地方上級 / 民法 / zm-12
親族と相続
この単元でできるようになること
- 婚姻の成立要件と無効・取消しの区別、夫婦の財産関係(別産制・日常家事債務の連帯責任)を条文で説明できる
- 離婚原因(770 条)と有責配偶者からの離婚請求の判例、財産分与・親権の決まり方を事例で判定できる
- 嫡出推定・認知・普通養子と特別養子の要件と効果の違いを表で整理できる
- 相続人の順位・法定相続分・代襲相続を計算し、欠格・廃除・放棄の違いを説明できる
- 遺言の方式、遺留分の割合と侵害額請求、配偶者居住権など近年の改正点を押さえられる
試験での位置づけ
親族・相続は、地方上級・国家一般職の民法で 1 問前後出題されることが多い分野で、範囲が広いわりに「条文の数字と判例の結論」で決まる問題が多く、準備した分だけ取りやすい単元です。とくに法定相続分の計算(配偶者と誰が並ぶかで 1/2・2/3・3/4 が変わる)と、遺留分・遺言の方式・養子縁組の要件は繰り返し問われます。2018 年以降の相続法・親子法・家族法の改正(配偶者居住権・自筆証書遺言の要件緩和・嫡出推定の見直し・再婚禁止期間の廃止など)は、改正前の知識のままだと誤答を選びやすいので、この単元では「今の条文」で整理します。制度の数値は 2026 年 9 月時点のものです。
1. 婚姻 ── 成立・効果・夫婦の財産
まずここだけ
婚姻は、当事者に婚姻意思があり、戸籍法の届出をすることで成立します(739 条)。届出がなければ、どれだけ長く同居していても法律上の婚姻ではありません(内縁)。
成立の要件(婚姻障害がないこと)は次のとおりです。
| 要件 | 内容 | 違反したとき |
|---|---|---|
| 婚姻適齢(731 条) | 男女とも 18 歳(2022 年 4 月から) | 取消し可能 |
| 重婚の禁止(732 条) | 配偶者のある者は重ねて婚姻できない | 取消し可能(後婚) |
| 近親婚の禁止(734〜736 条) | 直系血族・3 親等内の傍系血族(おじ・めい など)、直系姻族間、養親子関係にあった者の間 | 取消し可能 |
女性の再婚禁止期間(旧 733 条)は 2024 年 4 月に廃止されました。「離婚後 100 日は再婚できない」は今は誤りです。
無効と取消しの区別が問われます。婚姻意思がない(人違い・偽装婚など)とき、届出がないときは無効(742 条)。上の表の婚姻障害に反する婚姻や、詐欺・強迫による婚姻は取消しの対象で(743〜747 条)、取消しの効果は将来に向かってのみ生じ、さかのぼりません(748 条)。詐欺・強迫による取消権は、詐欺を発見しまたは強迫を免れた後 3 か月で消滅します。
ここまでできれば十分
婚姻の効果:夫婦同氏(750 条)、同居・協力・扶助義務(752 条)、貞操義務(770 条 1 項 1 号の不貞が離婚原因になることから導かれる)。夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消せますが(754 条)、判例は婚姻が実質的に破綻した後の契約には 754 条を適用しません。
夫婦の財産関係:夫婦財産契約をしなければ法定財産制によります。
- 別産制(762 条 1 項):夫婦の一方が婚姻前から持つ財産と、婚姻中に自己の名で得た財産はその人の特有財産。帰属が不明な財産は共有と推定(同条 2 項)
- 日常家事債務の連帯責任(761 条):日常の家事に関して一方が第三者と法律行為をしたときは、他方も連帯して責任を負う。判例は、この規定を根拠に夫婦は互いに日常家事について法定代理権を持つとし、日常家事の範囲を超える行為については、相手方が「日常家事の範囲内だと信じるにつき正当な理由」があるときに限り、110 条の趣旨を類推して保護する(最判昭和 44 年 12 月 18 日)
- 婚姻費用(生活費)は資産・収入その他一切の事情を考慮して分担する(760 条)
事例:妻 A が夫 B に無断で、B 名義の土地を売却した。買主 C は「夫婦だから代理権がある」と考えていた。 → 土地の売却は日常家事の範囲外。C が「日常家事の範囲内」と信じる正当な理由があるとはいえないため、110 条の類推による保護は受けられず、売買の効果は B に帰属しない。
もう一歩(発展)
内縁:届出をしていない事実婚。判例は婚姻に準じる関係(準婚)として、同居協力扶助義務・婚姻費用分担・不当な破棄に対する損害賠償・財産分与の類推などを認めますが、相続権は認められません。夫婦同氏(750 条)は最高裁が合憲としています(最大判平成 27 年 12 月 16 日、最大決令和 3 年 6 月 23 日)。
