勉強法
朝型・夜型と勉強の時間帯 ── 朝に勉強すれば頭に入るのか
一言で
10 代は、体内時計(体の中の 1 日のリズム)が夜のほうへずれやすい時期です。夜型になるのは、なまけているからとは限りません。 研究をまとめると、夜型ほど成績が少し低い、という弱い関係があります。ただし試験が朝にあることも一因と考えられ、試験が午後なら差が消えたという研究もあります。 「朝に勉強すれば頭に入る」と言い切れる研究は、このページでは引けていません。大事なのは睡眠を削らないことと、本番の時刻に頭が働く状態を作ることです。
今日からやること
- 1 週間だけ、時間帯ごとの調子を記録する。朝・放課後・夜に同じ小テストを解き、点と眠気(3 段階)を書きます。自分が働きやすい時間帯を、感覚ではなく記録で見ます
- 早起きのために睡眠を削らない。朝に勉強時間を作るなら、寝る時刻もその分早めます。起きる時刻だけ早めるのはやめます
- 本番の 1 か月前から、休日の過去問を本番と同じ時刻に解く。共通テストなら 9 時 30 分に始めます(地理歴史・公民を 2 科目受ける場合)。夜型の人ほど、朝の頭の動きを確かめておきます
3 つとも、下の研究から考えた段取りです。この手順そのものを実験で比べたわけではありません。1 は Goldin ら(2020)、2 は始業を遅らせた研究(Minges & Redeker 2016)がもとです。3 は van der Vinne ら(2015)をもとにしています。
何が分かっているか
日本の中高生の寝る時刻・起きる時刻(公的な調査)
日本学校保健会「児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書」(2020 年 3 月発行) ── 全国の定点の協力校で、隔年で続けている調査です。文部科学省の指導のもとで行われています。この回の調査は 2018 年 11〜12 月で、小中高 114 校が答えました。高校生は 4,658 人です。
- 調査前日の寝た時刻の平均:高校生の男子 23 時 50 分、女子 23 時 56 分(中学生は男子 23 時 09 分、女子 23 時 20 分)
- 調査当日の起きた時刻の平均:高校生の男子 6 時 40 分、女子 6 時 30 分
- 0 時以降に寝ていた高校生:男子 50.7%、女子 52.5%
平均の時刻どうしを引くと、高校生の寝床の時間は 6 時間半〜7 時間弱です(このページでの計算)。厚生労働省の睡眠ガイドの中高生の目安は 8〜10 時間です(睡眠と一夜漬け で紹介)。
日本の中学生の研究
Tamura, Komada, Inoue & Tanaka(2022) ── 日本の中学校 13 校の調査です。12〜15 歳の 4,782 人が質問紙に答えました。平日と休日で、睡眠の真ん中の時刻がどれだけずれるかを調べました。このずれを「社会的時差ぼけ」と呼びます。
- ずれが 1 時間以上の生徒は 51.1%(1〜2 時間が 35.8%、2 時間以上が 15.3%)
- ずれが 1 時間以上だと、いらいら・昼間の眠気・成績がふるわないことのリスクが高かった(睡眠の質などをそろえたあと)
ある時点で聞いた調査なので、ずれが成績を下げたのか、別の理由で両方が起きたのかは分かりません。
日本の中高生で、勉強する時間帯を比べた実験は、このページではまだ引けていません。朝型・夜型と成績の関係を調べた研究も同じです。ここから下は海外の研究です。
10 代はなぜ夜型になりやすいのか
Carskadon, Vieira & Acebo(1993) ── 6 年生(日本の小 6 相当)の男子 183 人・女子 275 人の調査です。朝型か夜型かと、思春期の体の発達の進み具合を質問紙で聞きました。 女子では、体の発達が進んでいるほど夜型寄りという関係が出ました。男子も同じ向きでしたが、有意ではありませんでした。学校の環境や生まれ順(きょうだいの何番目か)とは関係が見られませんでした。著者は、10 代の夜型化には体の要因が関わっていると考えています。
Roenneberg ら(2004) ── 多くの人の朝型・夜型を調べた研究です。10 代は「いくらでも夜ふかしと朝寝坊ができる」時期だと述べています。寝る時間帯は 20 歳ごろを境に急に変わる、と報告しました。著者はこれを「思春期の終わりの目印」と呼んでいます。人数は要旨に無いので書きません。
朝型・夜型と成績
Preckel, Lipnevich, Schneider & Roberts(2011) ── 4 つのメタ分析を行った研究です。メタ分析は、多くの研究の結果を合算する分析です。r は関係の強さで、0 なら関係なし、1 に近いほど強い関係です。
- 朝型と成績:r = 0.16(合計 3,220 人)
- 夜型と成績:r = −0.14(合計 700 人)
- 夜型と知的な力:r = 0.08(合計 1,519 人)
- 朝型と知的な力:r = −0.04(合計 2,177 人)
夜型は成績では少し不利な向き、知的な力ではわずかに有利な向きでした。
