地方上級 / 民法 / zm-10
契約(総論・売買・賃貸借)
この単元でできるようになること
- 契約の成立(申込みと承諾)、同時履行の抗弁権、危険負担の考え方を条文で説明できる
- 契約の解除について、催告解除と無催告解除の要件、帰責事由が不要になったこと、解除の効果(原状回復・第三者の保護)を整理できる
- 売買の手付のルールと、2020 年改正で整理された契約不適合責任(追完請求・代金減額・損害賠償・解除・期間制限)を事例に当てはめられる
- 賃貸借の対抗力・賃貸人たる地位の移転・修繕と費用償還・無断転貸と解除・敷金・原状回復を判例とともに説明できる
- 贈与・使用貸借・消費貸借・請負・委任の「よく問われる 1 点」を答えられる
試験での位置づけ
契約は民法の中で出題の中心になる分野で、地方上級・国家一般職とも、売買(手付・契約不適合)と賃貸借(転貸・敷金・地位の移転)を軸に、契約総論(同時履行・危険負担・解除)が組み合わさって出題されます。2020 年改正で「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わり、解除に帰責事由が不要になり、危険負担が「履行拒絶権」の構成になり、賃貸借の敷金・原状回復・賃貸人の地位の移転が明文化されました。改正後の条文どおりに答えられるかが問われます。zm-08・zm-09 の債権総論(債務不履行・弁済)が土台になり、zm-11 の不法行為と並んで事例問題の主戦場です。
1. 契約の成立と同時履行の抗弁権
まずここだけ
契約は申込みと承諾の意思表示が合致したときに成立します(522 条 1 項)。書面は原則不要で(同条 2 項。保証契約などは例外)、承諾の通知が相手方に到達した時に成立します(97 条 1 項の到達主義。改正前の発信主義は廃止)。
申込みの撤回は、承諾期間を定めた申込みはその期間中はできず(523 条 1 項)、期間を定めなかった申込みは相当な期間が経過するまではできません(525 条 1 項)。対話者間で承諾期間のない申込みは、対話が続いている間はいつでも撤回でき、対話終了で効力を失います(525 条 2 項・3 項)。
同時履行の抗弁権(533 条):双務契約の当事者は、相手方が債務の履行(履行の提供を含む)をするまで、自分の債務の履行を拒めます。
事例:A は B に自転車を 3 万円で売った。B は代金を払わずに自転車の引渡しを求めた。 → A は「代金と引換えでなければ渡さない」と拒める。A が引渡しを拒んでも履行遅滞にならない。
ここまでできれば十分
同時履行の関係が認められる例・認められない例を判例で覚えます。
| 場面 | 同時履行か |
|---|---|
| 売買の目的物引渡しと代金支払 | 認められる |
| 契約の解除・取消しによる双方の原状回復義務 | 認められる(546 条・判例) |
| 弁済と受取証書の交付 | 認められる(486 条) |
| 弁済と債権証書の返還 | 認められない(弁済が先。487 条) |
| 賃貸借終了時の建物明渡しと敷金返還 | 認められない(明渡しが先。622 条の 2・最判昭和 49 年 9 月 2 日) |
| 造作買取請求権の代金支払と建物明渡し | 認められない(最判昭和 29 年 7 月 22 日) |
| 被担保債権の弁済と抵当権設定登記の抹消 | 認められない(弁済が先。最判昭和 57 年 1 月 19 日) |
同時履行の抗弁権を持つ当事者を遅滞に陥らせるには、相手方が自分の債務の履行の提供をしなければなりません。
2. 危険負担と解除
まずここだけ
危険負担(536 条)は、双務契約で一方の債務が当事者双方の責めに帰することができない事由で履行不能になったとき、反対債務(代金)はどうなるかという問題です。
事例:A は B に別荘を売る契約をしたが、引渡し前に落雷で全焼した。 → B は代金の支払を拒むことができる(536 条 1 項)。
改正前は「反対債務が消滅する」構成でしたが、改正後は履行拒絶権の構成になりました。代金債務そのものを消すには、B が契約を解除します(542 条 1 項 1 号。帰責事由は不要)。
債権者の責めに帰すべき事由で不能になったときは、債権者は代金の支払を拒めず(536 条 2 項)、解除もできません(543 条)。ただし債務者が債務を免れたことで得た利益(材料費が浮いた等)は債権者に償還します。
ここまでできれば十分
解除のルールは改正で大きく整理されました。
| 種類 | 要件 | 条文 |
|---|---|---|
| 催告解除 | 債務不履行 + 相当の期間を定めた催告 + 期間内に履行なし。ただし不履行が軽微なときは不可 | 541 条 |
