勉強法
勉強の計画と部活の両立 ── 「いつ・どこで・何を」を決めておく
一言で
「今週はがんばる」という計画は崩れやすいです。崩れにくいのは、「◯◯したら、△△を◯分」と場面と行動を結んだ計画です。 これを実行意図(もし〜なら、こうする、と決めておくこと)と呼びます。もう 1 つの要点は、人は自分の作業時間を短く見積もりがちなことです。前回かかった時間をもとに、計画に余白を残します。
今日からやること
- 平日の勉強を 1 つだけ「もし〜したら」の形で書く。例「部活から帰って着替えたら、机で英単語を 15 分」
- 次の定期テストの範囲を書き出し、前回のテスト勉強に実際にかかった日数を横に書く。足りない分は、部活の休養日から先に埋める
- 日曜の夜に 5 分、1 週間の計画と実際を見比べる。ずれた理由を 1 行で書き、次の週の「もし〜したら」を直す
何が分かっているか
「もし〜なら、こうする」と決める(実行意図)
Gollwitzer & Sheeran(2006) 94 の独立した検証をまとめたメタ分析(多くの実験結果を合算する研究)です。前もって「もし〜なら、こうする」を決めた人は、目標の達成に中〜大の差(d = 0.65)がありました。d は差の大きさを表す数字で、0.5 前後が「中くらい」の目安です。 働きとして、行動を始めやすくする・じゃまに負けにくくする、などが確かめられています。公務員試験の記事でも同じ研究を紹介しています(公務員試験の勉強法)。
Duckworth, Grant, Loew, Oettingen & Gollwitzer(2011)
- 対象:高校 2 年生 66 人。3 年の秋に大事な試験を控えていた
- 比べたもの:30 分の筆記で「望む結果とじゃまする障害を考えて if–then を書く」群と、ふつうの作文の群。くじで分けた
- 結果:前者は、試験の練習問題を 60% 以上多く解いた。試験の点そのものではなく、解いた量の差です
Duckworth, Kirby, Gollwitzer & Oettingen(2013) 経済的に苦しい家庭の多い学校の、5 年生 77 人の研究です。同じ「障害を考えて if–then を書く」方法を習った群と、「前向きに考える」方法を習った群を比べました。 前者は通知表の成績・出席・態度が改善しました。差の大きさは η² = .05〜.07 で、小さめから中くらいです。
Wang, Wang & Gai(2021) この「障害を考えて if–then を書く」方法のメタ分析です。21 研究・15,907 人で、差は g = 0.336(小〜中)でした。 書面だけで行うより、実験者とやりとりしながら行うほうが差は大きく出ています(0.465 対 0.277)。発表されにくい研究があるため、実際の差はもう少し小さいかもしれない、と著者が書いています。
目標は「具体的に・少し高めに」
Locke, Shaw, Saari & Latham(1981) 目標を立てることの研究をまとめた総説です。具体的で挑戦的な目標は、易しい目標・「ベストを尽くせ」・目標なしより、成績が高いことが多いと報告しています。 研究の 90% が、肯定または一部肯定の結果でした。進み具合が分かるフィードバックがあるときに、目標の効果が出やすいとも書いています。
人は自分の時間を短く見積もる(計画錯誤)
Buehler, Griffin & Ross(1994) 5 つの研究を行った論文です。人は自分の作業が終わる時間を、短く見積もりがちでした。勉強の課題でも、勉強以外の作業でも同じです。 見積もるとき、人は「これからの段取り」ばかり考え、過去の経験を使っていませんでした。研究 4 では、過去の経験を予測に結びつけるよう指示すると、この偏りが消えました。人数は要旨に無いので書きません。
自分で計画し、ふり返る力(自己調整学習)
自己調整学習とは、計画を立てる・やりながら点検する・ふり返って直す、を自分で回す学び方です。Zimmerman(2002)がこの考え方を整理しています。
Dignath & Büttner(2008) 小学校 49 研究・中学高校 35 研究をまとめたメタ分析です。自己調整学習を教える授業の平均の効果量は 0.69 でした。 この 0.69 は、成績・方略の使い方・意欲をまとめた平均です。研究者が教えた場合のほうが、ふだんの先生が教えた場合より大きく出ています。数学では、読み書きや他の教科より大きく出ました。
Theobald(2021) 大学生向けの自己調整学習の講座をまとめたメタ分析です(32 研究・4,106 人)。学業成績への差は g = .37 でした。 教えた方略の中で差が最も大きかったのは「計画と目標設定」(.55)です。くり返して覚える・整理するといった方略は .23 でした。
Dent & Koenka(2016) 小中高生で、計画や点検をする度合いと成績の関係を調べた研究を合算しました。相関は r = 0.20 で、小さめの関係です。 これは相関なので、計画したことが成績の差を生んだ、とまでは言えません。
日本の中学生のデータ