Tonetti, Natale & Randler(2015) ── 31 研究・27,309 人のメタ分析です。夜型ほど成績が低い向きの関係が、r = 0.14 前後で出ました。小中高生(0.166)のほうが、大学生(0.121)より少し強い関係です。成績を本人が答えた研究(0.171)は、学校の記録を使った研究(0.093)より強めでした。
どちらも「関係」の分析です。夜型だから成績が下がる、とまでは言えません。
試験の時刻と、朝型・夜型
van der Vinne ら(2015) ── オランダの高校生 741 人(11〜18 歳)の研究です。4,734 回分の試験の成績を調べました。
- 成績がいちばん低かったのは、かなりの夜型の生徒と、平日の睡眠がかなり短い生徒だった
- 朝の早い時間(8 時 15 分〜9 時 45 分)と遅い時間(10 時〜12 時 15 分)の試験では、朝型のほうが成績が有意に高かった
- 午後の早い時間(12 時 45 分〜15 時)の試験では、この差が消えた
朝型・夜型は質問紙で推定したもので、成績との関係を見た研究です。
Goldin ら(2020) ── アルゼンチンの 10 代の生徒 753 人の研究です。生徒は、朝(7 時 45 分)・昼(12 時 40 分)・夕方(17 時 20 分)に始まる部のどれかにくじで振り分けられていました。
- 朝の部では、朝型の生徒が夜型よりすべての教科で成績がよかった。差がいちばん大きいのは数学だった
- 昼の部では、この差が消えた
- 夜型の生徒は、夕方の部で成績がよかった
くじで時間帯が決まるので、「もともと成績のよい子が朝を選んだ」という見方を外して比べられます。ただし、朝型か夜型かはくじで決めたものではありません。
1 日の中の時刻と、テストの点
Sievertsen, Gino & Piovesan(2016) ── デンマークの公立学校の記録です。全児童生徒がパソコンで受けた標準テストを調べました(2009〜2012 年度)。テストの時刻は、時間割とパソコンの空きで決まっていました。
- テストが 1 時間遅くなるごとに、点は標準偏差の 0.9% 下がった
- 20〜30 分の休み時間をはさむと、点は標準偏差の 1.7% 上がった
標準偏差は点のばらつきの幅で、その 1% は小さい差です。著者は、1 日の授業で頭が疲れていくことを理由に挙げています。朝型・夜型の話とは別に、授業のあとの疲れも点に表れる、という結果です。
学校の始業を遅らせると
Minges & Redeker(2016) ── 始業を遅らせた研究 6 本をまとめた系統的レビューです。始業を 25〜60 分遅らせると、平日の睡眠は 1 晩あたり 25〜77 分増えていました。昼間の眠気・遅刻などが減った研究もあります。 ただ、成績の測り方は研究ごとにばらばらで、くじで分けたしっかりした研究がもっと必要だとしています。
Dunster ら(2018) ── アメリカのシアトルの学区が、高校の始業をほぼ 1 時間(55 分)遅らせた前後の比較です。睡眠時間の中央値は 1 日 34 分増え、成績の中央値は 4.5% 上がり、出席もよくなりました。 くじで分けた実験ではなく、同じ学区の前後の比較です。
日本の中高生の勉強にあてはめると
「朝勉強」をするか迷ったら ── 研究が示しているのは、夜型は朝の試験で不利になりやすいことです。朝に勉強すると覚えやすい、という結果ではありません。夜型の人が睡眠を削って早起きすると、睡眠と一夜漬け で見たように睡眠不足の害のほうが大きくなりえます【推論】。 朝に時間を作るなら、寝る時刻ごと前に動かします。朝の 15 分は、前の日に覚えた英単語や用語を閉じて思い出す時間に向いています(テスト効果)。新しい単元を一から読むより、短く区切れるからです【推論】。朝ごはんと点の関係は 朝ごはんと食事 にまとめました。
部活のあとの夜の勉強 ── 部活のある日は、帰宅して夕食のあとが中心になります。Sievertsen ら(2016)では、テストの時刻が遅いほど点が下がり、休み時間をはさむと持ち直しました。帰宅後すぐ机に向かうより、夕食や入浴で 20〜30 分の区切りを入れてから始めます【推論】。休み方は 集中と休憩 にまとめました。
自分のずれを計算してみる ── Tamura ら(2022)は、平日と休日の「睡眠の真ん中の時刻」の差でずれを測りました。自分でも計算できます。
- 平日:0 時に寝て 6 時 30 分に起きる → 真ん中は 3 時 15 分
- 休日:1 時に寝て 9 時 30 分に起きる → 真ん中は 5 時 15 分
- ずれは 2 時間。この調査で「2 時間以上」に入るのは 15.3% でした
van der Vinne ら(2015)も、朝型・夜型の目安に休日の睡眠の真ん中の時刻を使っています。睡眠不足の分を補正した値です。休日の真ん中が遅い人ほど夜型寄り、という見方です。
休日の起きる時刻 ── 日本の中学生の調査(Tamura ら 2022)の結果です。平日と休日で睡眠の時間帯が 1 時間以上ずれる生徒が、半数を超えていました。休日の朝寝坊が長いほど、月曜の朝がつらくなります。夜型の自覚がある人ほど、休日も起きる時刻を平日に近づけます【推論】。