| 無催告解除(全部) | ①全部の履行不能、②全部の明確な履行拒絶、③一部不能・一部拒絶で残部だけでは契約の目的を達成できない、④定期行為の時期経過、⑤催告しても目的達成の見込みがないことが明らか | 542 条 1 項 |
| 無催告解除(一部) | 一部の履行不能・一部の明確な履行拒絶 | 542 条 2 項 |
ポイントは 3 つです。
- 解除に債務者の帰責事由は不要(改正で削除)。解除は「契約の拘束から債権者を解放する制度」であって、債務者への制裁ではないという考え方
- 債務不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるときは解除できない(543 条)
- 催告解除は軽微な不履行では認められない(541 条ただし書。付随的義務の違反では解除できないとした判例の明文化)
解除の効果(545 条):各当事者は原状回復義務を負い、金銭には受領時からの利息を付け、金銭以外の物には受領時以後の果実を付けて返します。損害賠償の請求も妨げられません。原状回復によって第三者の権利を害することはできない(545 条 1 項ただし書)とされ、判例は解除前の第三者は善意・悪意を問わず保護されるが登記が必要(最判昭和 33 年 6 月 14 日)、解除後の第三者との関係は 177 条の対抗問題(最判昭和 35 年 11 月 29 日)としています。
当事者が複数いるときは解除は全員から、または全員に対して行い(解除権の不可分性。544 条)、解除権者が故意・過失で目的物を著しく損傷したり返還できなくなったりすると解除権は消滅します(548 条。解除権を有することを知らなかったときは除く)。
もう一歩(発展)
- 契約上の地位の移転(539 条の 2):契約の当事者の一方が第三者と地位を譲渡する合意をし、相手方が承諾すれば地位は移転する。賃貸人の地位の移転には特則がある(605 条の 2・605 条の 3)
- 第三者のためにする契約(537 条):第三者の権利は、第三者が債務者に受益の意思表示をした時に発生。契約時に第三者が存在しない(胎児・設立前の法人)場合でも契約は有効
- 定型約款(548 条の 2〜548 条の 4):定型取引で、約款を契約内容とする合意をしたか、あらかじめ相手方に表示していれば、個別の条項に合意したものとみなす。ただし相手方の利益を一方的に害する条項で信義則に反するものは合意しなかったものとみなす。変更は、相手方の一般の利益に適合するか、合理的なものであれば、個別の合意なくできる
3. 売買 ── 手付と契約不適合責任
まずここだけ
手付(557 条)は、特に定めがなければ解約手付と推定されます。買主は手付を放棄して、売主は倍額を現実に提供して、契約を解除できます。ただし相手方が履行に着手した後は解除できません。
事例:A は B から土地を 3,000 万円で買い、手付 300 万円を払った。その後 A は残代金を用意して B に引渡しを求めたが、B は他に高く買う人が現れたので手付の倍額 600 万円を返して解除したいと言った。 → A(相手方)はすでに履行に着手しているので、B は解除できない。
判例は、「履行の着手」を「客観的に外部から認識できるような形で履行行為の一部をし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたこと」とし(最大判昭和 40 年 11 月 24 日)、自分が履行に着手していても、相手方が着手していなければ解除できるとしています。解除された側は、手付の額を超える損害があっても損害賠償は請求できません(557 条 2 項)。
他人の物の売買も契約として有効で、売主は権利を取得して買主に移転する義務を負います(561 条)。
ここまでできれば十分
契約不適合責任(562 条〜)は、引き渡された目的物が種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき、買主が持つ 4 つの救済手段です。
| 救済 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 追完請求 | 修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し。売主は買主に不相当な負担を課さなければ別の方法で追完できる | 562 条 |
| 代金減額請求 | 相当の期間を定めて追完を催告し、期間内に追完がないとき。追完不能・明確な拒絶などなら催告不要 | 563 条 |
| 損害賠償 | 415 条による(売主に免責事由があれば免責) | 564 条 |
| 解除 | 541 条・542 条による(帰責事由不要) | 564 条 |
