勉強法
集中と休憩 ── 何分ごとに休むか、休み時間に何をするか
一言で
「何分勉強して何分休むのが最適か」は、研究でまだ決まっていません。ポモドーロ(25 分勉強+5 分休憩)も、学生で確かめた研究はわずかです。 分かってきているのは休み方のほうです。新しいことを覚えた直後は、何もしないで静かに休むほうが記憶が残りやすい、という研究があります。休憩中にスマホや SNS を使うと、その分が下がった実験もあります。 区切りは始める前にタイマーで決めておくと、疲れや気の散りが少なかったという研究があります。
今日からやること
- 勉強を始める前に、区切りをタイマーで決める。学校と同じ「50 分+10 分」か「25 分+5 分」のどちらかでよい。何分がよいかは研究でまだ決まっていないので、続けやすいほうで
- 新しい単語や公式を覚えた直後の休憩は、目を閉じて座るか、ぼんやり窓の外を見る。研究では 8〜10 分だった。スマホは見ない
- 休憩は、立って水を飲む・体を伸ばす・トイレに行く。スマホと SNS は、その日の勉強が全部終わってからにする
何が分かっているか
「集中は 15 分しかもたない」は本当か
Wilson & Korn(2007) 「講義が始まって 10〜15 分で学生の注意が落ちる」という説があります。その元になった研究を、ノート・観察・自己報告・体の測定に分けて調べ直しました。 結果は、この説を支える根拠はほとんどない、というものでした。多くの研究は、学生ひとりひとりの違いを考えていませんでした。
Ariga & Lleras(2011) 画面の変化を見張り続ける課題の実験です。見張り課題は、時間がたつほど成績が落ちることが知られています。
- 比べたもの:始めに数字を覚え、最後に思い出す条件と、課題の途中でときどきその数字を思い出す条件
- 結果:最後にだけ思い出す条件では、見張りの成績が時間とともに急に下がった。途中で短く別のことに切り替えた条件では、この低下が起きなかった
- 人数と課題の長さは要旨に無いので書きません
著者は、同じ目標を長く持ち続けると頭がその目標に「慣れてしまう」と考えています。短く離れて戻ると、慣れがリセットされるという説明です。
短い休憩で何が変わるか
Albulescu ら(2022) 作業の合間の短い休憩(マイクロブレイク)の実験をまとめたメタ分析です。メタ分析は、多くの実験結果を合算する研究です。22 のグループ・2,335 人が入っています。
- 活力が上がる:d = .36(小さいが確かな差)
- 疲れが減る:d = .35(小さいが確かな差)
- 作業の成績:d = .16 で、確かな差とはいえない
成績の差が出たのは、頭をあまり使わない作業だけでした。また、休憩が長いほど成績の上がり方が大きくなっていました。頭を使い切る作業からの回復には、10 分より長い休憩が要るかもしれない、と著者は書いています。
区切りを先に決めるか、自分で決めるか
Biwer, Wiradhany, oude Egbrink & de Bruin(2023)
- 対象:オランダの大学生 87 人。ふだんの自習を 1 日だけ
- 比べたもの:好きなときに休む(35 人)/24 分勉強+6 分休憩(ポモドーロ型、25 人)/12 分勉強+3 分休憩(27 人)
- 結果:好きなときに休む群は、勉強もひと続きの休憩も長くなった。この群は疲れと気の散りが多く、集中と意欲が低めだった
- ただし、終えた課題の量と、使った頭の労力は 3 群で差がなかった
著者のまとめはこうです。決めた区切りで休むほうが、同じ量をより短い時間で、いい気分で終えられたようだ。ポモドーロ型と 12 分+3 分の間に大きな違いがあったとは、要旨には書かれていません。
休憩中に何をするか
Dewar, Alber, Butler, Cowan & Della Sala(2012) 参加者は 2 つの物語を聞きました。一方の後は10 分間、起きたまま静かに休みました。もう一方の後は 10 分間、間違い探しのゲームをしました。 静かに休んだ後の物語のほうが、15〜30 分後にも 7 日後にもよく覚えていました。途中で思い出させなくても、7 日後の差は出ています。参加者の年齢と人数は要旨に無いので書きません。
Humiston, Tucker, Summer & Wamsley(2019) 同じ研究室の前の実験を、手順を事前に公開してやり直しました。今回は有意な差が出ませんでした。 一方、似た 10 研究をまとめると、言葉の記憶に小〜中くらいの利点(d = 0.38)がありました。利点が出るのは、外の作業にも空想にも頭を向けていないときだ、と著者は考えています。ふだん空想しがちな人ほど、静かに休んでも記憶の残り方が低めでした(追加で調べた相関です)。
Martini, Heinz, Hinterholzer, Martini & Sachse(2020) 若い大人が単語のリストを覚え、すぐに思い出しました。その後、8 分間静かに休むか、8 分間 SNS を使うかに分かれています。 少し後のテストでも 1 日後でも、SNS を使った後のほうが記憶が低い結果でした。人数は要旨に無いので書きません。
Kang & Kurtzberg(2019)
