勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

友達と勉強する ── 協同学習で伸びる場面、伸びない場面

一言で

みんなで同じ目標に向かって学ぶ形を協同学習と呼びます。協同学習は、競争やひとりで学ぶ形より成績が上だった、というまとめ研究が多くあります。 ただし、集まれば伸びるわけではありません。だれが何をやったか見えないとき、人は手を抜きやすくなります。みんなで一緒に思い出そうとすると、ひとりずつ思い出した合計より少なくなります。 研究から考えると、勧めたい形は「まずひとりで解く → 問題を出し合う・説明し合う → 最後にひとりで確かめる」です。

今日からやること

  1. 勉強会は「先にひとりで 10 分」から始める。同じ範囲の問題を各自で解き、そのあと答えを照らし合わせて、ちがったところだけ説明し合う
  2. 役割を決めて、最後に 1 人ずつ確認テストをする。出題係・説明係を交代でやり、終わりに 5 問だけ各自で解いて点を見せ合う
  3. LINE で問題を出し合うなら、答えは自分で書いてから送る。1 日 1 人 3 問まで。答えは出題した人が翌日まとめて送る

何が分かっているか

日本の中高生の研究

橋本・松居(2019) ── 福井県の公立中学 3 年生 2 クラス 56 名の英語の授業です。5 つの文法項目について、片方が和文を英語に訳して言い、相手が○×をつけるペアのドリルをしました。 一方のクラスはペアを 3 回くり返し、もう一方はペア 1 回のあと 6 分間ひとりで練習しました。 並べ替えテストの平均点は、くり返したクラスが 12.64 → 15.54 点でした。ひとり練習のクラスは 12.29 → 13.79 点です。事後テストのクラス間の差は小さめでした(差の大きさ d = .34。0.2 前後が小さい差の目安)。 ただし、クラス単位の比較で、活動時間も約 14 分と約 10 分でちがいました。著者らも、人数が少なく一般化はできないと書いています。

橘・藤村(2010) ── 日本の高校生の数学の問題解決を、ペアで解くかひとりで解くかで比べました。 ペアの条件のほうが、事前から事後にかけて、解き方が質的に変わりやすい結果でした。複数の知識を関連づけて説明する解き方への変化です。 ペアで要素を関連づけて説明し合ったことが、事後の解き方と結びついていました。

協同学習のまとめ研究

Johnson ら(1981) ── 122 の研究をまとめたメタ分析です。メタ分析は、多くの実験結果を合算する研究です。「協力する」「競争する」「ひとりで取り組む」の 3 つの形を比べました。 協力する形は、競争やひとりの形より成績と生産性が上でした。 協力の中でも、グループどうしを競わせないほうが、競わせるより上でした。個人どうしの競争とひとりの形には、差がありませんでした。

Roseth, Johnson & Johnson(2008) ── 148 の研究のメタ分析です。対象は思春期前半(中学生前後の年代)です。11 か国・1 万 7 千人を超える生徒が入っています。 協力する形のほうが、競争やひとりの形より、成績が高く友人関係もよい結果でした。 協力する形では、成績が高いほど友人関係もよい、という関係が見られました。

Kyndt ら(2013) ── 1995 年以降の、実際の教室での研究に絞ったメタ分析です。小学校・中学校・高校・大学の研究 65 本をまとめています。 以前の研究と同じ向きで、協同学習は成績と学習への態度にプラスでした。 差の大きさは、教科・年齢・国や文化によって変わっていました(要旨に数値は無いので書きません)。

教え合い(ピアチュータリング)

Cohen, Kulik & Kulik(1982) ── 学校の個別指導プログラム 65 の評価をまとめた研究です。子どもが教える側を務めるプログラムも含まれています。 教わった生徒は、教わらなかった生徒より試験の成績が上で、その教科を好きになっていました。 教える側の生徒も、内容の理解が深まり、教科を好きになっていました。自己肯定感への影響は、教える側・教わる側ともほとんどありませんでした。

Rohrbeck ら(2003) ── 小学生の「仲間どうしで学ぶ」取り組みのメタ分析です。成績へのプラスの差があり、大きさは d = 0.33 でした。0.2 前後は小さい差、0.5 前後は中くらいの差の目安です。 差が大きかったのは、グループ全体の成果でごほうびが決まる形でした。自分の前回と比べて評価する形、生徒に任せる部分が多い形も、差が大きくなっていました。

