勉強法

更新 2026-10-04 / 引用した論文はすべて DOI を確認しています

わからないときの質問のしかた ── 先生・友達・解説に頼るタイミング

一言で

わからないときに人に聞くことを、研究では学業的援助要請と呼びます。研究では、質問は「人に頼りきること」ではなく、勉強のやり方の 1 つとして扱われています。 ただし質問には質があります。どこまで考えて、どこで止まったかを言える質問は、自分で解く力につながりやすい形です。「答えだけ教えて」という質問は、点数と負の関係が出た研究もあります。 研究から考えると、勧めたい順番は「まず自分で考える → 止まった場所を言葉にする → 聞く → もう 1 問を自分で解く」です。

今日からやること

  1. 聞く前に、止まった場所を 1 行で書く。「問 3 の (2)。両辺を 2 乗したあと、なぜ解が 1 つ消えるのかがわからない」のように、どこまでできて何がわからないかを書きます
  2. 解説を読んでわかったら、閉じてもう 1 問解く。友達や先生に教わったあとも同じです。似た問題を 1 問、何も見ずに解けたら「わかった」とします
  3. 質問はためて、1 日 1 回まとめて聞く。休み時間や放課後の 5 分を「質問の時間」と決め、付箋やノートの端に書いた質問を持っていきます

1 と 3 は、下の研究から考えた段取りです。この形そのものを実験で比べたわけではありません。

何が分かっているか

日本の中高生の研究

瀬尾(2005) ── 「質問するには何が必要か」を、まず生徒に尋ねました。多く挙がったのは、自分のつまずきをはっきりさせることと、時間や場所の確保でした。 次の質問紙調査では、「わかるようになりたい」という目標(習得目標)が、つまずきをはっきりさせる工夫を通して、質問と結びついていました。 最後に高校 2 年生の数学で、つまずきをはっきりさせる方法を教える授業をしました。教えたあと、数学の学力が高い集団では質問の数が増えました。学力の高い集団でも低い集団でも、「わかりません」のようなおおまかな質問は減りました。代わりに、内容に踏みこんだ質問が増えています(人数と数値は要旨に無いので書きません)。

瀬尾(2007) ── 中学生 235 人と高校生 257 人の質問紙調査です。質問を 2 種類に分けています。

中学生では、「丸暗記でよい・答えが合えばよい」と考える生徒ほど、依存的な質問が多い関係でした。高校生では、そう考える生徒ほど自律的な質問が少ない関係でした。著者は、中学から高校にかけての質問の育ち方を「依存的な質問が減ること」と見ています。

瀬尾(2008) ── 中学生 2,304 人と、その数学の先生 22 人の調査です。先生が主に一方的に説明する授業(教師主導型)と、生徒の依存的な質問の間に関係が見られました(関係の強さは要旨に無いので書きません)。 一方、生徒とのやりとりが多い授業と、自律的な質問の間には、はっきりした関係が見られませんでした。先生の支える態度も、どちらの質問とも関係が出ていません。 ここでも、つまずきをはっきりさせる工夫をしている生徒ほど、質問の質が高い関係でした。

野崎(2003) ── 生徒の質問紙調査で、先生に聞く場合と友達に聞く場合を分けて調べました。 「わかるようになりたい」という目標は、「聞いても無駄だ」という感じ方を通して、適切な質問と結びついていました。 「人よりできると見られたい」という目標は、「聞くとできないと思われる」という気持ちを通して、依存的な質問や質問を避けることと結びついていました。先生に聞く場合と友達に聞く場合で、つながり方が一部ちがいました(人数・学年は要旨に無いので書きません)。

後藤・赤松・中谷(2025) ── 中学生 280 人の調査で、生徒どうしの質問を調べました。 勉強に自信のない生徒では、「先生が質問し合うことを勧めている」と感じている生徒ほど、適切な質問をしていました。 先生が質問し合うことに否定的だと感じている生徒は、依存的な質問をしやすい関係でした。

中谷・岡田(2020) ── 目標と質問の関係を調べた研究のまとめです。メタ分析(多くの研究結果を合算する方法)も含みます。 「わかるようになりたい」という目標や、それを大事にするクラスの雰囲気は、適切な質問と正の関係でした。質問を避けることとは負の関係でした。 「人によく見られたい」という人間関係の目標は、依存的な質問と結びついていました。題名どおり、「質問は多いほどよい」とは限らない、という整理です。