- 対象:414 人。文字を並べ替えて単語を作る、頭を使う課題
- 比べたもの:課題の途中で、スマホで休憩・パソコンで休憩・紙で休憩・休憩なし。くじで分けた。休憩の中身は「買い物リストの品を選ぶ」で同じ
- 結果:スマホで休憩した人は、ほかの休憩の人より後半に時間がかかった。解けた数も少なかった
日本の中高生の勉強にあてはめると
学校の「50 分授業+10 分休み」 中学校の授業時間は、法令(学校教育法施行規則)で 1 単位時間を 50 分として数えます。高校も、1 単位時間 50 分が標準です。 この区切りは研究で「最適」と決まったものではありません。ただ、毎日体が慣れている区切りなので、家や自習室でもそのまま使えます。
部活から帰った後 疲れた日は 25 分+5 分の短い区切りで 2 回だけ、と決めます。Biwer ら(2023)では、12 分+3 分の短い区切りでも、終えた量はほかの群と変わりませんでした。区切りを決めずに始めると、休憩が長引きやすくなります。疲れた日に限って調べた研究ではないので、ここは【推論】です。
英単語や社会の用語を覚えた直後 覚えた直後の数分は、目を閉じて座るか、ぼんやりします。Dewar ら(2012)と Humiston ら(2019)の「静かな休み」に近い過ごし方です。 同じ休憩でも、SNS を使うと、覚えた分を残しにくくなる方向の結果です(Martini ら 2020)。動画は調べていませんが、同じように避けておくのが無難です。
塾の自習室・図書館 自習室では、スマホをかばんに入れたまま休憩します。席を立ってトイレに行く・水を飲む、で十分です。スマホの置き場所の工夫は スマホと勉強 にまとめています。
休日の長時間(テスト前の土日など) 【推論】50 分+10 分を何回もくり返すと、後半は疲れがたまりやすいと考えられます。Albulescu ら(2022)では、休憩が長いほど成績の上がり方が大きくなっていました。 午前と午後の間に、30 分以上の長めの休憩を 1 回入れる、という使い方が考えられます。昼寝を入れる場合は 睡眠と一夜漬け も見てください。
公務員試験を受ける社会人 仕事のあとに 2 時間勉強するなら、50 分+10 分を 2 回にします。休憩中にスマホで仕事のメールを見るのは、Kang & Kurtzberg(2019)のスマホ休憩に近い形です。その分、後半が遅くなると考えられます。メールは勉強が終わってからにします(公務員試験の勉強法)。
よくある誤解
「人間の集中力は 15 分しかもたない」 Wilson & Korn(2007)では、この説を支える根拠はほとんどありませんでした。30 分で集中が切れるのは、あなたの集中力が特別に弱いからとは限りません。区切りを決めずに始めていることも一因と考えられます。
「ポモドーロ(25 分+5 分)が科学的に最適」 学生で直接確かめた研究は少なく、このページで引けたのは Biwer ら(2023)の 1 本です。そこでも、終えた量は好きなときに休んだ群と差がありませんでした。差が出たのは、疲れ・集中・意欲の感じ方です。 Biwer ら(2023)で差が出たのは、先に区切りを決めるかどうかのほうでした。確かめたのは 24 分と 12 分の区切りで、50 分は調べていません。25 分でも 50 分でも、先に決めておくのがこの研究に近い使い方です。
「休憩中にスマホを見ればリフレッシュできる」 Kang & Kurtzberg(2019)では、スマホでの休憩は、紙やパソコンでの休憩より後半の成績が低めでした。Martini ら(2020)では、SNS の 8 分で覚えた単語の残り方が下がりました。スマホでの休憩は、頭の回復になりにくいという結果です。
「休憩は短いほど、時間の無駄が少ない」 Albulescu ら(2022)では、休憩が長いほど成績の上がり方が大きくなっていました。短い休憩では、頭を使う作業の成績に確かな差は出ていません。著者は、頭を使い切る作業からの回復には 10 分より長い休憩が要るかもしれない、と書いています。【推論】数学の応用問題のあとは、10 分以上しっかり休むのがよいと考えられます。
このサイトでの使い方
- 小テスト 1 回(10 問)を、25 分または 50 分の区切りの「最後の仕事」にします。解き終わったら休憩です
- 例:立体の表面積と体積 の解説を読む → 閉じて小テスト → 休憩の最初の数分は目を閉じて休む
- 次の区切りの最初に、「前に間違えた型をやり直す」から始めます。休憩をはさんで思い出すことになり、テスト効果 と 間隔反復 の両方を使えます
- 鎌倉時代 のような用語の多い単元は、覚えた直後の静かな休みを特に意識します
注意点
- 休憩の研究は、ほとんどが海外の大学生か大人で、数分〜1 日の短い実験です。日本の中高生で休み方を比べた研究は、このページではまだ引けていません
- Ariga & Lleras(2011)は画面を見張る実験で、勉強の課題ではありません。「短く切り替えると注意の低下を防げる」が、勉強にも同じように当てはまるかは確かめられていません
- 静かに休む効果は、事前登録の追試では有意になりませんでした。まとめると小〜中くらいの利点がある、というのが今の状態です