2. 離婚 ── 原因・効果・親権
まずここだけ
離婚には、協議離婚(763 条・届出で成立)、調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。日本の離婚の大半は協議離婚です。
裁判離婚は、770 条 1 項の離婚原因があるときに限られます。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が 3 年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
1〜4 の事由があっても、裁判所は一切の事情を考慮して婚姻の継続が相当と認めるときは請求を棄却できます(同条 2 項)。4 号の精神病離婚について判例は、離婚後の療養・生活について具体的な方途の見込みがついた上でなければ離婚を認めないとしています(最判昭和 33 年 7 月 25 日)。
ここまでできれば十分
有責配偶者からの離婚請求:自ら不貞をした側が「婚姻を継続し難い重大な事由」を理由に離婚を求められるか。かつての判例は「踏んだり蹴ったり」だとして認めませんでしたが、最大判昭和 62 年 9 月 2 日は、①夫婦の別居が相当の長期間に及び(年齢・同居期間との対比で判断)、②未成熟の子がいない、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態に置かれるなど、離婚を認めることが著しく社会正義に反するといえる特段の事情がない、という場合には、有責配偶者からの請求でも認められうるとしました。
離婚の効果:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏 | 婚姻で氏を改めた者は婚姻前の氏に戻る(767 条 1 項)。離婚から 3 か月以内に届け出れば婚姻中の氏を続けられる(同条 2 項) |
| 財産分与(768 条) | 協議で決め、協議できないときは家庭裁判所に請求。請求期間は離婚の時から 5 年(2026 年 4 月施行の改正で 2 年から延長)。婚姻中に協力して得た財産の清算が中心で、離婚後の扶養・慰謝料の要素を含めることもできる |
| 親権(819 条) | 2026 年 4 月施行の改正により、離婚後は父母の協議で共同親権か単独親権かを定める。協議が調わないときは家庭裁判所が定め、父母の一方が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときや、共同で親権を行うことが困難なときは単独親権としなければならない |
| 養育費 | 監護に要する費用の分担(766 条)。2026 年 4 月施行の改正で、取決めがなくても一定額を請求できる法定養育費の制度と、養育費債権への先取特権が設けられた |
| 姻族関係 | 離婚により当然に終了(728 条 1 項)。配偶者の死亡では終了せず、生存配偶者が終了の意思表示(届出)をしたときに終了(同条 2 項) |
事例:夫 A の不貞が原因で別居し、別居期間は 16 年、2 人の子はすでに独立して働いている。妻 B は離婚に応じない。 → 有責配偶者である A からの請求でも、別居が長期に及び未成熟子がおらず、B が過酷な状態に置かれる事情がなければ、離婚が認められる余地がある(昭和 62 年判例の 3 要件)。
3. 親子 ── 実子・認知・養子
まずここだけ
嫡出推定(772 条・2024 年 4 月施行の改正後):
- 妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定。加えて、婚姻前に懐胎し婚姻成立後に生まれた子も夫の子と推定(改正で追加。「婚姻成立から 200 日以内に生まれた子は推定されない」は今は誤り)
- 婚姻成立の日から 200 日を経過した後、または婚姻の解消・取消しの日から 300 日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定
- 離婚後 300 日以内に生まれた子でも、母が再婚していれば再婚後の夫の子と推定(改正で追加。これにより再婚禁止期間が不要になった)
