勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

語源で英単語を覚える ── 接頭辞・語根は役に立つか

一言で

英単語の多くは、部品に分けられます。接頭辞(un- や re- のように前につく部品)・語根(意味の中心)・接尾辞(-tion や -ful のように後ろにつく部品)です。 英語を母語とする子どもに部品の知識を教えると、語彙のテストで小〜中程度の差が出た、という研究のまとめがあります。日本の中高生でも、部品に目を向ける項目を含む覚え方が、中 3 以降で語彙の多さと相関していました。 ただし部品で覚える方法は、すでに語彙が多い人ほど得をしたという日本の研究があります。【推論】単語帳の代わりではなく、単語帳に「部品の目」を足す使い方が、研究の条件に近いと考えられます。

今日からやること

  1. 単語帳で新しい語に出会ったら、知っている部品がないか 5 秒だけ探す。unbelievable なら un(〜でない)+ believe + able(〜できる)
  2. よく出る接頭辞・接尾辞を 1 週間で 20 個覚える。語形変化と派生語 の表を、隠して言えるかで確かめる
  3. 部品から意味を予想したら、その場で単語帳の訳と答え合わせをする。部品どおりの意味にならない語もあるからです

何が分かっているか

日本の中高生・日本人学習者の研究

内田(2021)

これは相関の研究です。「関連づけて覚えたから語彙が増えた」とまでは言えません。語彙が多い人ほど関連づけやすい、という逆向きの説明もありえます。また関連づけの項目は 10 個あり、部品に目を向ける項目はそのうち 2 個です。例文ごと覚える・類義語を整理するなども入っています。部品だけの結果ではありません。

内田・水野・植阪(2023) ── 高校 1 年生の 1 クラス 33 人に、英単語を他の情報と関連づけて覚える方法を教えた実践です。研究者が方法を教え、英語の先生が普段の授業で使うのを支えました。4 月 → 7 月 → 翌年 2 月と、関連づけの覚え方の使用が続けて増えていました。話を聞いた生徒のうち、使うようになった生徒は、それまでの自分の覚え方の問題に気づいていました。教えなかったクラスとの比較はありません。

梶原・芦沢(2020) ── 公立高校 2 年生 10 人への 1 時間の授業の報告です。授業の前に聞くと、接辞に目を向けて単語を覚えている生徒は 0 人でした。授業では「コンタクト」「コンセント」というカタカナ語から、con が「いっしょに」の意味だと予想させました。そのあと conversation(会話)や concert(演奏会)に当てはめます。授業後の質問では、10 人中 6 人が 6 問中 5 問以上正しく答えました。1 クラス・1 時間・比べる群なしの報告です。

Oikawa, Sugawara & Uchihara(2025)

Hayashi & Murphy(2011) ── 日本人の英語学習者と英語の母語話者を比べました。単語を部品に切り分ける課題は、日本人のほうが上手でした。著者は授業で習った影響と見ています。日本人では、接辞を使って語を作る力が語彙の量と正の関係にありました(相関。人数と値は要旨に無いので書きません)。

Sasao & Webb(2017) ── 接辞の知識を測るテストを作った研究です。118 個の接辞の「形・意味・使い方」を測ります。日本の大学生 417 人の答えで問題を直し、30 以上の母語の 1,348 人で難しさの段階を決めました。部品の知識は「知っている・知らない」ではなく、接辞ごとに段階がある、という考え方です。

研究のまとめ(メタ分析)

Goodwin & Ahn(2013) ── 英語を母語とする学齢期の子どもに、語の部品を教えた研究 30 本のまとめです。全体の差は d=0.32(小〜中)でした。d は差の大きさの目安で、0.2 が小・0.5 が中・0.8 が大です。中身を見ると、語彙 0.34・つづり 0.30・単語を読む 0.59 でした。一方、文章の読解と読む速さには、はっきりした差が出ませんでした。学年が上がるほど差は小さくなっていました。

Bowers, Kirby & Deacon(2010) ── 就学前〜中 2 相当の子どもの研究 22 本のまとめです。対象の言語は要旨に書かれていません。部品の指導は役に立ち、読むのが苦手な子で特に役立っていました。また、ほかの読み書きの指導と組み合わせたほうが、単独より大きな差が出ました(値は要旨に無いので書きません)。

