勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

模試の結果の使い方 ── 判定より、まちがえた問題を見る

一言で

模試の判定と偏差値は、その日・その模試を受けた人の中での位置をもとにした数字です。それだけでは「次に何をするか」は決まりません。 次の行動を決めるのに使えるのは、まちがえた問題を原因ごとに分けることです。失敗の原因を「能力」ではなく「やり方」に置いた人のほうが、次はうまくいくと予想した、という実験があります。 結果の伝え方の研究では、注意が課題から「自分の評価」に向くほど、成績を上げる働きが小さくなる傾向が出ています。

今日からやること

  1. 返却の日に、まちがえた問題を 4 つに分けて数える。「知らなかった」「時間が足りなかった」「解けたのに落とした」「問題を読みちがえた」。判定を見たあとでかまいません。20 分ほどです
  2. 原因を「やり方」の言葉で 1 行書く。「英単語を 1 周しかしていない」「長文を時間を計って解いたことがない」のように。「才能がない」「頭が悪い」とは書かない
  3. 1 週間以内に、配点の大きい「あと一歩」の問題を解き直す。あわせて、次の模試までに使う教材と使い方を 3 行で書く

3 つとも、下の研究から考えた段取りです【推論】。この手順で模試の点を比べた研究は、このページではまだ引けていません。

何が分かっているか

日本の中高生の研究

中西(2020) ── 日本の高校 1・2 年生 153 人の研究です。社会科(現代社会か地理)の定期テストのあと、「結果の原因」と「次にどうするか」を自由に書いてもらいました。

失敗のあとは原因を「努力」に置きやすく、次の手も「環境を整える」など間接的なものが多めでした。人数以外の数字は要旨に無いので書きません。

中西(2004) ── 日本の高校生 80 人の研究です。そのうち 60 人に面接をして、成功または失敗の原因を「やり方」の面から自分で考えてもらいました。 面接のあと、自己効力感(できそうだという感覚)は成功の理由をやり方で考えた群のほうが有意に上がりました。比べた相手は、失敗の理由を考えた群です。 成功の理由を考えた群は、これから使う方略として、学習に直接関わるものを挙げる傾向もありました。

前田(1996) ── 日本の中学 1〜3 年生 652 人に、定期テストの結果が悪かった理由を 59 の質問で聞いた研究です。 生徒は、悪い結果を主に自分の側の、自分で変えられる原因(勉強のやり方と量)で説明していました。自分の外にある、変えられない原因は、あまり挙がりませんでした。 理由は 4 つのまとまりに分かれました。①勉強のやり方と努力 ②先生の教え方とテストの作り方 ③テストの条件 ④テストの受け方、です。 成績の低い男子は、先生の教え方やテストの作り方を理由にする傾向があり、学年が上がるほど強くなっていました。

鈴木(2012) ── 日本の高校生 493 人に、英語の定期テストの前後の勉強を聞いた質問紙の調査です。 テスト前にどんな勉強をしたかが、テスト後の見直しのやり方と結びついていました。テストを「学習の改善に使うもの」と考える生徒ほど、テストに前向きに向かう傾向もありました。 著者は、テスト後の見直しを促すには、テスト前の勉強のやり方から教えるのがよいと考えています。くじで分けた実験ではなく、関係を見た調査です。

鈴木(2011) ── 日本の中学 2 年生の数学で、テストの返し方を変えた実験授業です。答案と一緒にルーブリック(採点の基準表)を見せ、評価の基準と目的を伝えました。 ルーブリックを見た 2 つの群は、見なかった群(添削だけの群)とくらべて考え方にちがいがありました。「テストは自分の理解を確かめ、改善に使うもの」という考えが強くなっています。内発的動機づけ(中身への興味からのやる気)も高く、最終日の総合テストの成績も上でした。 一方、添削の有無による差は見られませんでした。ルーブリックに添削を足しても、上乗せは出ていません。人数は要旨に無いので書きません。

原因をどこに置くか(原因帰属)

結果の原因を何のせいだと考えるかを、心理学では原因帰属と呼びます。

Weiner(1985) ── 原因帰属の理論をまとめた論文です。原因は 3 つの軸で整理されます。①自分の内か外か ②変わりにくいか変わるか ③自分で変えられるか、です。 変わりにくい原因(例「才能」)のせいだと考えると、同じ結果がまたくり返すと予想しやすくなる、と述べています。

