勉強法
英文法の学び方 ── ルールを説明されてから使うか、使いながら気づくか
一言で
文法のルールを先に説明する教え方(明示的指導)は、例文にふれるだけの教え方より、平均して伸びが大きい。これが研究のまとめの結論です。 ただし説明で分かった形は、使い続けないと崩れやすいことも日本の中学生の研究で示されています。 また研究のまとめでは、読んで選ぶ練習より自分で言う・書く練習のほうが、時間がたってから使う力が上でした。 説明 → 選ぶ → 書く → 日をあけて混ぜる、の順は、こうした研究から考えたやり方です。
今日からやること
- 新しい文法は、解説を読んだら例文 3 つを日本語から英語に書く。翌日、何も見ずに同じ 3 文を白紙に書けるか確かめる
- 問題集の 4 択で正解した問題も、日本語だけ見て全文を書く。1 回 10 問なら、そのうち 3 問だけでよい
- 前の単元の形を混ぜて書く。進行形を習った週なら、be 動詞だけの文も 2 つ混ぜる。比較を習ったら、不定詞の文も 1 つ入れる
何が分かっているか
日本の中学生・大学生で確かめられていること
Tode(2007)
- 対象:英語を習い始めた日本の中学生 89 人(3 つの群)
- 比べたもの:be 動詞(I am の am)のルールを説明する群/例文を覚えるだけの群/何もしない群
- その後:3 群とも同じ授業で進行形(I am playing の am)を学んだ
- 結果:説明した群は短い期間では伸びた。例文を覚えるだけの群は伸びなかった。ところが説明の効果は続かず、特に進行形を習った後で崩れた
著者は「説明の後の授業で、前に習った形を保つ工夫が必要だ」とまとめています。同じ be でも働きの違う形が出てくると、前の形があやふやになった、と考えられます。
Oyama(2017) 日本人の大学生 84 人が、仮定法過去完了(If I had known, I would have …)を学びました。 3 つの群とも、まず自分で英文を書きます。そのあと「お手本の英文+文法の説明」「お手本だけ」「何もなし」に分けました。 文を完成させるテストでは、説明つき > お手本だけ > 書くだけの順でした。お手本だけの群でも、約 44% の学生が自分の英文とお手本を比べて目標の形に気づいていました。
Shintani, Ellis & Suzuki(2014) 日本の大学生の英作文に、正しい形を書きこむ訂正をすると、仮定法の正確さが上がりました。冠詞(a)では上がりませんでした。 書いて直されて伸びる形と、伸びにくい形があるということです。詳しくは 英作文の直し方 にあります。
Aka(2019) 高専 1 年(高校 1 年に当たる)の 2 つの学年を比べた研究です。一方の学年は、週 2 時間の文法の授業(規則の説明と和訳・英訳)を 1 年間受けました。もう一方は同じ時間を多読(やさしい英文をたくさん読む)にしました。 1 年後、多読の学年は「文法・語彙」のテストでも上でした(54.7 点と 63.9 点・d=0.68)。ただしテストは中学レベルの内容で、くじ引きで分けた実験ではありません。詳しくは 多読 にあります。
たくさんの研究のまとめ(メタ分析)
Norris & Ortega(2000) 1980〜1998 年の 49 研究をまとめました。狙いをしぼった文法指導は大きな伸びにつながりました。説明する指導は、説明しない指導より効果が大きい結果でした。 効果は時間がたっても続いていました。ただし、どんなテストで測るかで効果の大きさが変わる、とも書いています(数字は要旨に無いので書きません)。
Spada & Tomita(2010) 英語の文法を扱った 41 研究のまとめです。形を「簡単な形」と「複雑な形」に分けて比べました。 どちらの形でも、説明する指導のほうが効果が大きい結果でした。説明は、考えながら使う知識だけでなく、その場で自然に使う力にもプラスになっていました。
Goo, Granena, Yilmaz & Novella(2015) 説明する指導と説明しない指導を直接比べた 34 研究のまとめです。Norris & Ortega の後に出た 23 研究を加えています。こちらも説明する指導のほうが効果が大きい結果でした。
Kang, Sok & Han(2019) 1980〜2015 年の 54 研究・5,051 人のまとめです。文法指導全体の効果は g=1.06(大きい)でした。g は d と同じく差の大きさの目安です。 ただし、説明するかしないかの差は小さいものでした。差をつくっていたのは、測り方・学習者のはじめの英語力・学ぶ場面・指導の密度でした。
Shintani, Li & Ellis(2013) 2 種類の練習を比べた研究のまとめです(30 研究・35 件)。1 つは聞いたり読んだりして意味を選ぶ練習(理解中心)。もう 1 つは自分で言う・書く練習(産出中心)です。
- どちらの練習も、分かる力・使う力の両方に大きな効果があった
- 分かる力:1 週間以内のテストでは理解中心が上。時間がたつと差は縮んだ
- 使う力:すぐ後のテストでは同じくらい。時間がたったテストでは産出中心が上だった
- 理解中心がはじめ上だったのは、主に「入力処理指導」という特別な練習の研究によるものだった
日本の中高生の勉強にあてはめると
授業の説明は「スタート」と考える。 研究のまとめでは、ルールの説明はあったほうが伸びています。 問題は説明の後です。Tode(2007)の中学生は、説明で伸びた形が次の単元で崩れました。
4 択で正解したら、日本語から全文を書く。 Shintani ら(2013)では、時間がたった後の「使う力」は、自分で言う・書く練習のほうが上でした。 【推論】4 択は「選ぶ」練習なので、書く練習を足しておきます。定期テストの 4 択や並べかえ問題が解けても、英作文で書けるとは限りません。正解した問題から 2〜3 問を選び、日本語だけ見て全文を書きます。 これは テスト効果(思い出す練習) でいう「書く形」の思い出し方でもあります。
似た形は、あえて混ぜる。 【推論】Tode(2007)で崩れたのは、同じ be を使う別の形を習った後でした。似た形は混ぜて練習し、「どちらの形か」を見分ける場面をつくります。 例:be 動詞の文と進行形の文、不定詞と動名詞(動名詞)、現在完了と過去形。問題集の単元ごとの演習が終わったら、2〜3 単元を混ぜた問題を解きます。交互練習 と同じ考え方です。
お手本と自分の英文を比べる。 Oyama(2017)では、先に自分で書いてからお手本と比べると、説明がなくても 4 割ほどの学生が形に気づきました。説明もつけると、さらに上でした。 【推論】英作文の問題集なら、解答例を見る前に自分で書きます。次に解答例と並べて違う所に線を引き、文法書の該当ページを読みます。
「1 回で覚える」より「日をあけて戻る」。 Norris & Ortega は効果が続くとしていますが、Tode の中学生では続きませんでした。 【推論】習った週・翌週・1 か月後に、同じ形の文を書き直します。日のあけ方は 間隔反復(分散練習) を参考にしてください。
よくある誤解
