政が決定に至るまでの「手続」を共通のルールで縛る一般法です。目的は 1 条に書かれています。

行政運営における公正の確保透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資すること

対象は次の 4 つ(+命令等を定める手続)です。

対象中身
申請に対する処分2 章許可・認可・免許など、求めに応じて行う処分
不利益処分3 章許可の取消し・営業停止命令など、名あて人に義務を課し権利を制限する処分
行政指導4 章指導・勧告・助言など、相手の任意の協力を求める行為
届出5 章法令で義務づけられた通知
命令等(意見公募手続)6 章政令・省令・審査基準・処分基準・行政指導指針を定める手続

行政計画・行政契約・行政調査は対象外です。「行政手続法には行政計画の策定手続が定められている」という選択肢は誤りです。

ここまでできれば十分

適用除外(3 条)には、性質上一般ルールになじまないものが並びます。

最後の項目がひっかけの定番です。地方公共団体の機関がする処分でも法律に根拠があるものには行政手続法が適用されます(例:法律に基づく建築確認や営業許可)。条例・規則に基づく処分と、行政指導・命令等はすべて適用除外で、その代わり 46 条が「この法律の趣旨にのっとり必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定め、各地方公共団体は行政手続条例を置いています。

不利益処分の定義からも一部が外れます(2 条 4 号)。事実上の行為(即時強制など)、申請に対する拒否処分、名あて人の同意の下にする処分、許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由にその効力を失わせる処分などは、不利益処分に当たりません。申請の拒否は「申請に対する処分」の章で扱うので、不利益処分の聴聞・弁明の対象ではない、と整理してください。


2. 申請に対する処分 ── 義務と努力義務を分ける

まずここだけ

申請に対する処分の章で、いちばん問われるのは「しなければならない」か「努めなければならない」かです。

制度定めること公にすること
審査基準5 条義務(できる限り具体的に)義務(行政上特別の支障がある場合を除く)
標準処理期間6 条努力義務定めたときは義務
理由の提示8 条拒否するときは義務(申請と同時)──
情報の提供9 条努力義務──
公聴会の開催10 条努力義務──

覚え方は「基準は義務、期間は努力」。標準処理期間は「定めるよう努める」ですが、いったん定めたら公にしておく義務があります。ここが二段構えなので注意してください。

ここまでできれば十分

審査の開始(7 条):申請が事務所に到達したときは遅滞なく審査を開始しなければなりません。形式的な要件に不備があれば、速やかに補正を求めるか、拒否するかのどちらかをします。かつて問題になった「窓口で受理せず握りつぶす」扱いを封じた条文です。到達主義なので「受理」という概念は行政手続法にはありません。

理由の提示(8 条):申請を拒否するときは、処分と同時に理由を示すのが原則です。法令の許認可要件や審査基準が数量的な指標などで客観的に明らかで、申請者が当てはまらないことが明白なときは、求めがあったときに示せば足ります。処分を書面でするときは理由も書面で示します。

理由提示の程度は判例で具体化されています。

理由の提示は「後で争うための手がかりを与える」「行政庁の判断の慎重さを担保する」という 2 つの働きをするので、不十分な理由提示は処分の取消事由になります。


3. 不利益処分 ── 聴聞か、弁明か

まずここだけ

不利益処分をするときの手続は次の表で決まります。

制度内容
処分基準12 条定めることも公にすることも努力義務
意見陳述の手続13 条聴聞 または 弁明の機会の付与
理由の提示14 条処分と同時に示す義務(差し迫った必要がある場合を除く)

処分基準が両方とも努力義務なのは、審査基準(両方とも義務)との対比で問われます。不利益処分はケースが多様で、基準を公表すると脱法的な行動を招くこともあるからです。

聴聞を要するのは次の場合です(13 条 1 項 1 号)。

  1. 許認可等を取り消す不利益処分
  2. 名あて人の資格または地位を直接剥奪する不利益処分
  3. 法人の役員の解任や、会員の除名などを命ずる不利益処分
  4. その他、行政庁が相当と認めるとき

これ以外(営業停止命令や改善命令など)は弁明の機会の付与で足ります。「重い処分は口頭でじっくり聴く、それ以外は書面で言い分を出させる」と覚えます。

ここまでできれば十分

聴聞の手続の要点です。

弁明の機会の付与は、原則として弁明書(書面)の提出で行い、行政庁が口頭ですることを認めたときだけ口頭になります。資料閲覧権は弁明には認められていません。「弁明の機会の付与でも文書閲覧を求めることができる」は誤りの定番です。

意見陳述の手続が不要な場合(13 条 2 項)も選択肢に出ます。公益上、緊急に不利益処分をする必要があるとき/法令上必要な資格を有しなくなったことが判明したとき/施設・設備の状況や検査の結果から要件を欠くことが客観的に明らかなとき/納付すべき金銭の額を確定する処分など/処分が軽微で名あて人の権利利益を害するおそれがないと認められるとき、などです。

もう一歩(発展)