Anderson & Jennings(1980) ── 人を説得する課題の実験です。参加者を 2 通りに誘導しました。結果を「やり方」のせいだと考える人と、「能力」のせいだと考える人です。そのうえで、課題で失敗させました。 失敗のあと、やり方のせいだと考えた人のほうが、次は成功すると予想しました。練習すれば上達するとも予想しました。能力のせいだと考えた人は、上達を予想しませんでした。 著者は、やり方に原因を置いた人はやり方の良し悪しを見直し、変えればうまくいくと考えたのだろうとしています。

結果の伝え方(フィードバック)

Kluger & DeNisi(1996) ── 結果の伝え方(フィードバック)の研究をまとめたメタ分析です(607 の効果量・23,663 の観察)。平均では成績を上げる方向でした(d = 0.41)。 ところが、3 分の 1 以上の場合で成績を下げていました。注意が課題から離れて「自分」に向かうほど、伝える効果が小さくなる傾向でした。

Hattie & Timperley(2007) ── フィードバックの研究を整理した総説です。学習に大きく影響するが、プラスにもマイナスにも働くこと、種類と伝え方で違いが出ることをまとめています。数字は要旨に無いので書きません。

Butler(1988) ── 小学 5・6 年生の 12 クラスを、くじで 3 つの返し方に分けた実験です。点数だけ、一人ひとりへのコメントだけ、点数とコメントの両方です。 興味と成績が最も高かったのはコメントだけの群でした。点数だけの群と両方の群は、同じように興味と成績を下げる方向でした。 成績の高い子が点数を受けた場合は、また点数がつくと分かっているあいだは興味を保っていました。

振り返りを、次のやり方につなぐ

Chen ら(2017) ── 大学の統計学の入門の授業で、2 年分の学生をくじで 2 つに分けた実験です。一方の群は試験の前に毎回、どの教材をどう使うか、なぜそれが役立つかを考えて書きました。 この群は学習をよく振り返るようになり、教材の使い方もよくなりました。成績は、もう一方の群より平均で成績の段階(A・B など)の 3 分の 1 上でした。

Soicher & Gurung(2017) ── 試験のあとに振り返り用紙(試験の準備や結果をふり返る質問)を書かせる方法を、1 つの授業だけで試した研究です。86 人の学生でした。 3 回の試験の成績にも、最終成績にも、メタ認知の力にも差は出ませんでした。振り返りを書かせるだけでは足りない場合がある、という結果です。

計画 → 実行 → 振り返り → 次の計画、とつなげる考え方を「自己調整学習」と呼びます(Zimmerman 2002)。計画の立て方は 勉強の計画と部活の両立 にあります。

日本の模試にあてはめると

ここから先は、上の研究を日本の模試に当てはめた【推論】です。

偏差値の意味

偏差値は、平均点を 50、散らばり(標準偏差)を 10 に置きかえた数です。式にすると次のとおりです。

偏差値 = 50 + 10 ×(自分の得点 − 平均点)÷ 標準偏差

たとえば平均点 60 点・標準偏差 15 点の模試で 75 点なら、偏差値は 60 です。得点の分布が左右対称の山形(正規分布)に近ければ、偏差値 60 は上位およそ 16%、70 は上位およそ 2% です。 ここから分かることが 3 つあります。

散らばりと標準偏差のくわしい意味は 代表値・四分位数・箱ひげ図・分散・標準偏差 で学べます。

判定の意味

A〜E の判定は、各社が決めた基準でつけています。もとにするのは、その模試の志望者の中での位置や、過去の受験者の結果です。基準の説明は、成績表や各社の案内で確かめられることが多いです。 判定は「この時点で、この模試を受けた人の中では」という見込みです。Weiner(1985)の言葉でいえば、判定を「変わらない才能」の印と読むと、次も同じ結果になると思いやすくなります。