推定を覆すには嫡出否認の訴え(774 条〜)によります。改正前は夫だけが 1 年以内に提起できましたが、改正後は父・子・母(および前夫)が提起でき、期間は父は子の出生を知った時から、子・母は出生から 3 年です。
ここまでできれば十分
推定の及ばない子:判例は、夫の長期の海外滞在・収監・別居など、妻が夫の子を懐胎する可能性がないことが外観上明らかな事情がある場合は、772 条の推定が及ばず、嫡出否認の訴えによらずに親子関係不存在確認の訴えで争えるとしています(外観説。最判昭和 44 年 5 月 29 日)。一方、夫婦が同居していて DNA 鑑定で血縁がないと分かった場合は、外観説の要件を満たさないため推定は及び、親子関係不存在確認は認められません(最判平成 26 年 7 月 17 日)。
認知(779 条〜):嫡出でない子と父の親子関係は認知で生じます(母子関係は分娩の事実で当然に発生するというのが判例)。
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 方式 | 届出または遺言で可能(781 条) |
| 胎児の認知 | 母の承諾が必要(783 条 1 項) |
| 成年の子の認知 | 子の承諾が必要(782 条) |
| 死亡した子の認知 | その子に直系卑属がいるときに限り可能(783 条 3 項) |
| 効力 | 出生の時にさかのぼる。ただし第三者がすでに取得した権利は害せない(784 条) |
| 撤回 | 認知した父は撤回できない(785 条)。血縁がない場合の「認知の無効の訴え」は子・認知者・母が原則 7 年以内に提起(改正後の 786 条) |
| 強制認知 | 子・直系卑属等は認知の訴えを提起できる。父の死亡後 3 年以内なら検察官を相手に提起できる(787 条) |
準正(789 条):認知された子は父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得します(婚姻準正・認知準正)。
養子:普通養子と特別養子の対比が最重要です。
| 項目 | 普通養子(792 条〜) | 特別養子(817 条の 2〜) |
|---|---|---|
| 成立 | 当事者の縁組意思+届出(契約型) | 家庭裁判所の審判 |
| 養親の要件 | 20 歳以上。独身でも可 | 配偶者のある者が夫婦共同で。25 歳以上(一方が 25 歳以上なら他方は 20 歳以上で可) |
| 養子の要件 | 養親の尊属・年長者は不可。未成年者を養子にするには家庭裁判所の許可(自己または配偶者の直系卑属を養子にする場合は不要)。15 歳未満は法定代理人が代諾 | 審判の申立て時に原則 15 歳未満(2020 年 4 月から。15 歳前から監護されていた等の例外あり)。15 歳以上は本人の同意 |
| 実父母の同意 | 不要(未成年養子の代諾を除く) | 原則必要。虐待・悪意の遺棄など子の利益を著しく害する事由があるときは不要 |
| 試験養育 | なし | 6 か月以上の監護状況を考慮 |
| 実親との関係 | 存続(実親の相続人にもなる) | 終了(実方の血族との親族関係が消える) |
| 離縁 | 協議離縁・裁判離縁 | 家庭裁判所の審判のみ。養親の虐待等+実父母が監護できる場合に限る(養親からは請求できない) |
養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(809 条)、養親の氏を称します(810 条)。配偶者のある者が未成年者を養子にするには、原則として夫婦共同で縁組しなければなりません(795 条)。
もう一歩(発展)
親権(818 条〜)は身上監護権と財産管理権からなり、未成年の子に対して父母が共同で行使します(婚姻中)。親権者と子の利益が相反する行為(親の借金のために子の不動産に抵当権を設定する など)では、親権者は家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならず(826 条)、これを経ない行為は無権代理となります。判例は、利益相反にあたるかを行為の外形から客観的に判断します(親の動機は問わない)。親権の濫用等に対しては、親権喪失(無期限)と親権停止(2 年以内)の審判があります(834 条・834 条の 2)。
扶養(877 条):直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養義務を負い、3 親等内の親族は特別の事情があるときに家庭裁判所の審判で義務を負わせることができます。親族の範囲(725 条)は、6 親等内の血族・配偶者・3 親等内の姻族です。
