勉強法
現代文の読み方 ── 要約・接続語・自分への問いかけ
一言で
現代文(評論・説明文)の読み方は、センスだけではありません。読解方略(読むときの頭の使い方の工夫)として整理され、教えた研究もあります。 教えて差が出ているのは、要約する・自分で問いを立てて答えるといった読み方です。また、文章に原因・理由の接続語があると理解しやすい、という研究もあります。 ただし先生がクラス全体に教えた研究では、市販の標準的な読解テストの差は小さめでした。自分で毎回使うところまで練習して、はじめて読み方として身につくと考えられます。
今日からやること
- 評論は段落ごとに、余白へ「この段落は〜」と 15 字以内でメモする。具体例の段落は「例」とだけ書く
- 「しかし」「つまり」「たとえば」に丸をつける。「しかし」の後は筆者の主張が来やすく、「つまり」の後はまとめ、「たとえば」の後は例、と読み分ける
- 読み終えたら、設問を解く前に自分で問いを 1 つ作る(例「筆者は何と何を比べている?」)。答えを本文の言葉で 1 文にする
何が分かっているか
日本の中高生の研究
犬塚(2002) ── 説明文を読むときの工夫を、日本の研究で整理したものです。読解方略を 7 つに分けました。
- 意味明確化(分からない語や文の意味をはっきりさせる)
- コントロール(読む速さや読み方を調整する)
- 要点把握(大事なところをつかむ)
- 記憶(覚えようとする)
- モニタリング(分かっているか確かめる)
- 構造注目(段落や文章の組み立てに目を向ける)
- 既有知識活用(知っていることと結びつける)
中学生・高校生・大学生を比べた調査では、「要点把握」「構造注目」「既有知識活用」に学年の差がありました。著者は、これらが年齢とともに育つ読み方だと見ています(数字は要旨に無いので書きません)。
清河・犬塚(2003) ── 中学 2 年生の男子 1 人への個別指導の事例です。「読んで説明する役」と「それを確かめる役」を、指導者と生徒が交代しながら説明文を読みました。もう 1 人の指導者が、やりとり全体を評価しました。指導のあと、生徒の要約は要点と文章の組み立てに目を向けたものに変わりました。1 人の事例で、比べる相手はいません。
益川・白水・根本・一柳・北澤・河﨑(2018)
- 対象:高校生 18 人。大学入試センター試験の国語の過去問 2 題を、考えていることを声に出しながら解いた
- 結果:89% の生徒が、設問の順に本文の一部を読んでは答えていました。選択肢の多くは消去法で選んでいました。設問のうち内容理解をふまえた深い処理は 54%、単語どうしを照らし合わせる浅い処理は 15% でした
- 成績上位の生徒は、深い処理で答えた設問が多くありました。それでも、本文全体の理解をふまえた読み方までは起きていませんでした
要約・問いかけを教えた研究のまとめ
Rosenshine, Meister & Chapman(1996) ── 読んだ内容に自分で質問を作ることを教えた研究のまとめです。テストはすべて新しい文章でした。差の大きさの中央値は、市販の標準テストで 0.36、研究者が作ったテストで 0.86 でした。差の大きさの目安は 0.2 が小・0.5 が中・0.8 が大です。
Rosenshine & Meister(1994) ── 要約・質問・確認・予想を交代で声に出して読む「相互教授法」の研究 16 本のまとめです。差の大きさの中央値は、標準テストで 0.32、研究者が作ったテストで 0.88 でした。もとの研究(Palincsar & Brown 1984)は読解の苦手な中 1 が対象です。詳しくは 国語の勉強法 で紹介しています。
Stevens, Park & Vaughn(2019) ── 読むのが苦手な小 3〜高 3 相当の子どもに、要約や「中心の考え」を見つける指導をした研究のまとめです。群を比べた 23 本を合わせると、平均の差は 0.97 でした。ただし、市販の標準テストを使った研究が少ないことが限界として挙げられています。
Okkinga ら(2018) ── 研究者が少人数に教えるのではなく、先生がクラス全体に読解方略を教えた研究 52 本のまとめです。
- 読解の差:市販の標準テストで 0.19(とても小さい)、研究者が作ったテストで 0.43(小さい)
- 読み方を使う力の差:0.79(中くらい)
- 差が大きい傾向があった条件:「何のために読むか目標を決める」を含む指導・研究者が教えた場合・小 6〜中 2 相当の学年
Dunlosky ら(2013) ── 10 種類の勉強法をまとめた総説で、要約は「有用性:低」でした。一方、上の研究はどれも、要約や質問づくりのやり方を教えてから使わせています。【推論】自己流の要約で差が出にくいのは、このちがいのためと考えられます。
接続語の研究
Degand & Sanders(2002) ── 説明文の中の原因・理由を示す接続語(「なぜなら」「そのため」など)が、理解に役立つかを調べました。母語で読む場合も第二言語で読む場合も、接続語があるほうが理解しやすい結果でした(人数と数字は要旨に無いので書きません)。
