勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

シャドーイング ── 聞き取りが苦手な人ほど伸びる、という研究

一言で

シャドーイングは、英語の音声を聞きながら少し遅れて影のように追いかけて言う練習です。日本の英語教育に取り入れられて、25 年以上たつ練習です。 確かめられているのは、音を聞き分けて単語として取り出す力が伸びることです。そして、それが聞き取りの点に表れたのは聞き取りが苦手な人でした。

今日からやること

  1. まず内容が分かる短い音声を選ぶ。教科書の本文か共通テストの過去問の音声で、1〜2 分のもの。スクリプト(音声の文字)を読んで意味を確かめてから始める
  2. 1 日 10〜15 分、同じ音声を 1 週間。通学電車ではイヤホンで「聞くだけ」と「口だけ動かす」、家では声に出して追いかける。慣れたら次の音声へ
  3. 週に 1 回、自分の声を録音して聞く。スマホで録音し、スクリプトと見比べて言えなかった語に印をつける。印の語だけを聞き直す

何が分かっているか

日本人学習者を対象にした研究

Hamada(2016) ── 日本の国立大学の学習者 43 人に、教科書を使って 9 回の授業でシャドーイングを行いました。前後のテストは、日本の標準的な英語聞き取りテストの一部(22 問)と、聞いて空所を埋める書き取り 20 問です。聞き取りの事前テストで、下位群と中位群に分けて比べました。音を聞き分ける力は両方の群で伸びましたが、高校レベルの聞き取り問題の得点が伸びたのは下位群だけでした。

中山・岩田(2011) ── 日本の高校の英語の授業で行われた研究です。同じ聞き取り練習のあと、一方の群は「シャドーイング+書き取り」、もう一方は「文法ドリル」を行いました。どちらも通常の授業の中の 10 分間の活動です。10 か月後のテストで、シャドーイング+書き取りの群が上回りました(人数と点差は要旨に無いので書きません)。

Hamada(2022) ── 2 段階の研究です。まず日本の大学生 36 人が 1 か月・8 回の練習を行い、112 問の聞き取りの基礎テストで調べました。伸びたのは強く読まれる語を聞き取る力と単語を聞き取る力でした。似た音のちがい(音素)の聞き分けは伸びませんでした。次に 12 人が 3 か月、「自分の声に注意する・誤りを直してもらう・説明を受ける」を加えた方法で練習しました。こちらは中級の学習者で、似た音の聞き分けが伸びました。

Hamada(2025) ── 日本の大学生 34 人と 25 人(オンライン授業)が、5 回の授業で「選択的シャドーイング」を練習しました。音声の中の一部の語だけを選んで言う方法です。2 つの研究とも、耳で聞いて分かる単語が増えました(% は要旨に無いので書きません)。

Mori(2011) ── 日本の大学生 20 人が、週 1 回・10 週間、シャドーイングと音読を組み合わせて練習しました。録音の音響分析で、強弱のリズムと文末の抑揚が英語らしくなっていました。聞く力ではなく、話す側の発音が変わった研究です。

Hamada(2019) ── それまでのシャドーイング研究をまとめた総説です。初級の学習者は「聞くためのシャドーイング」から始め、「話すためのシャドーイング」へ進むのがよい、と提案しています。

頭の中のしくみの研究

Takeuchi ら(2021) ── 日本の研究グループ(著者に川島隆太氏)の実験です。若い成人が 4 週間、第二言語のシャドーイングか音読を集中して練習しました。声に出す練習をした群は、聞くだけの群より、短期記憶の課題で反応が速くなりました。数字を覚える範囲も伸びる傾向がありました。脳の画像でも、音を一時的に保つしくみに関わる部分に変化が見られました。

日本の中高生の勉強にあてはめると

シャドーイングで伸びるのは「音を単語に変える」段階。英語の聞き取りには 2 つの段階があります。音を聞いて単語に切り分ける段階と、単語から意味を組み立てる段階です。シャドーイングが伸ばすのは前の段階でした(Hamada 2016・2022)。「スクリプトを見れば分かるのに、聞くと分からない」人に向いた練習です。

逆に、スクリプトを読んでも分からない人は先に語彙と文法。読んで分からない英文は、聞いても分かりません。まず 単語帳 と文法の単元で土台を作り、読んで分かる英文で練習します。

共通テストのリスニングにどう組み込むか。令和 7 年度の本試験は 100 点・解答 30 分でした。第 1・2 問は 2 回、第 3〜6 問は 1 回しか流れません。1 回で聞き取るには、音を単語にすばやく変える力が要ります。過去問を解いたあとの復習にシャドーイングを入れるのが、時間のむだが少ない使い方です。

  1. 過去問を本番どおりに 1 回解く(先読みのしかたは 共通テスト リスニングの型)
  2. 答え合わせをして、スクリプトで聞き取れなかった部分に線を引く
  3. 線を引いた大問の音声を、スクリプトを見ながら 2〜3 回追いかけて言う
  4. 次にスクリプトを見ずに 2〜3 回。言えない語は「聞こえていない語」なので、そこだけ聞き直す
  5. 3 日後と 1 週間後に、同じ音声をスクリプトなしで聞いて、聞き取れるか確かめる

大学入試センターのサイトで、過去の問題と音声が公開されています(掲載の範囲は公式で確認してください)。

英検の対策でも同じ順番。級によって問題の形式も読み上げの回数もちがいます。形式は日本英語検定協会の公式で確かめてください。解く → スクリプトで確認 → 聞き取れなかった部分をシャドーイング、の順番は同じです。

中学生は教科書の音声から。教科書の本文は授業で意味を確かめているので、シャドーイングを始めやすい教材です。高校入試のリスニングの形式は、都道府県ごとの過去問で確かめてください。

「似た音の聞き分け」は別の練習を足す。Hamada(2022)では、ふつうのシャドーイングでは似た音のちがいの聞き分けは伸びませんでした。伸びたのは、自分の声に注意し、誤りを直してもらう方法でした。録音を聞いて手本と比べる、英語の先生に聞いてもらう、を足すと近い形になります。

聞き取りが得意な人は、シャドーイングだけでは点が伸びにくい。Hamada(2016)で中位群の聞き取り得点は伸びませんでした。すでに聞き取れる人は、別の練習に時間を回すとよいかもしれません。長い講義(第 5 問)のメモの取り方や、選択肢の言い換えの練習です。

よくある誤解

「シャドーイングをすればリスニングは誰でも伸びる」 Hamada(2016)で聞き取り問題の得点が伸びたのは、下位群だけでした。中位群は音の聞き分けは伸びても、聞き取り問題の得点には表れませんでした。

「意味が分からない音声でも、まねしていれば分かるようになる」 研究で使われたのは、授業の教科書など学習者が扱える教材でした。総説(Hamada 2019)も、初級者は「聞くため」の段階から始めることを勧めています。意味の分からない英文を追いかけても、何が言えていないのか確かめられません。

「シャドーイングで発音もリスニングも全部まとめて伸びる」 伸びる部分は研究ごとにちがいました。Hamada(2022)では似た音の聞き分けが伸びず、Mori(2011)で変わったのはリズムと抑揚です。何を伸ばしたいかで、録音して比べる・誤りを直してもらうなどの工夫を足します。

「音読とシャドーイングは同じ」 音読は文字を見て声に出す練習で、伸びると確かめられたのは主に黙読の速さです(音読)。シャドーイングは音を聞いて追いかけるので、伸びるのは音を単語に変える力でした。

このサイトでの使い方

注意点

引いた論文

番号は参考文献ログの #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。