勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

面接の準備 ── 想定問答を覚えるか、話す練習をするか

一言で

入試の面接の準備を直接比べた研究は、まだ多くありません。研究が多いのは就職や昇任の面接です。 そこから分かることは 3 つです。決まった質問と基準で評価する面接のほうが、予測の力が高いこと。準備の講習を受けたり、役になりきって練習したりした人ほど評価が高いという関係があること。答えを整理して話せる人ほど評価が高いことです。 このページでは、答えの文章を丸ごと覚えるより話す中身の骨組みを覚えて声に出す練習をくり返す形を勧めます。ただしこれは研究からの推論で、丸暗記と比べた実験はありません。

今日からやること

  1. よく聞かれる 5 問の答えを、箇条書き 3 行で書く。「志望理由」「高校(中学)で力を入れたこと」「自分の長所と短所」「入学後にしたいこと」「最近気になったニュース」です。文章にはしません
  2. その 3 行を見ないで、1 問 1 分で声に出して答える。スマホで録音して聞き直し、言葉につまった所に印をつけます。1 日 2 問ずつ回します
  3. 週に 1 回、人に面接官役をしてもらう。先生・家族・友達に、5 問のほかに「なぜ?」を 1 回ずつ足して聞いてもらいます

3 つとも、下の研究から考えた段取りです。この手順そのものを実験で比べたわけではありません。

何が分かっているか

面接はどう評価されるか

McDaniel ら(1994) ── 就職の面接が、入社後の仕事ぶりをどれくらい予測するかを調べたメタ分析です。メタ分析は、多くの研究結果を合算する方法です。245 の係数、のべ 8 万 6 千人あまりをまとめています。 全員に同じ質問をし、決まった基準で採点する構造化面接のほうが、その場の流れで聞く面接より予測の力が高い結果でした。 「こういう場面であなたならどうするか」と聞く面接は、とりわけ予測の力が高くなっていました。

入試の面接でも、評価の観点や質問をあらかじめ決めておく大学・高校が多いと考えられます【推論】。そうであれば、聞かれる質問はある程度予想できます。つまり準備ができる、ということです。

面接の不安

Powell, Stanley & Brown(2018) ── 面接の不安と面接の評価の関係を調べたメタ分析です。全体の相関は −.19 でした。不安が強い人ほど評価がやや低い、という関係です。相関としては弱めですが、著者はこの分野では中くらいの大きさだとしています。 競争の激しい場面では、合否に関わりうるとも書いています。関係の強さは、不安の測り方や、模擬面接か本番かで変わっていました。

McCarthy & Goffin(2004) ── 面接の不安を測る質問紙を作った研究です。大学生 212 人で作り、就職の応募者 276 人で確かめました。 面接の不安を 5 つに分けています。話すこと・見た目・人とのやりとり・うまくやれるか・体や動きに出る反応です。 5 つを合わせると、面接の評価をある程度予測しました(重相関 .34)。不安を 5 つの面に分けて考えられる、ということです。

準備と練習の研究

Maurer ら(2001) ── 大きな市の警察と消防で、昇任試験を受けた 213 人の研究です。国は要旨に無いので書きません。「こういう場面でどうするか」を聞く面接でした。 仕事の知識やがんばる気持ちなどを考えに入れても、面接の準備講習に自分から参加した人ほど面接の評価が高い関係でした。 講習とは別に、勉強会への参加やロールプレイ(役になりきって練習すること)も、評価の高さと関係していました。 講習を受けたり準備をしたりした人ほど、答えを整理して話す傾向がありました。その整理された話し方が、評価の高さと結びついていました。