ここまでの日本の研究は、どれも質問紙調査が中心です。関係は分かりますが、「どちらが原因か」までは確かめられません。

海外の研究

Ryan & Pintrich(1997) ── アメリカの中学 1・2 年生(7・8 年生)203 人の、数学の授業での質問を調べました。 質問を避けるかどうかには、「聞くとばかにされる」というおそれと、「聞くと役に立つ」という見込みの両方が関係していました。 一方、適切な質問をするかどうかを予測したのは、「役に立つ」という見込みだけでした。

Karabenick & Knapp(1991) ── 大学生計 1,539 人の 3 つの研究です。必要なときに助けを求める学生は、ほかの学び方(計画を立てる・理解を確かめるなど)も積極的に使っていました。 著者は、質問を「人に頼る行動」ではなく、「成績を上げようとする行動の一部」と見るべきだとまとめています。

Fong ら(2023) ── 大学生などの質問と成績の関係を調べた、108 研究(約 3 万 8 千人)のメタ分析です。 必要なときに助けを求めることと成績の関係は、正でしたがとても小さいものでした。 差が出たのは質問の中身です。答えだけを求める質問は、成績と負の関係でした。やり方や考え方を理解するための質問は、正の関係でした(相関の値は要旨に無いので書きません)。

Webb, Troper & Fall(1995) ── アメリカの中学 1 年生(7 年生)6 クラスの、少人数グループでの数学の学習です。助けが必要だった生徒の、話し合いの録音を分析しました。 点数を最もよく予測したのは、教わったあとに自分で問題を解いたり、解き方を説明したりしたかでした。 どんな説明を受けたかは、そのあと自分で解くかどうかとは関係していました。ただし、点数を直接は予測しませんでした。答えだけでなく説明を受けると、そのあと自分で手を動かしやすくなる、という流れです。

解説やヒントを「見る」ときの研究

Aleven ら(2003) ── 学習ソフトのヒントや解説の使われ方を調べた研究のまとめです。ヒントを上手に使うことは、よい学習成果と結びついていました。 ところが、多くの学習者はヒントの機能をうまく使えていませんでした。ヒントを飛ばして答えだけ見る、逆にまったく使わない、といった使い方です。

Roll ら(2011) ── 図形の学習ソフトに、「ヒントの使い方」を指摘する機能を足した 2 つの研究です(58 人と 67 人)。 指摘を受けると、ヒントの使い方がよくなりました。2 つめの研究では、指摘の機能を外したあとの 1 か月も、新しい単元でよい使い方が続いていました。

先に自分で考えてから教わる

新しい内容を学ぶとき、先に自分で解いてみてから説明を受ける形のほうが、説明を先に受ける形より上だった、というメタ分析があります(Sinha & Kapur 2021)。数字と、小学生では逆の結果だった点は 予習のしかた にまとめています。 「すぐに聞かず、まず考える」時間には意味がある、と考えられます。ただしこの研究は授業の組み立てを比べたもので、「何分考えてから質問するか」を比べたものではありません。

日本の中高生の勉強にあてはめると

授業中・休み時間に先生に聞く ── 先生のところへ行く前に、ノートの端に 1 行で質問を書きます。型は「どこまでできた → どこで止まった → 何がわからない」です。 例:「教科書 p.52 の例題 3。グラフの頂点は出せた。でも、x の範囲が 0 ≦ x ≦ 3 のときの最小値がわからない」 瀬尾(2005)で質問の質を高めたのも、こうしてつまずきをはっきりさせる方法でした。

友達に聞く ── 「答え何だった?」で終わらせず、「どうやってそこまで行った?」と聞きます。教わったら、その場で似た問題を 1 問、自分で解いてみせます。Webb ら(1995)で点数を予測したのは、この「自分でやる」部分でした。 教える側にとっての利点は 人に説明する・自分に説明する に、友達との勉強会の形は 友達と勉強する にあります。

塾の質問の時間・映像授業の質問窓口 ── 質問の時間が決まっている場所ほど、ためた質問を持っていく形が合います。質問を書いた紙ごと見せると、短い時間でも話が早く進みます【推論】。 オンラインやチャットで送るときは、問題の番号と、自分の途中式の写真をつけます。「全部わからない」ではなく、止まった行を指します。