改正前の「瑕疵担保責任」は特定物に限られ、損害賠償と解除しかありませんでしたが、改正後は特定物・不特定物を問わず、追完請求と代金減額請求が明文化されました。買主の帰責事由による不適合のときは追完請求・代金減額はできません(562 条 2 項・563 条 3 項)。
期間制限(566 条):種類・品質の不適合は、買主が不適合を知った時から 1 年以内にその旨を売主に通知しないと、追完請求・代金減額・損害賠償・解除ができなくなります。売主が引渡しの時に不適合を知り、または重過失で知らなかったときはこの制限はありません。数量・権利の不適合には 1 年の通知制限はなく、一般の消滅時効(166 条)だけがかかります。
危険の移転(567 条):目的物が引き渡された後に双方の責めに帰することができない事由で滅失・損傷したときは、買主は不適合責任を追及できず、代金も払わなければなりません。売主が契約の内容に適合する目的物を提供したのに買主が受領を拒んだ(受領遅滞)後の滅失・損傷も同じです。
もう一歩(発展)
- 担保責任を負わない特約(572 条)は有効だが、売主が知りながら告げなかった事実と、自ら第三者に設定・譲渡した権利については責任を免れない
- 権利の不適合(565 条):目的物に他人の地上権や抵当権があった、権利の一部が他人に属していた等。買主が費用を払って抵当権を消滅させたときは売主に費用の償還を請求できる(570 条)
- 買戻し(579 条〜):不動産の売買と同時に特約で定め、代金(合意した金額)と契約費用を返して解除する。期間は10 年を超えられず、伸長もできない(580 条)
- 売買の費用は当事者が折半(558 条)。売買の規定は他の有償契約に準用される(559 条)
4. 賃貸借 ── 対抗力・地位の移転・修繕
まずここだけ
賃貸借は、貸主が物を使用収益させ、借主が賃料を払い、終了時に返還する契約です(601 条)。存続期間の上限は50 年(604 条。改正前は 20 年)。土地・建物の賃貸借には借地借家法が優先して適用され、借地権の存続期間は 30 年以上、建物賃貸借の更新拒絶には正当事由が必要、といった借主保護の特則があります。
対抗力:不動産の賃借権は登記すれば、その後に所有者になった人にも対抗できます(605 条)。ただし賃貸人には登記に協力する義務がないため、借地借家法が借地は借地上の建物の登記(10 条)、借家は建物の引渡し(31 条)で対抗力を認めています。
事例:A は B に建物を賃貸して引き渡した。その後 A は建物を C に売却した。 → B は引渡しを受けているので、C に賃借権を対抗できる。C は B を追い出せない。
ここまでできれば十分
賃貸人たる地位の移転(605 条の 2):対抗力のある賃借権の目的不動産が譲渡されると、賃貸人の地位は賃借人の承諾なしに譲受人に移転します(1 項)。譲渡人と譲受人の合意で地位を譲渡人に留保し、譲受人が譲渡人に賃貸する形にすることもできます(2 項)。譲受人が賃料を請求するには所有権移転登記が必要(3 項)で、敷金返還債務と費用償還債務は譲受人が承継します(4 項)。対抗力のない賃借権でも、譲渡人と譲受人の合意で地位を移転でき、賃借人の承諾は不要です(605 条の 3)。
修繕と費用:
- 賃貸人は修繕義務を負う(606 条 1 項)。ただし賃借人の責めに帰すべき事由による破損は修繕義務なし
- 賃借人は、賃貸人に修繕が必要と通知したのに相当期間内に修繕されないとき、または急迫の事情があるときは、自ら修繕できる(607 条の 2)
- 必要費は直ちに償還請求でき、有益費は賃貸借終了時に、価格の増加が現存する場合に限り、賃貸人の選択で支出額か増価額を償還(608 条)
- 賃借物の一部が賃借人の責めに帰することができない事由で滅失・使用収益不能になったときは、賃料はその割合に応じて当然に減額される(611 条 1 項。改正前は請求が必要だった)。残部だけでは目的を達成できないときは解除できる(同条 2 項)
妨害停止請求(605 条の 4):対抗要件を備えた不動産賃借人は、占有を妨害する第三者に妨害の停止を、占有する第三者に返還を、自ら請求できます。
もう一歩(発展)
賃貸借の終了:期間の定めがない場合はいつでも解約の申入れができ、土地は 1 年、建物は 3 か月、動産・貸席は 1 日で終了します(617 条。借地借家法で建物は貸主側からの申入れに正当事由と 6 か月が必要)。賃借物の全部滅失で当然に終了(616 条の 2)。期間満了後も賃借人が使用を続け、賃貸人が知りながら異議を述べなければ、同一条件で更新したものと推定されます(619 条 1 項。期間の定めのないものとなる)。
5. 賃貸借 ── 転貸・敷金・原状回復
まずここだけ
賃借人は、賃貸人の承諾がなければ、賃借権の譲渡・賃借物の転貸ができません(612 条 1 項)。無断で第三者に使用収益させたときは、賃貸人は契約を解除できます(同条 2 項)。
