地方上級 / 行政法 / zg-08

更新 2026-09-14

行政不服審査法

この単元でできるようになること

試験での位置づけ

行政法の救済法 3 本柱(行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法)の 1 つ目です。地方上級・国家一般職とも条文の数字と「原則・例外」の入れかえで問われることが多く、旧法(異議申立て・60 日)の知識のまま覚えていると誤答を選びやすい分野です。行政事件訴訟法(zg-09)とは「審査請求期間 3 か月/出訴期間 6 か月」「執行停止の要件の違い」「事情裁決/事情判決」のように対にして問われるので、この単元を終えたら zg-09 と並べて整理してください。行政手続法(zg-06)が「処分の前」の手続、この法律が「処分の後」の救済です。


1. 目的と不服申立ての種類

まずここだけ

行政不服審査法は、行政庁の処分などに対して行政機関の内部で不服を申し立てる手続の一般法です。目的(1 条)は、簡易迅速かつ公正な手続の下で国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することです。2014 年(平成 26 年)の全面改正で「公正な」が加わり、審理員制度と行政不服審査会が新設されました。

裁判所での取消訴訟と比べたとき、行政上の不服申立ての特徴は 2 つあります。

不服申立ての対象は、行政庁の処分(公権力の行使にあたる事実行為を含む)と不作為(申請に対して相当の期間内に処分をしないこと)です。旧法と同じく、法律に特別の定めがある場合を除いてすべての処分について審査請求できる(一般概括主義。2 条・3 条)。ただし 7 条に適用除外があります。国会・裁判所の議決や裁判、刑事事件に関する法令に基づく検察官等の処分、学校・講習所などで教育の目的で行われる処分、刑務所などで収容の目的で行われる処分、外国人の出入国・帰化に関する処分、行政不服審査法に基づく処分(審査請求の裁決に不服だからと再び審査請求はできない)などです。なお、国や地方公共団体が固有の資格で処分の相手方になる場合にも適用されません(7 条 2 項)。

ここまでできれば十分

種類誰にいつ使える期間
審査請求原則として処分庁の最上級行政庁(4 条)原則。すべての処分・不作為知った日の翌日から 3 か月/処分の日の翌日から 1 年
再調査の請求処分庁自身法律に定めがある場合だけ(国税・関税など)。審査請求との自由選択同じく 3 か月/1 年
再審査請求法律で定める行政庁法律に定めがある場合だけ。審査請求の裁決の後裁決を知った日の翌日から 1 か月/裁決の日の翌日から 1 年

旧法の「異議申立て」は廃止され、処分庁に対する見直しの求めは「再調査の請求」に姿を変えました。再調査の請求をした場合は、原則としてその決定を経た後でなければ審査請求できません(5 条 2 項。決定を経ずに 3 か月経過したときなどは例外)。「再調査の請求と審査請求はどちらを先にしてもよい」という選択肢は誤りです。

審査庁(4 条)は、(1)処分庁に上級行政庁がない場合や、処分庁が主任の大臣・宮内庁長官・外局の長である場合は処分庁自身、(2)宮内庁長官や外局の長が上級行政庁である場合はその長、(3)主任の大臣が上級行政庁である場合はその大臣、(4)それ以外は最上級行政庁、という順で決まります。地方公共団体では、知事や市長の処分は上級行政庁がないので知事・市長自身が審査庁になります。


2. 審査請求の手続 ── 誰が・どうやって

まずここだけ

審査請求ができる人は、処分に「不服がある者」(2 条)ですが、判例はこれを処分について法律上の利益を有する者と解しています。主婦連ジュース事件(最判昭和 53 年(1978 年)3 月 14 日)は、果汁飲料の表示に関する公正競争規約の認定に対して消費者団体が申し立てた不服について、一般消費者が受ける利益は公益の保護の結果としての反射的利益にすぎないとして、不服申立て適格を否定しました。取消訴訟の原告適格(zg-09)と同じ基準です。