4. 相続人と相続分 ── 誰が・どれだけ
まずここだけ
相続は死亡によって開始します(882 条)。配偶者は常に相続人で(890 条)、次の順位の血族相続人と並びます。
| 順位 | 血族相続人 | 配偶者の相続分 | 血族相続人の相続分 |
|---|---|---|---|
| 第 1 順位 | 子(およびその代襲者) | 1/2 | 1/2 |
| 第 2 順位 | 直系尊属(親等の近い者が優先) | 2/3 | 1/3 |
| 第 3 順位 | 兄弟姉妹(およびその代襲者) | 3/4 | 1/4 |
同順位の者が複数いれば、その相続分を頭数で均等に分けます。嫡出子と嫡出でない子の相続分は同じです(2013 年改正。最大決平成 25 年 9 月 4 日が旧規定を違憲と判断)。父母の一方だけを同じくする半血の兄弟姉妹の相続分は、全血の兄弟姉妹の 1/2 です(900 条 4 号ただし書)。
事例:A が死亡。妻 B、子 C・D、A の母 E、A の弟 F がいる。遺産は 1,200 万円。 → 第 1 順位の子がいるので E・F は相続人にならない。B は 1/2 = 600 万円、C・D は 1/2 を頭数で割って各 300 万円。
ここまでできれば十分
代襲相続(887 条 2 項・889 条 2 項):相続人となるはずの子・兄弟姉妹が、相続開始以前に死亡したか、欠格・廃除で相続権を失ったときは、その者の子が代わって相続します。子の代襲は孫・ひ孫と再代襲がありますが、兄弟姉妹の代襲は甥・姪まで(再代襲なし)です。相続放棄は代襲原因ではありません(放棄した子の子は代襲しない)。代襲者の相続分は被代襲者の相続分と同じで、複数いれば均等に分けます。
相続権を失う場合:
| 制度 | 内容 | 代襲 |
|---|---|---|
| 相続欠格(891 条) | 被相続人を故意に死亡させて刑に処せられた、詐欺・強迫で遺言をさせた、遺言書を偽造・破棄・隠匿した など。当然に相続権を失う | あり |
| 廃除(892 条) | 被相続人に対する虐待・重大な侮辱・著しい非行があった遺留分をもつ推定相続人について、被相続人が家庭裁判所に請求(遺言でも可)。兄弟姉妹は遺留分がないので廃除できない(遺言で相続させなければ足りる) | あり |
| 相続放棄(938 条〜) | 相続人が自分の意思で家庭裁判所に申述。初めから相続人でなかったものとみなす | なし |
承認と放棄:相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から 3 か月(熟慮期間)以内に、単純承認・限定承認・放棄を選びます(915 条)。限定承認は共同相続人全員が共同でしなければなりません(923 条)。相続財産の全部または一部を処分したり、熟慮期間を過ぎたりすると単純承認したものとみなされます(921 条・法定単純承認)。放棄・限定承認の後でも、相続財産を隠匿・私的に消費すれば単純承認とみなされます。
相続分の修正:
- 特別受益(903 条):遺贈や、婚姻・養子縁組・生計の資本としての生前贈与を受けた相続人は、その額を相続財産に持ち戻して計算し、受けた分を差し引く。婚姻期間 20 年以上の夫婦の一方が他方に居住用の建物・敷地を遺贈・贈与したときは、持戻し免除の意思表示があったと推定(同条 4 項)
- 寄与分(904 条の 2):被相続人の事業への労務提供・療養看護などで財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人について、協議または家庭裁判所の審判で定める
- 特別寄与料(1050 条):相続人でない親族(子の配偶者など)が無償で療養看護等をして財産の維持・増加に特別の寄与をしたとき、相続人に対して金銭を請求できる(2019 年 7 月施行)
- 相続開始から 10 年を経過した後の遺産分割では、原則として特別受益・寄与分の主張ができない(904 条の 3。2023 年 4 月施行)
もう一歩(発展)
- 遺産分割前の預貯金の払戻し(909 条の 2):各相続人は、預貯金債権の 1/3 に法定相続分を乗じた額(同一金融機関ごとに 150 万円が上限)を単独で払い戻せる。判例が預貯金を遺産分割の対象としたこと(最大決平成 28 年 12 月 19 日)への手当て