理由提示の例外:不利益処分の理由は処分と同時に示しますが、「当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合」は処分後相当の期間内に示せばよく、名あて人の所在が判明しなくなったときなど示さなくてよい場合もあります(14 条)。行政手続法の条文は「原則─例外」の組み立てが多いので、例外の側だけを切り取った選択肢に注意してください。


4. 行政指導 ── 任意であることを手続で担保する

まずここだけ

行政指導の本質は相手方の任意の協力によってしか実現できないことです(32 条 1 項)。行政指導に従わなかったことを理由に不利益な取扱いをしてはならない(32 条 2 項)と明文化されています。

ルール
32 条所掌事務の範囲を逸脱しない。任意の協力。不利益取扱いの禁止
33 条申請の取下げ・内容変更を求める行政指導は、申請者が従う意思がない旨を表明したときは継続して申請者の権利行使を妨げてはならない
34 条許認可等の権限を行使できない場合や行使する意思がない場合に、権限を行使できる旨をことさらに示して従わせてはならない
35 条趣旨・内容・責任者を明確に示す。書面の交付を求められたら原則交付(口頭でした場合)
36 条複数の者に同じ内容の行政指導をするときは行政指導指針を定め、公表する
36 条の 2行政指導の中止等の求め(平成 26 年・2014 年改正で新設)
36 条の 3処分等の求め(同改正で新設)

33 条は品川マンション事件(最判昭和 60 年・1985 年)の考え方を条文にしたものです。建築確認を留保して行政指導を続けていた事案で、最高裁は、建築主が指導に従わない意思を真摯かつ明確に表明し、確認申請に対し直ちに応答すべきことを求めているときは、特段の事情がない限り、それ以上の留保は違法になるとしました。

ここまでできれば十分

2014 年改正で追加された 2 つの「求め」を区別してください。

中止等の求めは「行政指導を受けた本人」から、処分等の求めは「誰でも」から、と主体が違います。

届出(37 条)は、形式上の要件に適合していれば、提出先の事務所に到達したときに届出の義務が履行されたことになります。行政側が「受理しない」と言っても、義務は果たされています。


5. 意見公募手続 ── 30 日以上

まずここだけ

意見公募手続(パブリック・コメント)は平成 17 年・2005 年の改正で行政手続法に入りました(6 章)。命令等(政令・府省令などの法規命令、審査基準、処分基準、行政指導指針)を定めるときは、次の手順を踏みます。

  1. 命令等の案と関連資料を公示する
  2. 原則 30 日以上の意見提出期間を設ける(やむを得ない理由があるときは 30 日を下回ってよいが、その理由を公示する)
  3. 提出された意見を十分に考慮する
  4. 命令等を公布するときに、提出意見・提出意見を考慮した結果とその理由などを公示する

「提出された意見に拘束される」わけではなく、考慮して理由を示せば足ります。「意見公募手続は地方公共団体の機関が命令等を定めるときにも適用される」は誤りです(3 条 3 項で適用除外)。

ここまでできれば十分

意見公募手続を省略できる場合(39 条 4 項):公益上、緊急に命令等を定める必要があるとき/法律の規定によりすでに公示された事項を反映するだけのとき/軽微な変更のとき/他の行政機関が意見公募手続を実施した命令等と実質的に同一のとき、などです。省略したときも、命令等の公布と同時に、その旨と理由を公示しなければなりません。


6. よくある間違い

間違い正しくは
標準処理期間を定めるのは義務定めるのは努力義務。定めたら公にするのは義務
処分基準は定めて公にする義務がある定めることも公にすることも努力義務(審査基準は両方義務)
営業停止命令には聴聞が必要聴聞は許認可の取消し・資格剥奪・役員解任など。営業停止は弁明
弁明の機会の付与でも資料を閲覧できる閲覧権は聴聞だけ
申請拒否処分は不利益処分なので弁明の機会が要る申請拒否は「申請に対する処分」。理由の提示は要るが聴聞・弁明は不要
行政指導に従わないと不利益な取扱いを受けることがある従わないことを理由とする不利益取扱いは禁止(32 条 2 項)
地方公共団体の処分にはすべて行政手続法が適用されない法律に根拠を置く処分には適用される。条例・規則に基づく処分、行政指導、命令等が除外
意見公募手続は 60 日以上30 日以上
行政計画の策定手続も行政手続法に定めがある行政計画・行政契約・行政調査は対象外

7. 覚え方の型

  1. まず「4 つの対象+意見公募」を思い出し、選択肢が対象外のもの(計画・契約・調査)を語っていないか見る
  2. 申請に対する処分なら「基準は義務、期間は努力、拒否は理由」
  3. 不利益処分なら「取消し・剥奪・解任は聴聞、それ以外は弁明。閲覧は聴聞だけ。基準は努力」
  4. 行政指導なら「任意・不利益取扱い禁止・書面交付・指針公表・2 つの求め」
  5. 数字は「30 日以上」だけ。ほかの数字が出てきたら疑う
  6. 地方公共団体は「法律根拠の処分は適用、条例根拠と指導・命令等は除外+46 条」

8. 小テストへ

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参考資料

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