審査請求期間(18 条)は、処分があったことを知った日の翌日から起算して 3 か月(旧法は 60 日)、知らなくても処分があった日の翌日から起算して 1 年。どちらも「正当な理由があるとき」は例外が認められます。不作為についての審査請求には期間の定めがなく、不作為が続いている間はいつでもできます。

審査請求は書面(審査請求書)で行うのが原則で、口頭でできるのは他の法律や条例に定めがある場合だけです(19 条)。

ここまでできれば十分

審理の担い手 ── 審理員(9 条) 審査庁は、審査庁に所属する職員のうちから審理員を指名し、審理手続を行わせなければなりません。審査請求に係る処分に関与した者や、処分庁の職員(処分庁が審査庁である場合を含めて処分に関与した者)などは審理員になれません(除斥)。審理員は、審査請求人と処分庁の双方から言い分を聴き、審理を終えたら審理員意見書を作成して審査庁に提出します(42 条)。

審理員を置かなくてよいのは、条例に基づく処分について地方公共団体が条例で定めた場合や、審査庁が行政委員会など合議制の機関である場合などです(9 条 1 項ただし書)。

審理の流れ

  1. 審査庁が審理員を指名し、処分庁に審査請求書の写しを送付
  2. 処分庁は弁明書を提出(29 条。処分の内容と理由を記載)
  3. 審査請求人は反論書を提出できる(30 条)
  4. 審査請求人・参加人から申立てがあれば、審理員は口頭意見陳述の機会を与えなければならない(31 条。義務)。この場で審理員の許可を得て処分庁に質問できる
  5. 証拠書類の提出(32 条)、物件の提出要求(33 条)、参考人の陳述・鑑定(34 条)、検証(35 条)、審理関係人への質問(36 条)── これらは審理員が職権でも行える
  6. 審査請求人・参加人は、提出された書類や物件の閲覧と写しの交付を求めることができる(38 条。旧法は閲覧のみ。写しの交付は新法で追加)
  7. 審理員は審理手続を終結し、審理員意見書を審査庁に提出

審査庁には標準審理期間を定める努力義務があり、定めたときは公にしなければなりません(16 条)。審査請求人は 3 人以下の総代を互選でき(11 条)、代理人を選任でき(12 条)、利害関係人は参加人として審理に加わることができます(13 条)。


3. 行政不服審査会への諮問と裁決

まずここだけ

審理員意見書を受け取った審査庁は、原則として行政不服審査会(国は総務省に設置。67 条)または地方公共団体に置かれる同種の附属機関(81 条)に諮問しなければなりません(43 条)。第三者の目を入れて公正さを担保する仕組みです。諮問しなくてよい主な場合は次のとおりです。

審査会の答申に法的拘束力はありませんが、審査庁は答申を踏まえて裁決をし、答申と異なる裁決をするときは裁決書にその理由を記載します(50 条 1 項 4 号)。

ここまでできれば十分

裁決の種類(45 条・46 条・49 条)

裁決意味
却下期間経過・適格なしなど、審査請求が不適法なとき(中身に入らない)
棄却中身を審理したが理由がないとき
認容理由があるとき。処分の全部または一部を取り消し、または変更する。事実行為なら撤廃・変更を処分庁に命ずる(審査庁が処分庁なら自ら撤廃・変更)。審査庁が上級行政庁・処分庁でない場合は変更できない
事情裁決(45 条 3 項)処分は違法または不当だが、取り消すと公共の福祉に適合しないとき、請求を棄却しつつ裁決の主文で違法・不当を宣言する

4. 執行停止と教示

まずここだけ

執行不停止の原則(25 条 1 項):審査請求をしても、処分の効力・処分の執行・手続の続行は妨げられません。営業停止処分に審査請求をしても、裁決が出るまで営業できるようにはならない、ということです。

そこで執行停止の制度があります。誰が申し立てられるか、どこまでできるかは審査庁がどこかで変わります。

審査庁発動のきっかけできる措置
処分庁の上級行政庁または処分庁審査請求人の申立てまたは職権効力・執行・手続の続行の全部または一部の停止、その他の措置
それ以外の審査庁審査請求人の申立てのみ(処分庁の意見を聴く)停止のみ。その他の措置はできない