- 休憩の長さ・区切りの長さの「最適な分数」は、研究ではまだ分かっていません
- 集中できない状態が何週間も続く・昼間に眠くて仕方がない、という場合は、家の人や学校の先生に相談してください
引いた論文
番号は docs/参考文献ログ_追加_習慣2.md の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。
- #280 Wilson, K., & Korn, J. H. (2007). Attention during lectures: Beyond ten minutes. Teaching of Psychology, 34, 85–89. https://doi.org/10.1080/00986280701291291
- #273 Ariga, A., & Lleras, A. (2011). Brief and rare mental “breaks” keep you focused: Deactivation and reactivation of task goals preempt vigilance decrements. Cognition, 118, 439–443. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2010.12.007
- #278 Albulescu, P., Macsinga, I., Rusu, A., Sulea, C., Bodnaru, A., & Tulbure, B. T. (2022). “Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLOS ONE, 17(8), e0272460. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0272460
- #279 Biwer, F., Wiradhany, W., oude Egbrink, M. G. A., & de Bruin, A. B. H. (2023). Understanding effort regulation: Comparing ‘Pomodoro’ breaks and self-regulated breaks. British Journal of Educational Psychology, 93(S2), 353–367. https://doi.org/10.1111/bjep.12593
- #274 Dewar, M., Alber, J., Butler, C., Cowan, N., & Della Sala, S. (2012). Brief wakeful resting boosts new memories over the long term. Psychological Science, 23, 955–960. https://doi.org/10.1177/0956797612441220
- #275 Humiston, G. B., Tucker, M. A., Summer, T., & Wamsley, E. J. (2019). Resting states and memory consolidation: A preregistered replication and meta-analysis. Scientific Reports, 9, 19345. https://doi.org/10.1038/s41598-019-56033-6
- #276 Martini, M., Heinz, A., Hinterholzer, J., Martini, C., & Sachse, P. (2020). Effects of wakeful resting versus social media usage after learning on the retention of new memories. Applied Cognitive Psychology, 34, 551–558. https://doi.org/10.1002/acp.3641
- #277 Kang, S., & Kurtzberg, T. R. (2019). Reach for your cell phone at your own risk: The cognitive costs of media choice for breaks. Journal of Behavioral Addictions, 8, 395–403. https://doi.org/10.1556/2006.8.2019.21
参考資料(法令・公的な資料)
- 学校教育法施行規則 別表第二(中学校の授業時数。「この表の授業時数の一単位時間は、五十分とする。」)。e-Gov 法令検索で確認
- 文部科学省「授業時数等に関する学校教育法施行規則及び学習指導要領の規定」(高校は 1 単位時間 50 分・35 単位時間で 1 単位が標準)。https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1399930.htm