Suzuki, Morita & Okuda(2026) 全国学力・学習状況調査のデータを使い、中学生の生活と学力の関係を調べた研究です。学力と最も強く関係していたのは週末の勉強時間でした。次が勉強の計画、その次が平日の勉強時間です。 観察データなので、因果まではいえません。日本の中高生に if–then の計画をくじで割り当てて比べた研究は、このページではまだ引けていません。
日本の部活の時間(公的な資料)
東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査 2017」 部活の加入率は、中学生で約 8 割・高校生で約 7 割でした。活動日数は中高とも週 6 日がいちばん多く、6 日と 7 日を合わせると 5 割を超えます。 週あたりの活動時間の平均は、中学の運動部で 15 時間 18 分、高校の運動部で 16 時間 5 分でした。
同じ調査で、部活の長さと勉強時間の関係も見ています。データ集は「強い関連が見られない」とまとめています。 ただし高校 2 年で週 17.5 時間を超える生徒は、学習時間が 1.24 時間でした。週 10 時間以下の生徒は 1.72 時間です。データ集は「多重比較の結果、有意差あり」と注記しています。 これも同じ時点で聞いた調査です。部活が長いから勉強時間が短いのか、ほかの理由があるのかは区別できません。
文部科学省のガイドライン(2025 年 12 月) 学校の部活は、週 2 日以上を休養日にする基準です。1 日の活動は長くとも平日 2 時間程度・休みの日 3 時間程度で、週の合計は 11 時間程度までとされています。 この部分は高校の部活も対象です(高校の事情には配慮する、とされています)。実際の運用は学校や県で違うので、自分の部の予定表で確かめてください。
日本の中高生の勉強にあてはめると
ここの分数やページ数は一例です。上の研究から考えた使い方で、この形そのものを比べた研究ではありません。
部活のある平日 帰宅後は疲れていて、何をやるかを考えるのがおっくうになりがちです。だから決めるのは前の晩か朝にします。 例「夕飯を食べ終えたら、数学の問題集を 2 ページ」「風呂から出たら、英単語アプリを 10 分」。きっかけは、夕飯や風呂のように毎日くり返す場面にします。
部活の休養日 平日の休養日は、その週でまとまった時間がとれる日です。ここに「重い勉強」を置きます。数学の新しい単元や、定期テストの範囲の問題集などです。 週末の休養日は「週末の勉強時間」をとれる日です。Suzuki ら(2026)で学力との関係が最も強かった項目です(相関)。
定期テスト 2 週間前 多くの学校では、テスト前に部活が止まります。この期間を「全部ここでやる」と考えると、Buehler ら(1994)の言う見積もりの甘さが出やすいと考えられます。 前回のテストで、範囲を一通り終えるのに何日かかったかを思い出します。その日数で計画を立て、残りを部活がある時期から前倒しにします。日をあけてくり返す形にもなります(間隔反復)。 計画はあるのに手がつかないときは、先延ばし にまとめました。
大会前で部活が長い週 【推論】この週は、新しいことを進める計画を立てないほうが崩れにくいと考えられます。「通学電車で単語 15 分」のように、短くて決まった行動だけにします。「寝る前にノートを閉じて今日の授業を 3 分思い出す」も同じです(テスト効果)。 大会が終わった週に、遅れた分を取り戻す日を先に決めておきます。
塾がある日 塾の日は、塾の宿題が「その日の勉強」になります。計画表には塾の時間を先に書き込み、残った時間にだけ自分の勉強を置きます。 「塾から帰ったら、塾で間違えた問題だけ解き直す 15 分」のように、塾の後の行動も if–then で決めておきます。
受験学年(中 3・高 3) 親子調査では、中 3・高 3 で部活に入っている割合が下がっていました(7〜9 月の調査で、引退した生徒を含みます)。同じデータ集にある別の調査(2013 年)もあります。中 3・高 3 は部活の時間が短くなり、放課後の時間が長くなっていました。引退後に増えた時間を何に使うかは、引退前に決めておきます。時間の長さと中身の関係は 勉強時間の長さと質 にあります。運動をどれくらい残すかは 運動と勉強 にまとめています。 高校受験までの大きな流れは、高校入試の日程 や 過去問の使い方 とあわせて、本番から逆算して組みます。
よくある誤解
「計画はやる気がある人が立てるもの」 if–then の計画は、やる気が続かない日のための仕組みです。Gollwitzer & Sheeran(2006)では、じゃまに負けにくくなる働きも確かめられています。疲れた日に「何をやるか」を考えなくて済むのが利点です。
「1 日の予定を分単位で細かく作るほど良い」 細かい予定は、1 つずれると全部崩れがちです。研究で確かめられているのは「きっかけと行動を結ぶ」ことで、分刻みの予定表ではありません。【推論】まずは 1 日に 1〜3 個の if–then から始めるのがよいと考えられます。何個がよいかを比べた研究は、このページでは引けていません。