- 遺産分割の効力は相続開始の時にさかのぼるが、第三者の権利は害せない(909 条)。法定相続分を超える部分の権利取得は、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗できない(899 条の 2)
- 相続登記の申請義務:不動産を相続で取得したことを知った日から 3 年以内に登記申請しなければならず、正当な理由なく怠ると 10 万円以下の過料(不動産登記法。2024 年 4 月施行)
- 相続人がいないときは相続財産清算人が清算し、特別縁故者への分与を経て残余は国庫に帰属する(958 条の 2・959 条)
5. 遺言・遺留分・配偶者居住権
まずここだけ
遺言は 15 歳から単独でできます(961 条。制限行為能力の規定は適用されない)。共同遺言は禁止(975 条)。遺言はいつでも撤回でき、前の遺言と抵触する後の遺言・生前処分は抵触部分について撤回とみなされます(1022〜1023 条)。撤回権は放棄できません。
| 方式 | 要点 |
|---|---|
| 自筆証書遺言(968 条) | 全文・日付・氏名を自書し押印。財産目録はパソコン作成や通帳のコピーでも可(各ページに署名押印。2019 年 1 月から)。加除訂正は方式に従う。法務局の保管制度を使えば検認不要(2020 年 7 月から) |
| 公正証書遺言(969 条) | 証人 2 人以上の立会いで公証人が作成。検認不要。未成年者・推定相続人・受遺者とその配偶者・直系血族は証人になれない |
| 秘密証書遺言(970 条) | 内容を秘密にしたまま公証人と証人 2 人以上に封紙へ署名させる。本文は自書でなくてよいが、氏名は自書。検認が必要 |
「日付」は特定できる必要があり、「令和 8 年 9 月吉日」のような記載は無効です(最判昭和 54 年 5 月 31 日)。押印は指印でもよいとされています(最判平成元年 2 月 16 日)。
ここまでできれば十分
遺留分(1042 条〜):遺言でも奪えない、一定の相続人の最低限の取り分です。
| 遺留分権利者 | 遺留分の割合(全体) |
|---|---|
| 兄弟姉妹 | なし |
| 直系尊属のみが相続人 | 相続財産の 1/3 |
| それ以外(配偶者・子がいる場合) | 相続財産の 1/2 |
各人の遺留分は、上の全体の割合に法定相続分を掛けたものです。たとえば妻と子 2 人が相続人なら、全体 1/2 × 妻 1/2 = 妻の遺留分 1/4、子は各 1/2 × 1/4 = 1/8。
2019 年 7 月の改正で、遺留分を侵害された者は遺留分侵害額請求として金銭の支払いを請求する制度になりました(改正前の「減殺請求」で生じていた不動産の共有状態を避けるため)。請求権は、相続の開始と侵害する贈与・遺贈を知った時から 1 年、相続開始から 10 年で消滅します(1048 条)。遺留分の算定に入れる相続人への生前贈与は、原則として相続開始前 10 年以内のもの(第三者への贈与は 1 年以内)です。遺留分は相続開始前でも家庭裁判所の許可を得て放棄できますが、相続の放棄は相続開始前にはできません。
事例:A が「全財産を愛人 X に遺贈する」と遺言して死亡。相続人は妻 B と子 C。遺産 2,000 万円。 → B の遺留分は 2,000 × 1/2 × 1/2 = 500 万円、C も 500 万円。B・C はそれぞれ X に 500 万円の金銭の支払いを請求できる(遺贈自体は有効)。
配偶者居住権(1028 条〜。2020 年 4 月施行):被相続人の配偶者が、相続開始時に被相続人所有の建物に住んでいた場合、遺産分割・遺贈によって、その建物に終身(または定めた期間)無償で住み続けられる権利。所有権より低い評価額で取得できるので、預貯金など他の財産も相続しやすくなります。登記が対抗要件で(建物所有者は登記に協力する義務を負う)、譲渡はできません。これとは別に、遺産分割が終わるまで(少なくとも相続開始から 6 か月)は無償で住み続けられる配偶者短期居住権が当然に発生します(1037 条)。
もう一歩(発展)
- 遺贈:特定遺贈は受遺者がいつでも放棄でき、包括遺贈の受遺者は相続人と同一の権利義務をもつ(990 条)。遺贈は遺言者の死亡前に受遺者が死亡すると効力を生じない(994 条)。「相続させる」旨の遺言は原則として遺産分割方法の指定と解され、相続開始と同時にその相続人が承継する(最判平成 3 年 4 月 19 日)