日本の中高生の勉強にあてはめると
共通テストの国語。令和 9 年度の国語は 90 分・200 点です。近代以降の文章(現代文)が 3 問で 110 点、古文・漢文が各 45 点です(大学入試センターの出題教科・科目の資料。最新は公式で確認)。益川らの研究では、多くの生徒が設問ごとに本文の一部だけを読んでいました。【推論】設問ごとの部分読みは時間を節約できます。しかし「本文全体の主張に合うもの」を選ぶ設問では、全体をつかむ読み方が要ります。対策はこうです。
- 最初に設問をざっと見て、何を問われるかを知る(Okkinga らの「読む目標を決める」に近い)
- 本文を通して読み、段落ごとに 15 字メモ
- 設問に戻り、メモで該当する段落を探して読み直す
- 選択肢を見る前に、自分の言葉で答えを 1 文作ってから照らし合わせる
高校入試の説明文。空欄に入る接続語を選ぶ問題、段落の役割を問う問題がよく出ます。形式は都道府県でちがうので過去問で確かめてください。【推論】接続語の問題は、前後の文が「反対」「言いかえ」「例」「理由」のどれかを決めれば解けます。Degand & Sanders(2002)では、原因・理由の接続語が文章にあるだけで理解しやすくなりました。【推論】接続語は空欄補充のためだけでなく、読むときの目印にもなると考えられます。ふだんの読みで丸をつけます。
定期テストの評論。【推論】授業で読んだ評論は、ノートを読み返すより、教科書を閉じて段落ごとの要約を言えるか確かめます。言えない段落が、テストで点を落としやすい段落です。読み返しより思い出す練習のほうが残ることは テスト効果 にまとめています。
部活のある日の 15 分。【推論】新聞のコラムや新書の 1 節を 1 つ読み、「筆者の言いたいこと」を 50 字で書きます。毎日でなくても、週 3 回から始めればかまいません。要約の指導は、読むのが苦手な人を対象にした研究でも差が出ています(Stevens ら 2019)。
自分への問いかけの型。【推論】Rosenshine らの研究では、問いを作る型を教えていました。現代文なら、次の 4 つが使えます。
- 筆者は何と何を比べているか(対比)
- 筆者が反対している考えは何か(「しかし」の前)
- この具体例は、どの主張の例か
- 結論は何段落目にあるか
友達と読むなら役を交代する。【推論】清河・犬塚(2003)の「説明する役」「確かめる役」は、友達 2 人でもできます。片方が段落の要約を言い、もう片方が「本文のどこにそう書いてある?」と聞きます。交代しながら読む勉強会のコツは 友達と勉強する にまとめています。
よくある誤解
「現代文はセンス。練習しても変わらない」 読解方略は学年とともに育つ、という日本の研究があります(犬塚 2002)。教えると、読み方を使う力に中くらいの差が出ました(Okkinga ら 2018)。センスに見えるものの一部は、練習できる読み方です。
「要約は、とにかくたくさん書けばうまくなる」 要約は、10 種類の勉強法の中で有用性が低いとされました(Dunlosky ら 2013)。差が出た研究は、やり方を教えてから使わせています。「主語を入れる」「具体例は書かない」「15 字以内」のように決まりをつけて書きます。要約の型は 記述・要約と複数資料の読み取り にあります。
「設問を先に読んで、該当する所だけ探せば十分」 益川ら(2018)では、上位の生徒でも本文全体の理解をふまえた読み方は起きていませんでした。著者は、設問ごとに本文を読む解き方をセンター試験の形式が招いている可能性も指摘しています。【推論】部分読みで取れる設問もありますが、全体の主張を問う設問では迷いやすいと考えられます。
「読み方を習えば、すぐ模試の点に出る」 先生がクラス全体に教えた研究のまとめでは、市販の標準テストの差は 0.19 でした(Okkinga ら 2018)。とても小さい差です。読み方を使う力(0.79)ほどには、すぐ点に表れていません。
このサイトでの使い方
- 中学生は 説明文・小説の読み方 で、接続語の種類と段落の要旨のつかみ方を確かめます
- 高校生は 評論の読み方 で、対比・具体と抽象・接続語を練習します。要約は 記述・要約と複数資料の読み取り の型を使います
- 評論の語(抽象・具体・相対など)があやふやだと要約できません。評論頻出語彙と漢字 と 類義語・対義語・多義語 で、意味をすぐ言えるか確かめます
- 「なぜそう言えるのか」を自分に聞く読み方は 「なぜ?」を自分に問う、読んだ内容を人に説明する練習は 人に説明する・自分に説明する にまとめています
- 読む量を増やす話は 国語の勉強法 の「たくさん読む」を見てください
注意点
- 要約・問いかけ・相互教授法のまとめの多くは、英語圏の小中学生が英語(母語)を読んだ研究です。日本語の評論で同じ大きさの差が出るとは限りません
- どのまとめでも、研究者が作ったテストでは差が大きく、市販の標準テストでは小さくなっています。入試は後者に近いと考えておくのが安全です