「部活をやめれば勉強時間が増える」 親子調査のデータ集では、部活の有無と勉強時間に強い関連は見られませんでした。差が出たのは、高校で部活が週 17.5 時間を超える生徒です(同じ時点の調査なので、因果までは言えません)。運動と成績の研究は 運動と勉強 にまとめています。部活を続けるかどうかは勉強時間だけでは決まりません。家の人や顧問の先生と相談してください。
「計画通りにいかなかったら、計画を立てた意味がない」 Buehler ら(1994)のとおり、人は見積もりを外すのがふつうです。ずれを記録して、次の計画に使うことが大事です。ずれた記録は、次の見積もりの材料になります。
このサイトでの使い方
- 単元ページの小テストは 1 回 10 問です。「もし〜したら、小テストを 1 つ」の行動の単位にちょうどよい長さです
- 例:「部活から帰って着替えたら、二次方程式(因数分解・平方根・解の公式) の小テストを 1 回」。間違えた型は、次の日に「前に間違えた型をやり直す」から始めます
- 英語は「通学電車に乗ったら、be動詞(現在) の小テスト」のように、場所をきっかけにします
- 内申点が関係する定期テストの意味は 内申点(調査書)のしくみ にまとめています。公務員試験の人は 学習計画 で、試験日からの逆算の例を見られます
- 勉強中のスマホの置き場所も、計画に入れておきます(スマホと勉強)
注意点
- if–then の研究の多くは、アメリカなど海外の大人や大学生が対象です。日本の中高生で、くじで分けて比べた研究は、このページではまだ引けていません
- Duckworth ら(2011)で増えたのは「解いた練習問題の量」です。試験の点の差ではありません
- 自己調整学習のメタ分析は、研究者が教えた場合のほうが大きく出ています。自分 1 人で試したときに、同じ大きさの差が出るとは限りません
- 部活の時間と勉強時間のデータは、2017 年のある時点の調査です。部活の地域展開(学校の部活を地域のクラブに移すこと)などで状況は変わっています。最新は一次資料で確認してください
- 睡眠を削って計画を詰めこまないでください。睡眠を削った翌日は、授業の理解とテストでつまずきが増えていた調査があります(睡眠と一夜漬け)
引いた論文
番号は docs/参考文献ログ.md(#34)・docs/参考文献ログ_追加_生活と本番.md(#208)・docs/参考文献ログ_追加_習慣2.md(#251〜)の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています。#253 は要旨に数字が無いので、考え方の紹介だけにしています。
- #34 Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. https://doi.org/10.1016/S0065-2601(06)38002-1
- #257 Duckworth, A. L., Grant, H., Loew, B., Oettingen, G., & Gollwitzer, P. M. (2011). Self-regulation strategies improve self-discipline in adolescents: Benefits of mental contrasting and implementation intentions. Educational Psychology, 31, 17–26. https://doi.org/10.1080/01443410.2010.506003
- #258 Duckworth, A. L., Kirby, T. A., Gollwitzer, A., & Oettingen, G. (2013). From fantasy to action: Mental contrasting with implementation intentions (MCII) improves academic performance in children. Social Psychological and Personality Science, 4, 745–753. https://doi.org/10.1177/1948550613476307
- #259 Wang, G., Wang, Y., & Gai, X. (2021). A meta-analysis of the effects of mental contrasting with implementation intentions on goal attainment. Frontiers in Psychology, 12, 565202. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.565202