共通テスト・高校入試の本番 ── 共通テストは、2 日とも 9 時 30 分から始まります(2 科目受験の場合。共通テストの時間割)。高校入試や公務員試験も、開始時刻を日程表で確かめておきます(高校入試の日程・公務員試験の日程)。 van der Vinne ら(2015)では、朝の試験で夜型が不利でした。夜型の人は、本番前の 1 か月、休日の過去問を 9 時 30 分に始めます。朝の頭の動きに慣れておく練習です【推論】。
定期テストの時間割 ── 定期テストも、ふだんの授業と同じ朝の時間帯に行われます。夜型の人は、テスト 1 週間前から寝る時刻を 30 分ずつ前に動かします。前日だけ早寝しようとしても、体内時計はすぐには動きにくいと考えられます【推論】。
公務員試験を受ける社会人 ── 仕事のあとの夜しか時間がない人も多いはずです。夜の勉強が悪いわけではありません。ただし試験は朝からなので、直前の 1 か月は休日に朝から模擬テストを解いて、本番の時刻に合わせます【推論】。
よくある誤解
「朝型の人のほうが頭がいい」 Preckel ら(2011)では、知的な力とはむしろ夜型のほうがわずかにプラスでした(r = 0.08)。成績で朝型が少し上なのは、学校や試験が朝にあることも関わっていると考えられます。Goldin ら(2020)では、昼の部で差が消えました。
「夜型は、生活がだらしないだけ」 Carskadon ら(1993)では、夜型寄りかどうかは体の発達の進み具合と関係していました(女子で有意)。学校の環境や生まれ順とは関係が見られませんでした。10 代の夜型化には、体の要因が関わっていると考えられています。
「朝に勉強すれば、頭に入りやすい」 朝と夜で同じ内容を覚えさせ、10 代の記憶を比べた研究は、このページでは引けていません。ここで引けた研究は、主に「試験を受ける時刻」と成績の関係です。
「夜型だから、本番も夜型のままで大丈夫」 本番の試験は朝です。van der Vinne ら(2015)と Goldin ら(2020)では、朝の試験・朝の授業で夜型が不利でした。勉強する時間帯は自由でも、本番の時刻に合わせる準備は別に考えます。
このサイトでの使い方
- 時間帯ごとに小テストを解いて記録する。同じ単元の小テストを、朝・放課後・夜に 1 回ずつ解きます。「同じ型でもう 1 問」で、数を変えた問題が出ます。点と眠気を 1 週間書けば、自分の調子のよい時間帯の目安になります
- 朝は「前に間違えた型をやり直す」から。朝の短い時間は、前の日に間違えた型を解き直すのに使います。読む量が少なく、15 分で区切れます
- 本番の時刻に模擬テスト。公務員試験 模擬テスト や 大学受験 英語 まぜこぜテスト を、休日の 9 時 30 分に解きます
例:二次方程式 を 3 日続けて解き、時刻を変えて点を比べます。月曜は朝 7 時・火曜は 17 時・水曜は 22 時です。差がなければ、時間帯より睡眠と回数を優先します。
注意点
- 朝型・夜型と成績の研究は、ほとんどが「関係」を見た調査です。夜型が成績を下げる原因だとまでは言えません
- 試験の時刻を比べた研究は、オランダ・アルゼンチン・デンマークの学校です。日本の高校の時間割や入試で同じ差が出るかは、確かめられていません
- 始業を遅らせた研究は、学校が時間を変えた場合の話です。個人が登校時刻を変えられるわけではありません
- 日本学校保健会の調査は 2018 年のものです。最新の状況は一次資料で確認してください
- 朝どうしても起きられない、遅刻が続く場合は、生活のくせではなく睡眠の病気のこともあります。早めに医師に相談してください(睡眠と一夜漬け の注意点も参照)
引いた論文
番号は班別ファイル docs/参考文献ログ_追加_本番2.md の #。DOI を開いて書誌を確認し、要旨(OpenAlex・CrossRef・Semantic Scholar・ERIC)で内容を確かめています。
- #400 Tamura, N., Komada, Y., Inoue, Y., & Tanaka, H. (2022). Social jetlag among Japanese adolescents: Association with irritable mood, daytime sleepiness, fatigue, and poor academic performance. Chronobiology International, 39, 311–322. https://doi.org/10.1080/07420528.2021.1996388
- #391 Carskadon, M. A., Vieira, C., & Acebo, C. (1993). Association between puberty and delayed phase preference. Sleep, 16, 258–262. https://doi.org/10.1093/sleep/16.3.258