ただし判例は、無断転貸・譲渡があっても、それが賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、解除権は発生しないとしています(最判昭和 28 年 9 月 25 日。信頼関係破壊の法理)。たとえば同居の親族への譲渡や、個人商店の法人成りで実態が変わらない場合などです。
事例:借地人 A が、借地上の建物を長男 B に贈与し、B が土地を使い続けている。A と B は同居していて生活実態は変わらない。 → 形式的には賃借権の無断譲渡だが、背信性がなければ賃貸人は解除できない。
ここまでできれば十分
承諾を得た転貸のルール(613 条):
- 転借人は賃貸人に対して直接義務を負う(転借人は賃貸人に賃料を払う義務を負うが、その額は賃借料と転借料の低い方が限度)。転借人は賃借人への前払いをもって賃貸人に対抗できない
- 賃貸人と賃借人が賃貸借を合意解除しても、転借人に対抗できない(613 条 3 項本文)。ただし解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは対抗できる(同項ただし書)
- 賃借人の債務不履行で賃貸借が解除されたときは、転貸借も終了する。賃貸人は、転借人に賃料支払の機会を与える催告をする必要はない(最判平成 6 年 7 月 18 日)。転貸借は、賃貸人が転借人に目的物の返還を請求した時に履行不能で終了する(最判平成 9 年 2 月 25 日)
敷金(622 条の 2):賃料などの債務を担保する目的で賃借人が交付する金銭。賃貸人は、①賃貸借が終了して目的物の返還を受けたとき、②賃借人が適法に賃借権を譲渡したときに、残額を返還します。明渡しが先履行で、敷金返還と同時履行の関係にはなりません。賃借人は、賃貸借中に「敷金を未払賃料に充ててくれ」と請求することはできず、賃貸人の側からは充当できます(同条 2 項)。
原状回復義務(621 条):賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷を原状に復す義務を負いますが、通常の使用による損耗(通常損耗)と経年変化は除かれます。賃借人の責めに帰することができない事由による損傷も除かれます。特約で通常損耗の補修費を賃借人に負わせるには、その旨が具体的に明記されるなど、賃借人が明確に認識していることが必要です(最判平成 17 年 12 月 16 日)。
賃借人が付けた造作・設備などの収去は権利であり義務でもあります(622 条・599 条)。分離できないもの、分離に過分の費用を要するものは収去義務を負いません。
もう一歩(発展)
- 賃借権の譲渡と敷金:適法に賃借権が譲渡されたとき、敷金関係は新賃借人に承継されない(旧賃借人に返還される。622 条の 2 第 1 項 2 号)。一方、賃貸人が代わったときは敷金関係は新賃貸人に承継される(605 条の 2 第 4 項)
- 建物買取請求権(借地借家法 13 条):借地契約が期間満了で更新されないとき、借地人は地主に建物を時価で買い取るよう請求できる。形成権で、請求により売買契約が成立したのと同じ効果が生じる
- 造作買取請求権(同 33 条)は特約で排除できるが、建物買取請求権は借地人に不利な特約として排除できない(同 16 条)
6. その他の典型契約 ── 「1 点」で覚える
| 契約 | よく問われる点 |
|---|---|
| 贈与(549 条) | 諾成契約。書面によらない贈与は各当事者が解除できるが、履行の終わった部分は解除できない(550 条)。不動産は引渡しか登記のどちらかで履行終了(判例)。贈与者は目的物を「贈与の目的として特定した時の状態で引き渡す」ことを約したと推定される(551 条) |
| 使用貸借(593 条) | 改正で諾成契約になった。書面によらない使用貸借は、借用物を受け取るまで貸主が解除できる(593 条の 2)。借主の死亡で終了(597 条 3 項。貸主の死亡では終了しない)。通常の必要費は借主負担(595 条) |
| 消費貸借(587 条) | 原則は要物契約(物を受け取って成立)。書面でする消費貸借は諾成(587 条の 2)で、借主は物を受け取るまで解除できる。返還時期の定めがないときは、貸主は相当の期間を定めて催告する(591 条 1 項)。借主はいつでも返還できる(同条 2 項) |
| 請負(632 条) | 報酬は仕事の完成後、目的物の引渡しと同時履行(633 条)。仕事が完成しなくても、注文者の責めに帰することができない事由で完成できなくなった場合や完成前に解除された場合、可分な部分の給付で注文者が利益を受けるときはその割合に応じた報酬を請求できる(634 条)。注文者は仕事完成前はいつでも損害を賠償して解除できる(641 条)。請負人の担保責任は売買の契約不適合責任に準じ、注文者が不適合を知った時から 1 年以内の通知が必要(637 条) |