この研究は、参加するかどうかを本人が選んでいます。講習が原因で評価が上がったのか、もともと準備熱心な人が参加したのかは、はっきり分けられません。

Tross & Maurer(2008) ── 144 人を、中身の量がちがう 3 段階の準備講習に分けた実験です。経験について聞く構造化面接で評価しました。

講習の中身が多いほど、そのあとの面接の評価が高くなりました。差の一部は、面接についての知識が増えたことで説明できました。

Laurence ら(2013) ── オーストラリアのアデレード大学医学部に 2007 年に出願した 1,097 人の調査です。適性試験と面接(口頭の評価)の準備について聞きました。 面接の準備を 1 つ多くするごとに、合格の見込みが上がる関係でした(オッズ比 1.36)。オッズ比は「受かる見込みの比」が何倍かの目安で、確率の倍率とは少しちがいます。 特に合格と強く結びついていたのは、自分の経歴書を見直して内容を頭に入れておくことでした(オッズ比 9.73。幅は 2.97〜31.88 と広めです)。大学の課程の中身を調べておくことも、合格と結びついていました。 ただしこれは 1 回の調査で、準備が合否の原因かどうかまでは分かりません。著者は、準備できる人が限られると公平でなくなる、という心配も書いています。

Ebrahimi ら(2019) ── 人前で話すことへの不安を減らす方法の、くじで分けた実験 30 本(1,355 人)のメタ分析です。多くは、考え方や行動にはたらきかける方法(認知や行動の療法)でした。 全体の効果量は 0.74 で、不安ははっきり下がっていました。効果量は差の大きさの目安で、0.5 で中くらい、0.8 で大きい差とされます。 ただし差が大きかったのは、本人が答える質問紙での不安です。体の反応(生理的な測定)や、ふるまいの評価では、差が小さくなりました。

緊張の受け止め方

スピーチの前に緊張を「わくわくしている」と言いかえた人は、落ち着こうとした人より評価が上でした(Brooks 2014)。くわしくは 本番の緊張 にまとめています。

研究がまだ足りないところ

日本の高校入試・大学入試の面接で、「どう準備すると評価が上がるか」を比べた研究は、このページではまだ引けていません。 「答えを丸暗記する」と「骨組みだけ覚えて話す練習をする」を直接比べた研究も見つかっていません。ここから下の勧め方は、上の研究からの推論をふくみます。

日本の中高生の勉強にあてはめると

どんな面接があるか ── 高校入試の推薦では、個人面接を行う学校が多くあります。東京都立高校では、推薦入試の個人面接が原則すべての学校で行われます(高校入試のしくみ)。 大学入試では、令和 9 年度(2027 年春入学)から、総合型選抜と学校推薦型選抜で面接が原則必須になりました。集団討論やプレゼンテーション、口頭試問の形もあります(大学入試のしくみ)。形式は学校ごとにちがうので、募集要項で先に確かめます。

想定問答は「文章」ではなく「骨組み」で覚える ── 1 問について、覚えるのは 3 つだけにします【推論】。

例「志望理由は?」→「〇〇を学びたいから」「部活で△△をしたとき□□に気づいた」「入学後は◇◇の授業でくわしく学びたい」 文章を一字一句覚えると、1 語忘れたときに続きが出なくなりやすいと考えられます【推論】。骨組みで覚えておけば、言い回しが変わっても中身は言えます。Maurer ら(2001)で評価と結びついていたのも、「答えが整理されていること」でした。

覚えるべきものはある ── 骨組みの材料は、しっかり頭に入れておきます。Laurence ら(2013)で合格と強く結びついていたのは、自分の経歴書を見直して内容を頭に入れておくことでした。 入試なら、出願書類(志望理由書・活動報告書・調査書の内容)に書いたことです。面接官は書類を見ながら質問します。書類と話がずれないよう、出す前にコピーを取っておきます【推論】。 大学の学部の授業内容や、高校の特色も調べておきます。

声に出す練習と録音 ── 頭の中で答えを考えるのと、声に出して言うのは別の練習です。1 問 1 分で声に出し、録音して聞き直します【推論】。 聞き直すときの観点は 3 つです。