Chen ら(2026) ── こちらは英語を外国語・第二言語として学ぶ人への指導のまとめです。差は語の部品の知識 g=1.00・語彙 0.77・読解 0.91 でした。年齢による差は見られませんでした。ただし研究ごとのばらつきが大きく、研究の数も多くないので、著者自身が慎重に読むよう書いています。

ほかの覚え方と比べると

Wei(2015) ── 中国の大学 1 年生 121 人を、くじで 3 群に分けました。「語の部品の方法」「キーワード法(語呂合わせのように似た音の母語に結びつける方法)」「自分のやり方」です。直後と 9 日後に調べると、訳を書くテストでキーワード法がほかの 2 群より下でした。つづりを見分けるテストでは、3 群に差はありませんでした。部品の方法と自分のやり方の差は、要旨には書かれていません。

日本の中高生の勉強にあてはめると

単語帳は捨てない。部品は「2 周目の目印」に。【推論】Oikawa らの研究では、語彙が多い人ほど部品の方法で得をしました。ただしこの研究は、単語帳の何周目に使うかを比べたものではありません。知っている語が少ないうちは、部品を見つける材料もありません。単語帳の 1 周目は意味を覚えることに集中します。2 周目から「この語に知っている部品は?」と探すのが、研究の条件に近い使い方です。単語帳の回し方は 単語帳の使い方 にまとめています。

始めどきは中 3〜高 1 が目安。【推論】内田(2021)で関連づけの覚え方と語彙の関係が見えたのは中 3 以降でした。著者も「ある程度学習が進んだ段階」での有効性を示唆しています。ただし相関なので、中 3 から始めれば伸びると確かめたわけではありません。中 1・中 2 は基本の単語を増やす時期です。play → player、happy → unhappy のような身近な部品から始めます。

まず覚えるのは「品詞を決める接尾辞」。-tion・-ment・-ness は名詞、-ful・-ous・-able は形容詞、-ize・-en(shorten など)は動詞です。私立大の語形変化問題(succeed の名詞形は?)や、英作文の品詞のまちがい(× He is success.)に直接つながります。高校生は 語形変化と派生語 の小テストで確かめます。

長文の知らない単語は「部品 → 文脈」の順で予想する。共通テストのリーディングには辞書がありません。【推論】知らない語が出たら、部品で大まかな向き(否定か・人か・動詞か)を決め、前後の文で確かめます。部品だけで決めると外れることがあります(下の誤解を参照)。

語源の「物語」は楽しみとして。salary(給料)はラテン語の「塩(sal)」から来た語とされる、のような話は覚えるきっかけになります。ただし「兵士に塩で給料を払った」という有名な話は、確かな記録がありません。【推論】ただ、このページで引いた研究が扱ったのは接頭辞・接尾辞・語根の知識です。語源の物語そのものを、単語テストの点で比べた研究は引けていません。語源の本は、単語帳のあとに読む副読本ぐらいに考えておきます。

漢字の部首と似ている。【推論】「さんずい(氵)は水に関係」と同じように、「-ology は学問」「bio- は生命」と覚えられます。漢字の部首で意味を予想した経験は、英単語でもそのまま使えます。

よくある誤解

「語源で覚えれば単語帳はいらない」 日本の大学生の研究では、語彙がすでに多い人ほど、部品の方法で得をしていました(Oikawa ら 2025)。【推論】部品の知識は、単語帳で覚えた語が土台になって使えるものと考えられます。

「部品が分かれば、どんな単語も意味が分かる」 部品どおりにならない語があります。invaluable は「価値がない」ではなく「とても貴重な」です。inflammable は「燃えない」ではなく「燃えやすい」です。Oikawa らでも、意味が部品から透けて見える語のほうが思い出しやすい結果でした。予想したら、訳で確かめるまでを 1 セットにします。

「語の部品を教われば、長文がすぐ読めるようになる」 英語を母語とする子どもの研究のまとめでは、語彙とつづりに差が出ました。しかし文章の読解には差が出ませんでした(Goodwin & Ahn 2013)。英語学習者のまとめ(Chen ら 2026)では読解にも差が出ています。ただ、研究の数が少なくばらつきも大きいと著者が書いています。

「語呂合わせと語源は同じ」 語呂合わせに近いキーワード法は、似た音の母語に結びつける方法です。語源は、英語の中の部品の意味を使う方法です。中国の大学生の Wei(2015)では、訳を書くテストでキーワード法が部品の方法より下でした。語呂合わせについては 語呂合わせと記憶術 にまとめています。

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