返却日から次の模試までの段取り

いつやること
返却の日(20 分)まちがえた問題に 4 つの原因の印をつけて数える。判定・偏差値は見てよいが、そこで止めない
その週のうち原因ごとに「やり方」を 1 行。例「知らなかった」→「古文単語を 1 周目の途中」
1 週間以内配点が大きく、あと一歩だった問題を答えを隠して解き直す(間違いノート)
次の模試の 2 週間前使う教材と使い方を 3 行で書く(Chen ら 2017 の形)

原因の分け方と、次の一手の例です。

原因よくある例次の一手の例
知らなかった単語・公式・用語単語帳や一問一答で、日をあけて思い出す(テスト効果)
時間が足りなかった最後の大問が白紙過去問を時間を計って解く。解く順番を決めておく(過去問の使い方)
解けたのに落とした計算ミス・マークのずれ検算の道を決める(計算ミスと見直し)
読みちがえた「正しくないもの」を選ぶ問題で正しいものを選んだ問題文の条件に線を引く練習

中西(2020)では、失敗のあとは「もっと努力する」「環境を整える」のような答えになりやすい傾向でした。1 行の中に、何を・どの教材で・どれくらいを入れます。

うまくいった問題の理由も書く

中西(2004)では、成功の理由をやり方で考えた群のほうが、自己効力感が上がりました。 「長文が前より解けた」なら、「毎日 1 題を時間を計って読んだから」まで書きます。続けるべきやり方が、自分で分かるようになります。

解説冊子は「コメント」として読む

Butler(1988)では、点数より一人ひとりへのコメントのほうが、興味と成績が高い結果でした。模試の解説冊子や記述模試の採点コメントは、点数ではなく「次にどうするか」の情報です。 記述模試なら、減点された答案と採点基準を並べて読みます。鈴木(2011)では、採点の基準表を見せた群のほうが、テストを改善に使う考えが強い結果でした。

高校受験の模試・公務員試験の模試

判定が悪かった日の気持ち

E 判定の日に落ちこむのは自然なことです。その日は判定の数字から離れ、4 つの原因を数えることだけをします。 気持ちの立て直し方は やる気と「頭は伸びる」という考え方 と 本番の緊張 にもまとめています。

よくある誤解

「E 判定だから、才能がない」 判定は、その時点・その模試の受験者の中での位置です。変わらない原因と読むと、次も同じ結果だと思いやすくなります(Weiner 1985)。Anderson & Jennings(1980)では、やり方に原因を置いた人のほうが、失敗のあとも上達を予想しました。

「偏差値が下がったから、力が落ちた」 偏差値は、平均点と散らばりで変わります。受けた人の集まりが変われば、同じ力でも数字は動きます。まちがえた問題の中身を見るまでは、何が変わったかは分かりません。

「模試は受けたら終わり。復習するひまがない」 鈴木(2012)では、テスト前の勉強のやり方が、テスト後の見直しと結びついていました。すべてを復習しなくても、「あと一歩」の問題だけを 1 週間以内に解き直すなら、時間は限られます。

「振り返りシートを書けば、それでよい」 Soicher & Gurung(2017)では、振り返り用紙を書かせるだけでは差が出ませんでした。Chen ら(2017)で差が出たのは、次の試験の前に、具体的な教材と使い方まで決めた場合です。別の研究なので、単純には比べられません。書いた計画を、次の 2 週間で実行するところまでが振り返りです。

このサイトでの使い方

  1. 模試で「知らなかった」に分けた問題は、該当する単元の小テストを解きます。たとえば古文単語なら 歴史的仮名遣いと古文単語、数学の二次関数なら 二次関数の最大・最小 です
  2. 「同じ型でもう 1 問」で数を変えた問題を解きます。すぐ解けたら「あと一歩」、解けなければ解説の「まずここだけ」に戻ります
  3. 間違えた型は端末内に記録され、次に開くと「前に間違えた型をやり直す」が出ます。1 週間後にここから始めます
  4. 高校受験なら 二次方程式 や be動詞(現在) のように、単元名で探せます。共通テストの時間と配点は 共通テストの時間割 で確かめられます

注意点

引いた論文

番号は班別ファイル docs/参考文献ログ_追加_テスト.md の #(#253 は docs/参考文献ログ_追加_習慣2.md)。DOI を開いて書誌を確かめ、要旨(日本語論文は J-STAGE の抄録)で内容を確かめています。