- 遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限をもち、相続人は執行を妨げる行為ができない(1012〜1013 条)
6. よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| 婚姻適齢は男 18 歳・女 16 歳 | 男女とも 18 歳(2022 年 4 月から) |
| 女性は離婚後 100 日間再婚できない | 再婚禁止期間は 2024 年 4 月に廃止 |
| 婚姻の取消しはさかのぼって効力を失わせる | 取消しの効果は将来に向かってのみ(748 条) |
| 有責配偶者からの離婚請求は認められない | 別居の長期化・未成熟子なし・過酷な状態でない、の 3 要件を満たせば認められうる |
| 相続放棄をした人の子は代襲相続できる | 放棄は代襲原因ではない。欠格・廃除・死亡が代襲原因 |
| 兄弟姉妹にも遺留分がある | 兄弟姉妹には遺留分なし。廃除の対象にもならない |
| 兄弟姉妹の代襲は何代でも続く | 兄弟姉妹の代襲は甥・姪まで。子の代襲は再代襲あり |
| 遺留分侵害額請求をすると遺贈された不動産が共有になる | 2019 年 7 月以降は金銭の支払請求権。物の返還ではない |
| 自筆証書遺言はすべて自書しなければならない | 財産目録はパソコン作成・コピーでもよい(各ページに署名押印) |
| 特別養子縁組でも実親との親族関係は残る | 特別養子は実方との親族関係が終了。残るのは普通養子 |
| 認知の効力は認知の時から生じる | 出生の時にさかのぼる(784 条) |
| 限定承認は相続人の 1 人だけでもできる | 共同相続人全員が共同でする(923 条) |
7. 解き方の型
- 相続人の問題は「配偶者は常に」「血族相続人は子 → 直系尊属 → 兄弟姉妹の順で、上の順位がいれば下は出てこない」を書き出してから、1/2・2/3・3/4 を当てる
- 相続分の計算は「配偶者の取り分 → 残りを血族相続人の頭数で割る → 代襲者は被代襲者の分を頭数で割る → 半血は全血の半分」の順に処理する
- 遺留分は「兄弟姉妹はゼロ → 直系尊属だけなら 1/3、他は 1/2 → 法定相続分を掛ける」の 3 段
- 家族法の 5 択では、「数字(18 歳・3 か月・3 年・300 日・15 歳・20 歳・25 歳・6 か月・1 年・10 年)」と「届出か審判か」「さかのぼるか将来のみか」「実親との関係は残るか」の入れかえを疑う
- 改正点(再婚禁止期間の廃止・嫡出推定の見直し・遺留分の金銭化・配偶者居住権・自筆証書の目録・財産分与 5 年・離婚後の親権)は、改正前の記述が誤答として置かれやすい
8. 小テストへ
→ 小テスト(zm-12)
関連する単元
- 前提:zm-01 総則①(権利能力・意思能力・制限行為能力者)の未成年者・成年年齢、zm-04 総則④(時効・条件と期限)の期間の計算
- 次に進む:zm-11 事務管理・不当利得・不法行為(慰謝料請求権の相続・近親者固有の慰謝料)
- 同じ考え方を使う:zm-05 物権変動(177 条・178 条・即時取得)の相続と登記、zh-02 包括的基本権と法の下の平等(嫡出でない子の相続分・夫婦同氏の判例)
参考資料
- 民法(明治 29 年法律第 89 号)第 4 編「親族」(725 条〜881 条)・第 5 編「相続」(882 条〜1050 条)
- 不動産登記法(相続登記の申請義務・76 条の 2)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和 6 年法律第 33 号)について」(離婚後の親権・養育費・財産分与の改正の概要)
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(令和 4 年法律第 102 号)について」(嫡出推定制度の見直し・再婚禁止期間の廃止)
- 法務省「相続法の改正(平成 30 年法律第 72 号)の概要」(配偶者居住権・自筆証書遺言・遺留分制度の見直し)
- 最高裁判所判例集(裁判所ウェブサイト「裁判例検索」)── 本文で挙げた各判例
- 人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)受験案内」── 専門試験の出題分野(民法)
受験のしらべ / https://juken-shirabe.com/koumuin/horitsu/zm-12/ / 更新 2026-09-14