解説・解答を見るタイミング ── 研究で「何分」と決まった数字はありません。ここでは一例を示します【推論】。

この順番は、解説の初めの数行を「ヒント」として使う工夫です。いきなり答えまで読むのは、Fong ら(2023)の「答えだけを求める質問」に近い使い方になります【推論】。

聞くのが恥ずかしいとき ── Ryan & Pintrich(1997)では、適切な質問を予測したのは「役に立つ」という見込みでした。恥ずかしさを消すより、「聞いたら何が手に入るか」をはっきりさせるほうが近道だと考えられます【推論】。 たとえば「この 1 問がわかれば、定期テストの大問 1 つ分の型がわかる」と書き出してから行きます。 人前が苦手なら、放課後に職員室へ行く、質問を紙で出すなど、ほかの人に見られない形を選んでかまいません。

受験学年 ── 赤本や過去問の解説が難しいときは、解説のどの行で止まったかに線を引いて先生に見せます。わからない場所が「1 行の式変形」なのか「解き方の方針」なのかで、聞く相手も変わります。式変形なら友達でも答えられますが、方針は先生や塾の講師のほうが答えやすいことが多いです【推論】。

公務員試験の勉強 ── 独学が多く、聞く相手がいないこともあります。その場合も「止まった場所を 1 行で書く」は使えます。書き出してから解説や参考書の該当箇所を探すと、何を探せばよいかがはっきりします【推論】。

よくある誤解

「質問するのは、自分で考える力がない証拠」 Karabenick & Knapp(1991)の大学生 1,539 人の研究では、必要なときに助けを求める学生ほど、ほかの学び方も積極的に使っていました。研究では、質問は学び方の 1 つとして扱われています。

「たくさん質問するほど、伸びる」 そうとは限りません。Fong ら(2023)では、答えだけを求める質問は成績と負の関係でした。中谷・岡田(2020)の題名のとおり、「質問は常に最善か」は研究でも問われています。数より、つまずきをはっきりさせた質問かどうかが大事だと考えられます。

「教わって『わかった』と思えたら、次へ進んでよい」 Webb ら(1995)で点数を予測したのは、教わったあとに自分で解いたり説明したりしたかでした。「わかった」の感覚は当てにならないことも分かっています(テスト効果)。もう 1 問を自分で解けるかで確かめます。

「先生に聞きにくいのは、自分の性格のせい」 瀬尾(2008)では、授業の進め方と生徒の質問の形に関係が出ていました。後藤ら(2025)でも、先生が質問を勧めていると感じるかどうかで、質問のしかたがちがっていました。聞きにくさは、性格だけで決まるものではないと考えられます。

このサイトでの使い方

このサイトには、先生に質問する機能はありません。代わりに、解説と小テストを「質問の前の段階」として使えます。

  1. 小テストで間違えたら、すぐ答えの解説を全部読む前に、どの行で止まったかを紙に書く
  2. 解説を読んだら閉じて、「同じ型でもう 1 問」ボタンで別の数の問題を自分で解く。教わったあとに自分で解く、の練習です
  3. それでも解けない型は、間違いノート に「止まった行」と一緒に写し、先生や友達への質問に回す
  4. 次に開いたときは「前に間違えた型をやり直す」から始める

例:二次方程式(因数分解・平方根・解の公式) の小テストで、解の公式の計算で止まったとします。「√ の中の計算で、b² − 4ac の符号がわからない」と書けたら、もう質問の半分はできています。 評論の読み方 のように答えが一つに決まりにくい単元では、「なぜ自分の選んだ選択肢がちがうのか」を 1 行で書いて先生に見せる形が合います。

初めて習う型で、何から考えればよいかもわからないときは、先に解答例を読むほうがよい場面もあります。その使い分けは 解答例から学ぶ(例題学習) にあります。

注意点

引いた論文

番号は班別ファイル docs/参考文献ログ_追加_困ったとき.md の #(#146 は docs/参考文献ログ.md の番号)。DOI を開いて書誌を確認し、要旨(J-STAGE・OpenAlex・ERIC・Semantic Scholar)で内容を確かめています。