- 日本の研究は、方略の整理(犬塚 2002)・1 人の事例(清河・犬塚 2003)・18 人の思考発話(益川ら 2018)です。読み方を教えた群と教えない群で、現代文の点を比べた日本の中高生の研究は、このページではまだ引けていません
- 益川らの研究はセンター試験の問題で行われました。共通テストの国語は、複数の文章や資料を組み合わせた問題もあり、形式がちがいます
引いた論文
番号は参考文献ログの #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています(#424〜#430 は docs/参考文献ログ_追加_語学.md)。
- #428 犬塚美輪 (2002). 説明文における読解方略の構造. 教育心理学研究, 50(2), 152–162. https://doi.org/10.5926/jjep1953.50.2_152
- #429 清河幸子・犬塚美輪 (2003). 相互説明による読解の個別学習指導 ―対象レベル―メタレベルの分業による協同の指導場面への適用―. 教育心理学研究, 51(2), 218–229. https://doi.org/10.5926/jjep1953.51.2_218
- #430 益川弘如・白水始・根本紘志・一柳智紀・北澤武・河﨑美保 (2018). 思考発話法を用いた多肢選択式問題の解決プロセスの解明 ―大学入試センター試験問題の国語既出問題を活用して―. 日本テスト学会誌, 14(1), 51–70. https://doi.org/10.24690/jart.14.1_51
- #424 Rosenshine, B., Meister, C., & Chapman, S. (1996). Teaching students to generate questions: A review of the intervention studies. Review of Educational Research, 66(2), 181–221. https://doi.org/10.3102/00346543066002181
- #29 Rosenshine, B., & Meister, C. (1994). Reciprocal teaching: A review of the research. Review of Educational Research, 64(4), 479–530. https://doi.org/10.3102/00346543064004479
- #30 Palincsar, A. S., & Brown, A. L. (1984). Reciprocal teaching of comprehension-fostering and comprehension-monitoring activities. Cognition and Instruction, 1(2), 117–175. https://doi.org/10.1207/s1532690xci0102_1
- #426 Stevens, E. A., Park, S., & Vaughn, S. (2019). A review of summarizing and main idea interventions for struggling readers in grades 3 through 12: 1978–2016. Remedial and Special Education, 40(3), 131–149. https://doi.org/10.1177/0741932517749940
- #425 Okkinga, M., van Steensel, R., van Gelderen, A. J. S., van Schooten, E., Sleegers, P. J. C., & Arends, L. R. (2018). Effectiveness of reading-strategy interventions in whole classrooms: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 30(4), 1215–1239. https://doi.org/10.1007/s10648-018-9445-7
- #6 Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4–58. https://doi.org/10.1177/1529100612453266
- #427 Degand, L., & Sanders, T. (2002). The impact of relational markers on expository text comprehension in L1 and L2. Reading and Writing, 15(7–8), 739–757. https://doi.org/10.1023/A:1020932715838