Rosenshine & Meister(1994) ── 相互教授法の 16 研究のレビューです。相互教授法は、生徒が交代で先生役になり「要約・質問・確認・予想」を回す読み方です。 標準化された読解テストで効果量の中央値 0.32、研究者が作った読解テストで 0.88 でした。

町・中谷(2014) ── 日本の小学 5 年生の算数のグループ学習です。相互教授法の進め方を教えた群と、自由に話し合わせた群を比べました。 教えた群は、学習に関わる深い発言が多く、関係ない発言が少なくなりました。課題の達成度も高く、グループ学習への関わり方の自己評価も上がりました。 もともと「人の役に立ちたい」気持ちが弱い児童でも、型のある話し合いで、関わりの自己評価が上がりました。

伸びない場面

Karau & Williams(1993) ── 社会的手抜きのメタ分析です。社会的手抜きは、みんなでまとめて成果を出すとき、ひとりのときより力を抜くことです。 78 の研究で、手抜きは課題や人の種類を問わず、安定して起きていました。 手抜きの大きさを強く左右したのは、次の 4 つでした。自分の分が評価されるか・仲間がどれくらいやると思うか・課題に意味を感じるか・文化です。

Marion & Thorley(2016) ── 協同抑制のメタ分析です(64 研究)。協同抑制は、グループで一緒に思い出すと、ひとりずつ思い出した合計より少なくなる現象です。 協同抑制は安定して起きていました。グループが大きいとき、思いついた順に自由に話すとき、知らない人どうしのときに強くなりました。 一方、一緒に思い出したあとでひとりで思い出すと、一緒に思い出さなかった場合より成績がよくなる傾向でした。もう一度内容にふれることが一因と考えられています。

佐藤・猿山(2008・学会発表) ── 日本の 3 人組の協同想起の実験です。「あいまいな記憶でも話に出す」ように指示した組は、ひとりずつの合計の予想より多く思い出しました。 「あいまいな記憶は人のじゃまになるので言わない」と指示した組は、予想より少なくなりました。 成績に関係なく、メンバーは「一緒に思い出すほうがよかった」と評価しがちでした。

教える側の学びは 人に説明する・自分に説明する にまとめています。28 研究のまとめ(Kobayashi 2019)はそちらで扱います。答えを伝えるだけでは教える側の伸びが小さいこと(Roscoe & Chi 2007)も同じページです。

日本の中高生の勉強にあてはめると

研究をまとめると、友達と勉強するときのポイントは 3 つです。

授業のグループ学習・「学び合い」

テスト前の勉強会

LINE で問題を出し合う

自習室・図書館で友達と

公務員試験の勉強仲間

よくある誤解

「友達と勉強すると、しゃべって終わるだけ」 町・中谷(2014)では、自由に話し合わせた群は、関係ない発言が多くなりました。役割と順番を決めた群では、深い発言が増えていました。しゃべって終わるのは、友達と勉強するからではなく、型がないからと考えられます。

「教える側は損をする」 Cohen ら(1982)のまとめでは、教える側の生徒も理解が深まっていました。ただ、答えを伝えるだけでは伸びが小さいという研究もあります(人に説明する)。

「みんなで思い出せば、ひとりより多く思い出せる」 Marion & Thorley(2016)では、一緒に思い出すと、ひとりずつの合計より少なくなるのがふつうでした。グループ全体では多く思い出せても、それは「合計」より少ない、ということです。順番を決めてひとりずつ言うと、自由に話すより減り方は小さくなっていました。

「グループで解けたなら、全員分かった」 Karau & Williams(1993)のとおり、だれの分か見えないと手抜きが起きます。佐藤・猿山(2008)では、成績に関係なく「一緒のほうがよかった」と感じていました。最後にひとりで解いて確かめます。

このサイトでの使い方

  1. 勉強会の前に、各自で同じ単元の小テストを解いておく。例:一次関数(式・グラフ・変化の割合)・関係代名詞(主格・目的格)
  2. 集まったら、間違えた問題だけを見せ合い、なぜその答えになるかを説明し合う
  3. 終わりに、各自が「同じ型でもう 1 問」を解く。全員が自分で解けたら、その単元は終わり
  4. 3 日後、各自で「前に間違えた型をやり直す」を解いて、結果を LINE で見せ合う
  5. 公務員試験の仲間なら、対応関係(表で消していく) のような単元で、同じ問題の解き方をくらべる

注意点

引いた論文

番号は docs/参考文献ログ_追加_習慣3.md(#360〜)と docs/参考文献ログ.md(#29)の #。すべて DOI を開いて書誌と要旨を確認しています(#370 は J-STAGE の論文本文で数字を確認)。