| 委任(643 条) | 受任者は無償でも善管注意義務を負う(644 条)。報酬は特約がなければ請求できず(648 条 1 項)、後払いが原則。各当事者はいつでも解除できる(651 条 1 項)が、相手方に不利な時期の解除や、受任者の利益をも目的とする委任の解除では、やむを得ない事由がない限り損害賠償を要する(同条 2 項)。委任者・受任者の死亡・破産、受任者の後見開始で終了(653 条) |
| 寄託(657 条) | 改正で諾成契約になった。無償の受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意で足りる(659 条)。寄託者はいつでも返還を請求できる(662 条) |
7. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 解除には債務者の帰責事由が必要 | 改正後は不要。債権者に帰責事由があるときは解除できない(543 条) |
| 履行不能になれば代金債務は当然に消滅する | 買主は支払を拒めるにとどまる(536 条 1 項)。消すには解除 |
| 手付を払った買主は、自分が履行に着手したら解除できない | 相手方が着手するまでは、自分が着手していても解除できる |
| 契約不適合を知ってから 1 年以内に裁判を起こさなければならない | 1 年以内に通知すればよい。数量・権利の不適合には 1 年の制限がない |
| 賃借人は敷金を未払賃料に充ててくれと請求できる | 賃借人からの充当請求はできない。賃貸人からはできる |
| 敷金返還と建物明渡しは同時履行 | 明渡しが先(622 条の 2 第 1 項) |
| 無断転貸があれば賃貸人は当然に解除できる | 背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除できない |
| 賃貸人と賃借人が合意解除すれば転借人も出ていかなければならない | 合意解除は転借人に対抗できない(613 条 3 項) |
| 通常損耗の回復も賃借人の原状回復義務に含まれる | 含まれない(621 条)。特約で負わせるには明確な合意が必要 |
| 使用貸借は貸主の死亡で終了する | 借主の死亡で終了する(597 条 3 項) |
8. 解き方の型
- 契約の種類を確定する(売買か賃貸借か、有償か無償か、双務か片務か)
- 「誰の責めに帰すべき事由か」を確認する。双方無責 → 危険負担(536 条 1 項)+解除可/債権者有責 → 支払拒絶不可・解除不可/債務者有責 → 損害賠償+解除
- 売買の不適合は「追完 → 減額 → 賠償・解除」の順に、期間制限(種類・品質は 1 年通知)と危険の移転(引渡し後)を重ねる
- 賃貸借は「対抗力の有無 → 誰が賃貸人か → 承諾の有無 → 信頼関係」の順に見る。敷金は「明渡し後・賃貸人側だけ充当・新賃貸人に承継」
- 選択肢の「当然に」「同時履行」「いつでも」には例外がないか疑う
9. 小テストへ
→ 小テスト(zm-10)
関連する単元
- 前提:zm-08 債権総論①(債務不履行・債権者代位権・詐害行為取消権)、zm-09 債権総論②(多数当事者の債権債務・債権譲渡・弁済と相殺)
- 次に進む:zm-11 事務管理・不当利得・不法行為、zm-12 親族と相続
- 同じ考え方を使う:zm-05 物権変動(177 条・178 条・即時取得)の解除と第三者、zm-07 担保物権(抵当権を中心に)の抵当権と賃借権、kk-05 市場経済のしくみ(高校公共。契約自由の原則と消費者保護)
参考資料
- 民法(明治 29 年法律第 89 号)第 3 編第 2 章「契約」(521 条〜696 条)── 特に 533 条〜548 条の 4・555 条〜585 条・601 条〜622 条の 2
- 借地借家法(平成 3 年法律第 90 号)── 10 条・13 条・16 条・28 条・31 条・33 条
- 法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」(2020 年 4 月 1 日施行の改正の概要)
- 最高裁判所判例集(裁判所ウェブサイト「裁判例検索」)── 本文で挙げた各判例
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(民法)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zm-10/ / 更新 2026-09-14