- #251 Locke, E. A., Shaw, K. N., Saari, L. M., & Latham, G. P. (1981). Goal setting and task performance: 1969–1980. Psychological Bulletin, 90, 125–152. https://doi.org/10.1037/0033-2909.90.1.125
- #252 Buehler, R., Griffin, D., & Ross, M. (1994). Exploring the “planning fallacy”: Why people underestimate their task completion times. Journal of Personality and Social Psychology, 67, 366–381. https://doi.org/10.1037/0022-3514.67.3.366
- #253 Zimmerman, B. J. (2002). Becoming a self-regulated learner: An overview. Theory Into Practice, 41, 64–70. https://doi.org/10.1207/s15430421tip4102_2
- #254 Dignath, C., & Büttner, G. (2008). Components of fostering self-regulated learning among students. A meta-analysis on intervention studies at primary and secondary school level. Metacognition and Learning, 3, 231–264. https://doi.org/10.1007/s11409-008-9029-x
- #256 Theobald, M. (2021). Self-regulated learning training programs enhance university students’ academic performance, self-regulated learning strategies, and motivation: A meta-analysis. Contemporary Educational Psychology, 66, 101976. https://doi.org/10.1016/j.cedpsych.2021.101976
- #255 Dent, A. L., & Koenka, A. C. (2016). The relation between self-regulated learning and academic achievement across childhood and adolescence: A meta-analysis. Educational Psychology Review, 28, 425–474. https://doi.org/10.1007/s10648-015-9320-8
- #208 Suzuki, T., Morita, N., & Okuda, T. (2026). Bayesian network analysis of academic performance and its behavioral determinants among junior high school students in Japan. Discover Education, 5, 210. https://doi.org/10.1007/s44217-026-01222-5
参考資料(公的な資料)
- 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査 2017」── ベネッセ教育総合研究所(2018 年 7 月、8 月改訂)『データで考える子どもの世界 第 1 回 部活動について考えるデータ』p.2・3・5・6(p.5 の学年変化は同研究所「第 2 回放課後の生活時間調査」2013 年 11 月実施)。https://benesse.jp/berd/up_images/textarea/datachild/01%E9%83%A8%E6%B4%BB/0905%E9%83%A8%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF.pdf
- 文部科学省(2025 年 12 月)「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」──「Ⅳ 学校部活動の在り方」の「3 適切な活動時間・休養日等の設定」と「本ガイドラインの対象」。通知(スポーツ庁・文化庁・文部科学省、2025 年 12 月 22 日)https://www.mext.go.jp/sports/content/20251215-spt_oripara-000046180_00005.pdf (本文は鹿児島県教育委員会が掲載した写しで確認。2022 年 12 月の旧ガイドラインに代わるもの)