行政事件訴訟法の執行停止(zg-09)は「申立て」のみで職権ではできず、内閣総理大臣の異議の制度がある点が違います。

ここまでできれば十分

教示(82 条):行政庁は、不服申立てができる処分を書面でするときは、相手方に(1)不服申立てができる旨、(2)不服申立てをすべき行政庁、(3)不服申立て期間を書面で教示しなければなりません。口頭で処分をするときは教示は不要です。利害関係人から教示を求められたときも教示義務があります(求めた人が書面を求めれば書面で)。

教示をしなかった場合、処分に不服がある者は処分庁に不服申立書を提出でき、処分庁は審査庁に送付します(83 条)。誤って別の行政庁を教示し、その行政庁に審査請求書が出された場合は、その行政庁が正しい審査庁に送付し、初めから正しい審査庁に審査請求されたものとみなされます(22 条)。誤った教示で審査請求人に不利益が及ばないようにするための救済です。

事例で確認:A 市長が飲食店に 30 日間の営業停止処分を書面で行い、審査請求ができる旨と 3 か月の期間は教示したが、審査請求先を誤って県知事と教示した。店主は県知事あてに審査請求書を提出した。 → 結論:審査請求は初めから A 市長(正しい審査庁)にされたものとみなされ、期間内に提出されていれば適法。理由:22 条。市長の処分は上級行政庁がないので審査庁は市長自身であり、県知事は誤った教示だが、店主は不利益を受けない。


5. よくある間違い

間違い正しくは
審査請求期間は処分を知った日の翌日から 60 日3 か月(2016 年施行の新法)。旧法の 60 日と混同しない
不服申立ての種類は異議申立て・審査請求・再審査請求異議申立ては廃止。審査請求(原則)・再調査の請求・再審査請求
再調査の請求はどの処分についてもできる法律に定めがある場合だけ。再審査請求も同じ
審査請求人が求めても口頭意見陳述をするかどうかは審理員の裁量申立てがあれば機会を与えなければならない(義務)
審査請求をすると処分の効力は当然に停止する執行不停止が原則。停止には執行停止の決定が必要
行政不服審査会の答申には審査庁を拘束する効力がある拘束力はない。答申と異なる裁決をするときは理由を裁決書に記載
審査庁はどの場合でも処分を変更する裁決ができる上級行政庁・処分庁でない審査庁は変更できない。また不利益変更は禁止
教示は口頭で処分をした場合にも義務書面で処分をするときの義務。口頭処分には教示義務なし
不作為の審査請求にも 3 か月の期間制限がある期間の定めはない
処分に関与した職員でも審理員になれる関与した者は除斥される

6. 覚え方の型

  1. 数字は「3 か月・1 年(審査請求・再調査の請求)」「1 か月(再審査請求)」「3 人以下(総代)」を先に固定する。行政事件訴訟法の「6 か月・1 年」と並べて覚える
  2. 手続は「審理員が審理 → 審理員意見書 → 行政不服審査会に諮問 → 答申 → 裁決」の 1 本の流れにし、それぞれの例外(審理員を置かない場合/諮問しない場合)をぶら下げる
  3. 「義務か裁量か」は、口頭意見陳述・閲覧謄写・諮問・教示(書面処分)が義務、証拠調べの実施・執行停止(原則)が裁量、重大な損害+緊急の必要なら執行停止が義務
  4. 執行停止は「上級庁・処分庁なら職権もその他の措置も可、それ以外は申立てのみ・停止のみ」
  5. 裁決は「却下(入口)→ 棄却(中身なし)→ 認容(取消し・変更)+ 事情裁決(棄却だが違法宣言)」の順に思い出し、不利益変更禁止を最後に添える

7. 小テストへ

→ 小テスト(zg-08

関連する単元

参考資料

このページの小テスト ── 間違えても、同じ型の別の問題でやり直せます。レベルを選んでそのまま始められます。
基礎から標準から発展から🖨 プリント

法律の単元一覧まぜこぜテスト公務員試験の勉強法