止まった所は、その骨組みの覚え方が足りない所です。そこだけもう一度、骨組みを見ずに書き出します(テスト効果)。

人に面接官をしてもらう ── Tross & Maurer(2008)で評価が最も高かったのは、答え方の練習まで含む講習でした。学校の先生に模擬面接を頼めるなら、早めに頼みます。 家族や友達に頼むときは、質問のリストを渡し、答えのあとに「なぜ?」「具体的には?」を 1 回足してもらいます。本番の面接では、答えをさらに掘り下げる質問がよくあるからです【推論】。 終わったら、「よかった所 1 つ・直す所 1 つ」を紙に書いてもらいます。

1 週間の回し方(一例) ── 面接まで 1 か月ある場合の一例です【推論】。

聞かれそうな質問が 20 問を超えたら、似た質問をまとめます。「長所」と「力を入れたこと」は、同じ経験で答えられることが多いからです。

集団討論 ── 人の意見を聞いてから、自分の意見をつなげる練習が要ります。友達 3〜4 人で、ニュースの話題を 1 つ決めて 15 分話す練習が一例です【推論】。進め方の型は、公務員試験向けですが 面接の答え方 の集団討論の節が参考になります。

緊張への備え ── 面接の不安には 5 つの面がありました(McCarthy & Goffin 2004)。どれが強いかで、備え方を変えます【推論】。

いつから始めるか ── 総合型選抜は 9 月から出願が始まります(大学入試の日程)。志望理由書を書くときに、面接の骨組みも一緒に作ると二度手間が減ります【推論】。高校入試の推薦なら、試験(東京都なら 1 月下旬)の 1〜2 か月前から週 1〜2 回の練習が一例です【推論】。

公務員試験の面接 ── 面接カードの書き方と、よく聞かれる 40 問は 面接の答え方 にあります。筆記の配点より面接の配点が大きい自治体もあるので、1 次試験の前から準備します。

よくある誤解

「面接はその場の人柄で決まるので、準備しても意味がない」 Maurer ら(2001)・Tross & Maurer(2008)では、準備の講習や練習が面接の評価の高さと結びついていました。決まった質問で評価する面接(McDaniel ら 1994)なら、質問はある程度予想できます。

「想定問答を完璧に暗記すれば大丈夫」 丸暗記と骨組みの練習を比べた研究はありません。ただ、評価と結びついていたのは「答えの整理」や「役になりきった練習」でした(Maurer ら 2001)。暗記だけで終えず、声に出して人に聞いてもらう練習まで進めるのがよいと考えられます【推論】。

「緊張しない人のほうが評価が高い」 不安と評価の関係は −.19 で、相関としては弱めでした(Powell ら 2018)。不安が強くても評価の高い人は少なくない、と読めます【推論】。緊張をゼロにするより、緊張しても話せるだけの練習をしておくほうが現実的だと考えられます。

「不安を減らす練習をすれば、話し方もうまくなる」 Ebrahimi ら(2019)では、不安は下がりました。ただ、ふるまいの評価での差は、本人の感じ方の差より小さめでした。不安への対策と、話す練習は別に用意するのがよいと考えられます【推論】。

このサイトでの使い方

このサイトには面接の練習機能はありません。関係するページを使って、準備の材料をそろえます。

  1. 志望する入試の形式を 大学入試のしくみ・高校入試のしくみ で確かめる
  2. 「最近気になったニュース」の材料は、社会科の単元で。たとえば大学受験なら 労働と社会保障 の小テストで、少子高齢化や年金の用語を説明できるかを確かめます
  3. 骨組みを覚えるときは、見ないで言えるかを確かめる(テスト効果)
  4. 小論文もある入試なら、小論文で書いた主張と面接の答えをそろえる(小論文の書き方の練習)
  5. 当日の緊張は 本番の緊張 で

注意点

引いた論文

番号は班別ファイル docs/参考文献ログ_追加_困ったとき.md の #(#216 は docs/参考文献ログ.md の番号。本文ではリンク先の記事の要約として触れるだけ)。DOI を開いて書誌を確認し、要旨(OpenAlex・Semantic Scholar・BMC の本文ページ)で内容を確かめています。