「文法は英文をたくさん読めば自然に身につくので、説明はいらない」 3 つのまとめ(Norris & Ortega・Spada & Tomita・Goo ら)では、説明する指導が上でした。多読だけでは文法やつづりが伸びなかった、という日本の高校生の研究もあります(多読 を参照)。 一方、新しいまとめ(Kang ら 2019)では、説明の有無の差は小さめでした。説明と大量の英文は、どちらかではなく両方です。
「4 択が解ければ、英作文でも書ける」 Shintani ら(2013)では、時間がたった後の使う力は、自分で言う・書く練習のほうが上でした。4 択そのものを調べた研究ではありませんが、選べることと書けることは別に練習します。
「一度説明を聞いて分かったから、もう大丈夫」 Tode(2007)では、説明の効果が続かず、次の単元の後で崩れました。分かった直後のテストの点は、後の点を約束しません。
「文法用語を覚えれば、使えるようになる」 研究で比べているのは、ルールを説明するかどうかです。用語を暗記するかどうかではありません。「不定詞の形容詞的用法」と言えることより、その形で英文が書けることが目標です。
このサイトでの使い方
- 中学生:文法の単元(例:be動詞(現在)・現在進行形・不定詞)は「まずここだけ」で形を読み、小テストで選ぶ練習をする。そのあと例文を日本語から書く
- 高校生:文型と動詞の型 から 動詞の語法 までの 20 単元は、小テストの例文が同じ型でも入れかわります。まちがえた型だけを翌日・1 週間後に解き直す
- 書いた英文の直し方は 英作文の直し方、解答例を先に読むか先に解くかは 解答例から学ぶ(例題学習) にまとめています
注意点
- 研究のまとめは、大学生や大人の研究を多く含みます。日本の中学生の研究(Tode 2007)は 1 校・89 人で、be 動詞という 1 つの形についての結果です
- 「説明する指導が上」の大きさは、テストの形式で変わります(Norris & Ortega 2000)。選ぶテストで伸びても、話す・書くで同じだけ伸びるとは限りません
- 新しいまとめ(Kang ら 2019)では、説明の有無の差は小さめでした。研究によって結論の強さが違います
- 4 択と英作文の組み合わせ方で入試の点に差が出るか。高校生で直接比べた研究は、このページではまだ引けていません
引いた論文
番号は docs/参考文献ログ_追加_英語2.md(#311〜)の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。
- #339 Tode, T. (2007). Durability problems with explicit instruction in an EFL context: The learning of the English copula be before and after the introduction of the auxiliary be. Language Teaching Research, 11(1), 11–30. https://doi.org/10.1177/1362168806072398
- #340 Oyama, R. (2017). Effects of cognitive comparison during focus-on-form instruction on Japanese EFL learners’ acquisition of grammar. The Journal of AsiaTEFL, 14(1), 1–15. https://doi.org/10.18823/asiatefl.2017.14.1.1.1
- #329 Shintani, N., Ellis, R., & Suzuki, W. (2014). Effects of written feedback and revision on learners’ accuracy in using two English grammatical structures. Language Learning, 64(1), 103–131. https://doi.org/10.1111/lang.12029
- #315 Aka, N. (2019). Reading performance of Japanese high school learners following a one-year extensive reading program. Reading in a Foreign Language, 31(1), 1–18. https://doi.org/10.64152/10125/66747
- #334 Norris, J. M., & Ortega, L. (2000). Effectiveness of L2 instruction: A research synthesis and quantitative meta-analysis. Language Learning, 50(3), 417–528. https://doi.org/10.1111/0023-8333.00136
- #335 Spada, N., & Tomita, Y. (2010). Interactions between type of instruction and type of language feature: A meta-analysis. Language Learning, 60(2), 263–308. https://doi.org/10.1111/j.1467-9922.2010.00562.x
- #336 Goo, J., Granena, G., Yilmaz, Y., & Novella, M. (2015). Implicit and explicit instruction in L2 learning. In Implicit and Explicit Learning of Languages (Studies in Bilingualism 48, pp. 443–482). John Benjamins. https://doi.org/10.1075/sibil.48.18goo
- #337 Kang, E. Y., Sok, S., & Han, Z. (2019). Thirty-five years of ISLA on form-focused instruction: A meta-analysis. Language Teaching Research, 23(4), 428–453. https://doi.org/10.1177/1362168818776671
- #338 Shintani, N., Li, S., & Ellis, R. (2013). Comprehension-based versus production-based grammar instruction: A meta-analysis of comparative studies. Language Learning, 63(2), 296–329. https://doi.org/10.1111/lang.12001