- #392 Roenneberg, T., Kuehnle, T., Pramstaller, P. P., Ricken, J., Havel, M., Guth, A., & Merrow, M. (2004). A marker for the end of adolescence. Current Biology, 14, R1038–R1039. https://doi.org/10.1016/j.cub.2004.11.039
- #393 Preckel, F., Lipnevich, A. A., Schneider, S., & Roberts, R. D. (2011). Chronotype, cognitive abilities, and academic achievement: A meta-analytic investigation. Learning and Individual Differences, 21, 483–492. https://doi.org/10.1016/j.lindif.2011.07.003
- #394 Tonetti, L., Natale, V., & Randler, C. (2015). Association between circadian preference and academic achievement: A systematic review and meta-analysis. Chronobiology International, 32, 792–801. https://doi.org/10.3109/07420528.2015.1049271
- #395 van der Vinne, V., Zerbini, G., Siersema, A., Pieper, A., Merrow, M., Hut, R. A., Roenneberg, T., & Kantermann, T. (2015). Timing of examinations affects school performance differently in early and late chronotypes. Journal of Biological Rhythms, 30, 53–60. https://doi.org/10.1177/0748730414564786
- #396 Goldin, A. P., Sigman, M., Braier, G., Golombek, D. A., & Leone, M. J. (2020). Interplay of chronotype and school timing predicts school performance. Nature Human Behaviour, 4, 387–396. https://doi.org/10.1038/s41562-020-0820-2
- #397 Sievertsen, H. H., Gino, F., & Piovesan, M. (2016). Cognitive fatigue influences students’ performance on standardized tests. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113, 2621–2624. https://doi.org/10.1073/pnas.1516947113
- #398 Minges, K. E., & Redeker, N. S. (2016). Delayed school start times and adolescent sleep: A systematic review of the experimental evidence. Sleep Medicine Reviews, 28, 86–95. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2015.06.002
- #399 Dunster, G. P., de la Iglesia, L., Ben-Hamo, M., Nave, C., Fleischer, J. G., Panda, S., & de la Iglesia, H. O. (2018). Sleepmore in Seattle: Later school start times are associated with more sleep and better performance in high school students. Science Advances, 4, eaau6200. https://doi.org/10.1126/sciadv.aau6200
参考資料(公的な調査)
- 公益財団法人 日本学校保健会(2020 年 3 月発行)「平成 30 年度・令和元年度 児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書」調査時点 2018 年 11〜12 月。第 5 章「就寝時刻(調査前日)」「起床時刻(調査当日)」。https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_R010120/data/256/src/R010120.pdf